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持ち家を賃貸に出すメリットは?デメリットや出す時にかかる税金を解説

転勤で引越しを余儀なくされたり、親から家を相続するなどして住んでいない持ち家を所有している方のなかには、不動産投資の一環として「賃貸に出して家賃収入を得たい!」と考える方もいるでしょう。しかし、「家賃収入を得る」以外のメリットや、デメリットがわからない方も多いのではないでしょうか。本記事では、持ち家を賃貸に出すメリットやデメリット、賃貸に出した時にかかる税金などを解説します。注意点もあるため、よく理解したうえで検討しましょう。

持ち家を賃貸に出すメリット

持ち家を賃貸に出すメリットを4つ解説します
持ち家を賃貸に出すメリットを4つ解説します

持ち家を賃貸に出すと、家賃収入の他にどのようなメリットがあるのでしょうか。本章では、4つのメリットを解説します。

家賃収入を得られる

持ち家を賃貸に出すと、安定した家賃収入を得られます。会社員として働いているのであれば、新しい収入源となるでしょう。例えば、持ち家が一戸建て住宅の場合、市場に出回っている賃貸物件は少ないことからニーズがあります。また、分譲マンションの場合でも賃貸用のマンションやアパートに比べて設備が充実していたり、防犯性が高い傾向にあるため人気があります。そのため、賃貸用マンションと比較して家賃を高めに設定できることも。しかし、ニーズがなければ空室になるおそれもあります。賃貸需要があるか、事前に調査をおこないましょう。

節税効果を期待できる

節税効果を期待できる点も、持ち家を賃貸に出すメリットです。賃貸に出すことで、次のような費用を経費として計上できます。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 管理費
  • 修繕費
  • 賃貸用ローンの利息
  • 損害保険料

固定資産税や都市計画税は、賃貸に出していなくても持ち家を所有しているとかかる税金です。しかし、賃貸に出すことで、経費として計上できるようになります。適切に経費を計上すれば、課税所得を抑えられ、結果として納めるべき税金も減らせます。

空き家対策になる

将来的に持ち家に戻ることが決まっている場合、賃貸に出すと空き家対策として有効です。空き家は、建物の老朽化を早める原因とされています。なぜなら、常に窓が閉め切られて換気がされないため、室内に湿気が溜まりカビやダニが発生しやすくなったり、庭の草木が生い茂ってしまいネズミやハクビシンなどの害獣が住み着きやすくなるからです。しかし、賃貸に出せば、空き家対策となるため建物の老朽化を遅らせることができます。

資産として手元に残せる

持ち家を賃貸に出すことで、資産として手元に残せる点もメリットの一つです。賃貸に出すと、所有権を維持したまま、家賃収入を得られます。もし、周辺地域で再開発がおこなわれ、資産価値が上昇すれば、将来的に高値で売却できるでしょう。また、将来的に子どもに譲ることも可能です。売却せず、賃貸に出して所有権を維持することで、持ち家の活用方法の選択肢を広げられます。

持ち家を賃貸に出すデメリット

持ち家を賃貸に出すと確定申告をする必要があります
持ち家を賃貸に出すと確定申告をする必要があります

家賃収入を得る以外にも、節税効果や空き家対策など、賃貸に出すメリットはさまざまです。それでは、デメリットはあるのでしょうか。本章では、持ち家を賃貸に出すデメリットを解説します。

確定申告をする必要がある

持ち家を賃貸に出すデメリットは、確定申告をする必要があることです。会社員であれば、給与所得以外に20万円以上の所得がある場合、確定申告をしなければなりません。もし、申告をしなかった場合、ペナルティとして延滞税や無申告加算税などが課されます。

確定申告をする際には、経費として計上できる項目や利用できる控除など、専門的な知識が必要ですが、税理士などの専門家に依頼すれば報酬料はかかるものの、適切な申告ができるでしょう。

自由に解約できない

賃貸借契約期間中は、オーナーの都合で自由に解約できない点もデメリットです。これは、「借地借家法」によって借主の権利が保護されているためです。例えば、持ち家の資産価値が上昇していることから、売却したいと思っても、賃貸に出している場合、売りたいタイミングで売却できません。

持ち家に戻る時期がわかっており、期間限定で賃貸に出したい場合は、定期借家契約を結ぶとよいでしょう。これは、あらかじめ契約期間が決まっており、期間が終了すると契約の更新がされません。ただし、オーナーと入居者が合意すれば、再契約が可能です。

入居者が決まらないこともある

持ち家を賃貸に出すデメリットとして、入居者が決まらないことも挙げられます。入居者がいなければ、家賃収入を得られないにも関わらず、管理費や修繕費などの費用が発生します。入居者を募集しても、すぐに入居者が決まるとは限らないことを理解しておきましょう。空き家リスクを軽減するために、集客力のある不動産会社に依頼をしましょう。

委託費用がかかる

持ち家を賃貸に出す際、委託費用がかかることもデメリットです。賃貸に出す際には、入居者の募集をはじめ、契約やクレーム対応、建物の管理など、さまざまな管理業務が発生します。知識や経験のない方が一人でおこなうと時間も労力もかかることに。
一般的には、これらの管理業務は不動産管理会社に委託し対価として委託費用を支払います。委託費用の相場は、家賃の5%程度。不動産管理会社によって、サービス内容や委託費用の金額は異なるため、複数社を比較検討して決めましょう。

住宅ローンの借り換えが必要になる

転勤や親の介護など、やむを得ない事情で持ち家を賃貸に出す場合、金融機関によっては、住宅ローンのまま貸し出せることがあります。しかし、住宅ローンは契約者本人が居住する家のために借り入れるためのローンであるため賃貸に出すことは原則として禁止されています。そのため、住宅ローンから賃貸用ローンへ借り換えなければなりません。住宅ローンと賃貸用ローンの違いは下表のとおりです。

項目 住宅ローン 賃貸用ローン
借入目的 自己居住用住宅の購入 家賃収入を得るための
収益物件の購入
返済原資 契約者の給与収入 家賃収入
金利水準 0.5〜2.0%程度 1.5〜4.5%程度
融資額の上限 年収の5〜8倍程度 年収の10〜20倍程度
審査の内容 契約者の返済能力 物件の収益性

賃貸用ローンは金利が高いため、家賃収入に対してローンの返済割合が高くなる可能性があります。持ち家を賃貸に出す際には、事前に収支シミュレーションをおこないましょう。

持ち家を賃貸に出す方法

持ち家を賃貸に出す時の手続きの流れを解説します
持ち家を賃貸に出す時の手続きの流れを解説します

持ち家を賃貸に出す際には、さまざまな手続きが必要です。まずは簡単な流れを押さえておきましょう。

  • STEP 1不動産仲介会社を探す
  • STEP 2賃貸借契約の方法を選ぶ
  • STEP 3仲介会社と契約を結ぶ
  • STEP 4入居者を募集する
  • STEP 5賃貸借契約を結ぶ

それぞれ詳しくみていきましょう。

STEP1:不動産仲介会社を探す

まずは、入居者の募集や契約を依頼する不動産仲介会社を探しましょう。適切な家賃設定や入居者の選定、契約書の作成など、専門的な知識が必要となる業務を代行してくれるため、スムーズに賃貸経営を始められます。持ち家周辺にある不動産仲介会社であれば、地域の不動産情報に詳しく適切なサポートを受けられるでしょう。

STEP2:賃貸借契約の方法を選ぶ

次に、賃貸借契約の方法を選びましょう。契約方法は大きく3つあります。

  • 普通借家契約
  • 定期借家契約
  • サブリース

普通借家契約は一般的な契約方法で、契約期間を更新することが可能です。借主から解約する場合には、事前に予告期間内に連絡をしなければなりませんが、自由に解約できるため人気が高くなっています。オーナーからするといつでも解約される可能性がある分、他の契約方法と比べて家賃を高めに設定できる点が特徴です。

定期借家契約は、あらかじめ契約期間が定められている契約方法です。先述したように、期間満了となると契約が終了します。将来的に持ち家に戻ることが決まっている場合には、適しているでしょう。

サブリースは、サブリース会社がオーナーの所有する不動産を借り上げ、入居者に転貸する契約方法です。管理業務をサブリース会社に委託でき、空室でも家賃収入が保証されるため、安定した賃貸経営ができます。しかし、家賃の保証額が減額される可能性があり、手数料も家賃収入の10〜20%と高めです。

それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで選びましょう。

STEP3:不動産仲介会社と契約を結ぶ

賃貸借契約の方法を決めたら、不動産仲介会社と契約を結びます。契約方法は、次の2種類です。

  • 媒介契約:不動産仲介会社がオーナーと入居者の間に入って取引をおこなう
  • 代理契約:不動産仲介会社がオーナーに代わって取引をおこなう

媒介契約では、オーナーと入居者が賃貸借契約を結びます。どういう方が入居するのか知りたい場合は適しているでしょう。一方、代理契約では、不動産仲介会社が入居者と賃貸借契約を結びます。賃貸経営にかかる手間を減らしたい場合は、選択肢となるでしょう。

STEP4:入居者を募集する

入居者の募集が始まり、本格的に賃貸経営がスタートします。入居者を募集する前には、次のことを決めておきましょう。

  • 入居者の条件
  • 家賃
  • 敷金・礼金

入居者の募集方法としては、不動産ポータルサイトへの掲載やチラシの配布などが一般的です。入居希望者が物件を見学できるよう、室内を空けておきましょう。 

入居希望者の審査も、この時点でおこないます。家賃を継続的に支払える能力があるかを判断するため勤務先や収入などを確認します。不動産仲介会社にすべて委託する場合には、事前に審査基準を聞いておくとよいでしょう。

STEP5:賃貸借契約を結ぶ

入居者が決まったら、選択した賃貸借契約方法で契約を結びます。トラブル防止のためにも、家賃や敷金・礼金・解約に関する事項など、契約内容をよく確認しておきましょう。契約書は専門用語が多いため、わからないことがあればすぐに不動産仲介会社に確認することが大切です。

持ち家を賃貸に出した時にかかる税金

持ち家を賃貸に出すと税金が増える可能性があります
持ち家を賃貸に出すと税金が増える可能性があります

持ち家を賃貸に出すと、どのような税金がかかるのでしょうか。結論をいうと、賃貸に出したからといって新たな税金がかかるわけではありません。しかし、これまで納めていた税金の金額が増える可能性があります。本章では、増える可能性のある税金を解説します。

所得税

持ち家を賃貸に出して得た家賃収入は、不動産所得として扱われます。不動産所得は所得の一種であるため、所得税の対象となります。所得税の税率は下表のとおり。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 194万9,000円まで 5% 0円
195万円 から 329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円 から 694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円 から 899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円 から 1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円 から 3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率

なお、2037(令和19)年までの各年分の確定申告においては、復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付します。

例えば、給与所得500万円のみの場合、所得税率は20%です。この場合の所得税は、約57万円です。しかし、給与所得500万円に加え、不動産所得が200万円あった場合、課税所得は700万円となり、所得税率は23%になります。この場合の所得税は、約97万円となります。

このように、不動産所得によって課税所得が増えた場合、所得税の負担が重くなります。

住民税

持ち家を賃貸に出すことで、住民税も増える可能性があります。住民税の税率は、所得に対して10%です。10%のなかでも、都道府県民税が4%、市町村住民税が6%に分かれています。
先ほどの所得税と同様、家賃収入を得たことで課税所得が増えると、それに応じて住民税も増えます。

持ち家を賃貸に出す際の注意点

持ち家を賃貸に出す際の注意点を解説します
持ち家を賃貸に出す際の注意点を解説します

持ち家を賃貸に出す際には、気を付けなければならないことがあります。本章では注意点を解説します。

金融機関に相談する

住宅ローンが残っている持ち家を賃貸に出す場合は、必ず金融機関に相談しましょう。住宅ローンは、契約者が居住することを前提に組むものであるため金融機関の許可を得ずに賃貸に出すことは契約違反です。最悪の場合、住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。金融機関によっても異なりますが、賃貸に出す理由次第では、住宅ローンのまま賃貸に出せる場合もあります。住宅ローンのまま賃貸に出せない場合は、賃貸用ローンへ借り換える必要があります。

自分に合った賃貸借契約を結ぶ

持ち家を賃貸に出す時は、自分に合った賃貸借契約を選びましょう。賃貸に出すと、借地借家法によって入居者の権利が保護されます。そのため、オーナーの都合で自由に解約できません。将来的に持ち家に戻ることが決まっている場合は、契約期間が決まっている定期借家契約を選ぶことをおすすめします。

原状の記録を残しておく

入居者が入居する前に、原状の記録を写真や動画などで残しておきましょう。原状回復とは、退去する際に物件を借りた時の状態に戻すこと。賃貸借契約が終了した際、入居者はオーナーに対して原状回復をおこなう義務があります。例えば、壁に小さな穴が開いていた場合、入居者が開けたのか、賃貸に出す前からあったのかが問題になります。原状の記録を残しておけば、そのようなトラブルを防げるでしょう。

管理の手間やコストを考える

持ち家を賃貸に出す際には、管理の手間やコストをよく考えましょう。管理業務は管理会社に委託することが一般的ですが、任せきりにすると経営状況が把握できなくなります。そのため、管理会社と定期的に連絡を取り、状況を把握することが大切です。

また、委託するにあたり、委託費用もかかります。賃貸用ローンに借り換えた場合は、家賃収入から返済しなければなりません。賃貸に出すコストが多ければ、「思っていたより収益が少ない」と後悔する可能性もあります。持ち家を賃貸に出す際には、コストをすべて洗い出し、収支シミュレーションをおこないましょう。

まとめ

本記事では、持ち家を賃貸に出す際のメリットやデメリット、注意点などを解説しました。賃貸に出すと家賃収入を得られることに目が行きがちになるでしょう。しかし、管理会社に委託する場合でも、手間やコストがかかります。また、収入によっては税負担が増える可能性もあります。事前に収支シミュレーションをおこなったうえで、慎重に検討しましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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