シロアリ駆除はどうやる?今すぐできる方法と発生を防ぐ対策
この記事では、シロアリの生態や家にもたらす被害 、今すぐできる駆除のやり方を詳しく解説します。私たちの大切な住居をシロアリ被害から守るために、発生の防ぎ方もまとめました。シロアリ駆除の知識を学び、正しいシロアリ対策をしましょう。
記事の目次
シロアリの生態とは
シロアリ対策をとるには、シロアリを知ることからはじめるのが一番の近道です。シロアリの生態を知って、より効果的に対策しましょう。
シロアリの特徴
シロアリの言葉には「アリ」が入っているので、普段私たちがよく目にするアリの仲間と思われがちですが、分類学上はゴキブリの仲間です。
シロアリには階級があり、巣全体で役割が分担されています。繁殖活動をおこなう女王アリ・王アリが頂点です。さらに外敵から巣を守る兵アリや、エサを採取したり卵や幼虫の世話をしたりする働きアリがいて、社会性のあるコロニー(集団)を形成します。
コロニーがある程度大きく成長すると、新しい巣をつくる役割を与えられたニンフと呼ばれるシロアリが羽アリとなって一斉に巣から飛び立っていきます。
この羽アリは白くないので、よく観察しないとシロアリだとなかなか気付けません。また、羽アリが飛び立った家からはシロアリがいなくなると思われがちですが、一部のシロアリが巣立っただけです。実際にはまだ家屋に巣があり、多くのシロアリが活動を続けています。
そして暖かくなると活動が盛んになります。気温差により活動が落ち着くこともありますが、シロアリは冬眠をしません。基本的には一年中活動しています。
害があるシロアリの種類
日本国内で確認されているシロアリの種類は20種類以上です。シロアリは本来、自然界では落ち葉や枯れた木を分解し、土に還す益虫です。少数派ですが、人間界では家屋を食べる害虫とされる種類がいます。
日本の主要な種類は「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」です。特に日本各地に広く生息しているヤマトシロアリの被害が多く、9割以上にものぼるといわれています。それぞれのシロアリの特徴をみていきましょう。
ヤマトシロアリ | イエシロアリ | |
---|---|---|
発生場所 | 浴室、庭、家の土台の湿って腐りかけた木材など | 屋根裏や床下、地下、土中など |
羽アリの見た目 | 黒色 | 茶褐色 |
兵アリの見た目 | 頭の形が細長く円筒状 | 頭の形が卵型 |
飛び立つ時期 | 4~5月の昼間に一斉に飛び立つ | 6~7月の夜に飛び立つ |
コロニー | 餌場が巣を兼ねる | 土中などに大きな塊の巣をつくる |
シロアリの好きなもの
シロアリはやわらかい枯れた木材や枯れ葉を好み、セルロースと呼ばれる成分を栄養源としています。本や段ボールなどの紙類も食害される場合があります。
ヤマトシロアリは 、湿度の高い場所を好んで食害するため、家屋への被害も浴室や湿度の高い床下などの下部に集中します。
一方、イエシロアリはヤマトシロアリに比べて食欲が旺盛。繁殖力が強いイエシロアリは、水を運ぶ能力にも長けており、乾燥している木材を湿らせて食害をするため家屋全体に被害がおよびます。イエシロアリの食害によって家が倒れることもあり、世界の侵略的外来種ワースト100に指定されている危険種です。
シロアリの苦手なもの
多くのシロアリは皮膚が薄く、枯れ木や土の中など湿った場所で生活しているため、日光と乾燥を嫌います。
またシロアリを捕食するクロアリや蜘蛛、カエルや小鳥などの天敵の存在も苦手なものに含まれます。
シロアリとクロアリの見分け方
シロアリと似ているものにクロアリがいます。クロアリはシロアリと違って、家屋の木材を食害することはありません。種類が違うので駆除や予防の対策を講じる場合、きちんと見分ける必要があります。
シロアリ | クロアリ | |
---|---|---|
分類 | ゴキブリの仲間 | アリの仲間 |
胴体 | くびれがない寸胴型 | 細いくびれがある |
羽 | 前後の羽が同じ大きさ 羽が簡単に取れる 家の周囲に羽が散乱している |
前羽が大きく後羽が小さい 引っ張っても羽が取れにくい 羽をつけたまま床に落ちている |
色 | 茶・黒・黄褐色など | 茶・黒・茶褐色など |
食性 | 木材がほとんど | 雑食性 |
発生時期 | 4月から5月ごろ (ヤマトシロアリ) 6月から7月ごろ (イエシロアリ) |
6月から11月ごろ |
シロアリがもたらす被害
シロアリによって家屋の基礎部分や柱などが食害されてしまうと、耐震性が下がり倒壊しやすくなるリスクや、資産価値が下がる可能性も。シロアリは強いアゴを持っているため、目の前にあるものはコンクリートやプラスチックなど硬いものも食害します。
特に発泡ウレタン系の断熱材はより好んで加害される傾向にあるようです。シロアリ被害で配線が食害され、火災の一因の可能性にあげられたケースも報告されています。
人への直接の害はあまりありませんが、家屋に無数のシロアリがうじゃうじゃと発生することによる精神的なストレスもあるでしょう。
シロアリが発生しやすい場所
生態上、シロアリにとって心地よい環境があります。シロアリが発生しやすい場所をチェックしておきましょう。
湿気の多い場所・水回り
シロアリは湿気が多く、暗い場所を好みます。床下、排水溝、洗面所、浴室まわりなどに注意が必要です。そこから柱や床下、天井を伝って家中に被害をおよぼすこともあります。
木材や廃材、庭の木の中
シロアリは餌となる木材と湿気が多い環境を好むので、盆栽や植木が密集するジメジメした庭もシロアリが発生しやすくなります。立ち枯れた庭の木や切り株、放置している廃材や段ボールはシロアリにとっては好都合の場所です。
縁側やウッドデッキの柱が劣化している場合、シロアリに食害されている可能性も。
またコンクリート造りの家でも、わずかな隙間から家の中に侵入して、タンスやピアノなど木製の家具や楽器にシロアリが被害を与えることもあります。
床下や壁、柱など
シロアリは光に弱いので、私たちの目には普段触れない床下や壁の内側など家の裏側に潜んでいることが多くあります。
和室の畳のうえを歩いて、ふかふかした感じや歪んでいる場合は、畳の下やその床下地板、床下を支える根太(ねだ)と呼ばれる横木などがシロアリに食害されている可能性も十分考えられるでしょう。
雨漏りがある場所
雨漏りで建材に水がしみこむと、湿気を好むシロアリを呼び寄せます。雨漏りした箇所をそのまま放置していると、シロアリの発生拡大につながることも。配管の水漏れにも注意しましょう。
シロアリがいるか見分けるポイント
ここでは、実際に家にシロアリが住み着いているのか見分けるポイントをあげました。ひとつでも当てはまる場合は、シロアリがいる可能性があります。早めに対処しましょう。
羽アリが飛んでいる
羽アリを家の中で何度も見かける、何匹も見かける場合は注意が必要。
複数いるということは、すでにある程度大きな巣があり、そこから飛び立ってきた可能性が高いです。
柱や床がたわむ
建物がシロアリの食害に遭っていると床や柱がたわむことがあります。怪我をするリスクも出てくるので早めに確認、対処をしましょう。
壁をたたくと空洞音がする
壁をたたくと「ポコポコ」というような軽い音がする場合も要注意です。しかし、これだけではシロアリの発生を判断しにくいため、ほかの箇所と音を比較したり、柱や床もチェックして違和感があったら床下を見てみたり、専門家に聞いてみるなどしましょう。
「蟻道(ぎどう)」を見つけた
蟻道とはアリがつくった道です。蟻道は巣と餌場をつないでいるため、巣を見つける手がかりになるでしょう。ここからは蟻道について詳しく解説していきます。
シロアリの「蟻道」とは
蟻道は、シロアリが土の中から家の中に侵入したり、巣と餌場を行き来したりするためにつくられるトンネル状の通り道のことです。シロアリは乾燥に弱く、蟻道は乾燥や外敵から身を守る役割もあります。
蟻道は土や食害した木材のカスとシロアリが出す分泌物や、排泄物を混ぜてつくられた蟻土(ぎど)でつくります。表面が固まっていて、手で軽く触れただけではポロポロと崩れにくいのが特徴です。しっかりと木材表面を這うように貼り付いていて、巣と餌場まで途切れず長く続いています。
蟻道を作られやすい場所
一般的に蟻道が見られるのは、建物を支えている土台部分、いわゆる建物の基礎部分です。基礎の立ち上がり部分や1階の床を支える束石(つかいし)や床束(ゆかづか)などによく見られ、配管のわずかな隙間に作られるケースもあります。
また、建物の基礎のコンクリート部分を断熱材で覆う基礎断熱工法は、断熱材と基礎との間にシロアリが侵入しても目視で確認しづらいため、被害に気付きにくいでしょう。知らない間に蟻道が作られ、被害が大きくなっている可能性もあるため、別途シロアリ対策が必要です。
蟻道は見つけても崩さない
蟻道を見つけたら、駆除業者にまずは相談しましょう。蟻道でシロアリの種類や巣の位置などを確認でき、スムーズに対処してもらえます。
現在もシロアリが使っている蟻道だった場合、下手に触ってしまうと崩れる可能性があります。崩したところからシロアリが大量に出てしまい、被害を拡大させる可能性もあるため触れないようにしましょう。
シロアリを予防するための対策
木造建築は新築よりも築年数を経過しているほうが、木材の劣化によりシロアリ被害は拡大しやすい傾向にあります。また、シロアリはわずかな隙間からでも侵入し、コンクリートのような硬いものも食害できるので、RC造の鉄筋コンクリート造りの家でも油断は禁物です。
気密性の高い家屋は高温多湿で、シロアリが繁殖するのに最適な温度と湿度を保てます。一度侵入して巣をつくられると、巣ごと撤去しなければ年中繁殖活動が続く可能性も。シロアリが増殖しないように、しっかり予防対策をしていきましょう。
水回りの湿気を取り除く
シロアリは湿気のある場所、特に暗所を好みます。まずはジメジメした場所を作らないように、浴室などの水回りは清潔に保つようにしましょう。常に換気をし、できるだけ湿気がこもらないように対策します。
木材などを放置しない
家の周りに木材をそのまま放置していると、シロアリの餌場になります。廃材は片づけ、庭の植
木や樹木は密集させすぎないようにし、風通しをよくしましょう。
家の周辺は風通しよく、日が入るようにする
屋外も湿気・暗所対策をおこないましょう。特に家の基礎の周りは風通し、日当たりをよくすることが大切です。植木鉢も換気口、通気口を塞がないように外壁から離して置くようにしましょう。
水漏れや雨漏りは早めに修理する
シロアリは湿った木材に寄ってきます。水漏れ、雨漏りが発生した際は早めに修理をしましょう。できる限り水漏れや雨漏りを発生させないためにも定期的に家の状態を確認し、メンテナンスをおこなうことが重要です
市販の薬剤を使用する
シロアリ専用の駆除剤を使いましょう。ヤマトシロアリとイエシロアリには防虫防腐剤などで木材に事前対策するのもよいでしょう。ただし子どもやペットがいるご家庭では、成分の安全性を確認してから使用してください。
自分で今すぐできるシロアリの駆除方法 と注意点
「シロアリを発見したら自分では駆除できないの?」と考える方も少なくないでしょう。ここでは自分でできるシロアリ駆除方法をご紹介していきます。
応急処置として掃除機で吸う
目に見えているシロアリは掃除機で吸ってしまいましょう。シロアリは弱い虫なので掃除機に吸われた衝撃で死滅するとされています。
ただし、目に見えているシロアリを掃除機で吸っても、見えないところでは大量のシロアリが活動しているため一時的な対処法にしかなりません。早急に駆除対策をおこないましょう。状況によっては駆除業者に依頼して、根本的なシロアリの駆除対策をしてください。
駆除前の準備
駆除をする前に、床下の調査をおこないます。床下点検口や床下収納庫から床下に潜り、床下は全部通れるか、シロアリ被害がないかをチェックします。
床下に潜る場合は一人でおこなわず、床下に入って点検する人、ホコリが入ってくるため床下点検口の開け閉めを担当する人の2人1組でおこないましょう。
室内の汚れ対策として養生シートを敷き、ホコリまみれになるので舞い上がったホコリへの対処として防塵マスクやゴーグル、汚れてもよい服装(つなぎ、ゴム手袋、長靴、帽子、膝・肘パッドなど)を着用しましょう。床下は暗いのでヘッドライトや懐中電灯なども必需品です。床下の状態や被害状況を記録するため、カメラや図面なども用意できるとよいでしょう。
散布剤で駆除する(バリア工法)
床下に薬を散布して駆除する一般的な「バリア工法」は即効性が高く、予防効果も高い駆除方法です。散布してから数年で効果が薄れるため、定期的に散布します。
また、クモやムカデなどの虫がいるなど、過酷な状況で薬剤散布しなければならないため、注意が必要です。用意するものと、作業の流れをまとめました。
<用意するもの>
- シロアリを駆除するための薬剤2種類(木部用・土壌用)
- 動力噴霧器、タンク、ホース(レンタルがおすすめ)
- 養生シート、養生テープ、はさみ(室内の汚れ対策)
<作業の流れ>
- STEP 1機材を準備する
- STEP 2飼育している魚や昆虫が近くにいる場合は、ほかの部屋に隔離する
- STEP 3ホコリ汚れや機材で点検口の周りや機材の下の床が傷つかないように養生する
- STEP 4木部用薬剤を準備し、床下の全木材に薬剤を吹き付け散布する
- STEP 5土壌用薬剤を準備し、床下の一番奥から点検口が最後になるように土壌に散布する
- STEP 6後片付けをする(作業完了)
家の周りにベイト剤を埋める(ベイト工法)
「ベイト工法」は、床下がない、高さがないため床下に入れない場合などに有効な方法です。専用容器に入った毒餌のベイト剤を建物の周りの土中に埋めて、シロアリが持ち帰った毒餌で巣を根絶させることを目的とした駆除方法です。
即効性は期待できませんが、脱皮をおこなう昆虫にだけに効果があるので、子どもやペットがいても安心して使えます。またバリア工法よりも手軽におこなえるのもポイントです。
市販のベイト剤を購入したら、取扱説明書を確認しながら実際にシロアリ被害にあっている場所付近や予防したい場所に複数個、直射日光を避けて貼ったり、土中に埋めたりして設置します。1~2カ月ごとに中身を確認して、シロアリが食べているか確認しましょう。
殺虫剤はNG
忌避効果のある殺虫剤を使用した場合、生き残ったシロアリが散る可能性もあります。ほかの場所に逃げて、殺虫剤がかかっていない部分を食害しはじめ、逆に被害が広がってしまうリスクもあるでしょう。
また、殺虫剤を使って目に見えているシロアリを駆除できても、目には見えていない巣にはシロアリがたくさんいるため、根本的な解決にはなりません。
定期的に防蟻(ぼうぎ)措置の点検をおこなう
一度駆除したら終わりではなく、シロアリ被害にあっていなくても予防の観点から定期的に点検をおこないましょう。経年とともに効果が薄れていくので、数年ごとに防蟻処理をするのがおすすめです。
シロアリ駆除を業者に依頼する
シロアリ駆除業者に依頼すれば確実に巣を駆除することが可能です。自分でやるには限界もあるので、できる限りプロに頼ったほうが安心でしょう。しかし、業社を選定するのもなかなか大変です。どこに頼んだらいいのか、費用はどのくらいかかるのかをみていきましょう。
費用と相場
シロアリ駆除業者は農協からの紹介、ホームセンター、地域の業者などがありますが、費用や補償内容などまちまちです。それぞれ相場がありますが、家の構造や被害状況によって金額も変わります。
ホームページを確認し、気になる業者数社から見積もりをとったり、ネットの口コミでの評価が高い業者を選定したりするとよいでしょう。
確定申告で控除が受けられる
シロアリを駆除するための費用やその修繕に要した費用は、確定申告で雑損控除の対象になる可能性があります。
火災保険を受けられるのではないか、と考える人もいるでしょう。基本的には適用されませんが、火災保険が適用されるケースも一部あります。
例えば、台風や落雷などの自然災害が原因で雨漏りしたことで、シロアリが発生したと理論的に証明できるケースです。加入している火災補償内容を確認しておきましょう。
まとめ
建築基準法によって新築時の防腐、防蟻対策が定められています。そのため、新築物件のシロアリ発生確率は少ないですが、築年数が上がるにつれて次第に発生確率は上がってきます。シロアリによる被害がないか定期的に点検し、被害を発見した場合には業者に依頼をし、早めに対処することが肝心です。
また、外壁周辺に廃材を置かない、換気をよくするなど、シロアリを寄せ付けない対策は、私たちの普段の暮らしのなかでもできることがあります。シロアリの生態を理解し、シロアリ被害にあいにくい環境づくりをおこないましょう。
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