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不動産投資とふるさと納税の関係は?仕組みや控除の上限額と注意点も解説

ふるさと納税のしくみや不動産投資をしている人の控除の上限額と注意点を解説します
「ふるさと納税」は、2008年から開始した自分の住んでいる場所とは別の自治体に寄付をおこなえる制度のこと。すでに利用していたり、これから利用を検討している方は多いでしょう。ふるさと納税を利用すると、税金の面でメリットがあるうえ、返礼品がもらえることも。しかし、不動産投資をおこなっている場合、ふるさと納税の控除額に影響が出る場合があります。

そこで本記事では、ふるさと納税の仕組みをはじめ、不動産投資をしている場合の影響と不動産投資をしながらふるさと納税をする際に必要な確定申告の流れを解説します。

記事の目次

ふるさと納税とは?

ふるさと納税とはどのような仕組みでしょうか
ふるさと納税とはどのような仕組みでしょうか

ふるさと納税は、納税者が自分の住んでいる自治体ではなく、自ら選んだ自治体に寄付をおこなえる仕組みです。寄付をした自治体からは、特産品やサービスをお礼として受け取れます。ただ寄付するのみでなく、地域貢献をしつつ、自分の好きな自治体の返礼品を選べる楽しみがあることも魅力。

寄付額のうち、自己負担額の2,000円を超える部分が、所得税や住民税から控除されるため、実質的に寄付が税額控除となる点が特徴です。この制度は、地方自治体の財源を増やし、地域振興や公共事業の支援促進が目的となります。各地さまざまな返礼品を提供しており、利用者数は年々増加傾向にあります。

参考:総務省 令和5年度ふるさと納税に関する現況調査について|ふるさと納税に関する現況調査等

控除される金額には上限額がある

ふるさと納税には上限額があり、納税者の所得や家族構成によって異なります。上限額を決める主要な要素は、所得金額と家族構成です。まず、年収や課税所得が高いほど、ふるさと納税で寄付できる上限額も増え、所得税と住民税の控除額に基づいて計算されます。さらに扶養家族の人数や配偶者の有無でも上限額は変化。扶養家族が多いほど、控除対象額が増えるため、寄付可能額も高くなります。

ふるさと納税の上限額を計算するには、年収から控除額を差し引いた課税所得を確認します。給与所得、年金、その他の収入から、基礎控除や社会保険料控除などの各種控除を差し引いて求めましょう。算出された課税所得に基づいて、ふるさと納税の控除対象額を計算します。以下は、全額控除されるふるさと納税額の年間上限目安です。目安が簡単に知りたい方は参考にしてみてください。

  ふるさと納税をおこなう本人の給与収入
  350万円 400万円 450万円 500万円 550万円 600万円
ふるさと納税をおこなう方の家族構成 独身または共働き
※1
3万
4,000円
4万
2,000円
5万
2,000円
6万
1,000円
6万
9,000円
7万
7,000円
夫婦
※2
2万
6,000円
3万
3,000円
4万
1,000円
4万
9,000円
6万円 6万
9,000円
共働き+
子1人
(高校生※3)
2万
6,000円
3万
3,000円
4万
1,000円
4万
9,000円
6万円 6万
9,000円
共働き+
子1人
(大学生※3)
2万
2,000円
2万
9,000円
3万
7,000円
4万
4,000円
5万
7,000円
6万
6,000円
夫婦+
子1人
(高校生)
1万
8,000円
2万
5,000円
3万
3,000円
4万円 4万
8,000円
6万円
共働き+
子2人
(大学生と高校生)
1万
3,000円
2万
1,000円
2万
8,000円
3万
6,000円
4万
4,000円
5万
7,000円
夫婦+
子2人
(大学生と高校生)
5,000円 1万
2,000円
2万円 2万
8,000円
3万
5,000円
4万
3,000円

参考:総務省 ふるさと納税ポータルサイトから抜粋して作成
※1:配偶者の給与収入が201万円を超える場合。ふるさと納税をおこなう本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケース。
※2:「夫婦」は、ふるさと納税をおこなう方の配偶者に収入がないケース。
※3:「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」
「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」
なお、中学生以下の子どもは控除額に影響がないため、計算表から除外しています。

上限額を簡単に計算する方法

ふるさと納税の上限額を簡単に計算するのに以下の方法もあります。

税区分 総所得金額などに対する割合
所得税 40%
住民税(基本分) 30%
住民税(特例分) 20%(個人住民税所得割額に対して)

また、ふるさと納税の上限額を知るには、前述の表を参考にする方法や、細かく自分で計算して出す方法があります。ただし、計算は複雑であるため、控除上限額がわかるシミュレーションを利用してみましょう。年収や控除額などを入力して細かく計算できます。

不動産投資をするとふるさと納税の上限額は変わる?

不動産投資をするとふるさと納税の上限額はどのように変化するのでしょうか
不動産投資をするとふるさと納税の上限額はどのように変化するのでしょうか

不動産投資をしている方も、ふるさと納税を利用できます。ただし、課税所得の求め方や、納税の金額によってふるさと納税の上限額が変わります。本章では、不動産投資をしているとふるさと納税の上限額がどのように変わるかを解説します。

ふるさと納税の上限額は不動産所得を含めた総合所得で決まる

前提として、不動産投資をしている場合のふるさと納税の上限額は、不動産所得とその他収入を含めた総合所得が計算の基礎になります。不動産所得とは、不動産投資から得られる所得です。

不動産所得を算出する際は、必要経費(管理費、修繕費、減価償却費など)や不動産投資の赤字などを不動産収入から差し引きましょう。これに給与所得やその他の所得を加え、基礎控除や社会保険料控除などの各種控除を差し引いて、課税所得を求めます。

不動産所得があり納税額が多いと上限額は高くなる

ふるさと納税の控除には上限額がありますが、この上限は課税所得に基づいて設定されます。不動産所得が多いと、課税所得が増えるため、その分ふるさと納税での寄付上限額も高くなるでしょう。税制の仕組み上、課税所得が高いほど、ふるさと納税によって税金の軽減を受けられる額も大きくなるため、結果として寄付上限額も増えます。

不動産所得が赤字の場合は上限額が減る可能性もある

不動産投資の初年度などは、経費が多くなり、不動産所得がマイナスになる場合があるかもしれません。もし不動産所得が赤字の場合、ふるさと納税の上限額は減る可能性があります。これは、赤字の不動産所得が他の所得と損益通算されるためです。

損益通算とは、赤字の不動産所得が他の所得(給与所得など)と相殺され、課税所得が減少する仕組みのこと。課税所得が低くなると、所得税と住民税の額も減少し、その結果、ふるさと納税で控除できる上限額も低くなります。

不動産投資をしていてふるさと納税する時の注意点は?

不動産投資をしながらふるさと納税を利用する場合の注意点を解説します
不動産投資をしながらふるさと納税を利用する場合の注意点を解説します

自治体に寄付すると所得税や住民税の控除が受けられ、かつ返礼品を受け取れて、お得に感じるふるさと納税ですが、不動産投資をしている方が利用する場合に注意すべきことはどのような点でしょうか。本章では、ふるさと納税を検討する際に知っておくべき注意点を解説します。

2,000円は自己負担になる

ふるさと納税を利用する際は、寄付金のうち2,000円が控除の対象外で、実質的な負担額になる点に留意しましょう。これは、不動産投資の有無に関わらず、ふるさと納税をおこなう全員が把握すべき点になります。ふるさと納税の寄付金から、2,000円を超える部分が、所得税や住民税から控除されます。例えば、1万円の寄付をおこなった場合、自己負担額の2,000円を除いた8,000円が税額控除の対象です。この自己負担分は、寄付をおこなう際に考慮しておきましょう。

返礼品は一時所得に分類される

不動産投資をしている人がふるさと納税を利用する際の注意点の二つ目は、返礼品が一時所得に分類される点です。返礼品とは、寄付をおこなった際に自治体から受け取る特産品やサービスを指しますが、これらは一時所得として扱われます。

一時所得は、主に次のような収入が該当するため、よく確認するようにしましょう。

  • 懸賞金:懸賞やコンテストで得られる賞金。
  • 保険の満期金:一時的な保険契約の満期に支払われる金額。
  • 競馬の配当金:競馬で得た賞金。
  • 法人から受け取る金品など

不動産投資をしている方は、他にも株式投資やFX取引など、さまざまな投資や運用をおこなっているかもしれません。そのため、一時所得として分類されるものが複数ある方もいらっしゃるでしょう。返礼品の価値が一時所得として計上されるとともに、これらの他の一時所得と合算する必要がある点に注意が必要です。

一時所得は、合計が50万円を超えると、超過分に対して課税されます。つまり、返礼品の価値を含む一時所得が50万円を超えると、その超過分に税金が発生してしまうため、その点を把握しておくようにしましょう。

上限額を超える金額は単なる寄付になる

ふるさと納税の制度は、寄付金のうち一定額を所得税と住民税から控除できる仕組みですが、この控除には上限が設定されています。上限額を超える寄付は税控除の対象にならない点に注意しましょう。

先述したように、この上限額は寄付者の所得や家族構成に基づいて決まります。例えば、年収が高いと控除上限額も高くなりますが、上限額を超えた寄付金は、税額控除には含まれません。つまり、寄付金のうち自己負担額2,000円を超えた部分だけが控除対象となり、上限を超えた額は全額が寄付となります。

不動産投資をおこなっている方は、できるだけ多くの控除を受けたいと考えるかもしれません。しかし、上限額を超えて寄付をしても、追加の控除は受けられません。例えば、上限額が10万円で15万円寄付をおこなった場合。自己負担2,000円を差し引いた10万円の部分は控除対象になりますが、残りの4万8,000円は税控除の恩恵は受けられず、単なる寄付として扱われます。そのため、ふるさと納税を利用する際は、自分の控除上限額を正確に把握しておくようにしましょう。

節税できているわけではない

ふるさと納税は、税金を節約する手段として考えられがちですが、実際には寄付を通じて地域貢献をおこなう制度です。節税とは異なる点を理解して利用しましょう。寄付を通じて税金の控除を受けられますが、寄付そのものには自己負担額2,000円が発生しています。ふるさと納税は、税金の一部を寄付する形で地域に還元する仕組みであり、税金そのものが減るわけではありません。このため、ふるさと納税を利用すれば税金が節約できるという認識は誤りであることを理解しておきましょう。

不動産投資をしている人がふるさと納税で控除を受けるには?

不動産投資をしている人がふるさと納税で控除を受けるにはどのようにすればよいでしょうか
不動産投資をしている人がふるさと納税で控除を受けるにはどのようにすればよいでしょうか

不動産投資をしている場合、控除を受けるためには確定申告をしなければなりません。しかし、ふるさと納税では確定申告がいらない「ワンストップ特例」があります。この章では、不動産投資をしている場合は確定申告が必要なのか、ワンストップ特例とは何か、確定申告の流れもあわせて解説します。

不動産投資をしている場合は確定申告が必要

不動産投資をしている場合は確定申告をしなければなりません。それは、不動産所得は収入から経費を引いた額を申告する必要があり、課税所得が変化するためです。そのため、不動産投資をしていて、ふるさと納税を利用した際の控除を適用するためには、確定申告をおこない、正確な所得額を把握する必要があります。

ワンストップ特例とは

ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」とは、ふるさと納税をおこなった寄付先の自治体に対して、確定申告なしで寄付金控除を受けられる制度です。
ふるさと納税利用者は所定の条件をクリアすれば、「ワンストップ特例」を受けられますが、不動産投資をしている場合、条件に当てはまってもワンストップ特例は適用されず、確定申告が必須になります。
ちなみに、ワンストップ特例が受けられる所定の条件は以下のとおりです。

  • ふるさと納税で寄付した自治体が5つ以下である
  • 給与所得者なので確定申告の必要がない方
  • ふるさと納税以外で確定申告する必要がない
  • 申し込みで自治体に申請書をすでに郵送している

税金の控除・還付が受けられる時期

不動産投資をしている方は、確定申告をして、ふるさと納税の控除による還付を受けられます。通常、確定申告の時期は毎年、2月16日頃から3月15日頃。前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得金額を申告し、納税します。

ふるさと納税の利用と確定申告までの流れ

ふるさと納税を利用して確定申告をするまでの流れを解説します。簡単な流れは次のとおりです。

  • STEP 1ふるさと納税の寄付先を探して申し込む
  • STEP 2寄付先の自治体から返礼品と書類を受領する
  • STEP 3確定申告の準備をする
  • STEP 4税額の計算と納付をおこなう

それぞれ詳しく見ていきましょう。

STEP 1. ふるさと納税の寄付先を探して申し込む

まずは、どの自治体に寄付をするかを探して申し込みをします。検索には、総務省のふるさと納税ポータルサイトなどが活用できるでしょう。ポータルサイトでは、全国の自治体が提供するふるさと納税の情報を確認でき、各自治体の寄付先、返礼品の内容、寄付金額の設定などが一覧で見られます。検索機能を使って、地域や返礼品の種類、寄付額などの条件で自治体を絞り込めるため便利です。

民間のふるさと納税運営サイトも多数存在するので活用しましょう。これらのポータルサイトではさらに詳しい情報が提供されています。例えば、楽天ふるさと納税、ふるさとチョイス、さとふるなどでは、自治体ごとの寄付先情報、返礼品のレビュー、寄付金額の設定などが掲載されています。寄付先を選ぶための詳細なフィルターや検索機能もあるため、自分の希望に合った寄付先を見つけやすいでしょう。

STEP 2. 寄付先の自治体から返礼品と書類を受領する

寄付先が決まったら、ポータルサイトから寄付を申し込むとスムーズです。自治体ホームページからの申し込みも可能ですが、自治体によっては支払い方法が限られている場合も。

ポータルサイトを利用すれば、クレジットカード決済やコンビニ決済、通信会社の提供する電子決済など、さまざまな決済方法が選択できるでしょう。ふるさと納税をおこなったあと、寄付先の自治体から「寄付金受領証明書」や「返礼品の明細書」が届きます。この書類は、確定申告時に寄付金額を証明するために必要です。

STEP 3. 確定申告の準備をする

確定申告をおこなうために申告書を準備します。必要書類は、国税庁のWebサイトからダウンロードしましょう。不動産所得も記入する部分があるため、必要事項を記入します。「寄付金控除」の欄には、寄付金受領証明書に記載されている寄付金額から自己負担額の2,000円を引いた金額を記入します。複数の自治体に寄付をおこなっている場合は、すべての寄付金額を合算して記入しましょう。

確定申告書には、寄付金受領証明書のコピーを添付します。電子申告(e-Tax)を利用する場合は不要です。他にも、不動産所得に関連する経費や収入の証明書類を用意しておく必要があるため、忘れず保管しておきましょう。確定申告書と必要書類を揃えたら、税務署に提出します。提出方法は、直接税務署に持参、郵送、または電子申告(e-Tax)です。

STEP 4. 税額の計算と納付をおこなう

確定申告を電子申告(e-Tax)でおこなうと申告処理が早く、還付の場合は2~3週間程度で受けられるでしょう。確定申告後、税務署から所得税の還付額や税額の確定通知が届き、所得税の還付分は通常1〜2カ月で入金、減額された住民税の額は翌年6月に「住民税決定通知書」で通知されます。

このように、ふるさと納税を利用すると、所得税の還付や住民税の減額が受けられます。特に電子申告(e-Tax)を利用すると、申告から還付までの時間を短縮できます。

不動産投資とふるさと納税に関するよくある質問

不動産投資とふるさと納税に関するよくある質問をまとめました。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、自分の住んでいる自治体ではなく、自分で選んだ自治体に寄付し、特産品などの返礼品を受け取る制度です。寄付額のうち自己負担の2,000円を超える部分が所得税や住民税から控除されます。ふるさと納税には控除上限額が設定されており、この上限額は年収や家族構成により異なるため、利用の際は確認しておきましょう。上限額の計算は課税所得をもとに、シミュレーションツールを利用すると便利です。上限を超える寄付は、控除対象外となるので注意が必要。さらに、ふるさと納税は税金を減額するものではなく、地域貢献のための制度だと理解しておきましょう。

不動産投資をするとふるさと納税の上限額はどのように変わる?

不動産投資をしていると、ふるさと納税の上限額は総合所得に基づいて決まります。不動産所得が多いと課税所得が増え、ふるさと納税の上限額も高くなるでしょう。しかし、投資初年度に赤字が出ると、損益通算により課税所得が減少し、上限額も低くなる可能性があります。

不動産投資をしていてふるさと納税をする時の注意点は?

不動産投資をしている人がふるさと納税を利用する際には注意点があります。まず、寄付金のうち2,000円は自己負担となり、税額控除の対象外となる点を注意しましょう。次に、返礼品は一時所得として扱われ、他の一時所得との合計が50万円を超と税金がかかります。

不動産投資をしている人がふるさと納税で控除を受けるには?

不動産投資をしている人がふるさと納税で控除を受けるためには、確定申告が必要です。ワンストップ特例は利用できません。ふるさと納税を利用したら、寄付先の自治体から受領証明書を受け取り、確定申告で寄付金額を記入します。自己負担額2,000円を除いた金額が控除対象です。確定申告の期間は2月16日から3月15日までで、申告後に税額控除や還付がおこなわれます。電子申告(e-Tax)を利用すると申告処理が早く、還付もスムーズなので利用してみましょう。

まとめ

本記事では、ふるさと納税の仕組みと、不動産投資をしている場合の影響と申告の流れを解説しました。ふるさと納税はメリットもありますが、不動産投資をしている場合にはいくつかの注意点があります。ふるさと納税の仕組みや目的を理解し、うまく活用しましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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