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アパート経営は「土地あり」でおこなったほうがいい?メリットや注意点を詳しく解説

アパート経営は土地ありのほうがいいのか、説明します
相続などで土地を持っている方がアパート経営を始める場合、土地なしでアパート経営を始めるよりも、メリットが多いといわれています。
本記事では、土地ありでアパート経営を始めるとどのようなメリットが得られるのかを詳しく解説します。
そのうえで、アパート経営を成功させるための注意点や必要な自己資金なども詳しく解説するので、ぜひご参考ください。

アパート経営には2つのパターンがある

アパート経営には土地ありと土地なしで始める2つのパターンがあります
アパート経営には土地ありと土地なしで始める2つのパターンがあります

アパート経営には、大きく分けて2つのパターンがあります。

土地ありの場合

土地ありの場合とは、利用されていない遊休地や相続で引き継いだ土地で、アパート経営をおこなうパターンです。

土地ありでアパート経営をおこなうメリットは、土地の有効活用ができ、失敗するリスクが低いことです。土地の購入が必要ないことから、利回りを高くできるため、効率のよい経営がしやすいでしょう。

土地なしの場合

土地なしの場合とは、アパート経営をおこなうために、新たに土地を購入するパターンです。

土地なしの場合、土地を自己資金で購入すれば、経営の安全性は高くなります。しかし、手元に十分な資金がない場合には、金融機関からの借入金で土地を購入しなければなりません。借入金を返済しながらの経営となるため、リスクが高くなるでしょう。

土地ありでアパート経営を始めるメリット

土地を所有している方がアパート経営を始めるメリットを解説します
土地を所有している方がアパート経営を始めるメリットを解説します

すでに土地を所有している方は、「土地なし」で始める方に比べてアパート経営を有利に進められるといわれています。なぜ有利に進められるのか、その理由を以下で解説します。

土地の購入費用がかからない

「土地あり」でアパート経営を始めるメリットは、初期費用を抑えられることです。すでに土地を所有しているため、アパートを建てるための土地を購入する必要がありません。

さらに、土地にすでにアパートが建てられている場合には、土地やアパートの購入時に支払う不動産会社への仲介手数料も不要です。

すでに土地やアパートを所有している状態のため、アパート経営を始める際に必要な初期費用を抑えられます。費用がかからない分、低リスクでアパート経営を始められるでしょう。

質のよいアパートを建てられる

アパートをこれから建築する場合でも、土地を購入する資金を用意する必要がないため、その分の費用を建築費に充てられます。魅力的なアパートを建てることで、入居希望者の興味を引きやすくなるでしょう。

また、アパート経営のために利用したローンは、土地と建物の両方を担保に入れられます。

例えば、借り入れた費用で付帯設備をよくしたり、セキュリティを高めたりなどができます。アパートの質をよくする、グレードを上げることで、周辺エリアにあるライバル物件との差別化も図れるでしょう。

高利回りで経営効率がよい

土地購入のための金額負担がない分、高利回りが期待できます。簡単な例を出して、土地あり・土地なしのアパート経営を以下で比較してみましょう。

例)12室 家賃10万円 建物価格4,000万円 土地価格5,000万円だった場合


  • 土地ありアパート経営の場合

    土地価格:0円
    建物価格:4,000万円
    年間家賃収入 12室 × 10万 × 12カ月 = 1,440万円
    表面利回り※(年間家賃収入 ÷ 物件価格)× 100
    1,440万円 ÷ 4,000万円 × 100 = 利回り 36%



  • 土地なしアパート経営の場合

    土地価格:5,000万円
    建物価格:4,000万円
    年間家賃収入 12室 × 10万 × 12カ月 = 1,440万円
    表面利回り ※(年間家賃収入 ÷ 物件価格)× 100
    1,440万円 ÷ 9,000万円 × 100 = 利回り16%


※利回りには「表面利回り」と「実質利回り」がありますが、ここでは表面利回りを使っています。
表面利回りとは「物件価格に対し、どれだけ家賃収入を得られるか」を表したもの。一方、実質利回りは、購入時の諸経費も加えて計算したもので、表面利回りよりも実態に近い利回りが把握できます。

上記は簡単な例ですが、最初から土地があるだけで、土地なしで始めるアパート経営よりも、高い利回りを期待できることがわかります。

同じ場所・同じ規模でも、土地ありでスタートしたほうが、低リスク・高リターンな経営が期待できるのです。

アパートローンの返済を早く完了できる

アパートローンの返済原資は入居者からの家賃収入です。土地購入の必要がない 場合、初期の借入額自体を抑えられるため、アパートローンの返済期間を大幅に短縮できます。

毎月の家賃収入から経費を差し引いた残額の一部を繰り上げ返済に回すことで、完済時期をさらに早められるでしょう。

計画的に余剰分を上乗せ返済することで、アパートローンの完済をスピーディに実現できます。完済後は、それまでの返済額分が収入となり、長期的な安定収入を手にできる可能性が高まります。

金融機関から融資を受けやすい

土地を所有している方は金融機関から「資産がある」と見なされる可能性が高く、アパートローンの審査で有利に働きます。

アパートローンの申請をする際は、借主の収入や資産状況、事業計画の収益性、過去の実績などが厳しく査定されます。住宅ローンよりも基準が厳しくなっているため、審査に落ちてしまう方も少なくありません。

アパートローンの審査は借入可能額にも大きく影響します。そのため、すでに土地を持っていることは、融資を受ける面で大きなメリットがあるのです。

アパート経営を土地ありで始めるデメリット

アパート経営を土地ありで始めるデメリットを解説します

所有している土地にアパートを建てての経営は、土地の購入から始めるアパート経営と比べると、ローリスクな資産運用方法でもあります。しかし、「土地あり」の状態からアパート経営を始めるが故に生じるリスクやデメリットもあります。ここからは、土地ありでアパート経営を始めるデメリットを詳しく見ていきましょう。

アパートの立地を選べない

当たり前のことですが、所有している土地にアパートを建てて経営する場合、立地は選べません。アパート経営の成否を決める大きな要因の一つが入居率です。しかし、立地条件によっては入居者が集まりにくく、十分な家賃収入を得られない可能性があります。

入居者が集まらなければ、家賃収入が得られないため、アパートローンの返済が難しくなります。最終的には、土地を手放さざるをえなくなってしまうかもしれません。

そのため、所有している土地でアパート経営を始める前には、市場調査を十分におこなうことが重要です。もし、所有している土地がアパート経営に不向きな場合は、土地を売却したり、不動産担保ローンを利用して別の適切な物件を購入したりするなど、柔軟な対応が重要です。

入居者を確保するために、ペット飼育を可能にしたり、防音性を重視するなど、ご自身のアパートならではの魅力もアピールするとよいかもしれません。

アパートの規模が土地によって制限される

たとえ所有している土地の場所が良好でも、アパート経営の規模は土地の形状や面積などに制限されてしまいます。

制限されてしまう理由は、法令による建築制限が定められているからです。市街地の土地は用途地域に区分されており、その地域ごとに「建ぺい率」と「容積率」が定められています。


  • 建ぺい率
    敷地に対して建物がどの程度の面積まで建てられるかの割合

  • 容積率
    敷地に対してどの程度の高さまで建物を建てられるかの割合

一般的に、アパートの室数が多ければ得られる家賃収入が増え、空室リスクの分散にもつながります。しかし、法令の制限を超えた大きさのアパートを建てることはできません。

また、変形地、狭小地などの場合、建築会社の設計プラン通りに建てられず、建築費がかさむ可能性もあります。

事前に土地の特性を十分に把握し、法令上の制限を確認しておくことが重要です。理想的な規模のアパートを建てられるかをあらかじめ把握しておきましょう。

アパート経営を土地ありで始める際に必要な費用

アパート経営を土地ありでスタートするのに必要な費用を解説します
アパート経営を土地ありでスタートするのに必要な費用を解説します

アパート経営を土地ありで始める際は、土地の購入資金は必要ありませんが、その他に用意すべき費用が3種類あります。

  • アパートローンの頭金
  • 諸経費
  • 税金

アパートローンの頭金

アパートの建築には一定額の自己資金が必要です。
一般的に、自己資金として用意すべき金額の目安は、総工事費の20%程度といわれています。

例えば、1億円の工事費が必要な場合、2,000万円程度が自己資金の目安額です。しかし、具体的な工事費用が決まっていなければ、必要な自己資金額を正確に算出できません。

ある程度の自己資金額の目安を知るためにも、まずは建築プランを入手しましょう。所有している土地にどのようなアパートを建てられるのか、あらかじめ把握しておくことが大切です。

複数のハウスメーカーや不動産会社から建築プランを入手し、それぞれ比較して検討してみましょう。じっくり比較することで、どのようなアパートを建てるとどの程度の資金が必要なのかを判断しやすくなります。

諸経費

アパートを建てる際には、建築費用だけでなく諸々の経費も必要です。不動産取得税や登記費用、火災保険料、融資手数料など、建物が完成するまでには多くの費用がかかります。

諸経費の目安は、建築費の5%程度です。つまり、1億円の建築費がかかる場合の諸経費の目安は500万円前後となります。

税金

アパートが完成し、入居者が決まると家賃収入が発生します。家賃収入から経費を差し引いたものがオーナーの利益となりますが、すべての利益が手元に残るわけではありません。

年間利益が20万円を超えた場合は、確定申告が義務付けられています。

会社員の方も同様に確定申告が必要です。家賃収入で得た利益を確定申告すると、会社から徴収されたものとは別に所得税や住民税を支払わなければなりません。確定申告は期間が決まっており、その年に得た収入に対して、翌年の3月15日までに申告・納税をおこなう必要があります。

これまでに、土地の固定資産税と都市計画税を支払っていた方も多いでしょう。

しかし、アパート経営をする際は、建物の分の固定資産税もかかってきます。毎年6月ごろをめどに、アパートを建てたエリアの自治体から、固定資産税評価証明書とともに固定資産税の支払い通知が郵送されます。税金の支払いが遅れると延滞料金が課せられることもあるため、遅れずに支払いを済ませましょう。

アパート経営を始める際の注意点6つ

アパート経営を始める際の注意点を解説します
アパート経営を始める際の注意点を解説します

アパート経営を始める際には、注意すべきポイントがあります。安定したアパート経営をおこなうためにも、どのような注意点があるのか、把握しておきましょう。

建築条件を事前に把握する

土地の所有者でも、法律に定められたさまざまな規制の範囲内でしかアパートは建てられません。例えば、上記でも説明したように、建築可能な建物の高さや延べ床面積などが決められています。

まずは自身の土地に、どのようなアパートを建築できるのかを、しっかりと確認しておく必要があります。

土地の条件によっては、採算が合わないサイズの建物しか建てられない可能性もあるでしょう。そのような場合は、別の土地を検討するか、アパート経営以外の土地活用方法を検討するなどの対応が必要です。建物計画を立てる前に、法的な建築条件を把握しておきましょう。

十分な広さがあるかを検討する

安定したアパート経営には、土地の広さと建物の専有面積の両方が重要な要素となります。一般的に40坪以上の土地面積があれば理想的ですが、狭小地でも専有面積さえ確保できれば問題ありません。

専有面積とは、建物のうち居室部分が占める広さのことです。専有面積の広さによって、部屋数の上限が決まり、それにともな って収支プランも大きく変わってきます。

ワンルームタイプの場合、1部屋25平米程度が一般的なので、60坪の専有面積なら約8室分の賃貸部分が確保できます。階数を増やせば、専有面積を広げることも可能です。

土地の広さと建物の専有面積、両方の条件を踏まえて検討することが大切です。

エリアニーズを把握する

アパート経営を成功させるためにも、アパートを建てる場所の需要を正しく把握することが重要です。周辺の人口動態や年齢層、ライバル物件の状況などを、不動産会社などの専門家に調査してもらうのがおすすめです。

もし土地を相続した方で、まだ所有地を見たことがない方は自分でも実際に現地を訪れ、エリアの雰囲気を見てみるのもいいでしょう。「このようなアパートなら需要があるのではないか」などのイメージを持つことで、最適な建築プランを選びやすくなります。

多くの建築プランのなかから、エリアニーズにマッチした物件を選べれば、入居率の向上や安定した経営につながるでしょう。事前の詳細な市場調査は、アパート経営における成功への第一歩となります。

信頼できる不動産管理会社と契約する

アパート経営では、入居者の募集や契約・退去対応、家賃の管理、クレーム対応など、さまざまな業務が発生します。上記の煩雑な業務を委託できるのが、不動産管理会社です。

不動産管理会社は、オーナーと入居者の窓口となる重要な存在です。信頼できる会社であれば、長期的な入居者の確保や、スムーズな運営が期待できるでしょう。

一方、管理が不適切な会社では、トラブルが起こりやすく、安定したアパート経営が難しくなることも。

大手ハウスメーカーではグループ内に管理会社を持っていることが多いです。大手ハウスメーカーでアパートを建築した場合はそのまま提携の管理会社に委託することが多いですが、不安な方は自分自身で選んだ管理会社に委託もできます。

なお、管理会社を選ぶ際は十分な検討が必要です。インターネット上の口コミ情報や、同じ地域でアパート経営をしている人からの紹介など、さまざまな情報を集めて判断するといいでしょう。ただし、インターネットの口コミのなかには偏った意見が紛れていることもあるので、慎重に見極める必要があります。

収支のシミュレーションを慎重におこなう

ハウスメーカーや不動産会社から提案される収支シミュレーションは、新築を前提にした数値で示されることが多いです。しかし実際には、経年劣化による家賃下落や空室リスクなど、さまざまな要因で収支は悪化していきます。

そのため、提案されたシミュレーションをベースに、自身でさらに詳細な試算をおこなうことが重要です。周辺の中古アパートの家賃などを参考にし、長期的な視点で収支を検討しましょう。

経営が軌道に乗ったあとも、家賃の下落や空室リスクに耐えられるかを確認することが大切です。また、経営が悪化した際にどのくらいの影響が出るか、アパートローンの返済計画が問題ないかなども考える必要があります。

安易にサブリース契約を結ばない

アパート経営をスタートする際、「サブリース契約」を利用する方法もありますが、慎重に検討する必要があります。

サブリース契約とは、オーナーが建てたアパートをサブリース会社が借り上げ、入居者の募集や管理などの業務を代行するものです。オーナーはサブリース会社から一定の家賃収入を得られるため、アパート経営に不慣れな方でも比較的簡単に始められるメリットがあります。また、空室リスクも低減できるのも魅力的です。

しかし、サブリース契約にはいくつかの落とし穴があります。サブリース契約で注意が必要な点は、定期的に賃料の見直しがおこなわれることです。契約時に提示された家賃収入が長期的に入ってくるとは限りません。

知識のないままにサブリース契約をしてしまうと、賃料の見直し後に収支が合わなくなり、結果的には土地ごとアパートを手放さざるを得なくなるリスクがあります。

アパート経営ができる規模の土地を所有している場合、不動産会社からの営業を受けやすくなります。しかし、甘い言葉に惑わされることなく、自分で十分に検討したうえでの判断が重要です。

安易にサブリース契約を結ぶのではなく、自分も積極的に建物計画や運営に携わることで、より長期的な安定経営が見込めるでしょう。

複数社の見積もりを比較する

アパート経営を始める際は、1つの建築会社ではなく、複数社の見積もりを比較したうえで施工を依頼する会社を決めることが大切です。すでに土地を所有している方は、一刻も早くアパート経営を始めたいからと、1つの会社に絞って始めてしまう方もいます。

しかし、建築会社によってアパート建築にかかる費用は大きく異なります。アパート建築にかかる費用は、今後アパート経営をするうえでの利回りに大きく関係してくるもの。

アパート経営を成功させるためにも、複数の建築会社に見積もりを出してもらい、比較検討しましょう。

また、金額だけではなく、見積もりのなかにどこまでの費用が含まれているかや、 担当者の対応などもチェックしておくとよいです。

まとめ

本記事では、土地ありでアパート経営を始めるメリットや注意点などを詳しく解説しました。
アパート経営には「土地あり」と「土地なし」の2種類があります。一般的には「土地あり」のほうがリスクは少なく、アパート経営が成功しやすいといわれています。

しかし、その言葉だけを信じて簡単にアパート経営を始めると、失敗するリスクが高まってしまうかもしれません。あくまでも成功しやすいというだけで、必ず成功するわけではありません。「土地あり」でアパート経営をする際も、注意すべきポイントがあります。どのような注意点があるのか、リスクに対してどのように対応しなければならないのかを理解しておかなければ、安定した経営は難しいでしょう。

「土地あり」でのアパート経営のリスクや注意すべき点を理解したうえで、アパート経営を検討してみてください。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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