アパート経営にかかる固定資産税はいくら?軽減措置も詳しく解説

上記のような優遇制度があるため、節税を目的にアパート経営を始める方も少なくありません。また、これからアパートの建設を検討している方にとっても、魅力的なのではないでしょうか。本記事では、アパート経営で活用できる固定資産税の軽減措置を詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、アパート経営にお役立てください。
記事の目次
アパート経営における固定資産税とは

まずは固定資産税とは何かを見ていきましょう。
固定資産税とは
アパートの経営に欠かせない土地と建物にかかる税金が固定資産税です。不動産を所有している場合に毎年、市区町村(東京23区の場合は東京都)から課される税金で、1月1日時点の所有者が納税の対象者となります。上記の「所有者」とは、市区町村が管理する固定資産課税台帳に記載されている人物が該当します。アパート経営は長期にわたることが多く、土地や建物を所有している限り、毎年この固定資産税を納め続けなければなりません。
建物に課される固定資産税額は、固定資産税評価額に一定の税率をかけることで計算されます。なお、固定資産税評価額とは市区町村が算定する土地や建物の価値のこと。評価額は3年ごとに見直しがおこなわれ、「評価替え」とも呼ばれます。特に建物は時間の経過とともに老朽化して価値が低下するため、固定資産税の税額も少しずつ減少していきます。
一方、土地(宅地)の評価額は「市街地宅地評価法(路線価方式)」を用いて計算されます。この評価額は、路線価の変動などの影響を受けて上昇する場合も。固定資産税はアパート経営者にとって避けられない経費のため、その仕組みをしっかりと理解することが大切です。
都市計画税とは
アパート経営では、固定資産税だけでなく「都市計画税」が課される場合もあります。都市計画税は、所有する土地や建物が都市計画法によって定められた「市街化区域」に該当する場合に課税されるもの。都市計画税も固定資産税と同様、1月1日時点の所有者が市区町村から課されます。
固定資産税と都市計画税の納税は、毎年5月・6月頃に市区町村から送られてくる「納税通知書」に基づいておこないましょう。納税は年4回に分けることが一般的ですが、一括で納めることも可能。また、この2つの税金は、確定申告の際にアパート経営の必要経費として計上もできます。
確定申告で経費として計上することで節税につながる可能性があるため、納税通知書や領収書は紛失しないようにしっかり保管しておきましょう。
固定資産税評価額とさまざまな価格の違い
アパートの土地にかかる固定資産税は「固定資産税評価額」を基準に算定されますが、評価額以外にも土地にはいくつかの異なる価格設定があります。上記の価格は、国や自治体がそれぞれの目的に応じて設定したものです。以下で主な価格を紹介します。
時価とは、市場で実際に取引される際の価格です。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確認できます。
公示地価は、毎年3月に国土交通省が発表する価格です。同年1月1日時点の土地価格を基準として算定され、土地の売買の指標となります。
基準地価は、各都道府県が毎年7月1日時点で評価する土地価格です。評価基準は公示地価とほぼ同じですが、算出主体が異なります。
路線価は、相続税や固定資産税評価額を算定する際に使用される価格で、国税庁が毎年7月に発表します。市街地の道路ごとに1平方メートルあたりの価格が評価されます。
上記の異なる価格の仕組みを理解しておくことは、アパート経営者にとって重要です。特に固定資産税評価額は、税額の算定に直結するため、しっかりと把握しておきましょう。
アパート経営で固定資産税を軽減できる特例

アパート経営では利用できる特例があります。特例を利用することで、税金の負担を軽減できるのでおすすめです。また、基本的に固定資産税は建物の評価額で決まるため、個人では変動させられない点に注意しましょう。
「小規模住宅用地」の特例
固定資産税と都市計画税には、税額を軽減するための特例がいくつか設けられています。住宅が建っている土地(住宅用地)のうち、200平方メートル以下の部分を「小規模住宅用地」として、固定資産税が1/6に軽減されます。
さらに、都市計画税も同様に200平方メートル以下の小規模住宅用地では、税額が1/3に軽減されます。上記の特例はアパート経営にも適用され、アパートの場合は「200平方メートル×住戸数」の面積が小規模住宅用地として認められる点がポイント。表にまとめると次のとおりです。
区分 | 課税標準 |
---|---|
小規模住宅用地 (200平方メートル未満の部分) |
評価額の1/6 に軽減 |
一般住宅用地 (200平方メートルを超える部分) |
評価額の1/3 に軽減 |
小規模住宅用地と一般住宅用地では、税額の軽減割合が異なるため、注意が必要です。
新築アパートを建てた際の固定資産税軽減措置
土地に関する軽減措置だけでなく、固定資産税には建物に適用される軽減措置も存在します。新築建物の場合、初年度の税負担が大きくなるため、それを緩和する目的で軽減措置が設けられています。
対象住宅 | 軽減措置 |
---|---|
新築住宅 (床面積50〜280平方メートル) |
固定資産税が3年間 1/2に減額 |
認定長期優良住宅の新築住宅 (床面積50〜280平方メートル) |
固定資産税が5年間 1/2に減額 |
この特例は、新築後3年間適用され、3階建て以上のマンションや耐火・準耐火構造の住宅では適用期間が5年間に延長される点が特徴の一つ。具体的には、アパートを新築した場合、床面積が40平方メートル以上280平方メートル以下であることを条件に、120平方メートルまでの部分の固定資産税が1/2に軽減されます。
また、「小規模住宅用地」の軽減措置と併用が可能で、市区町村による判断のもとで適用されます。なお、適用されるためには、申請が必要となりますが、自治体が自動的に対応する仕組みのため、オーナーが申請手続きをする必要はありません。
さらに、地域によっては市区町村独自の軽減措置を設けている場合もあるため、ホームページや窓口で詳細を確認することをおすすめします。
アパート経営の固定資産税納付で押さえておくべき重要なポイント

アパート経営をおこなう際、固定資産税の納付には注意すべき点がいくつかあります。納付を怠ると、延滞金が発生したり、思わぬトラブルにつながる可能性も。以下のポイントを押さえて、適切に対応できるようにしましょう。
延滞すると高額な延滞金が発生する
固定資産税の支払いを怠ると、納付期限の翌日から延滞金が発生します。延滞金の利率は市町村によって異なりますが、東京都の場合、納付期限の翌日から1カ月以内は年率2.4%、それ以降は年率8.7%が課されます。
さらに、固定資産税を滞納し続けると、所有しているアパートや土地、預貯金などが差し押さえられる可能性があります。大きなトラブルを避けるためにも、納付期限は必ず守るようにしましょう。
納付方法は一括払いか分割払いを選べる
固定資産税の納付方法は、基本的に一括払いと分割払いの2つから選択できます。自治体によって具体的な取り扱いは異なりますが、分割払いの場合、多くの地域では4月、7月、12月、翌年2月の4回に分けて納付することが一般的です。
固定資産税の納付には、以下の6つの方法が利用できます。
- 金融機関やコンビニでの現金払い
- 銀行口座からの自動引き落とし(口座振替)
- クレジットカードによる支払い
- 電子マネーを利用した支払い
- スマホアプリを使用した決済
- インターネット上で納付をおこなうeLTAX
特にeLTAX(エルタックス)は便利なオンラインシステムですが、利用するためには事前の登録が必要です。納付方法を事前に確認し、生活スタイルに合った方法を選びましょう。
納付期限は自治体ごとに違う
固定資産税の納付期限は、アパートの所在地を管轄する自治体によって異なります。一括払いでも分割払いでも、納付期限を過ぎると延滞金が発生するため、自治体のスケジュールを必ず確認することが大切です。
先述のように、多くの自治体では、分割払いの場合4月、7月、12月、翌年2月が納付時期となります。しかし、東京都の場合は6月、9月、12月、翌年2月と多くの自治体とはスケジュールが異なります。お住いの地域の納付期限を確認するためにも、自治体の固定資産税担当課に直接問い合わせてみるとよいでしょう。
アパート経営で固定資産税を支払う際に注意すべきこと

固定資産税の納付では注意しておくべきポイントがあります。税額が適切であるか、過剰に支払っていないかをチェックすることはもちろん、その他の節税対策にも役立つ情報を押さえておきましょう。
納付書の内容を確認し間違いがないかを確認する
納付書が届いたら、固定資産税の金額や内容に誤りがないかを細かくチェックしましょう。総務省の「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、平成21年度から23年度の間に税額修正がおこなわれた自治体は全国の97%にあたります。
税額修正の対象となる割合は土地・家屋ともに約0.2%と少ないですが、該当すると数十万円から数百万円の還付金が発生する可能性があります。一方、過払いが判明した場合、最大20年までさかのぼって還付請求が可能です。納付書を細かく確認し、税額に誤りがないかを確認しましょう。
相続時には相続人が固定資産税を負担する
アパートの所有者が亡くなった場合、その土地や建物に課される固定資産税は相続人に引き継がれます。納税義務が免除されることはないため、相続人同士で納税方法を話し合う必要があります。
また、相続後は「相続人代表者指定届」の提出や所有者変更の登記を速やかにおこない、納税手続きをスムーズに進めましょう。
空き家になっている物件に注意する
アパートが空き家となった場合、固定資産税の軽減措置が適用されない可能性があります。2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、倒壊のリスクがある物件や周辺環境に悪影響をおよぼす空き家は軽減措置の対象外とされています。
適用外とされる前に自治体からの指導や助言がおこなわれますが、改善が見られない場合、税負担が大幅に増える可能性も。空き家となるリスクを事前に把握し、適切に対応することが大切です。
設備投資で税額が増える場合がある
アパートの設備や機能をグレードアップさせた場合、固定資産税評価額が上昇し、結果的に税負担が増加する可能性があります。例えば、高品質な建材を使用したり、最新設備を導入した場合などが挙げられます。
一方で、壊れた箇所の修繕に関しては固定資産税額が上がることはありません。リフォームや設備投資をおこなう際には、税額への影響も考慮する必要があります。
まとめ
今回はアパート経営にかかる固定資産税を詳しく解説しました。固定資産税額は、固定資産税額×税率で簡単に計算できるため、自身でも簡単に税金の管理ができます。ただし、固定資産税の納付時期や納付方法は市区町村で異なるため、事前にしっかり把握しておくことが大切です。
本記事では税金の負担を軽減する方法や注意点なども詳しく解説したので、ぜひ参考にしてください。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ