家賃の値下げ交渉はできる?ベストなタイミングとポイントを徹底解説!

毎月の固定費である家賃を抑える一つの方法として、値下げ交渉があります。
この記事では、家賃の値下げ交渉の方法や、交渉するにあたって押さえておきたいポイントを解説します。
記事の目次
家賃の値下げ交渉はできる?

「物件ごとに設定されている家賃を値下げ交渉できるの?」と疑問を持つかもしれません。結論から申し上げますと、値下げ交渉は可能です。
ただし、値下げの交渉をするために知っておくべき知識があります。「家賃がどのように決まるのか」「支払った家賃がどのように使われるのか」を知ることで、値下げ交渉をすべきか否か、どれくらいの金額が妥当かを判断できるようになるでしょう。
そもそも家賃はどのように決まる?
家賃を決める方法には、「積算法」や「賃貸事例比較法」があります。
積算法は、物件のオーナー(貸主)がどれだけの収益性を確保したいかを基準に賃料を割り出す方法です。賃貸事例比較法では、近隣エリアで条件が類似する物件とさまざまな項目を比較しながら決めます。
一般的に使用されるのは、賃貸事例比較法です。その地域の家賃相場が反映されるため、家賃が相場どおり、もしくは相場より割安な設定であれば、大きな値下げが期待できない場合もあります。
家賃を左右する項目や要因は、以下のようなものが挙げられます。
立地 |
・最寄り駅・沿線
・利用できる路線数
・駅からの距離・時間
・生活環境(買い物施設や公園、病院などの充実度)
・治安
・最寄り駅からのアクセスしやすさ
・学校区や地域のブランド
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建物 |
・建物の構造(RC造、鉄骨造、木造等)
・築年数
・世帯規模
・維持管理状況(過去の修繕履歴等)
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建物共用部 |
・共用設備等の充実度
・宅配ロッカー
・24時間ゴミステーション
・オートロック
・セキュリティシステム
・駐輪場・バイク置き場
・駐車場
・管理状況(清掃や管理人・管理会社の有無など)
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専有部 (部屋) |
・広さ
・間取り
・階数、眺望、陽当たり(バルコニーの向き等)や風通し
・室内の設備
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その他 |
・地域での需要の大きさ(希少性)
・募集時期
・建物内で起こった事故・事件
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支払った家賃はどう使われる?
支払った家賃の一部はオーナーの家賃収入として収益になります。オーナーが借り入れしている場合は、ローンの返済のために使われるでしょう。
また、管理会社への支払いやエレベーター、セキュリティなど共用部分の定期的なメンテナンス費用、外壁や屋根などの補修費用、固定資産税の支払いに使われるのが一般的です。
家賃収入と聞くと家主の利益になることをイメージするかもしれません。しかし、入居者が快適に過ごすため、そして新たな入居者を募集しやすくするため、建物や土地の維持管理にも使われています。
家賃交渉に失敗しても入居・居住はできる?
先述のとおり家賃の値下げ交渉は可能ですが、最終的にはオーナーの意向で決まるため、必ずしも交渉が成功するわけではありません。需要と供給のバランスも家賃に影響を及ぼします。
周辺の物件と比較して家賃が適正あるいは低い場合もあります。建物を維持管理するうえで、最適化された家賃設定になっていることもあるでしょう。
交渉がうまくいかない場合でも、入居できない、あるいは住み続けられないわけではありません。
家賃の値下げ交渉は誰にする?

基本的に家賃の値下げ交渉は、オーナーに直接おこなうことはありません。
新たに入居する場合は、オーナーと入居希望者の間に入って仲介する不動産会社を通じて交渉することになります。
また、契約更新のタイミングで値下げ交渉をする場合も、基本的にオーナーから物件の管理を委託されている管理会社を通じておこないます。
家賃の値下げ交渉をするタイミングは?
家賃の値下げ交渉をする時期やタイミングはいつがよいのでしょうか。交渉のタイミングは、入居申し込みの前、入居中、そして契約更新時があります。
入居中は、契約期間中の途中で契約書を変更する手間が新たに生じるため、管理会社やオーナーの負担を考えると交渉のハードルは高くなりやすいでしょう。
ここでは入居申し込み前と契約更新時に値下げ交渉をしたほうがいい理由や伝え方を解説します。
入居申し込み前
オーナーがマンション・アパート経営で一番気になるのは入居率です。満室に近い方がより家賃収入が多くなるため、空室をいかに少なくするかを重要視しています。その懸念点を材料に交渉しましょう。
入居申し込み前は、近隣で条件が似ている物件があれば交渉材料として活用できます。物件の調査や内見をすると、周辺エリアの家賃相場も把握できます。ほかの物件の家賃や相場をもとに、交渉の余地を探ります。
また、長く空き家になっている部屋や空室が多い物件では、早く空室を埋めたいというオーナーのニーズを背景に交渉できるでしょう。
伝え方は「できれば少し値下げして欲しい」と交渉してもうまくいきません。「物件をとても気に入って、〇〇〇円であればすぐに入居したい」「〇〇〇円まで下げていただければすぐに決めたい」「最低〇年は住む予定である」など、希望の家賃を一方的に伝えるのではなく、オーナー側のメリットとなることも含めた伝え方を考えましょう。
値下げ交渉の時期は、1月から4月の繁忙期より、問い合わせ数が少なくなる閑散期の5月から9月が交渉しやすいでしょう。
契約更新時
値下げ交渉のもう一つのタイミングは、入居後の契約更新時期です。
契約更新は、契約を継続するかの判断も含めての手続きのため、新たな条件を提示するにはよいタイミングです。長い間トラブルを起こさずしっかりと家賃を支払っている入居者からの家賃交渉であれば、オーナーも断りづらいこともあります。
近隣に条件に合う新しい物件が建設され、周辺の物件の家賃が下がっている場合は、交渉の材料になり得ます。また、通常とおり使用していても壁紙や畳などは傷んでくるため、部屋の状況や住み心地の点で変化があれば、そういった点も踏まえ交渉するとよいでしょう。
家賃の値下げ交渉のポイント

値下げ交渉をどういったタイミングで誰におこなうのかを解説しましたが、ここでは値下げ交渉をうまく進めるためのポイントを4つ解説します。
値下げの理由・根拠を用意する
家賃の値下げ交渉では理由や根拠があるほうが、仲介会社や管理会社も伝えやすく、オーナーも承諾しやすくなります。周辺の相場や物件の不人気要素が値下げに有効です。
周辺の相場を確認する
まずは周辺の家賃相場がどうなっているかをしっかりと確認しましょう。
立地条件や築年数以外にも、家賃を決定するさまざまな要因があります。そういった点も含め、家賃相場がどれくらいか、入居予定の物件の家賃とどれくらいの差があるかを根拠として示せるように準備しましょう。
近隣の相場情報や類似の条件の物件を探す際には、不動産情報サイト アットホームを活用すると効率よく探すことができ便利です。
物件の不人気要素を明確にする
物件の不人気要素を明確にしましょう。
具体的には賃料に対して物件の価値が低いと感じられる要素や、住み替えを考えざるを得ない要素を挙げます。この時主観的な理由よりできるだけ客観的な事実を伝えるほうがよいでしょう。
- 築年数が古い
- 駅から遠いうえ交通の便が悪い
- 設備が古い
- 空室の期間が長い・空室が多い
- 日当たりが悪い
- オートロックではない、防犯面に不安がある
また、建物自体の問題でなくても、周辺に新たに建物が建ったことで日当たりや風通し、騒音など生活環境が変わった場合や、近隣のスーパーや商業施設がなくなり生活利便性に影響するような環境の変化も価格交渉の根拠として有効です。
ただし、この方法は物件の持つ不人気要因と家賃とのバランスがとれていない場合にのみ使えます。もともと周辺相場より家賃が低い場合やマイナス要因が家賃に反映されている場合は、交渉は難しくなるでしょう。
値下げ幅を家賃の5%程度にする
交渉する値下げ幅は、もとの家賃の額にもよりますが、目安として5%程度までに抑えるとうまくいきやすいでしょう。10万円の家賃であれば5,000円まで、5万円の家賃であれば2,500円までとなります。
1割以上の値下げ交渉をした場合、オーナー側からすると、10カ月程度の短い期間で、これまでの1カ月分の家賃収入が失われることになります。収益性に大きな影響を及ぼすため、交渉のハードルは高くなるでしょう。
オーナー・管理会社にとってのメリットを提示する
値下げ交渉をする代わりに、オーナーや管理会社のメリットになる点をしっかりと提示することも大切です。
- 即決する
- 契約を更新する
- 長く住む予定である
- 早い時期に入居できる
- 勤務先がしっかりしているので安定して支払い続けられる
- 入居時の壁紙の交換やハウスクリーニングは必要ない
他の入居者と比べてメリットとなりそうな点を含め、オーナーや管理会社にとってのメリットを交渉材料として活用しましょう。
誠実さを見せる

よい入居者であると伝わるよう誠実な対応を見せることが大切です。
家賃の値下げ交渉は、すべての人がしているわけではありません。交渉せずに入居している人もいます。家賃の相場はあるものの、最終的に家賃を決めるのはオーナーです。交渉に応じず代わりの入居者を探すことも可能です。
そのため、「あくまでも入居者側の事情や周辺相場などから考えた希望として交渉させてほしい」と気持ちを伝えましょう。
交渉することが当たり前、家賃を下げて当たり前と横柄な態度は避けましょう。誠実に対応することで、信頼度が上がり、家賃交渉をしやすくなります。
家賃の値下げ交渉をする時の注意点
値下げ交渉の方法やタイミングをお伝えしましたが、ここでは値下げ交渉するうえで特に注意すべき点を4つ解説します。
無理な値下げ交渉はしない
設定されている家賃が不相当であるかのような、無理な値下げ交渉をしないことです。
値下げ交渉の目安として5%程度とお伝えしましたが、オーナーはマンションやアパート経営を事業としておこない、事業計画や投資の採算性、維持管理費の負担などをもとに家賃設定をしています。
そのため無理な値下げ交渉をし過ぎると、交渉が通らないばかりでなく、入居自体が断られる可能性もあるため注意しましょう。
丁寧な対応を心がける
値下げ交渉の仕方は丁寧な対応を心がけることが大切です。
あくまでも最終的に家賃を決めるのも、入居者を決めるのも、建物の所有者であるオーナーです。物件探しの状況や値下げ交渉の理由や根拠、オーナーのメリットなどを示しながら丁寧におこなうことが必要となります。
また、入居したいかはっきりと決まらないうちに、とりあえず家賃が下げられるかを確認する交渉の仕方もよくありません。入居の意思が固まり、この金額であれば入居したいことを丁寧に伝えましょう。
値下げありきで物件を選ばない
値下げを前提に物件を探すことはよくありません。
家賃は相場だけでなく、事業計画や維持管理のコストなど、さまざまな点を考慮して決められています。そのため、家賃を下げてもらう前提で物件を選ぶことはやめましょう。
また、入居審査では収入や勤務先、勤続年数などさまざまな項目を踏まえ、支払い能力を審査されます。家賃が高すぎることを理由に値下げ交渉をすると、審査自体に通らない可能性もあります。
物件のネガティブな点は慎重に伝える
ほかの物件と比べて建物の設備や環境面で劣る点やネガティブな要素を伝える場合は、より慎重な対応が必要です。
一般的に、どの物件にもそれぞれの特徴やメリット・デメリットがあり、比較することはプロでも難しい場合があります。
また、長年マンション経営をしてきた建物には当然こだわりもあるため、オーナーや管理会社の心象を悪くしないように慎重な伝え方が求められます。
家賃交渉以外で費用を抑える方法

家賃の値下げ交渉を解説しましたが、ここでは家賃交渉以外で費用を抑える方法を3つ紹介します。
予算に合った物件を探す
予算に合った家賃の物件を探すようにしましょう。
もともと予算に合わない家賃の物件で交渉することは困難です。他の類似物件の家賃と比較をするにしても、相場が高く、値下げ交渉の材料にはなりにくいでしょう。
また、家賃は生活費に占める割合が高く、固定費としてかかり続けるコストです。無理なく支払いが継続できる家賃の物件を探しましょう。
初期費用を交渉する
家賃ではなく初期費用を交渉する方法です。継続的なランニングコストではなく、1度だけの費用のため、家賃と比べると交渉のハードルは下がりやすいでしょう。
- 礼金をなくしてもらう
- フリーレントなしをありにしてもらう
- フリーレントの期間を長くしてもらう
フリーレント物件は、半月~3カ月程度の一定期間の家賃を無料で借りられる物件です。多いのは1カ月無料の物件です。
賃貸物件の入居時には敷金や礼金のほか、前家賃や仲介手数料、保証料、火災保険料など、およそ家賃の5~6カ月分の費用が一般的にかかります。さらに引越し費用や新生活にともなって必要な支出もあります。
家賃の値下げ交渉が難しい場合でも、入居時の初期費用を交渉することで、まとまった支出を抑えられるでしょう。
クレジットカードで初期費用・家賃が支払える物件を探す
初期費用や家賃をクレジットカードで支払える物件を探すのも費用を抑える方法です。
入居時にかかるまとまった費用や必ず毎月必要となる家賃の支払いで、クレジットカードのポイントが還元されれば、無理なくお得に貯められます。
家賃の値下げ交渉でよくある質問

最後に、家賃の値下げ交渉でよくある質問をいくつかまとめました。
家賃の値下げ交渉はできる?
家賃の値下げ交渉は可能です。値下げ交渉がうまくいかなかった場合でも入居ができなかったり、住み続けられないわけではありません。
ただし、入居者として問題がないことを示すためにも、交渉は丁寧な対応を心がけましょう。
家賃の値下げ交渉はどうやってする?
家賃の値下げ交渉は、入居したい意思が固まってからすべきです。入居するかわからないままとりあえず家賃が下がるかを交渉することはおすすめできません。
また、値下げ交渉は、オーナーに直接ではなく、入居前であれば仲介不動産会社、契約更新時であれば管理会社を通じておこなうことが一般的です。
家賃の値下げ交渉のタイミングは?
値下げ交渉のタイミングは、基本的には、入居申し込み前と契約更新時がよいでしょう。
賃貸借契約を締結する前、契約内容が変わる可能性もある更新のタイミングが交渉しやすく、手続きとしてもスムーズに進められます。
家賃の値下げ交渉のポイントは?
家賃の値下げ交渉のポイントで特に大切なのは、交渉の理由や根拠をしっかりと提示すること。また、大幅な値下げを求めて無理な交渉をしないこともポイントです。
賃貸借契約は、賃貸人(オーナー)と賃借人(入居者)の長期間にわたる信頼関係をベースとする契約形態です。
信頼関係を壊すことがないよう丁寧な交渉を心がけましょう。
まとめ
ここまで家賃の値下げ交渉について解説したとおりに、交渉にはいくつかポイントがありました。
- 家賃がどのように決まるか、何に使われるかを知る
- 入居希望の意思が固まってからおこなう
- 入居申し込み前、契約更新時の手続き的な負担が軽いタイミングでおこなう
- 家賃相場など値下げ交渉をする根拠を明確にして提示する
- 値下げ交渉する代わりにオーナーのメリットも併せて伝える
- 無理な値下げ交渉はしない
- 丁寧・誠実な対応をこころがける
- 家賃以外の初期費用の交渉も検討する
オーナーは「空き家を減らしたい」「空き家の期間を短くしたい」「居住者にはできるだけ長く住んでほしい」と考えています。こういったオーナーの心境をうまくついて家賃の値下げ交渉をすると、うまくいくこともあるでしょう。
しかし家賃は、相場をはじめ一定の根拠のもとに決められており、オーナー自身や建物、周辺環境の状況が大きく影響しています。
値下げ交渉するとしても、そういった点も考慮しながらマナーや節度をもって交渉しましょう。