「告知事項あり」とは?賃貸物件を探す前に知っておきたい意味とポイントを解説!

本記事では、告知事項ありの賃貸物件を借りるかの判断基準となる、告知事項ありの賃貸物件のメリット・デメリット、借りる際に注意が必要なことなどについて解説します。
記事の目次
「告知事項あり」とは?

「告知事項あり」とは、契約する前に告知しなければならないことがある物件のことです。物件内(室内だけではなく共用部分も含む)で事件や事故など起きてしまい人が亡くなってしまった場合や、嫌悪を感じる環境が周辺にあるなど、事前に説明をしなければならない事項を指します。告知事項は、宅地建物取引業法第35条により、書面などに記載しなければいけないと決められています。なぜなら告知事項は、借主が借りるかの判断に大きく影響することだからです。また、告知事項には「事故物件」や「特別募集物件」、「心理的瑕疵あり」などのさまざまな呼び方・表記があります。
告知事項に該当する瑕疵(かし)は4種類
告知事項といっても、さまざまな種類の瑕疵があります。なお、瑕疵とは本来有している性能を低下させるような欠点・キズのことです。告知事項に該当する瑕疵には、次の4種類があります。
- 心理的瑕疵
- 環境的瑕疵
- 物理的瑕疵
- 法的瑕疵
ここからは各瑕疵について、詳しく見てみましょう。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、物件を借りるにあたり、心理的な抵抗が生まれてしまうような事情やキズです。たとえ人が亡くなっていなくても、借りるのに躊躇するような事項があれば、その事項は心理的瑕疵に該当します。例えば、賃貸対象物件から人が飛び降りて自殺をした場合や過去に火災や大きな事件が起きたなど。この場合、室内で人は亡くなっていないものの、心理的瑕疵と判断される可能性があります。
なお、心理的瑕疵 = 告知事項ありではありません。心理的瑕疵は告知事項のなかの一部です。
心理的瑕疵のガイドライン
心理的瑕疵に対しトラブルが発生することから、2021年10月に国土交通省が心理的瑕疵に関するガイドラインを公表しました。このガイドラインによると、病気や老衰などによる室内での自然死や日常生活のなかでの不慮の死は、基本的に告知事項に該当しませんが、遺体の状況や事件・事故と区別がつかないような時には、告知事項に該当するとされています。
また、室外で起きた死亡や、対象物件に関係しないような死亡事故などの場合は、告知事項に該当しません。例えば、借りる予定の賃貸物件の元居住者が、ただ単に敷地内駐車場で事故にあって死亡した場合などは該当しないということです。
参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、賃貸物件の周辺にある借主の借りる気持ちを阻害してしまうような施設などのことをいいます。環境的瑕疵にあたる可能性がある一例として次のような施設が挙げられます。
- ごみ処理場
- 火葬場
- 刑務所
- 軍事施設
- 空港
- 墓場
- 指定暴力団事務所 など
これらの施設が賃貸物件の近くにある場合は、環境的瑕疵があると告知しなければなりません。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、賃貸物件の建物自体にキズがあることです。建物が雨漏りしている、アスベストが使用されている、排管が破損しているなどが物理的瑕疵に該当するでしょう。当然ながら、物理的瑕疵も告知事項が発生します。
法的瑕疵
法的瑕疵とは、法律違反状態にあることです。例えば賃貸物件が違法建築である、再建築不可の土地であるなどが該当します。法的瑕疵は主に不動産売買の時に大きな影響を与えますが、賃貸の場合では問題になることはあまり多くありません。
告知事項の説明義務と期間
告知事項を説明しなければならないという「説明義務」には、告知の必要がある「説明義務期間」があります。この説明義務期間は売買なのか賃貸なのか、事件・事故の社会的影響度によって期限が異なります。
売買の場合、告知事項の説明義務の期間に期限が決められていません。そのため、十数年前に起きた事件・事故のことも説明する必要があります。
一方、賃貸の場合、告知事項の説明義務は3年です。そのため、賃貸物件を借りる日から3年以上前に起きた事件・事故については、説明義務が発生しません。ただし、あくまでも3年は目安で、発生した事件・事故が社会的に大きな影響を与えたものである場合は、3年を過ぎても告知する必要があります。
「告知事項あり」の賃貸物件の特徴

告知事項は貸主、借主に大きな影響を与える事項です。そのため、賃貸物件そのものや賃料などにも影響します。本章では、告知事項ありの賃貸物件の特徴について解説します。
備考欄に「告知事項あり」と記載されている
心理的瑕疵、環境的瑕疵または物理的瑕疵などがある賃貸物件の場合、その賃貸物件の情報(チラシ・インターネット問わず)には告知事項ありと記載しなければなりません。
ただし、「告知事項あり」と記載すればよいため、告知事項の内容について記載されていないことも。そのため、告知事項の内容については、不動産会社に確認する必要があります。告知事項は告知しなければならないので、問い合わせすれば内容を教えてくれますよ。
相場より賃料が安い
告知事項ありの賃貸物件になると、借りる人からの需要が減る傾向にあります。そのため、相場より賃料が低くなることも。告知事項ありの賃貸物件は、一般の賃貸物件の賃料に比べて約1割~5割低い傾向があるといわれています。どの程度賃料を下げるかは貸主の考えによるため、どのくらい賃料が下がるのかという明確な目安はありません。
フリーレント期間が比較的長い
告知事項ありのフリーレント物件は、通常のフリーレントより期間が長く設定されている傾向もあります。通常のフリーレントは1カ月くらいが多いのに比べて、告知事項ありの賃貸物件のフリーレント期間は3カ月程度の場合もあるでしょう。告知事項ありの賃貸物件は借手の需要が多くないため、ここまで期間を延長しないと借手がなかなか見つからないのです。
なお、フリーレントとは入居から一定期間、賃料が発生しない賃貸物件のことです。
「告知事項あり」の物件のメリット

告知事項ありの賃貸物件には心理的瑕疵などデメリットもありますが、メリットと呼べる部分もあります。告知事項ありの賃貸物件の主なメリットは次のとおりです。
- 賃料が安い
- 部屋がきれいだったりリフォームされたりしている
- 条件のよい立地に住める
本章では、告知事項ありの物件のメリットについて解説します。
賃料が安い
告知事項ありの賃貸物件は、賃料が比較的安く、生活費を抑えられます。心理的瑕疵などがあり借手の需要が減ってしまうと、借りてもらうためには賃料を下げなければいけません。賃料をどのくらい下げるのか目安はありませんが、貸主によっては賃料を相場の半額にするケースもあります。そのため、心理的瑕疵など気にせず、賃料を抑えたいというような人にあっているでしょう。
部屋がきれい、リフォームされている
室内で事件・事故が発生した場合、事件・事故が発生した箇所は念入りに掃除されたりリフォームされたりします。シミや臭いが取れない場合は、部分的ではなく部屋全体をリフォームすることも。そのため、一般的な物件よりも室内がきれいになっているケースが多くあるでしょう。
ただし、告知事項ありの賃貸物件が必ずしもキレイというわけではありません。賃貸物件によっては、事件・事故現場のみ清掃・リフォームされ、他の場所はリフォームしていないという場合もあります。
条件のよい立地に住める
告知事項ありの賃貸物件に住みたいと思う人は少なく、場合によっては空き家になりにくい一等地の賃貸物件を借りられる可能性があります。都心のターミナル駅から徒歩1~2分の賃貸物件や、高級住宅地に立地している賃貸物件など、通常では空室待ちが出るような賃貸物件に住める可能性があります。
「告知事項あり」の物件のデメリット

告知事項ありの物件には、メリットがある一方でデメリットもあります。そのため、告知事項ありの賃貸物件を借りる前に、告知事項ありの賃貸物件のデメリットも理解しておきましょう。ここからはデメリットについて解説していきます。
- 入居後に瑕疵の要因が気になる
- 住所が知られる可能性もある
入居後に瑕疵の要因が気になる
告知事項ありの賃貸物件に入居すると、入居後に瑕疵の要因が気になり、ストレスが溜まるケースもあります。例えば、賃貸物件のすぐ近くに工場があり、工場稼働時にはニオイで窓が開けられないなど環境的瑕疵が影響することもあるでしょう。また、心理的瑕疵のある賃貸物件に入居した場合、過去に人が亡くなっていることが気になり精神的に不安を感じたり、近隣からの噂が気になったりすることがあるかもしれません。
住所が知られている可能性がある
告知事項ありの内容が有名な事件・事故の場合、その賃貸物件がインターネットやSNSなどで特定されやすく、住所が知られてしまう可能性もあります。住所が知られてしまうと、事件・事故が起きた賃貸物件を借りた人がどのような人なのか、興味本位で見に来る人などが現れることも。このようなことが起きると、トラブルに巻き込まれやすくなるため注意が必要です。
「告知事項あり」物件に関する注意点

「告知事項あり」物件に関しては、注意しなければならない項目があります。注意点を理解し、賃貸物件を借りるようにしましょう。
- 新築でも心理的瑕疵がともなう物件の可能性がある
- 心理的瑕疵が告知されないこともある
- 生活していくうちに瑕疵が気になることがある
本章では、「告知事項あり」物件に関する主な注意点について解説します。
新築でも心理的瑕疵がともなう物件の可能性がある
告知事項ありの物件は中古だけでなく、新築にもあることに注意が必要です。建築中に人が亡くなれば、心理的瑕疵として告知事項の対象になります。また、建物が完成したものの手抜き工事で耐震性が基準を満たしていなければ、物理的瑕疵に該当します。
このように、新築だからといって告知事項がないとはいえないため、新築の賃貸物件を借りる時にも告知事項には注意しましょう。
心理的瑕疵が告知されないことがある
「告示事項あり」と物件資料に書いてなくても、告知事項に該当する場合があります。貸主のなかには、告知事項に該当する事件・事故があっても隠す人もいます。このような場合、不動産仲介会社も事件・事故があったことを把握できず、告知事項を借主に伝えられません。
また、先に説明した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に沿って、自然死や日常的に起こりうる不慮の事故に関しては告知されない可能性があります。
このような事態を防ぐには、賃貸物件の近隣で事件・事故があったかインターネットサイトなどで調べるしかありません。近隣の人に聞いて回ると、トラブルにつながる可能性があるので、周辺確認はしないようにしましょう。
生活していくうちに瑕疵が気になることがある
告知事項を了承して入居したとしても、入居後に瑕疵が気になってしまうケースがあります。例えば刑務所の近くの賃貸物件を借りたとして、入居当時は刑務所について気にならなかったとしても、他の刑務所で脱獄騒ぎがあったなどのニュースを聞くと心配になってしまうものです。
また、賃貸物件の周辺に工場がある場合、内覧日に稼働しておらず音はしなかったが、入居後にかなりの騒音を発することがわかったなども考えられます。このように、環境的瑕疵は入居をしてみないとわからないこともあるため、注意が必要です。
まとめ
「告知事項あり」の物件について詳しく解説しました。告知事項ありとは、心理的・環境的・物理的・法的瑕疵がある不動産のことです。事件・事故などで人が亡くなったことだけではなく、周辺に工場や刑務所、墓場などがあることも瑕疵に該当します。
告知事項ありの賃貸物件には、メリットとデメリットの両方があり、注意しなければならないことも多くあります。そのため、告知事項ありと物件情報に表記があれば、詳細を不動産会社に確認しましょう。また、告知事項ありと記載されていなくても気になる点がある時には、確認して不安を解消してから新生活を始めることをおすすめします。