このページの一番上へ

投資用マンションに自分で住むことは可能?難しいとされる理由やデメリットをわかりやすく解説

投資用マンションに自分や家族が住めるのかを解説します
資産運用の一つとして購入した投資用マンションに、自分で住みたいと考える方もいるのではないでしょうか。また、なかには親や子どもなど、親族を住ませたいと考える方もいるでしょう。本記事では、投資用マンションに自分や親族が住むことは可能なのかを解説します。また、自分が投資用マンションに住む際のデメリットや注意点を解説するため、自分にとってどうすることがいい選択なのか、よく考えてみましょう。

投資用マンションに自分で住むことは可能?

条件を満たせば投資用マンションに自分が住むことは可能です
条件を満たせば投資用マンションに自分が住むことは可能です

結論をいうと、投資用マンションに自分や親族が住むことは可能です。しかし、住めるケースと住めないケースがあります。本章では、2つのケースをそれぞれ解説します。

投資用マンションとは

そもそも投資用マンションとは、自分が所有するマンションを他人に貸し出し、家賃収入を得るための物件。毎月家賃収入が得られることから、資産運用の一つとして注目を集めています。ただし、投資用マンションは高額であることから、不動産投資ローンを借り入れて購入することが一般的です。そのため、家賃収入から不動産投資ローンを返済していきます。

購入した投資用マンションに自分で住むことはできる?

先述したように、投資用マンションに自分や親族が住むことは可能です。しかし、住めないケースもあります。まずはどういう場合に住めるのかを見ていきましょう。

投資用マンションに自分で住めるケース

投資用マンションに自分で住めるケースは次の2つです。

  • 不動産投資ローンを完済している
  • 投資用マンションを全額自己資金で購入している

不動産投資ローンを完済している場合、自分や親族が住むことが可能です。なぜ完済後でなければならないのでしょうか。それは、不動産投資ローンは、投資用物件を購入するために借り入れるものだから。不動産投資ローンの返済中に、自分が住んだ場合、契約違反としてローンの一括返済を求められる可能性があります。例えば、みずほ信託銀行の「貸マンション・アパートローン規定」では、次のように記載されています。

第8条(期限前の全額返済義務)
2.次の各場合には、借主は、銀行からの請求によってこの契約による債務全額について期限の利益を失い、本ローン契約書記載の返済方法によらず、直ちにこの契約による債務全額を返済するものとします。
~中略~
⑧借主が本契約により取得した不動産について、借入契約期間中に使用目的・用途を変更したとき。

引用:みずほ信託銀行「賃貸マンション・アパートローン規定

期限の利益とは、一定の期限が来るまで、不動産投資ローンを返済しなくていいという権利。わかりやすくいうと、高額である不動産投資ローンを分割で返済する権利です。返済中に、使用目的・用途を変更した場合には、その権利を失い、一括返済するよう求めています。自分で住む場合には、必ず不動産投資ローンを完済したあとにしましょう。

また、投資用マンションを全額自己資金で購入している場合も、自分で住むことが可能です。借り入れもないため、投資用マンションをどのように使用するかは、投資家の自由です。

投資用マンションに自分が住めないケース

次に、住めないケースを見ていきましょう。次の2つのケースに当てはまる時は、自分で住むことができません。

  • 不動産投資ローンを完済していない
  • 入居者がいる

先述したように、不動産投資ローンを完済していない時は、契約違反にあたるため自分で住むことはできません。もし不動産投資ローンの返済中に、自分で住みたい場合は、借り入れている金融機関にローンの変更が可能かを確認する必要があります。
しかし、不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えは難しいでしょう。なぜなら、不動産投資ローンのほうが、金利が高いため、金融機関からすると金利の低い住宅ローンへの借り換えにメリットがないからです。投資用マンションに自分で住みたい場合は、繰り上げ返済をして不動産投資ローンを完済しましょう。

また、入居者がいる場合も自分で住めません。投資用マンションのなかに気に入っている部屋があり、自分で住みたいと思っても、入居者を立ち退かせることはできません。それは、借地借家法の第28条で次のように定められているからです。

建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用:借地借家法第28条

つまり、正当な理由がなければ、オーナーが入居者を立ち退かせられないということです。賃貸契約においては、必然的に入居者よりもオーナーのほうが立場は強くなります。そこで、入居者を守るために定められた法律が借地借家法です。「自分で住みたいから」という理由は、正当な理由として認められない可能性があります。

投資用マンションに親族が住むケース

不動産投資ローンの返済中、投資用マンションに自分ではなく、親族が住む場合はどうなるのでしょうか。まずは無償で親族に住まわせる場合を見てみましょう。

無償で親族に住まわせる場合も、契約違反とみなされる可能性があります。なぜなら先述したように、不動産投資ローンは投資用物件を購入するために借り入れるものです。無償で住まわせた場合、賃貸ではなくなるため、契約違反とみなされる可能性が高いでしょう。

有償で親族に住まわせる場合、家賃設定の問題が出てきます。「親族だから家賃を安くしてあげたい」と思うかもしれません。しかし、下げすぎると家賃収入が減ることから、税務署から租税回避行為とみなされる可能性があります。租税回避行為とは、法律の抜け穴を突いて、課税を逃れようとする行為のこと。家賃収入を得たことによる税金の負担を軽減するために、わざと親族に安く住まわせているとみなされる可能性があります。家賃の設定をどうすればいいかわからない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

投資用マンションに自分で住む場合のリスク

投資用マンションに自分で住む場合には3つのリスクがあります
投資用マンションに自分で住む場合には3つのリスクがあります

投資用マンションであれば設備も整っているため、自分で住む際にも、特に問題がないように思うでしょう。しかし、リスクがいくつかあります。本章では3つのリスクを解説します。

不動産投資ローンから住宅ローンの借り換えが難しい

投資用マンションに自分で住む場合のリスクとして、そもそも不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えが難しいことが挙げられます。先述したように、金融機関にとって、高金利の不動産投資ローンから低金利の住宅ローンへの借り換えは、メリットがありません。

また、ローンの融資対象の条件が異なっていることも理由の一つ。そもそも投資用マンションは1戸あたりの面積が狭いことがあります。例えば、神戸市ではワンルームマンションを建築する場合、専有面積が18平方メートル以上、30平方メートル未満と制限。一方、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携している住宅ローン「フラット35」では、共同住宅の場合、30平方メートル以上が要件となります。このように投資用マンションでは住宅ローンの要件を満たさないことから、借り換えは難しいと考えられます。

家賃収入が減る

投資用マンションに自分で住むと、家賃収入が減ることもリスクの一つです。マンションやアパートを一棟丸ごと所有している場合には、一部屋分の家賃収入が減ったとしても特に問題ないでしょう。しかし、ワンルームマンションの場合は、痛手となります。なぜなら、不動産投資ローンの完済後であったり、全額自己資金で購入したとしても、固定資産税や修繕費などのコストがかかるためです。貸し出している時であれば、家賃収入から支払うことが可能です。しかし、投資用マンションに自分で住み、家賃収入がなくなった場合、本業の収入や自身の資産から支払わなければなりません。そのため、投資用マンションに自分で住むかは、将来的な資金計画を見越したうえで検討しましょう。

入居者を退去させられない

不動産を所有しているオーナーだからといって、入居者を退去させられないこともリスク。借地借家法では、入居者とオーナー間の賃貸契約に関するルールが定められており、入居者である借主が保護されます。具体的には、第26条ではオーナーから入居者へ退去を要請する場合には、契約期間が満了する1年前から6カ月までの間に、入居者に対して通知しなければならないとしています。さらに先述したように、第28条では、オーナーが投資用マンションを必要とする事情など、正当な理由がなければ認められないと定められています。もともと投資用として購入したマンションを、自分で住みたいからといって入居者を退去させることは、よほどの理由がない限り難しいでしょう。

投資用マンションに自分で住む場合のデメリット

投資用マンションに自分で住む場合にはさまざまなデメリットがあります
投資用マンションに自分で住む場合にはさまざまなデメリットがあります

仮に不動産投資ローンから住宅ローンへ借り換えができ、投資用マンションに自分が住んだとしても、デメリットがいくつかあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

節税効果を得られなくなる

投資用マンションに自分が住んだ場合、節税効果を得られなくなる点がデメリットです。不動産投資ローンを借り入れ、投資用マンションを購入した場合には、さまざまな経費を計上できます。例えば、不動産投資ローンの利子や減価償却費、固定資産税など。減価償却とは、高額な固定資産の購入費を一括で計上するのではなく、資産価値の減少に合わせて複数年に渡って経費として計上することです。また、不動産投資の所得が赤字であった場合には、他の所得と相殺することで、課税所得を減らし、結果として税金を抑えられます。これらは、マンションを賃貸経営しているからできること。もし自分で住んだ場合には、これらの節税効果はなくなります。

住宅ローン控除を受けられない

仮に住宅ローンへの借り換えができたとしても、住宅ローン控除を受けられない可能性があります。住宅ローン控除とは、居住用の住宅を購入した際、税負担を軽減するための制度。年末時点における住宅ローン残高の0.7%の金額が、税金から控除されます。住宅ローン控除の適用を受けるためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。具体的には次のようなものがあります。

  • 住宅が新築された日などから6カ月以内に居住していること
  • 控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること

住宅ローン控除を受けるためには、新築された日や購入した日から6カ月以内に購入した住居に住んでいなければなりません。投資用マンションを購入して6カ月以内に、自分で住むことは現実的に考えられないでしょう。

マンションの仕様が自分のニーズと異なる

投資用マンションは一定の設備が整っています。しかし、それらが自分のニーズに合うとは限りません。もし親族がいる場合、投資用に購入したマンションが単身者向けのワンルームであれば、親族で住むには狭いでしょう。また、投資用マンションは空室リスクを避けるため、立地や利便性のよさが優先されます。そのため、内装や設備のコストが抑えられていることも。もし自分で住む場合には、内装の好みが合わなかったり、設備に不満を感じる可能性があります。

手間やコストがかかる

仮に住宅ローンへの借り換えが成功し、投資用マンションに自分で住む場合、手間やコストがかかります。入居者がいる場合には、退去してもらわなければなりません。入居者にも生活があるため、快く承諾してくれるケースは稀でしょう。もし承諾が得られたとしても、入居者に対して立ち退き料の支払いや引越し費用を負担しなければなりません。立ち退き料の相場は家賃の6カ月〜1年程度。もし家賃が8万円だった場合、48万円〜96万円となります。その分の手間やコストをかけてでも、投資用マンションに自分で住みたいのか、よく考えましょう。

投資用マンションに自分で住む場合の注意点

投資用マンションに自分で住む場合の注意点を解説します
投資用マンションに自分で住む場合の注意点を解説します

投資用マンションに自分で住むことは可能ですが、不動産投資ローンが残っている場合、ハードルはかなり高いでしょう。どうしても自分で住みたい場合は、本章で解説する注意点を押さえておきましょう。

金融機関からの許可を得る

これまで不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えが難しいことなどを説明しました。「難しいなら金融機関に内緒で住めばいいのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、それは絶対にやめましょう。先述したように、投資用マンションは投資目的で購入することを前提として融資を受けているため、自分が住んだ場合には契約違反となります。そのため金融機関から不動産投資ローンの一括返済を求められる可能性もあります。もし不動産投資ローンの返済中に自分で住む場合は、事前に金融機関から許可を得るようにしましょう。

資金計画を綿密に立てる

投資用マンションに自分で住みたい場合、資金計画を綿密に立てましょう。もし不動産投資ローンを完済している場合や自己資金で購入した場合でも、固定資産税や修繕費などは負担しなければなりません。自分の収入から支払っても家計が成り立つか、事前に確認しておきましょう。また、先述したように、入居者がいる場合には立ち退き料や引越し費用を負担しなければなりません。高額になることが予想されるため、それらを支払っても家計に問題ないか、シミュレーションをしておきましょう。

まとめ

投資用マンションに自分で住むことは可能です。しかし、不動産投資ローンを完済している場合や全額自己資金で購入している場合に限られます。不動産投資ローンから住宅ローンへ借り換えができれば可能ですが、金融機関にとってメリットがないことから、ハードルはかなり高いでしょう。仮に借り換えられたとしても、節税効果がなくなったり、家賃収入が得られなくなったりなどのデメリットがあります。リスクやデメリットをよく理解したうえで、検討しましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る