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立ち退き料の相場はどのくらい?大家都合で退去してもらう時の注意点と交渉方法について解説!

立ち退き料とは、賃貸物件の貸主が借主に立ち退きしてもらいたい際に支払う補填金のことで、立ち退きさせることに正当な理由があれば、立ち退き料を支払ったうえで借主を退去させることができます。ただし、正当な理由に該当する事情や、立ち退き料の相場について理解が必要です。十分な理解がないまま立ち退き交渉すると、トラブルに発展するかもしれません。

そこで、本記事では立ち退き料の相場や立ち退きを求めるための正当な理由についてわかりやすく解説します。アパートの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

立ち退き料の相場は?

立ち退き料の相場はどのくらいでしょうか
立ち退き料の相場はどのくらいでしょうか

立ち退き料の相場は、家賃の6カ月から12カ月分とされています。例えば、家賃が10万円であれば、立ち退き料は60万円~120万円です。

また、退去してもらう際に、そもそも「なぜ立ち退き料の支払いが必要なのか」という理由を知っていれば、より正確な相場感を持てるでしょう。ここでは、立ち退き料の内訳と、支払いが必要な理由について解説します。

立ち退き料の内訳例

立ち退き料は、以下の費用から構成されています。

  • 引越し先確保のための費用
  • 引越し先の賃料が増加した場合の差額
  • 引越し費用
  • 上乗せ補償

それでは、各費用について詳しく見ていきましょう。

引越し先確保のための費用

立ち退き料には、引越し先を確保するための費用が含まれます。引越し先確保のための主な費用は、以下のとおりです。

費用の名称 金額の目安
仲介手数料 家賃1.1カ月分
礼金 家賃1~2カ月分
火災保険料(2年契約) 2万円前後

仮に借主が家賃10万円の賃貸物件に転居する場合、引越し先を確保するための費用として、23万円~33万円程度かかります。

なお、新居の入居に際し、前家賃が必要な場合は、その前家賃に相当する金額も上乗せします。また、新居の敷金が現在の敷金よりも高い場合、差額も上乗せして返還しなければなりません。

引越し先の賃料が増加した場合の差額

引越し先の家賃が現在の住まいの家賃より高くなる場合、家賃の差額分を1~2年程度の期間補填します。差額分は、以下のように計算します。

【差額分の計算】
(新居の家賃 – 現在の家賃)× 支払う期間(〇カ月)

例えば、新居の家賃が10万円、現在の家賃が8万円、差額を2年分支払う場合は48万円です。

引越し費用

引越し費用は、立ち退き料を構成する要素の一つです。新居に転居する場合は引越しが必須となるため、立ち退き料に引越し費用が含まれます。引越し費用の金額は、以下の条件によって変動します。

  • 引越しする人数
  • 運搬する荷物の量
  • 転居する時期
  • 荷物を運ぶ距離
例えば、繁忙期に近距離(※)で単身が引越しをすると6.7万円程度。同じ条件で3人家族が引越しする場合は12万円程度が目安となるでしょう。

※本州内の引越しを想定し、近距離は約97km(東京都心部~神奈川県足柄下郡)で算出しています

上乗せ補償

立ち退きをお願いするにあたり、少なからず借主に負担をかけるため、迷惑料やお礼などの金銭を立ち退き料に上乗せします。上乗せする補償は、大家の状況や借主の考えによって大きく変動し、明確な基準はありません。
転居に対する精神的な負担への補償として10万円を支払う場合もあれば、20万円程度払う場合もあるなど、立ち退き料を算定しにくくしている要因といえるでしょう。
実際のところ、借主との立ち退き交渉によって金額が決まるため、話し合いの進め方が重要です。

なぜ立ち退き料を支払う必要があるのか

立ち退き料がなぜ必要なのか解説します
立ち退き料がなぜ必要なのか解説します

立ち退き料の支払いには法的根拠があり、実際に退去してもらうには正当事由が必要と定められています。ここからは、立ち退き料の法的根拠と正当事由について解説します。

立ち退き料には法的根拠がある

立ち退き料は、借地借家法で以下のように定められています。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用:e-Gov「借地借家法

簡単にまとめると、借主に立ち退いてもらうには正当な事由に加え、立ち退き料の支払いが必要であるとされています。

立ち退き料と正当事由

入居者を退去させるには、前提として正当な事由が求められます。一般的に正当な事由として認められやすいのは、以下の項目です。

【正当事由の例】

  • 老朽化により取り壊しの必要がある場合
  • 耐震工事をおこなう必要がある場合
  • やむを得ない理由で売却する場合
  • 貸主が賃貸物件に住む必要がある場合

ただし、上記の項目に該当している場合でも、正当な事由と認められないことがあります。貸主と借主のそれぞれの事情や土地・建物の利用状況などによって異なることも。例えば、老朽化による建て替えのために貸主は立ち退きを求めたが、借主が疾患を抱えており、住居継続の必要性が高いうえ、建て替えの緊急性も認められなかったため、正当事由が否定されたケースもあります。
入居者に退去してもらうほどの事情がない限り、正当な事由として扱われない点には注意が必要です。

立ち退き料を支払う必要がないケース

原則として、入居者を立ち退きさせるには正当な事由と立ち退き料の支払いが必要です。しかし、以下の項目に該当する場合は、立ち退き料を支払わずに退去させられます。

  • 入居者が賃貸借契約違反をしている
  • 定期借家契約で定めた契約期間が満了した
  • 入居者自身の希望で退去する

これらの項目に該当する場合、入居者を保護する必要性が低いと判断されたり、そもそも立ち退きさせる必要がない状態だったりするため、立ち退き料は発生しません。

立ち退き料の計算方法とシミュレーション

立ち退き料が実際どのくらいかかるのかシミュレーションしてみます
立ち退き料が実際どのくらいかかるのかシミュレーションしてみます

立ち退き料の目安は、自身でも計算が可能です。ここからは、具体的な金額を挙げて、立ち退き料がどのくらいになるのかシミュレーションします。

立ち退き料の算出方法

立ち退き料を計算するには、まず以下の4つの項目の金額を算出します。

 ① 引越し先確保のための費用
  ・仲介手数料:家賃1.1カ月分
  ・礼金:家賃1~2カ月分
  ・敷金の差額
  ・火災保険料
 ② 引越し費用
 ③ 家賃が増加した場合の差額
 ④ 上乗せ補償

上記の項目の金額を算出したら、以下の計算式にそれぞれの金額を当てはめます。

立ち退き料の目安=①+②+③+④

立ち退き料をシミュレーション

立ち退き料の算出方法を参考に、具体的な金額を挙げて立ち退き料の目安を計算してみましょう。ここでのシミュレーション条件は、以下のとおりです。

<条件>
 現在の家賃:8万円
 転居先の家賃:10万円
 礼金:10万円
 敷金の不足分:2万円
 火災保険料:2万円
 引越し費用:20万円
 上乗せ補償:30万円

 ※家賃の差額は2年間分を補償

【① 引越し先確保のための費用の計算】
仲介手数料(10万円×1.1)+礼金10万円+敷金の不足額2万円+火災保険料2万円=①25万円

【② 家賃が増加した場合の差額の計算】
(新居の家賃10万円-現在の家賃8万円)×24カ月=②48万円

【立ち退き料の目安の計算】
①25万円+②48万円+③引越し費用20万円+④上乗せ補償30万円=123万円

このシミュレーション条件の場合、立ち退き料の目安は123万円です。

立ち退き料を抑えるポイント

立ち退き料は抑えることができるのでしょうか
立ち退き料は抑えることができるのでしょうか

立ち退き料には目安があるものの、金額を抑えるためのポイントがあります。金額を抑える具体的なポイントについて解説します。

定期借家契約に切り替えてもらう

普通借家契約から定期借家契約に切り替えてもらえれば、契約が満了した際に立ち退き料を支払うことなく退去してもらえるでしょう。定期借家契約とは、契約期間が決まっており、期間満了時の更新ができない契約です。

ただし、切り替えるには借主の同意が必要であり、必ず書面で契約しなければなりません。貸主の一存で強制的に切り替えられるわけではないため、借主との交渉が必須となります。

入居者が減ったタイミングで立ち退きに着手する

借主が減ったタイミングで立ち退きに着手すれば、立ち退き料の節約につながります。例えば、10戸あるアパートの借主に対し、1戸あたり100万円を立ち退き料として支払うとしましょう。すべての部屋が埋まっている場合は、合計で1,000万円支払わなければなりません。しかし、自然退去があった際に、入居募集をストップし、入居者5戸しか埋まっていない状態であれば500万円の支払いで済みます。

立ち退きを急ぎで進める必要がない場合は、入居者が減り空室が増えるのを待つのも一つの方法です。

代替物件を紹介する

代替物件を紹介することで、移転に対する負担が軽減され、立ち退き料を抑えることが可能です。特に立ち退きを求めている物件の他に、賃貸用のアパートやマンションを所有している場合は、そこを引越し先として紹介することもできるでしょう。借主にとって、転居先を探すのは時間的にも精神的にも負担がかかります。このような負担を軽減するために、一般的には迷惑料として上乗せ補償を支払わなければなりません。

ただし、代替物件を紹介するなど借主の負担を軽くするよう配慮すれば、迷惑料を低めに設定しても立ち退き交渉が進みやすくなります。

原状回復を免除する

原状回復を免除すれば、立ち退き交渉がスムーズに進み、金額の削減になる場合があります。室内の汚れが経年変化で付いたもの、一般的な利用方法で付いたもの以外は、原則として借主が直したうえで退去しなければなりません。室内の汚れを直す費用(原状回復費用)は借主の使い方によって変動しますが、一般的には10万円~20万円程度かかることも。原状回復を免除すれば借主の金銭的な負担が軽くなり、立ち退き交渉を有利に進められることでしょう。

敷金を先に返す

敷金を先に返還すれば借主の安心感が増し、立ち退きの交渉がしやすくなるかもしれません。敷金は、家賃未払いや原状回復費用などに備えるために借主から預かっているものなので、立ち退き時には返還する必要があります。立ち退き交渉を進める際、借主のなかには「退去時、本当に敷金を返してくれるのか」と不安に感じる方もいるでしょう。不安を感じさせてしまうと、交渉が不利になる可能性があるため、先に敷金を返還して安心感を高めることができます。

また、先に敷金を返還すると引越し費用として利用でき、早めに転居を検討する方が増える可能性も。転居を決断した借主とは話し合いをしやすくなる傾向があり、立ち退き料を低めに設定しても交渉しやすくなるでしょう。

退去までの賃料を免除する

退去までの賃料を免除することも立ち退き料を抑える方法の一つです。借主例えば、提示した立ち退き料に納得してもらえない時に、退去までの一定の期間の賃料の免除を提示することで、減額交渉がスムーズに進む可能性があります。退去までの賃料を免除する場合、普通借家契約を合意解除して、退去日までの期間の契約を使用貸借契約に切り替えましょう。

裁判は避けるようにする

立ち退き交渉する際は、裁判を避けるように丁寧に借主との話し合いを進めましょう。もしも裁判所を利用する場合は、弁護士の存在が不可欠となり、依頼して解決するまでに数百万円もの費用がかかる場合があります。また、裁判を進めるにあたって借主の心象も徐々に悪くなり、高額な立ち退き料を提示しないと退去に応じてくれない可能性もあります。

裁判になると高額な費用がかかるうえに、退去に1年以上かかる場合もあるでしょう。また、貸主の立場が弱くなってしまう可能性も。そのため、紛争にならないよう気を付けて交渉することが大切です。

丁寧に交渉をおこなう

丁寧に交渉を進めれば、立ち退き料の削減につながる可能性が高くなります。立ち退き交渉がなかなか進まない原因の一つが、上乗せ補償の金額調整です。借主は自身の不安や不満を上乗せ補償に反映させたいと考える方が多く、高額な迷惑料やお礼を要求する場合があります。

誠意を持って交渉をおこない、不安を軽減し、退去に対して納得感を与えられれば高額な金額提示をされにくくなります。立ち退き交渉を進める際は、借主の不安を少しずつ取り除くよう、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

立ち退きを交渉する時の注意点

立ち退き交渉時の注意点を確認しておきましょう
立ち退き交渉時の注意点を確認しておきましょう

立ち退き交渉は借主とのトラブルに発展しやすいため、注意点を押さえてから話し合いを始めましょう。
ここでは立ち退き交渉をする時の注意点を詳しく紹介します。

立ち退きの理由を明確にする

立ち退き交渉をする際には、立ち退きの理由を明確にしましょう。理由が曖昧なまま交渉をすると、借主に不信感を与えやすくなります。不信感が募ると、交渉がスムーズに進まなくなる恐れもあるでしょう。

立ち退きの理由を明確にするには、専門家が作成した証明書の提示が有効です。例えば、耐震不足による解体のために立ち退きをお願いする場合であれば、専門機関による耐震診断の結果を公表するとよいでしょう。立ち退きの理由を明確に伝えれば、借主に退去の必要性を感じてもらいやすくなります。

退去時期を明確にする

立ち退き交渉を進める際、必ず退去時期を明確にしましょう。退去時期が決まっていないと、借主はいつまでに転居すればよいのか判断できず、不安に感じるかもしれません。転居までのスケジュールを明確にするためにも、退去時期は、「できる限り早めに」と伝えるのではなく、「20××年〇月△日まで」と具体的に提示しましょう。

借地借家法第二十六条」で貸主は借主に対して、立ち退きを求める1年~6カ月前までに通知することが定められています。この際、書面にて立ち退きまでの期間を明確にしなければなりません。

退去交渉はオーナーもしくは専門家がおこなう

退去交渉は、オーナーもしくは専門家がおこなうようにしましょう。アパートの経営や管理に関係ない人や、立ち退きの専門的な知識がない人が交渉にあたった場合、借主に不信感を与えたり、トラブルになるような発言をしたりする可能性があります。

借主とのトラブルを避けるためにも、立ち退きを専門としている弁護士に依頼すべきでしょう。弁護士に依頼すれば費用はかかるものの、交渉がスムーズに進んだり、立ち退き料を削減できたりする可能性が高くなり、結果的に支払いが少なくなる場合もあります。

借主の話をしっかり聞く

交渉する際には借主からさまざまな意見が出ますが、しっかりと話を聞き、まずは受け止めるよう心がけましょう。それぞれの借主には立ち退きしたくない理由、できない理由があります。理由をしっかりと聞かなければ、借主の不満が高まるうえに、その内容に対する最適な提案ができません。

もし経済的な事情で立ち退きできない借主であれば、どのくらいお金に困っているのか聞き、賃料を免除するのか、敷金を先に返還するのかなどの対策を検討します。借主の不安に寄り添った提案ができれば、スムーズな交渉につながり、立ち退き料の減額を実現できる可能性も高まることでしょう。

立ち退き料についてよくある質問

立ち退き料についてよくある質問
立ち退き料についてよくある質問

立ち退き料についてよくある質問について答えていきます。

立ち退き料の相場はどのくらい?

立ち退き料の相場は、一般的に家賃の6カ月から12カ月分が目安とされています。当然ながら、あくまで目安であるため、貸主や借主の状況によって変動する点には注意が必要です。

立ち退き料は支払わないといけない?

立ち退き料は借地借家法で、貸主都合で借主に退去してもらうために正当な事由に加え、立ち退き料の支払いが必要であるとされています。ただし借主が賃貸借契約に違反していたり、定期借家契約が満了時は立ち退き料の支払いが発生しない場合もあります。

立ち退き交渉は専門家に依頼できる?

立ち退き交渉は専門家に依頼できます。立ち退きには高い交渉力と法律の知識が必要であり、弁護士に依頼するケースが多いです。

まとめ

アパートの借主に退去してもらうには、正当な事由と立ち退き料の支払いが必要です。原則として、正当な事由だけでは立ち退きさせられないため、立ち退き料の相場を把握して交渉の準備を進めましょう。また、立ち退き料は交渉の仕方やタイミング、借主への配慮などにより、金額を抑えることもできます。

立ち退き交渉をおこなう際には特に丁寧な対応を心がけることが重要です。誠意を持って対応し、借主に納得してもらったうえで退去してもらえば、金額を抑えられるだけでなく、トラブルの発生も防げます。借主とトラブルになると裁判になる恐れもあるため、誠実かつ丁寧に交渉を進めましょう。

執筆者

渥美 誠

宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などに携わる。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。

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