タワマン投資とは?魅力とリスクを理解して運用しよう

ただし、タワマン投資は通常の不動産投資とは異なる性質を持つため、特有の戦略を立てる必要があります。本記事では、タワーマンションの特徴や投資の利点とリスクなどさまざまなポイントを詳しく解説します。
記事の目次
タワーマンションとは?

タワーマンションには明確な定義はありませんが、一般的には高さ60m以上、または20階建て以上の高層マンションを指します。上記の建物には通常のマンション以上に厳しい建築基準が適用され、耐震性や安全性、避難ルートの確保など、特別な配慮がなされています。
また、夜景や海が望める高層階からの景色、高級感のある内装、さらにはジムやプール、ラウンジなどの豊富な共用施設など、快適で安全性の高い生活空間が提供されているのがタワーマンションです。
近年、タワーマンションは居住用としてだけでなく、資産運用の観点からも注目を集めています。ただし、一般的な不動産投資と異なるため、専用の投資計画を立てなければなりません。
タワーマンション投資のパターン

タワマン投資をする際には、基本的に投資専用物件を購入するケースが一般的ですが、住宅ローンを活用して収益を得られる方法も存在します。ここでは、タワーマンションの具体的な投資手法を見ていきましょう。
住んでから賃貸に出す
まず、タワーマンションを自分が住む目的で住宅ローンを組んで購入します。住宅ローンは低金利で、住宅ローン控除も受けられる点がメリットです。一定期間経ったあと、賃貸として貸し出し、家賃収入を得ます。ただし、住宅ローンの返済中に、第三者に貸し出すことはできません。なぜなら、住宅ローンは契約者が居住する物件を購入するための融資だからです。そのため、第三者に貸し出す場合は、住宅ローンから不動産投資ローンに切り替える、もしくは住宅ローンを完済する必要があります。ただし、転勤などのやむをえない事情であれば、住宅ローンのまま賃貸に出すことも許可する金融機関もあります。金融機関によって対応が異なるため、必ず事前に相談するようにしましょう。
ヤドカリ投資
「ヤドカリ投資」は、自分が住む住宅を購入し、一定期間住んだあとにその物件を売却し、売却益を得る手法です。売却後の収益を利用して新たな物件を購入し、住み替えるのがヤドカリ投資の特徴。この手法は、ヤドカリが成長に合わせて住処を移す習性になぞらえて名付けられました。
この手法でも住宅ローンや住宅ローン控除を利用できます。さらに、購入した物件に実際に住むため、市場の状況を見極めながら最適なタイミングで売却が可能です。
仮に市場が低迷して売却の好機が訪れなくても、そのまま住み続ける選択肢もあるため、大きな損失を回避できるでしょう。
中古市場でもタワーマンションの人気はとても高いため、ヤドカリ投資に適した物件でもあります。
2つの手法のデメリット
住んでから賃貸に出す方法やヤドカリ投資は、低リスクで始められる不動産投資手法として注目されていますが、デメリットを理解することも重要です。例えば、住宅ローンを組む際には収入や信用情報が審査対象となり、審査に通過しなければなりません。また、物件の管理や賃貸経営には手間や時間がかかる場合もあります。
上記の手法を活用する際は、収支計画をしっかり立て、リスクを最小限に抑えることが成功の鍵です。魅力的なタワーマンションを選び、計画的な運用を目指しましょう。
タワマン投資のメリット

タワマン投資には、以下のようなメリットが挙げられます。
賃貸需要が高く空室リスクが低い
タワーマンションは、交通の便がよい都市部や生活の利便性が高いエリアに建てられていることが多いため、賃貸需要がとても高いです。さらに、都市の美しい眺めや山々を見渡せる高層階の魅力、そしてフィットネスジムやプール、パーティールームなどの豊富な共有設備が、居住者を惹きつける大きな要因となっています。
加えて、24時間体制の警備や先進的なセキュリティシステムが整っているため、居住者に安心感を与えられるのもタワーマンションの魅力。上記のように快適に住める環境が整っているため、長期間住み続けたいニーズを生み出しています。
そのため、安定した家賃収入が期待できる点が大きな強みです。
相続税の節税効果がある
不動産投資をおこなうことで、所得税や住民税、さらには相続税や贈与税を軽減する効果が期待できます。
不動産の減価償却を活用することで、所得全体を圧縮し、税額を抑えられるのです。ただし、2024年からはタワーマンションに関する相続税評価方法が変更されました。
そのため、高層階の部屋を利用した節税効果は減少。どのように変更されたのかは、最後に詳しく解説します。とはいえ、それでも減価償却などにより節税効果は期待できるでしょう。
高いキャピタルゲインを得られる可能性がある
タワーマンションは、優れた立地や景観のよさ、豊富な共用施設、高い安全性などが整っているため、資産価値が大きく下がりにくい特徴があります。そのため、長期的に保有したあとに売却することで、高いキャピタルゲインを得られる可能性があります。キャピタルゲインとは、保有している資産(不動産)を売却した際に得られる売買益差のこと。これが高いほど手元に残る金額は大きくなります。
さらに、耐震性や耐久性の高さから、長期間にわたって建物の価値を維持しやすい点も大きな魅力でしょう。
タワマン投資のデメリット

タワマン投資には多くのメリットがあることがわかりました。しかし一方で、タワマン投資には以下のようなデメリットも存在します。
利回りが低い
タワーマンションは、立地のよさや需要の高さから物件価格が高額になる傾向があります。そのため、家賃収入に対する投資用ローンの返済額の割合が高くなり、表面利回りが通常のマンション投資に比べて低いことが多いです。
例えば、通常のマンションで3〜5%とされる利回りが、タワーマンションでは2%前後に留まる場合もあります。大きな利益を上げたいと考えている方は、タワマン投資には向いていないかもしれません。
リスク分散が難しい
タワーマンションのような高価格帯物件に資金を集中させると、投資リスクの分散が難しくなる可能性もあります。例えば、1億円の資金があれば、通常は複数の物件に分散投資できますが、タワーマンションでは1つの物件しか購入できない場合も。そのため、その物件の価値変動が投資全体に与える影響がとても大きくなってしまうのです。
リスクを分散しながら安定的な不動産投資をしたい方は、タワマン投資には向いていないでしょう。
初期費用とランニングコストが高額になる
タワーマンションは物件価格が高額であることに加え、管理費や修繕積立金、共用施設の維持費などが一般的なマンションよりも大幅に高い点が特徴です。また、税制改正による固定資産税の負担増も加わり、高層階ではさらに大きなコストがかかる場合があります。上記の要因が純収益を圧迫する要素となり、大きな利益を上げることが難しくなるおそれがあるでしょう。
需要が変化する可能性がある
都市部ではタワーマンションの建設が増加しているため、将来的に供給過剰になるリスクがあります。また、新たな物件がより最新の設備やサービスを提供することで、既存の物件が相対的に魅力を失う可能性も否定できません。
特に人口動態や経済状況の変化などで需要が低下すると、賃料の下落や資産価値の減少につながるリスクがあります。今後タワマン投資を検討している方は、将来的な見通しもしっかり立てておかなければなりません。
タワーマンションを投資物件として選ぶ際のポイント

タワーマンションは、一般的な不動産とは異なる特性を持つため、投資対象として選ぶ場合には注意が必要です。ここでは、タワーマンションを投資物件として選ぶ際の重要なポイントを解説します。
利便性の高い場所にある物件を選ぶ
タワーマンションに限らず、不動産投資では物件の立地が重要です。特に、交通の便がよく、生活に必要な施設が周辺に整っているエリアの物件は、安定した賃貸需要を見込めます。例えば駅直結や徒歩5分圏内の「駅近物件」は、入居者からの支持を集めやすく、空室リスクを抑える効果が期待できるでしょう。
また、医療機関や教育施設へのアクセスがよいエリアも注目すべきポイント。例えば、大きな病院や大学が近隣にある場所は、医療従事者や学校職員などからの需要が見込めます。
さらに、エリア内で進行中または予定されている再開発計画があるかも重要なポイントです。新たな鉄道路線やショッピングモールが建設される予定の場所は、将来的に物件価値が上がる可能性があるでしょう。
設備や共用施設が整った物件を選ぶ
タワーマンションでは、共用施設の充実度が物件の魅力度を大きく左右します。ジムやプール、ラウンジなどの設備は、入居者にとっての価値を高める要素となり、競合する物件との差別化にもつながります。
最近では、コワーキングスペースやシェアオフィスなどの在宅勤務者向けの設備を備えたタワーマンションも増加傾向に。そのため、フリーランスやリモートワーカーの需要にも対応できれば、さらに魅力的な物件になるでしょう。
ただし、快適な施設が充実しているほど、管理費や修繕積立金が高くなる傾向があります。そのため、長期的な収益を計算する際には、設備や施設の維持費用を慎重に考慮することが重要です。
管理費用が物件の収益性にどのような影響を及ぼすかをしっかり見極めたうえで、慎重に判断しましょう。
高層階で眺望がよい物件を選ぶ
タワーマンションには、階層ごとに異なる魅力がありますが、高層階の物件は特に人気があります。眺望のよさは入居者にとって大きな魅力であり、階数が高いほど物件の価値や賃料が高くなる傾向があります。一般的に、20階以上の部屋は眺望のよさが際立つため、高い需要を維持しやすいです。
また、眺望の方向も重要なポイント。例えば、東京都では東京タワーやスカイツリー、富士山などのランドマークが見える部屋。大阪府では大阪城や港の景色、横浜市ではみなとみらいの夜景が見える部屋が特に人気です。このように素晴らしい眺望を提供できる物件は、競合物件との差別化につながりやすく、高い収益性を見込めるでしょう。
ただし、高層階の部屋は物件価格が上昇するため、購入時には収益性とのバランスを慎重に判断する必要があります。また、強風が原因でバルコニーの使用が制限されることがある点など、高層階特有のデメリットも考慮することが大切です。
タワマン投資で成功するためのポイント

タワマン投資を成功させるためには、いくつかのポイントを知っておく必要があります。
家賃や売却価格を適正に設定する
タワーマンションの賃貸経営や売却を成功させるためには、まず市場の相場をしっかりと調べることが重要です。
地域ごとの不動産価格の動向や、似たような条件の物件がどのくらいの価格で取引されているのか、そしてそのエリアの将来的な発展性など、多角的に情報を集める必要があります。
正しい価格を設定することは、スムーズな賃貸経営や売却を実現するために欠かせません。また、相場は時間とともに変化するため、定期的に情報をアップデートし、常に市場の動きを把握することが大切です。
このように最新の相場データを活用すれば、タイミングを逃さずに賃貸経営や売却の成功を目指せるでしょう。
階層ごとに異なるニーズを理解する
タワーマンションの魅力は、階層によって異なる顧客のニーズに合わせたアピールができる点です。
例えば、高層階は眺望のよさを重視する顧客に好まれやすく、中層階は価格や利便性のバランスを求める方に人気です。さらに、低層階はエレベーターを待つ時間が短いことなど、実用性を重視する方に適しています。
階層ごとに異なる需要を理解し、それに合わせた価格設定やマーケティング戦略を立てることで、入居者の満足度を高められ、安定した賃貸経営を実現できるでしょう。
内覧の対応を丁寧におこなう
物件を購入したり、賃貸契約を結んだりする際の内覧時の印象は、入居希望者にとって大きな判断要素の一つとなります。そのため、内覧時の対応はとても重要です。
部屋の清掃や整理整頓を徹底し、ライフスタイルを想像しやすくするためのインテリアやステージングを整えると、入居希望者や購入希望者に好印象を与えられるでしょう。
また、内覧中の質問に的確に答えられるように、物件のことを事前に深く理解しておきましょう。内覧対応を丁寧におこなうことで、契約率を大きく向上させる可能性が高まります。
物件の特長を具体的に言葉で表現する
投資物件の価値を最大限に引き出すためには、その物件が持つ独自の魅力を明確にすることが重要です。
例えば、交通アクセスのよさや建物の美しいデザイン、設備の充実度、窓からの眺望など、他の物件と差別化できる点を具体的に説明できるようにしておきましょう。
物件の魅力を明確化することで、入居希望者や購入希望者に強くアピールできます。物件が持つ「売り」となるポイントを深く理解し、それを的確に伝えることが成功の鍵となります。
売却に最適なタイミングを見極める
タワマン投資で利益を最大化するためには、売却するタイミングが重要です。市場のトレンドや不動産価格の動き、地域の再開発計画などを総合的に考慮し、最適な売却時期を選ぶ必要があります。市場が上昇傾向にある時や、周辺エリアの価値が上がる見込みがある時は、売却のタイミング。
反対に、不動産市場が停滞している場合や価格が下がる兆候がある場合には、売却を見送ることも一つの戦略です。状況に合わせた柔軟な対応が大切です。
不動産仲介会社を有効活用する
物件を売却する際には、信頼できる不動産仲介会社を有効活用しましょう。不動産仲介会社は不動産市場の知識が豊富で、購入希望者へのアプローチや広告戦略、交渉スキルに優れています。また、契約に関する手続きやスムーズな取引の実現にも役立ちます。
仲介会社を選ぶ際には、実績や評判を確認することが重要なポイント。信頼できる会社と連携することで、売却過程を効率化でき、満足のいく結果を実現できるでしょう。
タワマン節税が制限!相続税法改正のポイントを確認しよう

自己住居用や投資用として高い人気を誇るタワーマンション。しかし、相続税対策としてタワーマンションを購入している方は注意が必要です。これまで有効だった「タワマン節税」は、2024年1月1日以降、大幅に制限されるようになりました。
これまでのタワマン節税の仕組み
従来、不動産は相続時の評価額が時価より低くなる仕組みだったため、それを活用して相続税対策がおこなわれていました。なかでも、高階層のタワマン投資をしている方は、大きな節税効果を得られていたのです。
タワーマンションの高層階は市場価値が高く、同じ物件内でも低層階との間に数倍もの価格差が生じることがあります。しかし、これまでの税制では、固定資産税や相続税の評価額は市場価値に比例しませんでした。
そのため、同じ面積であれば低層階も高層階も同一の評価額となっていたのです。
この仕組みによって、高層階ほど市場価格と相続税評価額の差が広がり、高額な高層階の物件を購入しても相続税や固定資産税の負担を軽減できる、いわゆる「タワマン節税」が可能になっていました。
新たに導入されたタワマン節税対策のルールとは?
2024年1月1日から、タワーマンションの市場価格と相続税評価額の差を反映させる新たな評価方法が適用されています。この改正により、タワーマンションと一戸建て、高層階と低層階などの市場価値の違いが、評価額にも反映される仕組みとなったのです。
具体的には、従来の計算方法で算出される評価額が市場価値の60%未満となる場合、一律で市場価値の60%程度まで引き上げる補正措置が導入されました。
上記のルールの適用により、高層階の物件でもこれまでのような大幅な節税効果を得ることは難しくなっています。
今後は、タワーマンションの高層階も一戸建て住宅と同様の評価水準が算出されるようになります。この変更は2024年1月以降の相続や贈与から適用されており、従来の「タワマン節税」に頼った対策は通用しなくなるため、十分な注意が必要です。
まとめ
タワマン投資は魅力的なポイントが多い一方で、高額な初期費用や維持費、リスク分散の難しさなどの課題も抱えています。メリットやデメリットを十分に理解し、リスクを抑えた投資計画を立てることが成功への鍵となるでしょう。
また、タワマン投資に関する税制が改正されたことも理解しておく必要があります。これまでのように、高階層だからといって大きな節税効果が得られるわけではないため、注意が必要です。タワーマンションは高いニーズが見込めますが、対策をせずに始めると失敗する可能性が高まるため、慎重に判断しましょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ