このページの一番上へ

【不動産会社に聞く】IT重説とは?オンラインでの重要事項説明で気を付けるポイント

物件の内見後に申し込みをして審査に通過、いよいよ契約となる前に必ずおこなわれるのが重要事項説明(重説)です。宅地建物取引士が対面で行うのが一般的ですが、インターネット上でビデオ通話を用いて重要事項説明を受けることもでき、「IT重説」とも呼ばれています。
仕事が忙しく休日も時間が調整しにくい、遠方の大学に進学が決まった・急な転勤で現地に行く時間が限られている、海外にいて不動産会社に訪問することが難しいといった場合に、自宅で説明を受けることができる便利な仕組みです。最近では新型コロナウイルス感染症に備えて県外移動や人との接触をできるだけ減らすことが必要とされているため、オンライン内見とともに利用者は増加傾向にあります。

IT重説ってどのようなもの?

IT重説の流れや説明を受けるための条件や、メリット・デメリットについてみていきましょう。

重要事項説明とは

重要事項説明とは、不動産の賃貸借契約および売買契約をする前に、その不動産に関する「契約しようとしている物件は、このような内容で、このような条件のものですよ。いいですか?」といった重要かつ細かな事項を不動産会社が説明し、最終確認することをいいます。
これは宅地建物取引業法(宅建業法)で定められている義務で、必ず宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示したうえで説明しなければなりません。説明の際には、必ず重要事項を記載した「重要事項説明書」を借主または買主に交付する必要があります。重要事項説明を受けてその内容に納得すれば、契約へとすすむことになります。

賃貸借契約、売買契約それぞれの重要事項説明については、こちらの記事も合わせてご覧ください。

IT重説とは

IT重説とは、インターネットを使ってオンライン上でビデオ通話を用いて重要事項説明を受けることをいいます。これまでは、宅地建物取引士から対面で説明を受けることが義務付けられていましたが、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末とインターネットに接続できる環境があれば、実際に不動産会社に訪問することなく、自宅や会社、環境が整えばカフェなどで重要事項説明を受けることが可能になりました。

2017年の10月から賃貸借契約においてIT重説の運用が始まり、2021年4月からは不動産売買でもIT重説の本格的な運用が開始されています。
とはいえ必ず宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示したうえで、重要事項説明を契約前におこなうことに変わりはありません。

IT重説を行うまでの流れ

対面で重要事項説明を受けるための一般的な流れを説明します。

1.日程を決める

まずはオンラインで重要事項説明を受けたい旨を担当者に伝え、日程を決めましょう。

2.書類一式を受け取る

重要事項説明は、重要事項説明書、賃貸借契約書または売買契約書が手元にある状態で受けることが必要です。不動産会社より書類一式が届くので、事前に目を通しておきましょう。
※現行の法律では電子メールやPDFで重要事項説明書を受け取ることはできません。

3.接続確認を行う

不動産会社からIT重説をおこなうための会議用のURLや、利用するツールの連絡が来ます。
不動産会社指定のアプリをダウンロードする必要があったり、スマートフォンを利用する場合はビデオ通話やオンライン会議用のアプリを事前にダウンロードする必要があるため、当日すぐに開始できるよう準備をしておきましょう。※不動産会社により方法は異なります。

4.IT重説を受ける

映像や音声などの接続に問題なければ、宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示し、オンラインでの重要事項説明が始まります。また、重要事項説明を受けるのは契約当事者本人である必要があるため身分証明書の提示を求められることがあります。
重要事項説明書の内容で気になることがあれば、その場で必ず確認をするようにしましょう。

5.不動産会社に書類を返送する

重要事項説明を受け気になる内容が解決したら、各書類に記名押印を行い不動産会社に返送、契約をすすめることになります。
必要書類に不備があった場合は、再度書類を送ってもらい修正して返送という手間がかかるので、記入が必要な箇所をカメラに写しながら間違いがないか確認しておくと安心です。

IT重説に必要なもの

先ほど少しご紹介しましたが、IT重説を受けるには以下のものが必要になります。

  • パソコン、スマートフォン、タブレットなどビデオ通話が可能な端末
  • 安定したインターネット接続環境(Wi-Fi推奨)
  • 重要事項説明書を含む書類一式

IT重説は長時間に及ぶこともあり、もし中断した時には宅地建物取引士は直ちに重説を中止し、問題を解消してから再開しなければならないとされているため安定した接続環境が必要です。
また、カフェ等でもIT重説を受けることはできますが、手元に重要事項説明書等の書類を置いて説明を受ける必要があり個人情報の確認などの会話もおこなわれることから、個室など周りに人がいないスペースで受けることをおすすめします。

IT重説については国土交通省がガイドラインを制定しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル

IT重説のメリット・デメリット

続いて、IT重説のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

IT重説のメリット

IT重説の大きなメリットは以下の4点です。

  • 不動産店への来訪が不要で遠方でも受けられる
  • 日程調整がしやすくスキマ時間で受けられる
  • 交通費の節約になる
  • 落ち着いた環境で説明を受けられる

上記以外に、密になる状態を避けられるのもメリットです。対面で重要事項説明を受ける場合でも、不動産会社ではガイドラインに沿った新型コロナウイルス感染対策がされていますが、外出の自粛が必要な時期や、ご自身の体調が心配な場合はオンラインで説明を受けるのがよいでしょう。

IT重説のデメリット

IT重説にデメリットはあるのでしょうか。
しいて言えば通信料が発生することです。スマートフォンを利用する場合は特に、端末に通信費が発生するので、長時間かかるかもしれないことを考えるとWi-Fiで接続するのがよいでしょう。インターネット回線が不安定な場合に、音声が聞き取りづらくなったり映像が止まったり乱れたりすることがあります。説明内容が十分に理解できるよう、また中断を避けるためにもWi-Fi環境が整った場所から接続することをおすすめします。

不動産のプロに聞く IT重説で気を付けるポイントとは

アットホームでは、全国のアットホーム加盟店を対象に調査した「不動産のプロが選ぶ!『オンライン内見・重要事項説明で気を付けるポイント』ランキング」を2021年9月に発表しました。
実際にオンラインでの重要事項説明を実施している不動産会社に聞いた、注意するポイント・IT重説編を見ていきましょう!

オンラインで重要事項説明を聞く際に、気を付けるべきことランキング

1位 当日までにアプリやシステムなどの準備をしておく

「当日までにアプリやシステムなどの準備をしておく」が71.1%で1位でした。
不動産会社によりIT重説に使うツールが異なるので、連絡があった利用方法で接続ができるか、指定のアプリのダウンロードが必要であれば自身の端末で問題なく動作するか前もって確認しておきましょう。

2位 「契約書」「重要事項説明書」などの書類を手元に用意しておく

「『契約書』『重要事項説明書』などの書類を手元に用意しておく」が70.4%と僅差で2位でした。必要書類が手元にない状態では重要事項説明は実施できないため、必ず用意しておきましょう。

3位 事前に「契約書」「重要事項説明書」などの書類を読んでおく

IT重説が行われる前に、重要事項説明書など必要書類一式が郵送で届きます。普段見慣れない不動産用語や法律用語など専門用語が並び、情報量も多いので、時間を取って読み込み、わからない・気になる内容をあらかじめ確認しておくと当日がスムーズです。

4位 安定した通信環境を整える

4位は「安定した通信環境を整える」で52.0%でした。通信環境が悪いと、映像や音声が不安定になり、映像が止まったり音声が途切れてしまうなどの不具合が生じてしまいます。何度も質問しなければならず予定より時間がかかる、あらためて説明の時間を調整することになるなど時間のロスを作らず、スムーズに話をすすめるためにも安定した通信環境が必要です。
できるだけ安定した通信環境を確保するためには、Wi-Fi環境があるとよいでしょう。

5位 なるべく前後の予定を空けておく

重要事項説明は賃貸物件の場合でも30分~1時間程度、物件を購入する場合は1時間~2時間程度かかるといわれており、その物件の特性や確認する内容によってもかかる時間は変わってきます。
最終確認をする場なので、急いでよくわからないうちに契約するという事態を防ぐためにも、なるべく時間にゆとりを持って説明を受けるようにしましょう。

説明内容を十分に理解するために映像を視認でき、かつ、音声を聞き取ることができる環境があること、書類を事前に確認しておくことでスムーズにIT重説を受けることができますね。

1位~8位までのランキング結果

1位から8位までをまとめたランキングがこちらです。

Q. 住まいを契約するお客さまがオンラインで重要事項説明を聞く際に、気を付けるべきことを教えてください。(複数回答)
順位 制度 割合(%)
1 当日までにアプリやシステムなどの準備をしておく(スムーズに進めるため) 71.1
2 「契約書」「重要事項説明書」などの書類を手元に用意しておく(スムーズに進めるため) 70.4
3 事前に「契約書」「重要事項説明書」などの書類を読んでおく(スムーズに進めるため) 59.2
4 安定した通信環境を整える(映像や音声が不安定になることを防ぐため) 52.0
5 なるべく前後の予定を空けておく(スムーズに進めるため) 44.1
6 パソコンやスマートフォンを充電しておく(スムーズに進めるため) 41.4
7 Wi-Fiなどを利用する(通信費を節約するため) 36.2
8 周囲に人がいない静かな環境をつくる(スムーズに進めるため) 28.3

※「その他」3.3%、「あてはまるものはない」1.3%

不動産会社から見るIT重説を行うメリット

オンラインでの重要事項説明は、遠方の方も同席できるというメリットがあり、学生のお客さまが、遠方にいる親御さんとオンラインで一緒に説明を受けたというケースもあったようです。
なかには海外から手続きされるケースも。また、県外移動や対面のやり取りを自粛されている方からは、コロナ感染対策になって良かったという声があったようです。

IT重説を利用した方の声

不動産会社に聞いた、オンラインで重要事項説明を行った際のエピソードをピックアップしてご紹介します。

  • 県外でお店に来られない方に、「IT重説で手間が省けました」と言っていただけました。(大阪府)
  • 遠方にお住まいの未成年の方でしたが、保護者の方がご一緒に東京に来られないようでしたので、重説が聞けて質問もできたので喜んでおられました。(東京都)
  • 時間短縮や来店しなくてよい事で、予定が組みやすいと喜ばれた。(大阪府)
  •  
  • 仕事の休み時間にIT重説をおこなった。来店する時間が不要なのでそこは喜ばれた。県外など遠方のお客様でコロナの関係で来店することなく契約したいという希望の方の希望にこたえることができた。(福岡県)

IT化が拡大する非対面式での不動産取引

ITを利用した非対面式での不動産取引に関する手続きは拡大しています。
インターネット上の物件個別の情報量も、パノラマ画像で内観・外観が見られて詳細が検討しやすくなっているほか、不動産会社との内見前の相談や、内見自体もオンライン化が進んでいます。
IT重説を受け契約締結となれば、契約書類の送付について現行では郵送での対応となりますが、オンラインでの契約についても、デジタル関連法案が2021年5月12日に参議院で可決され成立したことから、2022年5月の宅建業法改正を経て、不動産取引における完全オンライン契約が実現することになります。
不動産取引のIT化は以前から徐々に始まっていたことではありますが、コロナ禍で利用者が増え、さらに加速していくことが想定されます。

オンライン内見についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。

まとめ

契約前に不動産会社の店舗に訪問する時間のない方、日中や休日の時間調整が難しい方のほか、自宅等の落ち着ける環境で重要事項説明を聞いてから契約したいという方も、オンラインのIT重説を受けるという選択肢があることを知っておきましょう。オンラインであっても対面であっても、必ず確認することや注意するポイントは同じです。

オンライン内見、IT重説が浸透し必要な時にオンラインを利用できる以外に、近い将来は書類のやりとりや押印もオンライン上で完結が可能になることから、一度も不動産会社に訪問せずに引越しするというケースも増えていくかもしれないですね。

<調査概要>

■調査対象:重要事項説明編
オンラインでの重要事項説明を実施したことがあると回答した全国のアットホーム加盟店 152店
■調査方法:インターネットによるアンケート調査
■調査期間:2021年6月1日(火)~6月7日(月)

関連する記事を見る
入居審査を無事通過すれば、いよいよ契約です。新しい生活までの最終ステップに安心していることでしょう。でも、契約書は普段なかなか見る機会がないもの。小さな文字で書かれている事項が多く、なんとなく流し読みしてしまうことも。しかし、契約書を取り交わすときには、しっかりと確認しておきたい部分はたくさんあります。契約を結んだ後に「えっ!そうだったの?」と慌てないために、確認ポイントを把握しておきしましょう。
住まいの賃貸借契約に際しては、借主もいろいろと準備しなければいけません。準備不足により契約が遅延してしまえば、その後の段取りに影響してしまいますし、そもそも契約自体が流れてしまうという最悪の事態も起きないとは言えません。そんなことにならないよう、賃貸借契約時には何を用意すべきか、注意点は何かを確認しておきましょう。
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る