アパート経営をするなといわれる理由は?失敗例と回避策・向いている人の特徴

インターネットでの情報は、的を射ているものもあれば、必ずしも正しいとは限らないものも。ネガティブな意見を鵜呑みにすることなく、総合的に判断してアパート経営をおこなうべきかを検討したいところです。
この記事では、アパート経営をするなといわれる理由を紹介し、アパート経営の失敗例と回避策、経営に向いている人の特徴を解説します。ご自身がアパート経営に向いているかどうかを判断できる情報をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
アパート経営をするなといわれる理由

アパート経営をするなといわれる理由を10項目紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
借入金の負担が重いから
アパート経営は、物件の購入費用を中心に、初期投資が高額になりやすい不動産投資です。多くの場合、金融機関から借り入れをおこなうことが前提になります。返済計画に支障をきたした結果、自己資金が不足して返済が困難になってしまうケースも少なくありません。
借入金は元本だけでなく金利分の返済も求められるため、融資を受けた金額以上の負担が発生します。経営者の資金状況と返済計画によっては、リスクの高い経営になるため、返済負担の問題からアパート経営が推奨されない場合があります。
空室リスクが高いから
アパート経営において、入居者の募集は大きな課題です。入居者が見つからず、長期間空室が続くと、家賃収入が減少して経営状況が悪化します。入居者がいない状態であっても借入金の返済は続ける必要があり、空室に対する清掃費用や修繕費などの固定費が発生することも。
そのため、思うように収入が得られず、コストだけがかかる可能性があります。最終的には経営が困難になるため、空室リスクの高さもアパート経営が敬遠される理由です。
家賃相場が下落する可能性があるから
アパート経営は家賃収入が主な収入源で、地域や市場の状況に応じて家賃相場が変動します。家賃を引き下げざるをえなくなるケースでは、当初の収支計画を見直す必要も出てくるでしょう。建物の老朽化により、他の物件との競争力が失われ、家賃を引き下げる対応も考えられます。
家賃相場の下落は利回りに大きな影響を与えます。不動産投資では安定した収益を得られることが求められますが、アパート経営の利回りは家賃相場の変動などで不安定になることも。安定性に欠ける点が気になる方もいるかもしれません。
周辺環境の変化により入居者が減少するから
アパート経営の収益は、物件の立地と周辺環境に大きく依存しています。近隣に公共交通機関が整備されており、大型商業施設があるなど、周辺のインフラが良好である場合には、入居者の需要が見込めます。しかし、周辺環境は時間とともに変化するため、インフラが衰退すると入居希望者が減少し、より利便性の高い地域への引越しを目的に退去者が増えることも。
治安の悪化など、周辺環境にマイナスの影響を与える問題が発生した場合も同様です。周辺環境の変化は、アパート経営を始める前に十分なリサーチをおこなうことでリスクを回避できる場合があります。しかし、すべてのリスクの予測は難しいため、アパート経営のリスクでは避けがたい懸念材料です。
資産価値が目減りしやすいから
アパートなどの不動産は、時間の経過とともに資産価値が下落するリスクがある資産です。建物は年月が経てば老朽化するため、長期間にわたって保有する場合は、資産価値の目減りが避けられません。適切なメンテナンス・リフォームをおこなわなければ、より早く資産価値が下落する可能性もあります。
不動産市場の取引価格は、景気の変動や需給バランスで左右されるため、売却をする場合もタイミングによっては、初期投資額を思うように回収できないことがあります。資産価値の低下は、物件としての魅力にも結びつくことが多いため、家賃収入が減少することも問題です。
修繕費がかさみやすいから
アパートの資産価値を維持するためには、定期的なメンテナンス・リフォームが重要です。経年劣化による設備の故障、屋根の雨漏りなど、必要に応じて修繕が発生します。修繕費の発生するタイミングの予測は困難であり、予期せぬタイミングで大きな出費が必要になることも。
特に古い物件ほど、入居者の安全性・快適性を確保するために修繕費がかさみやすくなります。修繕費がかさむとアパート経営で収益を上げることが困難になり、経営に支障をきたすかもしれません。
しかし、修繕をおろそかにすると、建物の老朽化により重大な事故に発展する危険性もあります。目先の収益だけにとらわれていると、重大なトラブルに見舞われる可能性があることもリスクといえます。
入居者トラブルの対応が大変だから
アパートでは同じ建物で複数の入居者が暮らすことから、入居者トラブルは避けがたい問題です。利回りに直結する問題であれば、家賃の滞納が挙げられます。
また、入居者同士のトラブルのなかにはなかなか解決が難しい場合も。アパートの経営者として適切な対応を取らなければなりません。
管理業務の増加、法的手続きによる負担が発生すれば、収益の安定を損なうだけでなく、精神的なストレスになる可能性があります。入居者トラブルの対応もデメリットに数えられており、アパート経営に対する否定的な意見として挙げられます。
金利の変動による影響が大きいから
アパート経営では資金調達のために金融機関から融資を受けますが、少しでも安い金利で返済するために変動金利が選ばれます。しかし、変動金利は政策金利・経済情勢の変動によって、返済額が増加して負担が大きくなる可能性があります。
アパート経営で以下の条件でローンを返済する場合に、金利が1%変動するとどのような影響があるのかを見ていきましょう。
- 借入金:8,000万円
- 残りの返済期間:20年
- 金利タイプ:変動金利
- 返済方法:元利均等返済
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
2.0% | 40万4,706円 | 9,712万9,440円 |
3.0% | 44万3,678円 | 1億648万2,720円 |
差額 | 3万8,972円 | 935万3,280円 |
変動金利を選択する場合は、上記のとおり毎月の返済額が増加し、総返済額が大きく上昇することで資金計画に多大な影響を及ぼす可能性があります。固定金利を選択すればリスクを避けられますが、変動金利と比較すると初期の金利が高いデメリットも。将来的に金利が上昇する可能性がある局面では、アパート経営のリスクが高まるため、ネガティブな意見が増える要因となっています。
知識がない状態では失敗しやすいから
アパート経営は、単に物件を購入・建設して経営するだけで成功するものではありません。多岐にわたる専門知識が求められる複雑なビジネスであり、不動産市場の動向だけでなく、法令や税制の知識も求められます。
十分に知識がない状態でアパート経営を始めると、知識不足による判断ミス、計画の不備により失敗するリスクが高まります。不動産に関する法律や税金の知識不足もトラブルやコスト増大を招く原因となるでしょう。
知識やノウハウがない不動産投資初心者が収益を目的にアパート経営を始めたいと考えても、初心者では難しいことから、否定的な意見を投げかけられることが多いと考えられます。
管理会社の選択を間違えると経営に悪影響をおよぼすから
アパート経営では、一般的に管理会社に物件の管理や入居者対応を任せることが多いです。そのため、管理会社に物件の管理を委託すれば、アパート経営におけるいくつかの不安を解消できます。ただし、管理会社に任せれば必ずうまくいくと考えることは早計かもしれません。
管理会社に物件の管理を任せることは、アパート経営の成否を委ねるといっても過言ではありません。万が一、管理会社の選択を誤ってしまうと物件の管理が不十分となり、さまざまなトラブルに見舞われ、経営に悪影響をおよぼす可能性があります。
よって、アパート経営の管理会社の選定は慎重におこなう必要があります。しかし、管理会社に任せれば必ずうまくいくと思い込むことは、アパート経営で失敗しやすい考え方のひとつといえるでしょう。
アパート経営の失敗例と回避策

「アパート経営をするな」といわれるのは、アパート経営には上記で説明した複数のリスクがあるからです。そして、リスクによって経営が悪化し、最終的に失敗する未来の想像は難しくありません。ネガティブな意見のなかには「どうせ失敗する」という感情が込められているといえるでしょう。
それでは、アパート経営の失敗とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
失敗例をそれぞれ詳しく解説したうえで、どのように対策するべきか回避策を以下で紹介します。
立地条件の悪さから空室が増加した
立地はアパート経営の成否を大きく左右する要素です。交通の便が悪く、周辺に生活に便利な施設が不足しており、治安や環境が不十分なエリアは入居希望者の関心を引きにくいため、空室率が増加します。空室が増加すれば、安定した家賃収入を確保できなくなり、毎月のローン返済などのコストにより経営が成り立たなくなることも。
例えば、立地条件の悪さによる空室の増加で見込んでいた収入を得られない状態に陥った場合、アパートを売却して新しい物件を購入する以外に立地条件を改善する方法がないため、アパート経営に失敗したと考えられます。
回避策:市場調査は入念におこなう
空室リスクを回避するためには、事前に入念な市場調査を実施しましょう。物件の需要と他の物件との競合を考えながら、立地の優劣を総合的に判断することが重要です。周辺地域の将来的な都市計画やインフラ整備の動向も把握すれば、長期にわたって安定したアパート経営がしやすくなります。
複数の不動産コンサルタントの意見を聞き、不動産会社の調査を参考にすれば、より客観的なデータに基づいて物件の立地を選定できるはずです。立地条件による空室を回避するためには、入念な市場調査が必要不可欠といえます。
借入金の負担の重さから返済が困難になった
アパート経営では初期投資額の大きさから、物件を購入するために、金融機関の借入金に頼るケースがほとんどです。そのため、経営状態の悪化を理由に借入金の返済が滞るリスクがあります。最初に立てた返済計画がうまくいかずに、最悪の場合はアパート経営が破綻することも。
思うように収入を得られない場合や、修繕費など予期せぬ出費が発生した場合でも、毎月固定でかかる返済額を支払わなければなりません。最終的に返済が困難と判断されれば、差し押さえや担保処分に至る可能性もあります。借入金の負担の大きさは、アパート経営を失敗させる大きな要因となるでしょう。
回避策:自己資金を十分に用意して無理のない返済計画を立てる
アパート経営では、さまざまな場面で借入金の返済以外にも資金が必要になります。借入金の負担を理由に失敗しないためには、自己資金を十分に用意して、無理のない返済計画を立てましょう。毎月の返済とアパート経営で期待される家賃収入を考慮して、安定したキャッシュフローを確保して経営をおこなうことが望ましいです。
物件管理が不十分で取り返しのつかないトラブルが発生した
物件管理は、アパート経営における入居者とのトラブルを防止するための重要な業務です。物件管理が不十分であると、入居者からの苦情につながります。設備の故障の放置は住環境の悪化、入居者の安全性に重大な影響を及ぼすことも。取り返しのつかないトラブルが発生し、最悪の場合は訴訟に発展する可能性があります。
取り返しのつかないトラブルが発生すると、アパートから入居者が離れて空室率が増加するおそれがあります。入居者の安全性に関わる重大な事故が発生すれば、最悪の場合、法的な紛争により多額の賠償金の支払いを命じられる可能性もあります。管理体制の不備はアパート経営の信頼性を損ない、大きな失敗につながるかもしれません。
回避策:良質な管理会社を選択する
物件管理のリスクは、信頼性の高い良質な管理会社を選定し、管理を委託することで回避しやすくなります。管理会社の選定は、複数社の経営実績や評判、サービス内容と料金体系を比較して、委託する管理会社を選択しましょう。
物件管理を任せてもいいと考えられる管理会社が見つかった場合は、面談をおこないます。面談の際には、以下のポイントを確認するといいでしょう。
・定期報告など運営状況を日常的に把握できる仕組みが整っているか
・トラブル発生の際の対応フローが明確に定められているか
物件管理で取り返しのつかないトラブルを発生させないためには、トラブルの発生を未然に防ぐ取り組みをしており、トラブル発生時の対応を確立している管理会社に任せることが最適です。
アパート経営に向いている人の特徴

アパート経営にはリスクと注意するべきポイントが多く、すべての人に向いているとはいえません。アパート経営に興味がある人に向けて、向いている人の特徴をまとめました。
- 長期的な視野で物事を見られる人
- 安定した収入と貯蓄がある人
- 勉強や情報収集を欠かさない人
上記の特徴に当てはまるのであれば、アパート経営を成功させやすいでしょう。それぞれ詳しく解説します。
長期的な視野で物事を見られる人
アパート経営は短期間で利益を上げられるビジネスではありません。投資金額の回収は年単位でかかることが一般的であり、先を見据えて計画を立てることが重要です。物件のリフォーム、設備投資も短期間で考えれば大きな出費になりますが、長期的なリターンを見込んでおこなう場合もあります。
日々の細やかな利益を追い求めるのではなく、数年以上先の投資効果を計算して経営できる人に向いているといえるでしょう。将来の可能性や成長を重視し、長期的な視野で物事を見られる人にアパート経営は適しています。
安定した収入と貯蓄がある人
アパート経営は初期投資額と日々発生するコストの大きさから、経済的に余裕がない人には難しいかもしれません。経営するアパートによって必要になる収入と貯蓄は異なりますが、一定の資産があることが前提です。
収入と貯蓄の額が大きいほど、想定外の出費などにも対応しやすく、自己資金の割合を高めて借入金の返済負担を減らせます。アパート経営は長期にわたっておこなうことから、資金がある人ほど安定して続けられます。
勉強や情報収集を欠かさない人
アパート経営には、不動産に関する法律や税金の知識が必要であるため、まったく知らない状態から始めるには勉強が必須です。すでに不動産に関する知識を持っている人であっても、不動産市場は常に変動していることから日々の情報収集は欠かせません。
よって、常に勉強や情報収集を怠らず、自ら学ぶ意欲がある人に向いています。また、アパート経営では専門書を読むなど、机の上でおこなう勉強だけではなく、入居者または管理会社との円滑なコミュニケーションも求められます。
経営に関わる人との交流による情報収集も重要であるため、アパート経営では人とコミュニケーションを取る能力も必要です。
まとめ
アパート経営について、インターネット上では否定的な評価が見られます。その理由は、実際に経営で損失を被った事例や、さまざまなリスクが存在することから、慎重な判断が求められているためです。
しかし、アパート経営には数多くのリスクがともなう一方で、適切なリサーチと計画、自らの適性を見極めることで成功できる可能性も秘めています。
アパート経営に興味があるなら、否定的な意見に流されることなく、リスクと対策を正しく理解して、成功できる方法を考えていきましょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ