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京都で不動産投資をするデメリットは?景観規制やエリア別の特徴を徹底解説

京都で不動産投資をおこなうデメリットとメリットを解説します
京都は、祇園祭をはじめとする伝統的な行事や歴史的な建造物が数多く残る、国内屈指の観光地です。修学旅行生や訪日外国人を中心に、年間を通して多くの観光客が訪れ、常に賑わいを見せています。

特に、新型コロナウイルス感染症の流行収束後はインバウンド需要が急増。2024年のお盆期間中の宿泊料金は、コロナ禍前である2019年の同時期よりも3割程度上回っており、その人気ぶりがうかがえます。京都の魅力の一つは、歴史ある街並みや美しい木造建築物が今もなお大切に保存されていること。

美しい景観を守るため、京都では厳格な景観規制が設けられています。景観規制は魅力的な環境を維持するために必要なものですが、不動産投資の視点から見ると、建築の自由度が制限されるなどのデメリットも。

本記事では、京都で不動産投資をおこなう際のメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、京都で不動産投資をする際に参考となるエリア別の特徴なども紹介するため、京都での投資を検討している方はぜひ参考にしてください。

京都の景観規制とは

京都の景観規制を解説します
京都の景観規制を解説します

京都府では「京都府景観条例」が定められていますが、京都市では「建物は個人の所有物であるが、景観は市民全体の財産である」という理念のもと、独自の景観保全策が取られています。市内には美観地区、美観形成地区などのさまざまな規制区域が設けられており、祇園などの観光地だけでなく、市内の広い範囲が景観条例の適用を受けています。

景観規制は、京都ならではの歴史的な街並みや文化的価値を守るために欠かせないものですが、不動産投資を考える際には、その内容を理解しておかなければなりません。今回は、京都市内に焦点を置いて、どのような規制があるのかを解説します。

眺望規制

京都市では、歴史的建造物や神社仏閣からの眺望を保護するため、「眺望景観保全地域」が設定されています。

例えば、毎年8月16日におこなわれる五山送り火(大文字)は京都を代表する伝統行事です。送り火が市内の指定された「視点場」からはっきりと見えるようにしなければならず、建物の高さに厳しい制限が設けられています。

上記の規制により、該当エリア内で建物を新築・改築する際は、指定された高さ制限を守らなければなりません。

眺望規制は景観を守るための重要な施策です。しかし、高層マンションなどの建設が難しくなるため、不動産投資をおこなう際には制約となることもあります。

デザイン制限

京都市では、建築物の高さだけでなく、外観デザインや色彩にも厳しい規制が設けられています。特に、歴史的建造物と調和を図るため、建物の形状や屋根の勾配、使用する外壁の色などが細かく決められています。

例えば、外壁の色彩に関しては、「京都の伝統的な町並みに調和する色」として、具体的なガイドラインが設定されています。

黄色系は彩度4以下、赤系の彩度は6以下などと、厳格な基準があるため、派手な色の建築物は許可されません。

上記のようにデザイン規制があるため、新築やリノベーションの際には、ガイドラインに適合した設計を求められます。不動産投資を検討する際は、物件の改修に制限がかかる可能性があることを理解しておきましょう。

京都で不動産投資をおこなう際のデメリット

京都で不動産投資をおこなう際のデメリットを解説します
京都で不動産投資をおこなう際のデメリットを解説します

京都で不動産投資をおこなう際には、いくつかのデメリットがあります。不動産投資で失敗しないためにも、どのようなデメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

建築に関する規制が厳しい

京都府内でも規制が制定されていますが、京都市は千年以上の歴史を持つ古都であり、景観を守るための法律や条例が厳しく定められています。

2007年に導入された「新景観政策」では、幹線道路沿線などにある建築物の高さを最大で31mまでに制限されました。

地域によっては、より厳しく高さを制限されているエリアもあります。25m、20m、15mと段階的に制限が設けられており、特に厳しいエリアでは10mまでの高さの建物しか建てられません。

アパート経営を考えた場合、3階建て程度が上限となるエリアもあり、高収益を狙うには制約が多くなる点がデメリットの一つ。

また、特定の地区では和風建築が求められ、洋風デザインの建物が建てられないケースも。

特に鴨川沿いなどの岸辺型美観地区では、外観デザインに厳格な基準が設けられているため、自由な設計が難しくなるでしょう。

しかし、近年では京都市の人口減少対策の一環として、一部地域で高さ制限が緩和される動きも見られます。2023年4月には、JR京都駅の南側や市の東部で、高さ制限が20〜25mから31mに引き上げられました。

今後制限が緩和されれば、高層マンションの建設も可能になり、不動産投資の選択肢が広がる可能性もあります。ただし、市内全域で規制が緩和されるわけではありません。依然として厳しい制約のあるエリアが多いため、事前のリサーチが必要です。

不動産の供給が少ない

京都府のなかでも、観光スポットが多い京都市内では、不動産市場での供給量の少なさが課題となっています。これは、前述の建築規制に加えて、観光業の発展によるホテル建設の増加が影響していると考えられています。

京都市は国内外からの観光客が多く、宿泊施設の需要が高いため、新規の開発では居住用よりもホテル用の物件が優先される傾向に。その結果、賃貸住宅や投資用物件の供給が限られ、条件に合う不動産を見つけることが難しくなっています。

株式会社不動産経済研究所の「全国新築マンション市場動向2024年」によると、京都府内での分譲マンションの販売戸数は1,702戸でした。東京都や大阪府と比較すると大幅に少なく、前年比では4%の減少となっています。

火災リスクが比較的高い

京都府、とりわけ京都市内は歴史的な町並みが残るエリアが多く、伝統的な町家が密集しています。このような町家は木造建築が主流であるため、ひとたび火災が発生すると燃え広がりやすく、甚大な被害に繋がる可能性があります。特に、狭い路地が多い地域では消火活動が難しく、火災が拡大しやすい環境にあるため、注意しなければなりません。

全国的に見ても、京都市は火災リスクが高い都市の一つとされており、万が一の際の備えが重要です。京都で不動産投資をする際には、火災保険に加入することが求められます。特に木造住宅は火災保険の保険料が高くなる傾向にあるため、事前にコストを試算し、収支計画を慎重に立てましょう。

さらに、物件の耐火性能を高めることも重要な対策の一つです。防火性の高い建材を使用する、スプリンクラーや火災報知器を適切に設置するなど、安全対策をしっかり取ることで、火災被害のリスクを軽減できます。

火災の危険性を理解し、適切な対策を取ることで、不動産投資をより安定的に運用できるでしょう。

地震リスクが比較的高い

京都府は活断層が複数存在する地域であり、特に京都市左京区から滋賀県にかけて活断層が延びています。そのため、大規模な地震が発生した際には、大きな揺れによる被害が発生する可能性があります。過去の地震記録を見ても、京都府内では度々地震の影響を受けているため、今後も発生する可能性を考慮して備えることが重要です。

不動産投資をおこなう際には、耐震性の高い建物を選ぶことが必須でしょう。特に、1981年以前に建てられた建物(旧耐震基準)と比較すると、1981年以降の新耐震基準を満たした建物のほうが地震に対する耐性が高いため、安心して運用できます。新たに賃貸物件を建設する場合も、耐震性の高い設計を採用し、安全性を確保することが重要です。

また、地震リスクに備える方法として、地震保険への加入も有効です。地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで契約する必要がありますが、災害発生時の損害補償を考えれば、投資物件を守る重要な手段となるでしょう。

京都で不動産投資をおこなうメリット

京都で不動産投資をおこなうメリットを解説します
京都で不動産投資をおこなうメリットを解説します

ここまで、京都で不動産投資をおこなう際のデメリットを解説しましたが、メリットも多くあります。

安定した入居率で長期的な資産運用が可能である

京都は、日本を代表する観光地であり、美しい四季の風景や歴史的な建造物が魅力の地域です。そのため、定年退職後に京都へ移住したいと考える方や、資産家がセカンドハウスとして物件を購入するケースも少なくありません。

比較的安定した需要があるため、投資物件を長期間にわたって保有しやすく、安定した賃貸経営が可能になるでしょう。特に、京都の物件は資産価値が下がりにくい傾向にあり、長期保有のメリットを得られやすいことも魅力の一つです。

単身者向け賃貸の需要が高い

京都には多くの大学が集まっており、全国的に見ても学生の数が多い都市の一つです。そのため、学生向けの賃貸物件の需要が高く、安定した入居率が期待できるエリアとなっています。

学生向け物件の魅力は、入居者の入れ替わりがスムーズにおこなわれやすいことです。大学を卒業したあとに退去するケースが多いものの、新入生が毎年入学してくるため、空室リスクを抑えやすい点が魅力の一つ。

さらに、京都には任天堂や京セラ、ワコールなどの大手企業の本社があり、このような企業に勤める単身者も多く居住しています。

そのため、京都市内の賃貸市場では、大学生だけでなく社会人の単身者向け物件の需要も比較的安定しています。特に、駅近や大学・企業の近くにある物件は、長期的に見ても収益を確保しやすい投資対象となるでしょう。

競合物件の供給が限られているため競争が少ない

先述したように、京都は歴史的な街並みを守るために、厳しい建築規制が設けられています。新たな建物の建設が制限される要因にはなりますが、一方で不動産投資の視点から見ると、供給過多による競争激化が起こりにくいメリットがあります。

新規物件の開発が難しいことで、需要に対して供給が過剰になるリスクが低く、既存の物件に対する賃貸ニーズが安定している点が特徴です。京都の魅力に惹かれた人々の居住需要は一定数存在するため、他の都市と比較しても空室率を低く抑えられるでしょう。

また、競合物件が少ないため、賃料の大幅な値下げ競争に巻き込まれにくく、安定した収益を維持しやすい環境にあります。厳しい景観規制が結果的に不動産投資のメリットにつながる点は、京都ならではの魅力です。

インバウンド需要の高まりによる資産価値の上昇が期待できる

京都は日本を代表する観光地であり、海外からの旅行者が多い点が特徴です。京都市産業観光局の「京都観光総合調査 令和5(2023)年1月〜12月」では、外国人宿泊者数が過去最高の536万人に達しており、インバウンド需要が年々増加しています。

この影響により、ホテルや民泊、ゲストハウスなどの宿泊施設の需要も高まり、それにともなって土地価格や賃貸物件の価値も上昇しています。

特に、観光エリア周辺の物件は、今後も高い資産価値を維持する可能性があるため、不動産投資の選択肢としては有望でしょう。

京都府のエリア別特徴と適した物件タイプ

京都府のエリア別特徴と適した物件タイプを解説します
京都府のエリア別特徴と適した物件タイプを解説します

京都府は南北に長い地形をしており、地域ごとに特徴が異なります。投資の成功には、エリアごとの特性を理解し、適した物件タイプを選ぶことが重要です。

京都市

京都府の中心であり、多くの企業や大学が集まる都市です。特に、京都駅周辺には京セラやワコールなどの大手企業の本社があり、さらに大学も多いため、単身者向けのワンルームマンションの需要が高い傾向にあります。

南丹地域

京都スタジアムを中心に、地域活性化が進むエリアです。京都医療科学大学や京都美術工芸大学、明治国際医療大学などがあり、学生向けの賃貸アパートの需要があるため、単身者向け物件の投資が有望です。

山城地域

新名神高速道路の全線開通により、交通アクセスが向上している地域です。特に木津川市では人口増加が続いており、2013年の7万2,359人から2022年には8万26人に増加しています。子育て支援策が充実しているため、ファミリー層の移住が進んでおり、ファミリー向けの賃貸物件が投資対象として有望でしょう。

丹後地域

高齢者が多く、農林水産業が主要産業の地域です。全国や京都の平均を上回る少子高齢化が進行しており、賃貸需要が限られているため、不動産投資をおこなう際には、需要が見込めるエリアを慎重に選定することが重要です。

中丹地域

関西北部の中核エリアであり、福知山市や舞鶴市を中心にインフラ整備が進んでいます。出生率が比較的高く、ファミリー世帯の定住が見られるため、ファミリー向けのマンションやアパートが適した投資物件となるでしょう。

京都で不動産投資を成功させるポイント

京都で不動産投資を成功させるポイントを解説します
京都で不動産投資を成功させるポイントを解説します

京都で不動産投資をおこなう際には、独自の市場特性を理解し、戦略的に進めることが重要です。最後に、京都で不動産投資を成功させるためのポイントを紹介します。

景観規制を理解して適した物件を選ぶ

繰り返しになりますが、京都では歴史ある街並みを守るために、厳しい景観規制が設けられています。建物の高さや外観のデザイン、色彩などに細かなルールがあり、新築物件の供給は限られています。そのため、不動産投資を成功させるには、既存の物件を適切にリノベーションし、長期的に価値を維持する戦略が重要です。

特に、築年数の経過した町家や伝統的な建物を、現代のライフスタイルに適した形にリノベーションすることで、高い付加価値を生み出せるでしょう。例えば、和の雰囲気を活かしたデザイナーズ賃貸や、観光客向けの宿泊施設として再活用するケースも増えています。

また、景観規制で新築の供給が抑えられることで、市場全体の物件数が増えにくく、賃貸市場が安定しやすいメリットもあります。需要に対して供給が過剰になりにくいため、長期的に空室リスクを抑えながら、安定した家賃収入を得られるでしょう。

学生や単身者向け物件を狙う

京都は全国的に見ても学生の多い都市で、国内外から多くの学生が移り住んでいます。そのため、大学の周辺エリアではワンルームや1Kタイプの賃貸物件の需要が高く、安定した収益を期待できる点が特徴です。

また、京都は企業や研究機関も多く、転勤者や単身赴任のビジネスパーソン向けの物件需要もあります。社会人向けの賃貸物件では、設備の充実度や交通アクセスのよさが重要なポイントとなるため、駅近などの交通の利便性が高いエリアを狙うとよいでしょう。

さらに、留学生向けの賃貸需要も無視できません。特に京都は、伝統文化や歴史を学ぶために、海外からの留学生が多く訪れています。英語に対応できる管理体制を整えたり、家具付き物件にしたりなどの工夫をすることで、高い入居率を維持できるでしょう。

立地選びを慎重におこなう

京都市内はエリアごとに賃貸需要の傾向が異なります。そのため、不動産投資を成功させるためには、ターゲット層に合ったエリアを選ぶことが重要です。学生向けの物件を狙うなら、大学周辺エリアを選ぶことをおすすめします。駅やバス停に近く、家賃相場が学生でも負担しやすい価格帯の物件が狙い目。

社会人向けの物件を狙うなら、ビジネス街エリアがよいでしょう。企業が多く、単身赴任者や転勤者向けの1K・1LDKが人気な傾向にあります。観光客向けの投資物件を考えるなら、観光地周辺がおすすめです。民泊や簡易宿泊施設向けの物件の需要が高い傾向にありますが、旅館業法の規制もしっかり確認しておかなければなりません。

京都での不動産投資は、景観規制などの影響もあり、他の都市と比べて慎重なリサーチが必要です。ターゲットを明確にし、適切な物件を選ぶことで、長期的に安定した収益を得られるでしょう。

まとめ

京都での不動産投資には、建築規制などの課題がある一方、エリアごとの特性を理解すれば、適切な投資戦略を立てることが可能です。どのようなデメリットがあるのかを理解し、メリットにつなげられるような対策を考えましょう。地域の特性を活かし、慎重に投資を進めましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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