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アパートの空室が多い理由とは?アパート経営者が知るべきポイント

アパートの空室が多い理由やアパート経営者が知るべきポイントを解説します
「アパートの空室がなかなか埋まらない……」このような悩みを抱えているアパートオーナーは少なくありません。物件の立地や設備の問題だけでなく、社会的な要因や競争の激化も空室の原因となることがあります。

本記事では、アパートの空室が多い理由をわかりやすく解説し、今すぐ実践できる具体的な対策をご紹介します。入居率を改善するためにぜひお役立てください。

アパートの空室が多い理由とは

アパートの空室が多い理由を解説します
アパートの空室が多い理由を解説します

空室が長引くことは、アパート経営にとって深刻な問題です。空室期間が長いと、アパートローンの返済に支障をきたしたり、手元資金が不足して将来の修繕費用を確保できないなど、さまざまなリスクが発生します。そのリスクを避けるためにも、なぜ空室が埋まらないのか原因を特定し、空室率を改善することが重要です。ここでは、アパートの空室が多い理由を見ていきましょう。

家賃が周辺物件より高い

空室が埋まらない大きな原因の一つは、家賃が周辺の物件と比べて高いことです。現在は不動産ポータルサイトで簡単に物件情報を比較できるため、同じような条件で家賃が高い物件は候補から外されてしまうでしょう。そのため、アパートの立地や建物の状態が家賃に見合っているかを確認し、周辺の競合物件と家賃を比較して適正な設定をおこなうことが大切です。

競合物件が多い

周辺に多くのアパートや賃貸物件があると、どうしても空室が出やすくなります。例えば大学周辺では学生向け物件の需要が高いものの、供給過多の状態になると空室が増加するリスクがあります。

しかし、競合物件が少ない地域でも注意が必要です。賃貸需要そのものが低いエリアでは、競争相手が少なくても入居希望者が現れにくいことがあります。アパートの魅力を高め、他物件との差別化を図る施策が求められるでしょう。

日当たりが悪い

多くの人は日当たりのよい住まいを望むため、日当たりが悪いアパートは敬遠されることも少なくありません。建築当初は十分な日当たりが確保されていても、隣地に高層建物が建設され、日差しを遮られてしまうことがあります。そのため、アパートを購入したり、建築する際は、将来的な周辺環境の変化も視野に入れて検討することが大切です。日当たりが悪い場合でも、照明や内装の工夫によって明るさを演出する方法もあります。

退去が集中するシーズンがある

学生向け物件や単身者用アパートなどは、2〜3月の引越しシーズンに退去が集中することがあります。特に大学周辺の物件では、新年度に向けて学生が卒業や進級で転居するため空室が増加傾向に。こうしたリスクを軽減するためには、現入居者がまだ住んでいる間に次の入居者募集を始め、スムーズな入れ替えを図ることがポイントです。早めに募集を開始することで空室期間を短縮できるでしょう。

内装が古い

古い内装をそのまま放置していると、入居希望者から敬遠される原因となります。特に築年数が経過した物件にありがちな和室は、ふすまや畳が現代的なインテリアと合わないこともあり、おしゃれに見えにくい場合があります。また、三点ユニットバスやバランス釜などの古い設備も、不人気となる物件の特徴の一つ。

反対に、シンプルで洗練された内装やおしゃれなデザインにリノベーションされた物件は、若い世代からの需要が高まり、入居率が向上する傾向にあります。

設備が老朽化している

築年数が経過すると、設備が古くなり、物件全体が他の物件と比べると見劣りすることがあります。特に水回り設備が老朽化している場合、入居希望者の選択肢から外れることが多いです。

近隣に新しい物件が次々と建てられるなか、魅力的な条件を提供できなければ競争力が低下してしまいます。トイレやバスルーム、キッチンのリフォームなど、必要に応じて設備の改善を検討しましょう。

立地条件が不利である

賃貸物件選びでは立地が重要なポイントです。最寄り駅から遠い物件や、利便性に欠ける場所にある物件は敬遠されやすくなります。

築年数が新しい物件であっても立地条件が悪ければ、入居者を見つける際に苦労することがあります。その場合は、家賃を相場よりも割安に設定するなど、柔軟な対応が必要になるでしょう。

入居者の質が低下している

入居者の質が低下すると、物件全体の印象が悪くなり、退去者が増加する要因になります。例えば、「ゴミ出しルールが守られない」「騒音トラブルが頻発する」などの問題がある場合、物件の評判が落ちる可能性があります。

こうした状況を防ぐため、入居審査を厳格におこない、質の高い入居者を選定することが重要です。適切な管理をおこなうことで、アパートの環境維持にもつながるでしょう。

入居者募集に力を入れていない

管理会社が積極的に募集活動をおこなわなければ、よい物件でも空室が埋まらないケースがあります。物件写真の掲載数が少ない、情報が簡素すぎるなどの対応では入居希望者の目に留まりません。

管理会社を選ぶ際には、インターネット広告に力を入れ、詳細な情報を掲載している不動産会社を選ぶことがポイントです。

借主の条件が厳しすぎる

貸主が借主に対して厳しい条件を設定していると、入居者が見つからなくなることがあります。例えば、「一定水準以上の年収」「家族構成の制限」などを条件にすると、候補者が大幅に減ります。

入居者に長く住んでほしいなどの意図から条件を厳しくするケースもありますが、結果的に空室期間が長引く原因になることも。一定の条件は必要ですが、間口を広げる工夫も重要です。

敷金や礼金が高すぎる

敷金や礼金が高額すぎる物件も、空室の原因となります。アパートに入居する際の初期費用が高いと、それだけで候補から外れてしまうことがあります。

特に最近では敷金や礼金を極力支払いたくないと考える入居希望者が増えている傾向に。家賃の2カ月分や3カ月分を要求する設定では、他の物件に流れてしまう可能性が高まります。初期費用のハードルを下げることで、物件の競争力が向上し、空室解消のきっかけになるでしょう。

管理を不動産会社任せにしている

空室問題が発生しやすい背景には、管理を不動産会社に全面的に依存しているケースが挙げられます。通常、不動産会社は物件管理に加え、入居者募集も手がけますが、空室率の低い物件はオーナー自身も積極的に空室対策に取り組んでいる傾向にあります。

不動産会社からの提案をそのまま受け入れるだけではなく、その背景や根拠をしっかりと確認し、納得したうえで意思決定をおこなうことが重要です。空室の原因を自ら見極め、最適な対策を取ることが、長期的にはコスト削減につながるでしょう。

アパートの空室対策

アパートの空室対策を徹底解説します
アパートの空室対策を徹底解説します

アパートの空室をそのまま放置していると、収益に深刻な影響が出ることがあります。具体的には、アパートローンの返済に支障が出たり、売却の際に価値が下がるリスクが高まります。そのため、迅速に対策しなければなりません。ここでは、効果が期待できる空室対策を詳しくご紹介します。

家賃の適正化を検討する

空室期間が長引いている場合、家賃が市場価格と見合っていない可能性があります。競合物件との家賃を比較し、必要に応じて適正な価格に調整しましょう。

例えば、月々の家賃を5,000円下げるだけでも、年間で6万円の負担減となり、入居者にとって大きな魅力となります。特に築年数が経過しているアパートは、設備や外観の状態を踏まえて価格を再検討することが重要です。

ただし、一度下げた家賃を引き上げるのは困難なため、慎重に検討したうえで実行しましょう。

広告料の支払いで募集活動を強化する

通常、不動産会社が広告料を負担しますが、空室が続く場合はオーナー側から広告料を支払うことで、積極的な募集活動を促すことが可能です。

広告料は成功報酬型で、契約が成立しなければ支払い義務は発生しません。空室期間が長い物件では、通常の1カ月分以上、場合によっては2〜3カ月分の広告料を設定することで、物件への注目度が高まるでしょう。成功報酬型のためリスクは限定的で、効果が見込める対策の一つです。

市場調査で物件の強みを把握する

市場調査をおこない、アパートが抱える課題や競合物件との差異を明確にすることも、空室対策に役立ちます。ターゲットとする入居者層の属性やニーズを把握することがポイントです。

また、周辺物件と自分の物件を比較することで、改善すべき点が見えてきます。同じ広さの物件でも設備内容や家賃設定に差がある場合、見直しが必要になることもあるでしょう。市場調査を通して、アパートの魅力を高める戦略を立てることが、長期的な空室解消につながります。

フリーレントや敷金・礼金なしで借りやすくする

アパートの空室解消方法として取り入れやすいものが、フリーレントや敷金・礼金なしの条件を設定することです。フリーレントとは、一定期間の家賃を無料にするサービスで、短期的な空室対策として効果的です。

家賃は一度値下げすると、なかなかもとに戻せませんが、フリーレントや敷金・礼金なしは一時的な措置のため、経済的リスクが少なく済むでしょう。フリーレントは費用対効果が大きく期待できるため、おすすめです。入居者にとっても初期費用が抑えられるため、競争力がある物件に生まれ変わるでしょう。

無料インターネット回線を導入する

最近の入居者、特に若い世代に人気のある設備の一つが、無料インターネットです。スマートフォンやパソコンを頻繁に使う人にとって、通信費が節約できるのは大きな魅力です。

一般的な家庭のインターネット使用料は月額4,000〜6,000円程度とされるため、無料で利用できるメリットは大きいでしょう。不動産ポータルサイトでも「インターネット無料」と記載された物件は注目度が高まる傾向にあります。通信費を抑えたい若年層をターゲットにしたアパートでは、特におすすめの対策です。

宅配ボックスなど人気設備を導入する

宅配ボックスは、単身者を中心に高い人気を誇る設備です。日中に部屋を空けることが多い人にとって、不在時にも荷物を受け取れる環境はとても便利です。

特にネット通販の利用が増えている現在、宅配ボックスは賃貸物件の付加価値として重要視されています。設置することで物件の競争力が上がり、周辺の類似物件よりも高い家賃設定が可能になることも。設置コストがかかるものの、その投資価値は十分に見込めるでしょう。

ペットの飼育が可能な物件にする

ペット需要が高まるなかで、ペット飼育可能な物件は依然として少ない傾向にあります。そのため、空室対策としては有効な方法の一つとなります。

ペットの飼育が可能な物件にすると、臭いや鳴き声などの課題もありますが、単身者を含めペットを飼う人からの人気を集められるメリットがあるでしょう。また、家賃をやや高めに設定できたり、敷金を3カ月分に増やすなどの対応も可能です。

ただし、ペットの飼育を可能にするためには、クロスや床材などの耐久性を考慮したリフォームが必要です。初期コストは発生しますが、空室リスクを軽減する効果は期待できるでしょう。

外国人入居者の受け入れを検討する

外国人入居者を積極的に受け入れることも、空室解消の手段になります。日本では外国人に対する入居制限がある物件が多いため、受け入れ対応ができる物件は希少です。

文化や生活様式の違いから「ごみ出しルールが守られない」「近隣トラブルが多い」などの懸念を持つオーナーもいますが、丁寧な説明とルール共有を徹底すれば、ほとんどのケースで問題は発生しません。

また、外国人の対応に慣れている管理会社を選べば、トラブルのリスクも軽減できます。オーナー側の柔軟な姿勢が求められますが、入居者の間口を広げるためにも、検討する価値は十分にあるでしょう。

共用部分の清掃を徹底する

立地や間取りが優れていても、共用部分の清掃が行き届いていない物件は印象が悪くなり、空室につながることがあります。共用スペースも居住空間の一部と考え、日常的な清掃を心がけることが大切です。ゴミが散乱していたり、埃まみれの状態が続いていると物件全体の価値が下がってしまうでしょう。

清掃が難しい場合は、清掃会社のサービスを導入することも検討しましょう。共用部分がきれいな物件は、入居者からの満足度も向上します。

ホームステージングで魅力的な内覧を演出する

内覧時に小物や家具を配置してモデルルームのように演出する「ホームステージング」は、空室対策では有効な手法です。

通常の内覧では、何もない部屋を見せるだけになるため、他の物件との差別化が難しくなります。一方ホームステージングを活用することで、入居後の生活をイメージしやすくなり、物件の魅力を伝えやすくなります。部屋の印象を高めるためにも、一度導入を検討してみるといいでしょう。

フローリングに変更し現代的な印象にする

築年数が古いアパートでは、床が畳のままのケースもあります。しかし、近年では畳の需要が低下しており、特に若い世代からは敬遠される傾向にあります。畳は手入れが面倒などのイメージが強いため、現代的で手入れのしやすいフローリングへの変更が有効です。インテリアにこだわりのある入居者からの評価も高まるでしょう。フローリングに変更すると、物件全体が洗練された印象になり、空室解消につながる可能性があります。

また、不動産情報サイト アットホームでは、賃貸物件で人気の設備や条件について調査を実施。どのような設備が人気を集めているのでしょうか。ぜひあわせてご覧ください。

物件以外の要因が引き起こす空室問題

物件以外の要因が引き起こす空室問題を解説しています
物件以外の要因が引き起こす空室問題を解説しています

アパートの空室は建物の老朽化や設備不足だけが原因ではありません。社会や経済の変化による以下のような問題も空室の要因となるため、早めに認識し、対応を検討することが大切です。

不動産市場での競争激化

近年の金融政策や老後資産形成の一環として、不動産投資への関心が高まり、新築アパートが次々と建設されています。そのため、特に入居希望者の多いエリアでは競争が激化しています。

築年数が経過したアパートはどうしても新築物件に比べて選ばれにくくなるため、他のアパートと差別化する工夫が欠かせません。

例えば、デザインの工夫や設備の充実、付加価値のあるサービスの提供を通して、入居者に選ばれるような魅力を打ち出すことが重要です。競争の激しいエリアでは、顧客目線に立ち、アピールをしましょう。

人口減少と都市部への人口集中

人口に関する課題は物件の改修やメンテナンスだけでは解決が難しいため、広い視点での対応が必要です。
日本の人口は2011年以降、13年連続で減少しています。さらに、国土交通省が公表している「令和6年版国土交通白書」によると、東京などの大都市への人口流入は続いており、地方や郊外では人口減少がより深刻な問題となっています。

その結果、郊外エリアでは住民そのものが減少し、空室率が上昇する傾向に。このような背景による空室増加は、物件のリノベーションや設備改善では解決が難しい場合が多いです。

早期に人口に関する傾向を理解し、ターゲット層を見直したり、新しいマーケティング施策を検討することが大切です。

参考:国土交通省「2 東京一極集中と地方への影響

実家暮らしの増加

若年層の所得が伸び悩んでいることから、特に大都市では一人暮らしが難しい状況が続いてるなど、実家に住み続ける人が増えていることも空室増加の原因の一つ。

アパートを借りる層が減少し、空室率が上昇する結果となっているのです。この現象に対応するためには、若い世代のニーズを踏まえた物件づくりや、家賃設定をできる限り抑えるなどの工夫が必要でしょう。

まとめ

アパートの空室問題は、物件そのものの課題だけでなく、競争環境や社会的な要因も影響します。重要なのは、現状の課題を正しく分析し、ターゲット層に合った改善策を取ることです。

ペットの飼育が可能な物件への変更や共用部分の清掃、外国人入居者の受け入れなど、できる対策から少しずつ取り組んでみましょう。小さな改善が入居率アップにつながることも少なくありません。
常に市場の動向にアンテナを張り、時代に合ったアパート経営をおこないましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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