賃貸管理会社を変更する際のメリットは?考えられるトラブルと円満に変更するためのポイントを解説

本記事では、賃貸管理会社を変更するメリットや考えられるトラブル、変更する際の手順を解説します。また、トラブルを起こさないようにするための注意点も解説するので、ぜひご参考ください。
記事の目次
賃貸管理会社を変更する理由

なぜ賃貸管理会社の変更をするのか理由を明確にしておくことで、新しい賃貸管理会社に求めるものがわかったり、入居者に説明しやすくなったりするメリットがあります。本章では、賃貸管理会社を変更する理由として考えられるものをみていきましょう。
空室が続いている
賃貸管理会社を変更する理由として考えられるのが、空室が続いていることです。空室が続いていると、家賃収入が減ります。場合によっては、不動産経営が立ち行かなくなるおそれもあるでしょう。
空室が続く原因としては、入居者の募集活動が不十分である可能性や、家賃の設定や収益物件の設備が、競合物件と比較して劣っている可能性が考えられます。
オーナーから賃貸管理会社に空室対策の働きかけをおこなっても、対応してもらえない場合は、変更を考える理由の一つとなるでしょう。
管理手数料が高い
管理手数料が高いことも、賃貸管理会社を変更する理由の一つです。賃貸管理会社によって、管理手数料率やサービスの内容は異なります。管理手数料の相場は家賃収入の5%が相場。毎月支払わなければならないため、管理手数料に見合ったサービス内容でないと感じる場合は、不満を抱くことになるでしょう。また、サービス内容が同じでも、他社と比較して管理手数料が高ければ、割高に感じて変更を考える理由になるでしょう。
担当者や会社の対応に不満がある
担当者や賃貸管理会社の対応に不満がある場合も、変更する理由の一つとなります。具体的には、次のような不満が考えられます。
- 連絡が遅れる、つながらない
- 説明が不十分、わかりにくい
- トラブル発生時の対応が遅い
- 要望に耳を傾けてくれない
不動産経営で安定した家賃収入を得るためには、入居者にとって住みやすい収益物件にしなければなりません。トラブルが発生した時に連絡がつかなければ、適切な対応ができず、入居者が退去を考える理由にもなるでしょう。安定した不動産経営をおこなうためには、担当者や賃貸管理会社との連携は欠かせません。連携がうまくいかない場合には、賃貸管理会社の変更を考える理由になるでしょう。
賃貸管理会社を変更するメリット

賃貸管理会社を変更するメリットは何でしょうか。本章では、4つのメリットを解説します。
家賃収入の増加が期待できる
賃貸管理会社を変更するメリットは、家賃収入の増加が期待できることです。次の2つが理由として考えられます。
- 効果的な入居者募集をおこなう
- 適切な家賃を設定する
変更したあとの賃貸管理会社が、入居者募集に注力をしている会社であれば、効果のある募集活動を期待できるでしょう。ターゲット層に合わせた募集活動をおこない、入居者を獲得することで、空室期間の短縮が期待できます。
また、適切な家賃を設定することも重要です。専門的な知識のある賃貸管理会社であれば、地域の相場や周辺物件の家賃を分析し、最適な家賃を提案してくれるでしょう。適切な家賃が設定されていれば高い入居率を維持でき、安定した不動産経営が期待できます。
管理手数料の削減が期待できる
賃貸管理会社を変更することで管理手数料を削減し、収益性を高めることができます。契約内容によっては不要なサービスが含まれており、それらを削ることで手数料を削減できる可能性も。先述したように、賃貸管理会社によってサービスの内容や管理手数料率は異なります。複数の賃貸管理会社から見積もりをとり、比較検討することで、よりよい条件で管理を委託できるでしょう。
トラブルに迅速な対応ができる
トラブルに迅速な対応ができる点も、賃貸管理会社を変更するメリットの一つです。不動産経営においては、水漏れや設備の故障など、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。こういったトラブルに迅速に対応できるかは、入居者の満足度に大きく影響します。
賃貸管理会社のなかには、24時間365日でサポート体制を整えているところも。迅速な対応をしている賃貸管理会社に変更すれば、安定した不動産経営をおこなえるでしょう。
収益物件の資産価値を維持できる
賃貸管理会社を変更することで、収益物件の資産価値を維持できます。収益物件の資産価値は、適切な管理がおこなわれているかによって左右されます。適切な管理をおこなうことの重要性を理解している賃貸管理会社を選ぶことで入居者の満足度を保つことができ、売却する際にも高く売却できる可能性もあります。
賃貸管理会社を変更する際に考えられるトラブル

賃貸管理会社を変更する際には、さまざまなトラブルが起きる可能性があります。本章では、変更する際に考えられるトラブルを4つ解説します。
引き継ぎ内容の相違によるトラブル
賃貸管理会社を変更する際、新旧の賃貸管理会社間での引き継ぎ内容に相違が生じ、トラブルが発生する可能性があります。引き継ぎの際には、入居者情報や収益物件の修繕履歴など、さまざまな情報を正確に引き継がなければなりません。しかし、正しく引き継がれなかった場合、トラブルが発生するおそれがあります。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 水漏れの対応を依頼していたのに、新しい賃貸管理会社に引き継がれず、入居者からクレームが発生する
- 過去の家賃滞納情報が引き継がれず、回収が遅れてしまう
特に、入居者が生活を送るうえで不便となるトラブルは、迅速に対応しなければなりません。必ず、引き継ぎがおこなわれるよう、以前の賃貸管理会社に念押ししましょう。
変更手続きによるトラブル
賃貸管理会社を変更することで、変更手続きによるトラブルが発生することも考えられます。例えば、賃貸管理会社を変更すると、家賃の振込先が変わることになります。
振込先の口座変更手続きは、入居者がおこなわなければなりません。しかし、仕事や育児で忙しく、手続きができない可能性もあるでしょう。もし、手続きが遅れれば、入居者にそのつもりがなくても、家賃を滞納してしまうおそれも。その場合、「賃貸管理会社を変更しなければ滞納はしなかった」とクレームを受けるかもしれません。
振込先の口座変更手続きは、入居者にとって負担となります。丁寧に説明をし、賃貸管理会社を変更することへの理解を得て、期日までに済ませてもらうようにしましょう。
解約トラブル
賃貸管理会社を変更する際、以前の賃貸管理会社との解約において、トラブルが起きる可能性があります。具体的には、次のようなトラブルが考えられます。
- 違約金に関するトラブル
- 解約手続きが遅延する
一部の賃貸管理会社では、高額な違約金を設定することで解約をしづらくしているケースがあります。また、解約したい日の3カ月前に申し出なければならないなど、解約予告期間が設定されていることが一般的です。なかには半年以上前に解約を通知しなければならないケースもあります。
違約金が高額だったり、解約予告期間が長かったりすると、予定していた時期に変更できない可能性があります。解約をするにあたっての取り決めは「管理委託契約書」に記載されているため、事前によく目を通しておきましょう。
金銭トラブル
賃貸管理会社を変更する際、金銭トラブルが発生する可能性もあります。具体的には、次のようなことです。
- 修繕費の清算漏れ
- 敷金精算のトラブル
賃貸管理会社を変更したあとに、以前の管理会社で修繕費の清算がおこなわれていなかったことが発覚し、オーナーに損害が発生することが考えられます。また、入居者が退去する際の原状回復は、賃貸管理会社によって考え方が異なります。考え方が異なれば、入居者が支払う敷金の金額が変わってくることも。原状回復についての擦り合わせが必要になるでしょう。
金銭のやりとりが発生するものは、記録を残し、正確におこなわれたか確認をするようにしましょう。
賃貸管理会社を変更する際の手順

賃貸管理会社を変更する際には、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。先述したように、解約をする際には、賃貸管理会社に前もって予告しなければなりません。スムーズに変更をするためにも、手順を押さえておきましょう。
簡単な流れは次のとおりです。
- STEP 1新しい賃貸管理会社を探す
- STEP 2現在の賃貸管理会社に解約を通知する
- STEP 3賃貸管理会社間で引き継ぎをおこなう
- STEP 4入居者に賃貸管理会社の変更を通知する
それぞれ詳しくみていきましょう。
ステップ 1. 新しい賃貸管理会社を探す
まずは、新しい賃貸管理会社を探しましょう。信頼できる賃貸管理会社を見つけるために、複数の会社を比較検討することが大切です。信頼できる賃貸管理会社を選べば、入居率が高まり、安定した不動産経営が期待できるでしょう。
具体的には、次のような点を確認しましょう。
- 巡回の頻度
- 緊急時の対応体制
- 入居審査の厳しさ
- 実績・評判
安定した不動産経営をおこなうためには、賃貸管理会社の協力が欠かせません。複数を比較検討することで、自分に合った担当者と出会える可能性も高くなるでしょう。
ステップ 2. 現在の賃貸管理会社に解約を通知する
新しい賃貸管理会社が決まったら、現在の賃貸管理会社に解約を通知しましょう。管理委託契約書に解約時に関する記載があれば、それに従わなければなりません。
解約通知書には、以下の事項を記載します。
- 解約通知日
- 管理委託契約の締結日
- 管理委託契約の解約を希望する日
- 賃貸管理会社の会社名・住所
- オーナーの氏名・住所
- 物件の名前・所在地
- 契約書の解約条項
解約通知書は、内容証明郵便で送りましょう。差出日や届いた日、通知した内容が証明されます。
ステップ 3. 賃貸管理会社間で引き継ぎをおこなう
旧賃貸管理会社から新賃貸管理会社へ引き継ぎをおこないます。引き継ぎが不十分だと、先述したようにトラブルが発生する可能性があります。
主な引き継ぎの内容は、次のとおりです。
- 収益物件の状況
- 入居者の情報(契約期間・家賃保証会社の利用状況)
- 損害保険の加入状況
- 預かっている敷金の状況
- 収益物件の鍵の受け渡し
また、以下の書類も、引き継ぐ必要があります。
契約関係 の書類 |
賃貸借契約書 | 入居者と賃貸借契約を締結した際の書類 |
---|---|---|
家賃保証委託契約書 | 入居者が家賃を支払えなくなった時に保証会社が立て替える保証を契約した際の書類 | |
レントロール | 収益物件の賃貸借条件を一覧にしたもの | |
賃貸管理関係 の書類 |
建物管理業務報告書 | 賃貸管理会社がオーナーに対して収益物件の状況を報告するもの |
定期検査報告書 | 消防設備や水道設備などの法定点検の報告書 | |
リフォーム履歴報告書 | リフォームの内容を記載したもの | |
家賃管理関係 の書類 |
家賃収支報告書 | 収益物件における年間の収入と支出などが記載されたもの |
引き継ぎの際には、オーナーもできる限り立ち会うようにし、きちんと引き継がれたか確認しましょう。
ステップ 4. 入居者に変更を通知する
引き継ぎが終わったら、賃貸管理会社が変更になることを、すべての入居者に通知しましょう。入居者には、家賃の振込先の変更手続きをしてもらう必要があります。通知方法や内容によっては、入居者からのクレームやトラブルにつながることも。
入居者が見落とすことも考えられるため、メールや掲示板など、複数の通知方法を組み合わせましょう。また、通知書には、新しい賃貸管理会社の連絡先や新しい振込先、緊急時の連絡先などを明確に記載します。賃貸管理会社の変更に対する理解を得るために、丁寧な説明をおこなうことを心がけましょう。
賃貸管理会社を変更する際の注意点

賃貸管理会社を変更する際に、正しく引き継ぎがおこなわれなければ、トラブルに発展する可能性があります。また、適切な賃貸管理会社を選ばなければ、以前の管理内容と変わらず、後悔してしまうかもしれません。本章では、賃貸管理会社を変更する際の注意点を解説します。
複数の賃貸管理会社から比較検討する
賃貸管理会社を変更する際は、複数の会社から見積もりをとり、サービス内容や管理手数料を比較しましょう。複数を比較検討することで、より経営する収益物件に合った賃貸管理会社を選択できます。また、担当者の対応や会社の規模も比較検討することで、よりきめ細かいサービスを提供してくれる賃貸管理会社に管理を委託できるでしょう。
変更したい理由を明確にする
賃貸管理会社を変更する際には、変更したい理由を明確にしましょう。「今の会社に不満がある」という漠然とした理由では、比較検討する際に、何を基準に見ればいいのかがわからなくなってしまいます。どういう点に不満を感じているのかを明確にすることで、新しい賃貸管理会社を決める際の基準が定まり、探しやすくなるでしょう。
変更する理由やメリットを入居者に伝える
賃貸管理会社を変更する際は、入居者に変更する理由やメリットを伝え、理解を得ることが重要です。入居者のなかには、賃貸管理会社が変わることに不安を感じている方もいるかもしれません。そういった入居者に丁寧に変更する理由やメリットを伝えることで、不安の解消が期待できるでしょう。また、入居者との信頼関係を築き、安定した不動産経営をおこなうことができます。
引き継ぎをしっかりおこなう
繰り返しになりますが、賃貸管理会社を変更する際にはトラブルが発生する可能性があります。トラブルを防ぐために、引き継ぎをしっかりおこないましょう。賃貸管理会社に任せきりにするのではなく、リストを作るなどしてきちんと引き継ぎがおこなわれたか確認しましょう。
金融機関に事前に変更することを伝える
賃貸管理会社を変更する際には、金融機関にも事前に伝えましょう。融資がすでにおこなわれているため、伝える必要がないと思われるかもしれません。
しかし、賃貸管理会社を変更したことで収益性や収益物件の資産価値が下がることが考えられます。無断で変更した場合、オーナーに対する心象は悪くなるでしょう。今後も不動産経営をするにあたり、金融機関と信頼関係を築くことは重要です。直接影響をおよぼすわけではありませんが、事前に伝えるようにしましょう。
まとめ
本記事では、賃貸管理会社を変更する際のメリットや、考えられるトラブル、円満に変更を進めるためのポイントを解説しました。変更する際に、引き継ぎをしっかりおこなうことで、起こりうるトラブルは防げるでしょう。家賃の振込先口座の変更は、入居者が手続きをおこなう必要があるため、賃貸管理会社の変更に対する理解を得るようにしましょう。新しい賃貸管理会社を決める際には、後悔することのないよう、複数から比較検討することが大切です。安定した不動産経営がおこなえるよう、自分に合った賃貸管理会社を探しましょう。

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ