不動産投資ローンの審査は厳しい?落ちるケースや審査通過できるポイントとは

そこで本記事では、不動産投資ローンの審査基準やそのポイント、審査通過のための対策を解説します。あらかじめ審査でどのような点が重視されるかを知っておけば、不動産投資をスムーズに進められるでしょう。
記事の目次
不動産投資ローンとは

不動産投資ローンと聞くと、「住宅ローンと何が違うの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。物件購入にあたり、金融機関から融資を受ける点では同じです。しかし、購入物件と目的、返済原資、金利、融資期間などで性質が異なります。
まず不動産投資ローンは、投資物件の取得や運営に利用される融資で、借り手は物件から得られる家賃収入が目的です。これに対し、住宅ローンは自身や家族が居住するための物件に対する融資のため、投資物件の購入には利用できません。
返済原資も異なり、不動産投資ローンは家賃収入から返済するのに対し、住宅ローンは給与収入などから返済します。また、金利に関しては、不動産投資ローンのほうが住宅ローンよりも高く設定されているのが一般的です。さらに、不動産投資ローンの審査では、物件の収益性や立地、管理計画が重視されます。また、借り手の信用情報も審査に影響を与える点に注意しましょう。自己資金の比率が求められることも多く、通常、物件価格の1割~3割の自己資金が必要です。
不動産投資ローンを利用すると、成功すれば安定したキャッシュフローが期待でき、投資家にとって魅力的な選択肢になります。不動産投資ローンの特性を把握し、リスクとリターンを理解したうえで利用しましょう。
不動産投資ローンの審査項目

不動産投資ローンの審査では、金融機関が物件の収益性や借り手の信用状況をもとに、投資のリスクや返済の見込みを厳しく評価します。不動産投資ローンの主な審査対象は、投資物件と借り手本人です。本章ではそれぞれの審査項目を見ていきます。
投資物件に関する項目
不動産投資ローンの審査は、住宅ローンに比べて厳格です。特に投資物件の収益性と担保価値が重視されます。まず、投資物件の収益性は、立地条件や築年数が審査の重要なポイントとなるため、投資物件を選択する際には注意しましょう。利便性の高いエリアや人気のある地域に位置する投資物件は入居希望者が多く、空室リスクが低いため、収益性が高いと評価されます。また、築年数が新しい物件は老朽化による維持費やリフォーム費用の負担が少なく済み、安定した収益を生むとみなされやすいです。
さらに、担保価値の評価にも注意しましょう。投資物件が災害リスクにさらされていないか、耐用年数の残存が考慮されます。築年数が浅い物件ほど将来的な資産価値が高いと判断されるため、担保としての評価が高くなります。加えて、投資物件が地域の再開発エリアにある場合や周辺インフラの整備が進んでいる場合も、担保価値が高く評価され、審査に有利となるでしょう。このように不動産投資ローンの審査では、投資物件が安定した収益を生む可能性があるかが重視され、収益性と担保価値がともに重視されます。
本人に関する審査項目
不動産投資ローンの審査では、借り手本人の属性が厳しく評価されます。見られる項目は以下です。
- 年収
- 勤続年数
- 勤務先の規模
- 資産状況
- 不動産投資経験
- 信用情報
まず、年収は審査項目のなかでも特に重要な基準です。年収700万円以上を目安と考えましょう。次に、勤務先や勤続年数も審査の対象です。多くの金融機関では、勤続年数が少なくとも2~3年以上が望ましいとされます。勤続年数が短い場合や収入の安定性に欠ける場合、審査がマイナスになる可能性があるので注意しましょう。また、勤務先の規模も重要視され、大企業に勤める方は審査で有利ですが、中小企業に勤める方や自営業者は不利になる傾向にあります。
他にも、資産状況も審査で重要視される項目で、預貯金や有価証券が多く、他の不動産を所有している場合はプラスの評価が期待できます。さらに、持ち家がある場合には、住宅ローンを完済していると審査が有利に進むでしょう。賃貸経営の実績がある場合も評価が上がり、投資物件の運営経験が豊富であれば、ローン審査で大きな強みになります。
信用情報や健康状態も審査基準に含まれ、信用情報に問題がない点や、重い持病や既往歴がないことが大切です。このように、不動産投資ローンは住宅ローンと共通する審査項目が多い一方、より厳格な基準で判断されます。
不動産投資ローンの審査に通らないケース

不動産投資ローンの審査では主に、投資物件と借り手本人が審査される点を解説しました。それでは、どのような状況だと審査で不利になるのでしょうか。そこで本章では、審査に通過できないケースを見ていきます。
投資物件に問題があるケース
まずは投資物件に問題があるケースを解説します。
耐用年数を超えている
不動産投資ローンの審査では、投資物件の耐用年数が重視されます。物件には、構造に応じた法定耐用年数が設定されています。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年、重量鉄骨は34年、木造は22年です。これらの法定耐用年数を超えると建物の資産価値が減少し、担保としての価値も下がるため、金融機関の評価は厳しくなるでしょう。
金融機関によっては、耐用年数内の物件に対してのみ融資するケースもあります。築年数が古い物件や、耐用年数を大きく超えている物件は審査に通らない可能性が高くなります。そのため、購入を検討する際には物件の構造や築年数をよく確認し、金融機関が融資可能とする条件に適合しているかを確認するようにしましょう。もし、築年数が古い投資物件を選ぶなら、改修やリノベーションの計画を立てておくと、審査に通る可能性が高まるかもしれません。
物件の担保評価が低い
不動産投資ローンの審査では、購入する投資物件の担保価値も大切な要素です。金融機関は、万が一を考え、ローン返済が困難となった場合に備えなくてはなりません。そこで、対象の不動産に抵当権を設定し、返済が不能になった際に投資物件を差し押さえ、売却によって債権を回収できるようにします。担保となる物件の価値が高ければ融資をおこないやすくなる点を考慮すると、担保評価が高い物件を選ぶべきでしょう。
担保価値は、物件の築年数や状態、立地条件、賃貸需要などの要素で総合的に評価されます。特に過疎化が進んでいる地域や賃貸需要が少ないエリアの物件は、担保評価が低くなりがちです。また、先述したとおり建物が古く耐用年数を超えている場合も担保価値が下がりやすく、審査が通りにくくなる原因になります。不動産投資ローンの融資を受けるためには、将来的に価値が見込める立地や条件を持つ物件を選ぶようにしましょう。
本人に問題があるケース
続いて、借り手本人に問題があるケースを解説します。
年収が少ない
借り手本人の年収が不足している場合にも、審査に通過できない可能性が高まります。不動産投資は投資物件の収益が必ずしも安定するとは限らないため、家賃収入以外からの補てんができるかが重要です。年収700万円以上が望ましいとされる場合もありますが、そのラインを下回る年収500万円以下でも条件により融資を受けられるかもしれません。
ただし、借入額が年収の8倍を超えると返済負担が重くなるため、審査が厳しくなる傾向があります。不動産投資ローンは長期間返済し続けなければならないため、安定した収入を持っているか、返済リスクが低いかが、融資の条件となります。年収が基準に達していない場合は、収入要件が緩和されている金融機関を選ぶようにしましょう。
高齢またはローン完済時年齢が80歳以上になる
融資時点での年齢が高い、あるいは不動産投資ローンの完済時年齢が80歳以上になると融資の承認が難しくなる可能性があります。金融機関は返済期間中に安定した収入が継続する点を重視しており、特に高齢での申し込みの場合、退職後に収入が減少するリスクを懸念されます。多くの金融機関では完済時年齢を80歳以下とする条件を設けているため、完済時にこの年齢を超えると審査に通りにくくなるでしょう。
しかし、金融機関によっては、完済時年齢を85歳未満に設定しているところもあります。年齢が高くても条件に合った金融機関を探すことで融資の可能性が広がるため、シニア層で不動産投資を検討する際には、条件をよく調べることがポイントです。
収入や雇用形態が不安定である
収入や雇用形態が不安定だと、不動産投資ローンの審査に通りにくくなります。多くの金融機関では、勤続年数や営業年数が2~3年以上なければなりません。勤続年数が短い場合、収入の安定性が欠けているとみなされ、長期にわたる返済が難しいと判断されるためです。特に、最近転職したばかりで勤務年数が浅い人にとって、融資を受けるのはかなりハードルが高くなります。さらに、雇用形態が派遣社員や契約社員、自営業の方も影響があるでしょう。安定して返済できる見込みがあるかが厳しく審査されるため、雇用形態、収入の不安定さは融資審査を通過する際の障壁となります。
頭金や自己資金が少ない
頭金が極端に少ない場合も、審査に通過できません。一般的に、頭金の目安は物件価格の1割~3割程度とされており、頭金を除いた金額を不動産投資ローンで借り入れます。しかし頭金がゼロ、または極端に少ない場合は「フルローン」と呼ばれ、借り入れが厳しくなります。一部、購入物件以外の資産を担保にすれば、フルローンを提供している金融機関もあります。しかし、一定額の頭金が準備できていないと、審査に通過することは難しいでしょう。
さらに、不動産投資には自己資金も必要です。不動産投資では、家賃収入が返済の原資になりますが、手元に一定の自己資金があるほうがリスクが少ないとみなされます。自己資金が不足していると、想定外の空室が続いたり、急な修繕が必要になった場合に、返済に支障をきたすかもしれません。金融機関は、自己資金が少ないと判断した場合、融資を渋る傾向にあります。一般的には頭金を持っているほうが審査には有利になると心得て、自己資金を準備しましょう。
既存の借り入れが多い
不動産投資ローンの審査では、既存の借り入れが多い方は不利です。多くの借り入れを抱えていると、借入総額が膨らむため、たとえ年収が高くても審査に通らないかもしれません。不動産投資は長期的な返済が求められるため、金融機関は返済能力を慎重に評価します。既存の借り入れが多いと、その返済負担が増加し、将来的に滞納リスクが高まるとみなされるため、融資が厳しくなります。
さらに、金融機関によっては、貸出上限額が年収の10~20倍程度に設定されています。この範囲を超える借入金がある場合は、たとえ返済が滞っていなくても審査を通過できません。融資が受けられないと、不動産投資をおこなう機会を逃す可能性があります。不動産投資を考えるなら、既存の借り入れ状況を見直し、必要に応じて借り入れの整理をおこないましょう。
厳しい不動産投資ローンの審査に通るためのチェックポイント

不動産投資ローンの審査に通過できないケースを解説しましたが、通過するためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。そこで本章では、不動産投資ローンの審査に通過するためのチェックポイントを挙げます。審査を受ける前に確認してみてください。
返済能力をアピールできるか
不動産投資ローンの審査で重要なのは「借りたお金を返せるか」、つまり返済能力です。金融機関は、預金を運用して収益を上げているため、貸し付けたお金が回収できないと大きな損失になってしまいます。そのため借り手は返済能力を金融機関に認められなければならないため、適切にアピールできるよう準備をしておきましょう。
例えば面談時には、身だしなみを整え、約束の時間に遅れないことは社会人として当然のことです。質問には偽りなく正直に答え、誠実な態度を示すようにしましょう。そうすれば、期日通りに返済できる信頼性を築けます。また、不動産投資は単なる不労所得を目指すのではなく、事業として真剣に取り組む姿勢を見せましょう。
なお融資面談では、事業計画書やプレゼン資料を持参し、以下の点を明確に伝えます。
- 不動産投資を始める動機
- 物件の選定理由(立地や収益性)
- 自己資金の準備状況
- 返済能力を示すキャッシュフローのシミュレーション
- 期待される利益と収支計画
- 購入後の運営管理計画
- 返済に苦戦した場合の対策
これらの情報を整理して提示すると、融資を受ける際の説得力を高め、審査通過の可能性を向上させられるでしょう。
信用情報に傷がないか
信用情報に傷がないか確認しましょう。特に、使っていないクレジットカードや他のローンの管理が不適切な場合、審査に影響を与える可能性があります。複数のクレジットカードを持っていると、金融機関にとってはリスク要因とみなされる可能性があるため、使用していないカードは解約するか、限度額を最低金額に引き下げましょう。
もし、他に利用中の借り入れがある場合は、金利の低いローンに借り換えたり、繰り上げ返済をして借入残高を減少させるなどの対策を取るべきです。全額をただちに返済する必要はありませんが、他の借り入れを減らしておくと、新たに借りられる金額が増える可能性があります。そのため、使っていないクレジットカードの整理や、他の借り入れは適切に見直しておきましょう。
収益が見込める物件を選ぶ
購入予定の物件に収益性があるかも審査で重視される点です。そのため、審査に通過するために、物件選びにも注力しましょう。収益を見込める物件を見つけるためには、地域の需要や利便性、さらには流行を意識した情報収集が欠かせません。特に中古物件の場合は、過去の入居率や維持管理状態のチェックを重視しましょう。
また、収益性の予測だけでなく、キャッシュフローの計算も重要です。物件購入後に発生する費用と見込まれる収益を比較し、安定した収支が確保できるかを確認すると、ローン審査において有利に働きます。事前にこれらの要素を把握し、ローンの審査に申し込みましょう。
不動産投資ローンの審査に関するよくある質問
不動産投資ローンの審査に関するよくある質問をまとめました。
不動産投資ローンとは?
不動産投資ローンは、投資物件の取得を目的とし、家賃収入で返済する融資です。住宅ローンと異なり、金利が高く、審査時には収益性や自己資金が重視される点が特徴です。融資を受けられれば、レバレッジをきかせた不動産投資ができるでしょう。
不動産投資ローンの厳しい審査項目は?
不動産投資ローンの審査は、物件と借り手本人の両面から厳しく評価されます。物件は、収益性や担保価値が重要視されます。具体的には、立地条件や築年数、災害リスク、耐用年数などがチェック項目です。借り手本人に関する項目は、年収(700万円以上が目安)、勤続年数(2~3年)、勤務先の規模、資産状況、不動産投資経験が評価され、さらに信用情報や健康状態も考慮されるでしょう。これらの項目が投資のリスクや返済見込みを左右するため、金融機関は総合的に慎重な判断をします。
厳しい不動産投資ローンの審査に通らないケースは?
不動産投資ローンの審査に通らないケースは、主に投資物件と借り手本人の状況に問題がある場合です。投資物件は、耐用年数超過や担保評価の低い物件が不利になります。人物面では、年収不足や高齢、雇用の不安定さ、頭金や自己資金の不足、既存の借り入れ過多が影響するでしょう。これらの要素は返済リスクを高める要因とみなされ、融資の判断に響きます。審査を通過するためには安定した収入や資金、評価の高い物件を確保しなければなりません。
厳しい不動産投資ローンの審査を通過するポイントは?
不動産投資ローンの審査を通過するには、返済能力と信用情報の適切な管理が重要です。金融機関に返済能力を示すため、動機や収支計画、管理計画を具体的にまとめた事業計画書を準備しましょう。また、信頼性を高めるため、使っていないクレジットカードは解約、または限度額を引き下げます。他の借り入れがあれば金利の低いものに借り換えるなどして、残高を減らしておくとよいでしょう。さらに収益性が見込める物件を選ぶ点も大切です。こうした対策で審査通過の可能性を高められるでしょう。
まとめ
本記事では、不動産投資ローンの特徴や審査基準、通過のポイントを詳しく解説しました。審査では物件や本人の収益性や信用度が問われますが、返済能力を証明する計画書や信用情報の適切な管理が大切です。周到に準備すれば、ローン審査通過の可能性を高め、リスクを抑えた投資への道が開けるでしょう。本記事の内容を、不動産投資の成功に向け、ぜひ活用してみてください。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ