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賃貸の「敷金礼金」とは?相場やトラブルの対処法、敷金礼金なし物件の注意点を解説

賃貸の「敷金礼金」とは?相場やトラブルの対処法、敷金礼金なし物件の注意点を解説
賃貸で新しい住まいを探す時、敷金や礼金という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、その具体的な意味や相場について、詳しくご存知でしょうか。この記事では、敷金と礼金の仕組みを解説し、一般的な相場をご紹介します。 また、敷金のトラブルが発生した場合の対処法や、敷金礼金なし物件の注意点についても取り上げます。少しでもお得にいい物件を探すために、敷金と礼金の知識を身に付け、新しい生活のスタートを成功させましょう。

敷金・礼金とは

敷金と礼金とは、どのような目的でかかるお金で、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれのお金について、支払う目的をご説明します。

敷金とは

敷金は賃貸物件を借りる際、大家さん(貸主)に一時的に預ける担保としての役割があります。これは、家賃の不払いや部屋を退去する時の原状回復に必要な費用に充てられるものです。そのため、家賃の不払いがなく原状回復をする必要がない場合には返還されます。

敷金と保証金の違い

敷金のことを、関西地方などでは「保証金」と呼ぶこともあります。同じ目的ですが、保証金の場合はお礼の意味も少なからず入っているため、少し敷金よりも高めの傾向です。

礼金とは

礼金は、文字どおり大家さんに対して謝礼の意味で支払われます。そのため、退去時に戻ってくる可能性のある敷金とは違い、礼金は戻ってきません。

敷金・礼金の相場

敷金と礼金の相場を解説します。

敷金・礼金の相場

敷金と礼金は、それぞれ家賃の1~2カ月分の金額が相場です。ただし、地域差が大きく、関西地方は高めの料金設定になっていることもあります。

敷金が高い物件の特徴

敷金が高い物件は、ファミリー向けの広めのマンションや一戸建てに多く見られます。これは、広い分だけ退去時のルームクリーニングの費用がかかり、原状回復のための費用がかかるからです。その他、ペットの飼育が可能な物件は、ペットを飼育する時に敷金や礼金が上乗せされることもあります。

敷金・礼金を支払うタイミング

敷金と礼金を支払うタイミングについて、物件を契約した時の流れとともに解説します。

物件契約の流れ

  • STEP 1入居申し込み
  • STEP 2入居審査
  • STEP 3重要事項説明
  • STEP 4入居契約
  • STEP 5鍵の受け渡し・入居

敷金と礼金は、step4の入居契約をおこなったあとに、その他の初期費用と一緒に一括で支払います。家賃とは異なり、敷金と礼金は契約をした時に1回だけ支払うお金です。敷金は不動産会社に、礼金は大家さんに支払います。
最近では、敷金や礼金を含めた初期費用をクレジットカードでの支払いができる物件が増えているようです。手元にまとまった金額がない場合でも利用できポイントも付くため、活用できるととても便利です。

敷金の返金について

担保として一時的に預けている敷金は、どれくらいの金額が、いつ戻ってくるのでしょうか。

敷金はどのくらい返ってくる? 

事前に支払っている敷金のうち、修繕費を差し引いた金額が返ってきます。物件の修繕費には、借主が負担しなければならない場合と負担しなくていい場合があります。ここでは、その違いを見ていきましょう。 

借主が修繕費を負担しなければならない場合

借主の故意・過失、善管注意義務違反による損傷がある場合には、借主が修繕費を負担しなくてはいけません。例えば、正しくない使い方をしたことによる設備の故障や、わざと壁に穴を開けたり傷つけたりした場合です。その他、ペットを飼育した時に付いた、ひっかき傷・汚れ・臭いも借主負担の修繕となります。なお、修繕費用の目安は次のとおりです。

  • 6畳の床の張り換え:約9~20万円
  • 6畳の壁の張り替え:約4~6万円
  • 柱の修理:約1~4万円

上記はあくまでも目安となり、状態により異なることもあります。

借主が修繕費を負担しなくていい場合

一方、経年変化や各備品の耐用年数を超えている場合は、大家さん(貸主)が修繕費を負担します。借主が負担する必要はありません。日光による壁紙の変色や、入居者の責任ではない傷や破損が対象です。基本的に掃除をおこない、きれいに物件を使用していれば請求されることは少ないでしょう。

敷金はいつ返ってくる?

敷金の返却の時期に関しては、契約書の敷金に関する項目に記載されています。一般的には、退去後1~2カ月程度で返却されることが多いでしょう。

敷金・礼金ゼロ物件とは

最近では、引越しの初期費用を抑えられると人気があるため、敷金も礼金もゼロの物件が増えています。どのような理由で敷金と礼金がゼロになっているのか、メリットとデメリットをご紹介します。

敷金・礼金ゼロ物件の仕組み

礼金は大家さんにお礼として支払うお金のため、大家さんが早く借り手を見つけたいという理由から、ゼロに設定をすることが多いようです。一方、敷金は原状回復などの費用を賄うために必要なため、敷金を最初に支払わない代わりに、退去時にクリーニング代や鍵の交換代などが請求されることがあります。
また、保証会社を必須にしている場合は、家賃の滞納に備えるための敷金を必要としないため、敷金を設定しないケースも増えています。

引越しシーズンは借り手が多いので敷金や礼金を設定し、オフシーズンになると借り手が少なくなるので敷金・礼金をゼロにする物件もあります。空室にして家賃収入がゼロになるよりも、敷金や礼金をゼロにしてでも安定した家賃収入を求める考えの大家さんがいるためです。

敷金・礼金ゼロ物件のメリット 

敷金と礼金がゼロで借りられる物件のメリットは、初期費用が軽減されることです。賃貸物件に住みはじめる時の初期費用は、一般的に家賃の5倍といわれています。敷金と礼金がそれぞれ1カ月だとすると、初期費用の40%を抑えることが可能です。お金が足りなくて引越しを迷っている方や、新居での家具や家電に費用をまわしたい方にはうれしいですね。

敷金・礼金ゼロ物件のデメリット 

一方、敷金と礼金がゼロで借りられる物件のデメリットもあります。以下の3点について、借りる前に確認しておくと安心です。

1つ目は、敷金・礼金ゼロ物件だと悪条件の場合が多い傾向にあることです。立地環境が悪い、または築年数が古いなどの条件から、借り手が見つかりにくいため敷金や礼金をゼロにしている可能性があります。条件がいい物件は敷金や礼金があっても借り手がすぐに見つかるため、敷金・礼金ゼロにすることは少ないでしょう。

2つ目は、毎月の家賃が割高な場合があることです。敷金・礼金をゼロにする代わりに、毎月の家賃を少し高めに設定して、敷金や礼金分を回収する場合もあります。短期的に住む場合は敷金・礼金ゼロのほうが安く済みますが、長期間借りる場合はトータルで損をする可能性もあるでしょう。周囲の物件と比較して相場を知ったうえで、その物件がお得なのか検討してください。

3つ目は、選択肢が限られることです。敷金・礼金ゼロ物件のみで探すと、駅近や築浅などのよい条件の物件はなかなか見つからない可能性が高いでしょう。特に引越しシーズンは敷金や礼金があっても借り手が多い状況なので、わざわざ敷金や礼金をゼロに設定する物件は少なくなります。すぐに引越しをしたい状況では、敷金・礼金ゼロ物件のみに絞って探すのは難しいかもしれません。

敷金・礼金ゼロ物件の注意点

敷金・礼金ゼロ物件を借りる時の注意点を2つ解説します。後悔しないためにも、借りる前に確認しておきましょう。

1つ目は、短期解約の違約金が設定されている場合があることです。例えば、「賃貸契約を6カ月以内に解約する場合は違約金として賃料の1カ月分を支払う必要がある」などの違約金条項があります。契約時に確認しておきましょう。

2つ目は敷金の代わりに、退去時にクリーニング代や鍵交換の費用を請求される可能性が高いことです。契約書に退去時に請求される費用が書かれていることが多いため、トータルで考えた時に本当にお得になるのかを、事前に確認することをおすすめします。

敷金に関するよくあるトラブルとその対処法

退去時に返金される敷金には、以下のようなトラブルがあります。合わせて対処法も紹介します。

よくあるトラブル

敷金に関するよくあるトラブルは、以下のように3つのケースがあります。

敷金の使途・返金に関するトラブル

敷金から使用用途不明の費用が引かれて少ない金額しか返ってこなかったり、敷金が1円も返ってこなかったりというトラブルがあります。
敷金を清算する流れとして、退去時の立会いの時に修繕費の見積もりがおこなわれます。ここで、どのような基準で見積もりをするのか確認しておきましょう。その後、修繕費などが記載された敷金の精算内訳書が届きます。この時点で不明点や納得できない点があれば、不動産会社や大家さんに申し出ましょう。

原状回復費用に関するトラブル

原状回復とは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と国土交通省により定められています。そのため、通常に生活していたら経年劣化し汚れや傷になる部分は、借主が負担する必要はありません。ただし、ルームクリーニング費用は借主負担となることが多いでしょう。

なお、原状回復はトラブルが多いことから、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、東京都では「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を策定していますので、一度内容を確認しておくとよいでしょう。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」

「敷引き」契約に関するトラブル

契約時に「敷引き」という特約がある場合には注意が必要です。
敷引きとは、謝礼や自然損耗などの名目で、無条件に全額または一定額を差し引かれてしまう仕組みのことです。
敷金は返金されますが、敷引きは返金されません。特に西日本で多く見受けられる仕組みで、西日本で賃貸物件に入居する際には契約時に必ず確認をしましょう。

対処法

敷金に関する上記のトラブルを防ぐための対処法をご紹介します。

契約書をよく確認する

敷金に関する取り決めは契約書に書かれています。入居する前の契約の時に、必ず自分が不利な条件がないかを確認しましょう。敷金の返却に関する項目は必ずあるため、チェックが必要です。

入居時に写真を撮っておく

自分が入居する前からある傷や汚れは、原状回復をする責任はありません。引越しして家具などが入る前に、一度部屋の写真を撮影しておくとよいでしょう。部屋の全体だけでなく、細かい部分の傷がある場合は写真に残し、元々あった傷の証明に使います。

退去時の立会いに参加する

物件を退去する時に、不動産会社や大家さんが立会いをおこないます。その際は一緒に立会い、損傷部分の確認をチェックします。故意で付けたわけではない傷、あるいは通常利用で付く傷に関しては、経年劣化と主張するとよいでしょう。

専門機関の相談窓口を利用する

自分で敷金の返却について解決できない時は、相談窓口を利用しましょう。住まいのある市区町村の生活課などで、法律相談が可能なケースもあります。

消費者ホットライン

消費者ホットラインとは、消費者が商品やサービスを購入した時のトラブルを相談できる窓口です。電話番号は全国共通188で、近くの消費生活窓口へと案内されます。

独立法人国民生活センター

法テラス

法テラスとは、国によって設立された法的トラブルを解決するための総合案内所です。敷金に関するトラブルが発生した時、どのように対応すればよいのか無料で相談に乗ってもらえます。

日本司法支援センター 法テラス

日本消費者協会

日本消費者協会では、消費活動に関する各種相談に乗ってもらえます。消費生活相談員が状況に応じて適切なアドバイスをしてくれるため、敷金で悩んでいる場合は相談してみてはいかがでしょうか。

日本消費者協会

まとめ

敷金・礼金とは?

敷金と礼金は、入居の契約をする時に1回だけ払う費用です。敷金は家賃の滞納や退去時の原状回復に備えて、一時的に不動産会社に預ける担保の役割があります。礼金は、大家さんに対して謝礼として支払われます。なお、西日本などの一部の地域では敷金のことを保証金とも呼びます。

敷金・礼金は返ってくる?

礼金は大家さんに謝礼として支払うため返ってきません。一方、敷金は一時的に預けているお金のため、退去時にかかった費用を引いた額が戻ってきます。

敷金・礼金の相場はどれくらい?

敷金と礼金はそれぞれ家賃の1~2カ月が相場ですが、西日本のほうがやや高めの傾向など地域差があります。

敷金と礼金は物件を借りる時に必要な費用ですが、地域や物件によって相場や目的が異なります。初期費用を抑えることができる敷金・礼金ゼロ物件が増えていますが、トータルで計算すると本当に安くなるのか慎重に検討しましょう。不動産情報サイト アットホームでも敷金・礼金ゼロの物件を多く掲載しているので、ぜひお部屋探しをしてみてくださいね。

執筆者

古泉葵

2020年からフリーランスのWebライターとして活動。ライフスタイルやグルメなど幅広い分野の記事を執筆。理系大卒のため、ロジカルな文章の作成が得意。

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