【専門家に聞く】イノシシに遭遇したらどうする?正しい対処法で身を守ろう
記事の目次
イノシシに遭遇したらどうすべき?

山道や公園、時には住宅地の近くでもイノシシと出合うことがあります。突然の遭遇は怖いものですが、とっさに走ったり騒いだりするとイノシシが獲物や敵と思い襲ってくるため大変危険です。大切なのはイノシシを刺激しないことです。子連れや犬の散歩中でも慌てず、落ち着いて距離を取り、逃げ道を確保しながら安全に立ち去りましょう。イノシシに遭遇した時に具体的どのような行動をすべきか解説します。
イノシシを刺激しない
イノシシと遭遇したら、まず意識したいのは刺激しないことです。大声を出したり、手を振ったり、石を投げたりして追い払おうとすると、驚いたイノシシが興奮して突進してくる危険があります。写真を撮ろうと近づくことも危険です。子どもや犬がいる場合も騒がせず、自分も落ち着いて行動しましょう。
慌てずに静かにその場を離れる
距離があるうちに静かにその場を離れましょう。急な動きはイノシシの警戒心を高めたり、興奮して襲ってくる可能性があるため、体の向きを保ったまま背中を見せずにゆっくり歩いて後退するのが基本です。イノシシと遭遇したら来た道や開けた場所へ戻るように退避します。集落や道路側へ移動できれば安全度が上がるので、周囲を確認しつつ落ち着いて退路を選び、イノシシに“危害を加える意図がない”ことを伝えるような行動を心がけてください。
ゆっくりあとずさりしながら立ち去る・物陰に隠れる
イノシシに背を向けて逃げるのではなく、様子を見ながらゆっくりあとずさりして距離を確保します。足元を確かめつつ、木や柵、車などの物陰を間に入れると安心です。遮るものがあれば視線が切れ、イノシシも落ち着きやすくなります。イノシシと遭遇したら安全な場所へ移動できるまで、急な方向転換は避け、静かに退くことがポイントです。
イノシシの進行方向となる逃げ道をふさがない
イノシシと遭遇したら、イノシシの進行方向や周囲の地形を素早く見て、逃げ道を塞がない位置に移動しましょう。追い詰められたイノシシは最短距離で突破しようとし、思わぬ方向へ突進することがあります。道の真ん中に立ちふさがらず、斜め後方や側面へ退いて通り道を空けると、互いに距離を取りやすく安全です。細い登山道では無理に前へ進まず、広い場所でやり過ごす判断も有効です。複数人なら順番に静かに道を譲ります。
イノシシから攻撃されそうになった時の対処法

イノシシは警戒心が強く、比較的おとなしい性格の動物です。しかし、至近距離で出合ったり、繁殖・子育て期で興奮している時や傷病で追い詰められている時、街中に迷い込んで混乱している時は攻撃に転じやすいため注意しましょう。ここではイノシシから攻撃されそうになった時の対処法について詳しくご紹介します。
できるだけ高いところに逃げる
イノシシに攻撃されそうな気配がある場合は、できるだけ高いところに逃げるのが有効です。なぜならイノシシは跳び上がる力はありますが、垂直に登る動きは苦手なため、高低差がある場所は防御になりやすいからです。イノシシと遭遇した際、近くの階段や石垣の上、車の上、岩場、斜面の上段などがあれば、落ち着いてそこへ移動して距離を確保します。逃げる際には、転倒しないよう足場の安定も確認しましょう。
太もも(内側)を守る
イノシシの口元は人間の急所である太ももあたりの高さのため、かまれたり、牙が当たらないように太もも(内側)を守る意識が重要です。牙は下からすくうように当たりやすく、大腿部の内側を裂くと大量出血につながります。
しゃがんで足を閉じ、バッグや上着を太ももの前に当てる、横向きに転んで脚を覆うなど、防御を最優先にしましょう。厚手の衣服やリュックが盾になるので、身近な物で急所を隠しつつ安全圏へ退き、落ち着いたら周囲に助けを求めてください。
むやみに反撃しない
イノシシに攻撃されそうでもむやみに反撃しないことが大切です。棒で叩いたり石を投げたりすると、イノシシは「脅威だ」と判断して興奮し、突進が激しくなる恐れがあります。特に近距離では、反撃の動作そのものが隙になりやすく危険です。イノシシと遭遇したら、まずはイノシシの進路を空けつつ距離を取り、安全な場所へ退避することを優先しましょう。
どうしても防御が必要な場合も、攻めるのではなく身を守る姿勢に徹し、状況が落ち着くのを待つことで被害を抑えられます。
実際にイノシシから攻撃されたら急所を守る
万一イノシシから攻撃を受けた場合は、「急所を守る」ことに全力を切り替えます。転倒したら無理に立ち上がろうとせず、体を小さく丸めて頭と首、腹部を両腕や荷物で覆いましょう。顔を上げたままだと牙や体当たりを受けやすいため、あごを引いて視線を落とすのもポイントです。リュックや上着があれば胸や側面に当て、相手が離れるまで防御姿勢を維持します。落ち着いたら安全な場所へ移動し、出血や痛みがあれば早めに受診してください。
障害物を間に入れて距離を取る
イノシシが近寄ってきそうな時は、障害物を間に入れて距離を取りましょう。柵、立木、電柱、車、ベンチなど回り込むのに時間がかかる物が盾になります。イノシシと遭遇したら、正面で向き合うより障害物の陰に体を寄せて進路を切り、必要なら反対側へ回って退避します。
突進は直線的になりやすいので、物を挟むだけで被害を受けにくくなります。開けた場所へ移れるなら、障害物を挟んだままゆっくり移動して安全圏を広げてください。周囲に人がいれば声をかけ合い、同じ障害物を共有して落ち着いて離れましょう。
イノシシに遭遇した時にやってはいけないこと

イノシシに遭遇したら驚いてしまうのは当たり前です。しかし、慌てて行動するとかえってイノシシを興奮させ危険を高めることも少なくありません。安全にやり過ごすには「やってはいけないこと」を知るのが第一歩です。ここでは、イノシシに遭遇した際のNG行動をわかりやすく解説します。
イノシシの進行方向をふさぐ
イノシシの進行方向はふさがないようにしましょう。逃げ道を失ったイノシシは「突破するしかない」と判断し、最短距離で突っ込んでくる危険があります。ありがちな例は、狭い道で退かずに様子を見る、車や自転車で前を塞いで追い返そうとする、複数人で囲むように立つ行動です。イノシシが通り抜けられるよう静かに身を寄せ、進路を空けて落ち着いて去りましょう。
大きな声を出す
大きな声を出して追い払おうとするのはやってはいけません。突然の叫び声や騒音は、イノシシにとって強い刺激になり、パニックや防衛反応を引き起こします。驚いて一気に距離を詰めてきたり、進路を変えて突進したりするきっかけになることも。山中だけでなく住宅地に迷い込んだ個体ほど緊張しているため、声で追い立てるほど危険が増します。イノシシと遭遇したら静かな姿勢で状況を見極め、落ち着いて離れるのが安全です。
急に動く
イノシシと遭遇した場合、「急いで逃げなくては」とあせってしまいますが、急に動くことは避けましょう。理由は、素早い動きによって「襲われるかもしれない」とイノシシの警戒心を高めてしまい、追跡や突進を誘発しやすいからです。例えば急に手を上げる、走り出す、方向転換して距離を詰める、物を拾おうとかがむといった動作は、イノシシにとっては攻撃準備のように映る場合があります。イノシシと遭遇したら、足元を確かめつつ体の向きを保ち、ゆっくりした動きで距離を取るほうが安全にやり過ごせるでしょう。
棒を振り上げたり、石などを投げたりする
イノシシに棒を振り上げたり石などを投げたりして追い払おうとするのは避けてください。こうした威嚇や攻撃の動作も、イノシシに「敵に狙われた」と受け取られやすく、恐怖や興奮から突進を招く原因になります。特に近距離では、振りかぶる動き自体が刺激になり、イノシシの反射的な防衛行動を強めかねません。
追い払うよりも、静かに身を引いてイノシシとの距離を広げることが安全策です。どうしても近い場合は、自分とイノシシの間に障害物を間に入れて退路を確保し、相手が落ち着いて去れる状況を作りましょう。
走って逃げる
イノシシと遭遇した時に、反射的に走って逃げてはいけません。イノシシは短距離なら人より速く、逃げる背中を追う本能が働いて追跡されやすくなるためです。さらに、山道や舗装の悪い場所で転ぶと、起き上がれない間に距離を詰められる危険も高まります。怖くても体の向きを保ち、イノシシの様子を見ながらゆっくり後退して退避するほうが安全です。周囲に開けた道や建物があれば、落ち着いてそちらへ移動し、無理な全力疾走は避けましょう。
イノシシの子どもに近寄らない
イノシシの子ども(ウリ坊)に近寄らないでください。小さくて無害に見えても、近くに母親が潜んで見守っていることが多く、守ろうとして強く攻撃してくる恐れがあるためです。かわいいからと写真を撮ろうと距離を詰めたり、触れようとしたりすることは危険です。イノシシの子どもを見かけた時点で「親がいる前提」で行動し、静かにその場を離れて進路を空けましょう。
イノシシの行動でわかる危険度

イノシシの体の動きや音、距離の取り方に「今どれくらい危険か」がはっきり表れます。遭遇時にそのサインを読み取れれば、無用に刺激せず、適切な退避行動へつなげられるでしょう。ここでは、危険度の段階ごとに見られやすい行動・反応を取り上げ、それぞれの意味と取るべき対応をわかりやすく解説していきます。
もっとも危険な状態の行動
イノシシが背中の毛を逆立てる、歯をカチカチ・クチャクチャ鳴らす、前脚で地面をガリガリ掻く、低くうなるような鼻息を出しながら一直線に間合いを詰める。このような様子を見せたら強い威嚇や興奮の表れで、攻撃直前の危険な状態です。
このような行動が見られる場合、イノシシを刺激せず、進路を空けつつ障害物を挟んで後退し、できるだけ高い場所や建物・車内へ退避します。
比較的危険な状態の行動
まだイノシシと自分との間に距離はあるものの、警戒と迷いが強い状態にも注意が必要です。こちらを向いて立ち止まる、体を横に揺らしながら様子を見る、鼻先で地面を探りつつジリジリ近づく、短い息を繰り返すなどはイノシシが「相手を測っている」段階です。ここで近づいたり追い払おうとしたりすると危険度が一気に上がります。静かに横へずれて逃げ道を作り、視界に入ったままゆっくり距離を広げましょう。
警戒している時の行動
イノシシと遭遇した時、軽い警戒サインのうちに離れるのが一番安全です。顔を上げて匂いを嗅ぐ、耳を立ててこちらを確認する、体の向きを変えて退こうとする、草むらへ入って距離を取る。これらの行動は、イノシシが危険を感じて避けたい時の反応です。追いかけたり動きを遮ったりすると、防衛に転じることがあります。イノシシの退路を塞がず、こちらも静かに後退してその場を離れましょう。
自宅にイノシシを近づけないための対策

山際の住宅地では、家の周りにイノシシが現れることもあります。最近では街中でもイノシシが見かけられることも。イノシシと遭遇したら走って逃げたりイノシシの子どもに近づいたりせず、まず安全を確保。そのうえで、普段から寄せつけない環境づくりが被害予防の鍵です。ここでは、イノシシを自宅に近づけないためのポイントを紹介します。
草むらや藪をきれいにする
イノシシと住宅の周りで遭遇しないために、そもそもイノシシが寄りつきにくい環境を作るのが第一歩です。イノシシは身を隠せる場所を伝って人家に近づくため、家の周りの草むらや藪が多いと通り道・休み場になりやすくなります。庭や空き地、家の裏手の斜面は定期的に草刈りし、見通しを確保しましょう。防護柵の外側も草が伸びている状態にしないことで、防護柵に近づきにくくでき、破壊されるリスクも下がります。
エサになるようなものを置かない
イノシシは嗅覚で食べ物を探します。家の周辺にエサになりそうな物があると「ここに来れば食べ物がある」と学習し、出没が常態化します。具体的には、生ゴミの一時置きや収穫残渣(ざんさ)、落ちた果実、米ぬか・飼料、ペットフードの屋外放置などが誘引源です。外に生ゴミや飼料などを置くにはふた付き容器を使う、ゴミは回収直前に出す、落果や残渣はその日のうちに回収する、といった“匂いと中身を見せない管理”が効果的です。
ゴミ捨て場や家庭菜園がイノシシにとってエサ場になるため、寄せ付けないようにすることに重点を置きましょう。
エサを与えない
かわいそう、珍しいなどの理由で餌付けをすると、イノシシは人を恐れにくくなり、住宅地へ繰り返し来るようになります。結果として人との距離が縮まり、イノシシと遭遇しやすい状況を自分たちで作ってしまうことに。イノシシのために残飯を外へ撒く、畑の余り物を置く、観察目的で食べ物を投げる行為は避けましょう。近所で餌付けが続くと周辺全体のリスクが上がるため、地域でルールを共有することも大切です。
畑や庭は“食べ物がない状態”を保つ
家庭菜園や果樹がある家は、イノシシにとって魅力的な場所になりがちです。収穫の遅れや放置された作物、落ちっぱなしの果実があると、夜間に来て掘り返す行動につながります。対策として、野菜は適期に収穫し、取り残しや廃棄野菜は畑に置かず持ち帰る、熟した果実は早めに収穫し落果は毎日拾う、堆肥やぬかは密閉保管するなど、常にイノシシのエサとなる食べ物がゼロの状態を目指します。
家庭菜園や庭を防護柵で囲う
イノシシにとってエサとなる畑や家庭菜園の作物などを適切に管理することに加え、物理的にイノシシを入れない仕組みがあると安心です。イノシシは鼻で押し上げたり掘ったりして侵入するので、柵は高さだけでなく地際の隙間対策が重要。ワイヤーメッシュや金属フェンスを地面に密着させ、下部を埋める・折り返すなどして「くぐり込み」を防ぎます。電気柵を使う場合は鼻先が触れる高さに複数段で張り、草が触れて漏電しないよう周囲の除草と点検をおこないましょう。
見通しのよい境界(緩衝帯)を作る
山林や藪と家・畑が直接つながっていると、イノシシは身を隠しながら家や住宅地に近づけます。そこで境界に草を短く刈った帯や空きスペースを作り、身を隠せない「緩衝帯」を設けることで接近のハードルが上がります。幅は場所により異なりますが、最低でも数メートルの見通しを確保し、夜間でも人の気配が伝わりやすい状態に。家の裏手や河川沿いなど、侵入経路になりやすいラインを優先して整備しましょう。
地域で同時に対策する
イノシシ対策はより広い範囲でおこなうことでより効果的になります。1軒だけ草刈りや柵を強化しても、隣の畑や空き地に餌や藪が残っていると、そこを拠点にイノシシに侵入される可能性があります。自治会や近隣で出没情報を共有し、餌になる物の管理、草刈り、柵の設置や補修を同じ時期におこなうと、イノシシの学習を断ちやすくなります。頻繁にイノシシが現れる場合は、無理に個人対応せず自治体へ相談し、地域ぐるみで対応しましょう。
被害を防ぐために事前にイノシシの特徴を確認しよう

日本に生息する野生イノシシは、本州・四国・九州に広いニホンイノシシと、奄美~沖縄など南西諸島の小型なリュウキュウイノシシの2亜種です。イノシシは里山から住宅地周辺まで幅広く現れ、ずんぐりした体に剛毛と鋭い牙を持ちます。学習力が高く行動時間を変えることもあり、雑食で農作物被害の原因にも。イノシシの性質や繁殖期の特徴を知ることが安全につながります。
| 生息環境 | 主に主に森林や里山の藪・竹林に生息し、河川沿いや農地周辺にも出没する。水と隠れ場の多い環境を好む。 |
|---|---|
| 活動時間 | 本来は早朝・夕方に活発だが、人里では人を避け夜間〜明け方に動くことも多い。 |
| 身体的特徴 | 体長約1.2〜1.7m、体重80kg超のずんぐり体型で剛毛と鋭い牙を持つ。短距離は時速50km近く走り、1m超の柵も跳ぶ。 |
| 性格 | 基本は臆病で警戒心が強く人を避けるが、追い詰められたり子どもを守ったりする状況では攻撃的になる。 |
| 知能 | 学習力と記憶力が高く、餌場や危険を覚えて行動を変える。仲間の侵入法もまねる。 |
| 食性 | 雑食で、ドングリや根・竹の子、果実、昆虫やミミズ、小動物、時に農作物も食べる。 |
| 繁殖 | 発情期は冬(12〜2月)で、妊娠約4カ月後の春(4〜6月)に4〜6頭ほど出産する。 |
イノシシは本来人を避けるものの、春の子育て期や冬の繁殖期、餌が乏しい時期は行動が荒くなりやすいです。夜行性と決めつけず、出没時間や侵入法を学習する点にも注意しましょう。
まとめ
イノシシと遭遇したら、走って逃げたり大声を出したりせず、イノシシを刺激しないことが最優先です。進行方向をふさがず、物陰や障害物を間に入れながらゆっくり後退して距離を広げましょう。威嚇が強い、突進しそうと感じたら高い場所や建物・車内へ退避し、万が一転んでしまった場合は頭や腹、太もも内側など急所を守り反撃は控えます。子どもや犬がいるときは一緒に落ち着いて下がり、ウリ坊(イノシシの子ども)に近づかないことも重要。もし傷を負ったら早めに受診し、出没が続く地域は自治体に相談しましょう。
自宅の近くでイノシシと遭遇しないためには、普段から生ゴミや収穫残さの管理の徹底、草刈りや柵の整備を地域で同時に進めることがポイントです。家の周りをイノシシにとって餌と隠れ場のない環境に保つことがイノシシの出没防止になるでしょう。
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