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不動産投資で日本政策金融公庫を利用できる?融資の条件や注意点を徹底解説

日本政策金融公庫からの融資の条件や注意点を解説します
多くの方にとって、不動産投資は将来の安定した収入源を確保するための、魅力的な選択肢の一つでしょう。不動産投資をする場合、投資物件を取得するために不動産投資ローンを利用することが一般的です。しかし、どの金融機関から融資を受けるのか、迷われる方もいるでしょう。本記事では、選択肢の一つとして、日本政策金融公庫をご紹介します。

日本政策金融公庫とは何か、利用するための条件はどのようなものかをご説明します。日本政策金融公庫から融資を受けると有利な方の属性も解説しますので、ご自身の状況に当てはめて考えてみてください。さらに、利用する際の注意点と申請する際の手順も説明します。資金調達の選択肢を広げたい方は必見です。

記事の目次

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫とはどのような機関でしょうか
日本政策金融公庫とはどのような機関でしょうか

「日本政策金融公庫」を初めて耳にする方も多いでしょう。本章では、日本政策金融公庫の概要や特徴などを紹介していきます。

概要

日本政策金融公庫とは、日本政府が設立した特殊法人。主に日本の経済政策を支援し、産業振興や地方経済の活性化を図るための金融支援をおこなう機関です。
この公庫は、中小企業や個人事業主などの小規模事業者、地方自治体、インフラ整備など、民間金融機関が十分な支援をおこなわない分野の融資や投資を担当しています。また、環境保護や再生可能エネルギーの促進など、社会的な課題に対する資金提供も実施。日本政策金融公庫は、国債発行などを通じて資金を調達し、その資金を低金利で貸し出して、日本の経済発展や社会インフラの整備を支援しています。

特徴

日本政策金融公庫で受けられる融資は、固定金利かつ比較的低金利で利用できる点が特徴です。大手金融機関の相場が2%程度に対し、2024年5月現在で有担保の融資の金利水準は1.25%~3.05%となっています。また、保証人は不要で、団体信用生命保険の加入も任意になっているため、これらにネックがある方の利用がしやすくなっている点も特徴です。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫で利用できる条件は?

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるためにはどのような条件があるでしょうか
不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるためにはどのような条件があるでしょうか

不動産投資の融資は日本政策金融公庫から受けられるのでしょうか。実際のところ「不動産投資」を名目にした融資は実施していません。そこで本章では、不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時の条件を紹介します。

不動産賃貸業で利用すること

冒頭にもあるように、日本政策金融公庫から不動産投資を目的にした融資を受けることはできません。融資を受ける目的は「不動産賃貸業」とされています。融資の申請や審査の際には、「不動産賃貸業」として手続きを進めましょう。実際の運営や管理方法は投資や賃貸業と同じですが、申請時の名称が重視されます。日本政策金融公庫の融資は事業主に対しておこなわれるため、個人の投資家は対象外。そのため、融資を受ける際には不動産賃貸業の事業主としての申請をおこなう必要があります。

日本政策金融公庫の融資の目的は、地域経済の活性化や中小企業の支援であり、個人資産の増加を目指す不動産投資ではありません。投資を匂わす表現は避け、不動産賃貸事業として、融資申請をおこないましょう。

取得予定の投資物件を担保にすること

日本政策金融公庫から不動産投資に融資を受ける場合、無担保でも可能ですが、融資限度額が低くなってしまいます。そのため基本的には、取得予定の投資物件を担保にすることが必要です。この条件は、日本政策金融公庫が融資リスクを最小限に抑えるために設けられています。

投資物件が担保になることから、もしも返済が滞ってしまった場合に、物件が差し押さえられることに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、日本政策金融公庫の融資条件では、保証人が不要で、探す手間を省ける点を鑑みると、投資物件を担保に含めることは了承できるでしょう。

税金の延滞がないこと

税金などの滞納がない点も、融資を受けるためには必須の条件です。公的な特性のある金融機関のため、税金や公共料金の支払いが滞っている個人や法人には、融資がおこなわれません。さらに、不動産投資における融資の審査では、個人の信用情報も重要な要素の一つです。税金などの滞納がある場合や信用情報に傷がついている場合は、審査に通過する可能性が低くなるのは当然でしょう。
以上のように、日本政策金融公庫から不動産投資の融資を受けるためには、税金や公共料金の滞納がない点が条件となります。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるべき人は?

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるべき人はどのような人でしょうか
不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるべき人はどのような人でしょうか

日本政策金融公庫の利点を生かして、融資を活用できる人はどのような人でしょうか。本章では、日本政策金融公庫から不動産投資の融資を受けるべき人の特徴を説明します。

多めに自己資金を用意できる人

日本政策金融公庫の融資は、保証人が不要だったり、団体信用生命保険の加入も任意だったりと、一見利用しやすくなっているように思えます。しかし実際は、日本政策金融公庫の担保評価は民間の金融機関よりも厳しい傾向に。その結果、融資額が通常、他の金融機関よりも少なくなる可能性があります。審査基準が厳しくなる背景は、公的な機関であることから、貸し倒れのリスクを下げるためです。
そのため、融資を受ける際には、自己資金を十分に用意している必要があります。自己資金が多いほど、融資の審査に通過しやすくなるでしょう。

女性あるいは、35歳未満の人と55歳以上の人

日本政策金融公庫の融資は、一般的な民間金融機関の融資では不利になりがちな、「女性」「35歳未満」「55歳以上」が優遇される措置があります。これらの属性の方は、特別利率が適用され、通常の金利よりも低金利で融資を受けられる点が有利。日本政策金融公庫の融資は、女性や若年層、そしてシニア層の事業主にとって、貴重な支援手段となってくれます。この条件に当てはまり、不動産投資を検討しているなら、ぜひ活用したい制度です。

利回りの高い物件を取得する人

日本政策金融公庫から融資を受ける場合、利回りの高い投資物件を取得する点が重要です。一般的に、日本政策金融公庫の融資を受ける際には、利回りが10%以上の投資物件を取得することが必要になります。なぜなら、公庫の融資は他の金融機関に比べて融資期間が短い傾向にあるため、返済期間が短いとその分、毎月の返済負担が重くなるためです。自己資金を多く用意すれば毎月のキャッシュフローは改善しますが、それでも返済は厳しくなる傾向が。

そこで、高利回りの物件を持つことで収益性を高め、キャッシュフローを改善する必要が生じます。高い利回りを持つ投資物件を選択していれば、融資の返済に関するリスクを抑えられるでしょう。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時の注意点は?

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時に注意すべきなのはどのような点でしょうか
不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時に注意すべきなのはどのような点でしょうか

うまく活用すれば利点がある日本政策金融公庫の融資ですが、判断を誤ると不動産投資の成果に対し大きなダメージを与えかねません。そこで本章では、日本政策金融公庫から融資を受ける時の注意点を解説していきます。

融資期間が短いため、毎月の不動産投資ローンの返済額が大きくなりがち

日本政策金融公庫の融資は、返済期間が長くても20年のため、毎月の不動産投資ローンの返済額が大きくなる傾向があります。一般的な金融機関のローンなら、30年以上のローン返済期間を許容するケースもあるため、大きなギャップになるでしょう。

毎月の返済金額が許容範囲内で、自己資金も十分用意できている場合は問題ありません。そうでない場合、毎月の返済金額が負担にならないようにする点に注意が必要です。本当に日本政策金融公庫で融資を受けるのが良策なのか、不動産会社や専門家に相談してよく検討するようにしましょう。

融資限度額が低くなる傾向にある

融資限度額も、その他の金融機関と比べると低くなる点に注意が必要です。日本政策金融公庫は公的機関であり、資金の使い道やリスクを十分に考慮し、公共の利益を保護する目的で融資限度額を引き下げる可能性があります。融資限度額が低くなると、希望する物件を購入ができないかもしれません。もし、融資限度額が希望に満たなかった場合は、他の資金調達手段を探すか、物件の価格や規模を見直さなければならないため、融資限度額が低くなる可能性を考慮しておきましょう。

審査基準が厳しい傾向にある

日本政策金融公庫から融資を受ける際に、審査基準が厳しくなりがちな点に注意が必要です。日本政策金融公庫は通常、公的資金を扱っているため、投資事業に対するリスク管理が厳格におこなわれます。審査に通過するには、当然ながら不動産投資の計画やビジネスモデルが適切でなければなりません。日本政策金融公庫は、投資事業の持続可能性や収益性をシビアに評価しています。十分な市場調査や財務分析がされている点、将来のリスクを十分に考慮した事業計画が提示されている点が重要です。

また、日本政策金融公庫の審査は比較的時間を要する点も覚えておきましょう。公的機関のため、審査や承認には緻密な手続きがともないます。日本政策金融公庫から融資を受ける際には、審査基準の厳しさに留意が必要です。

不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際の流れは?

不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際はどのように進めるのでしょうか
不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際はどのように進めるのでしょうか

不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける場合、どのような流れで手続きをおこなうのでしょうか。本章では、融資を希望してからどのような流れを経て、融資がおこなわれるかを説明します。

ステップ1. 事業計画書を作成する

不動産投資をおこなうだけなら事業計画書は不要ですが、日本政策金融公庫を利用したい場合は申し込みで必要になるため、あらかじめ作成しておきましょう。

ステップ2. 融資相談をするためのアポイントメントを取る

まずは、融資に関する相談をします。電話で相談したり、Webで申し込み(日本政策金融公庫 公式ホームページ インターネット申し込み(国民生活事業))する方法もあります。

ステップ3. 必要書類を準備する

面談に向けて、投資家は必要な書類を準備します。主な書類は、以下のとおりです。

  • 事業計画書
  • 取得した不動産の情報がわかる書類(物件概要書や登記簿謄本)
  • 財務諸表や源泉徴収票、確定申告の写し
  • 身分証明書や実印

事業の内容によって、必要書類は異なる場合があるので、相談の際によく確認するようにしましょう。

ステップ4. 支店で担当者と面談をする

電話またはWeb予約した日に、支店にて融資担当者と面談をします。これは、不動産事業のビジネスプランや資金使途を詳細に話し合う面談です。

ステップ5. 評価の結果を待つ

担当者と面談し書類を提出したら、日本政策金融公庫内で稟議にかけられ、融資可能か審査されます。結果は、不動産会社を通じて紹介されていれば不動産会社へ、個人で問い合わせた場合は直接電話にて通知されます。承認された場合は、融資の条件もあわせて通知され、金消契約の日時や、その際の必要書類と持ち物なども伝えられます。

ステップ6. 金消契約を締結する

金消契約とは、金銭消費貸借契約で、お金を借りる際の契約を指しており、この契約で融資の具体的な条件や義務が明確になります。

ステップ7. 融資が実行される

金消契約を締結したら、日本政策金融公庫からの融資が実行されます。融資されると、ようやく不動産投資が開始できます。

不動産投資における日本政策金融公庫に関するよくある質問

不動産投資における日本政策金融公庫に関するよくある質問をまとめました。

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫は、日本の経済政策を支援し、産業振興や地方経済の活性化を図るための金融支援をおこなう政府系の金融機関です。日本政策金融公庫で受けられる融資は、固定金利かつ比較的低金利で利用できる点が特徴。また、保証人は不要で、団体信用生命保険の加入も任意となっています。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫で利用できる条件は?

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時の主な条件は、「不動産投資」の名目で融資はできず、「不動産賃貸業」で利用しなければならないことです。他にも、取得予定の物件を担保にする点や、税金の延滞がない点も条件となります。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受けるべき人は?

日本政策金融公庫から不動産投資の融資を受けるべき人は、多めに自己資金を用意できる人です。自己資金が多いほど、融資の審査に通りやすくなります。また、一般的な民間金融機関の融資では不利になりがちな、「女性」「35歳未満」「55歳以上」が優遇される措置があります。この条件に当てはまり、不動産投資を検討しているなら、ぜひ活用しましょう。

さらに、利回りの高い物件を取得する人は有利に制度を活用できる可能性があります。これらの属性にある人が、日本政策金融公庫からの融資に向いています。

不動産投資の融資を日本政策金融公庫から受ける時の注意点は?

日本政策金融公庫の融資は、融資期間が短いため、毎月の不動産投資ローンの返済額が大きくなりがちな点に注意が必要です。利用する際には、十分にシミュレーションをおこないましょう。また、融資限度額が低くなりがちな点や、審査基準が厳しい傾向にある点にも注意が必要です。安易に利用するのは避け、十分検討して選ぶようにしましょう。

不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際の流れは?

不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける場合、以下のような流れで融資がおこなわれます。

  • STEP 1事業計画書の作成
  • STEP 2融資相談と面談のアポイントメントの取得
  • STEP 3支店にて担当者と面談
  • STEP 4融資の結果待ち
  • STEP 5金消契約の締結
  • STEP 6融資実行

流れをよく理解し、不備のないように進めましょう。

まとめ

本記事では、不動産投資の融資が日本政策金融公庫から受けられるのか、利用の条件はどのようなものかを説明しました。加えて、日本政策金融公庫から融資を受けると有利な方の属性や、利用の注意点と申請の手順も解説しました。日本政策金融公庫から融資を受けたいと検討している場合には、ぜひお役立てください。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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