
リノベーションマンション事例「素材をストイックに絞り込んだ DIY上級者の“自分の城”」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都板橋区のMさんご家族の事例をご紹介します。以前から賃貸物件をDIYでカスタマイズしてきたMさん。インテリアの要素を絞った新居は、自作の家具が主役の空間だ。(text_ Hiromi Matsubayashi photograph_ Osamu Kurihara)
木、モルタル、ステンレス…。素材と色を厳選したMさんの住まいは、モダンでスタイリッシュな雰囲気が漂う空間。そこに添えられた主な家具は、ナラ材と黒アイアンを組み合わせた自作品で、DIYとは思えない上質感が漂う。
「好みの家具は金額が張るものが多くて。だったら自分でつくればコストを抑えられるかなと考えたのがDIYを始めたきっかけです。それが高じて、独身時代に住んでいた賃貸マンションでも、DIYで壁を塗ったり、収納を自作したりして部屋をカスタマイズしていました」
というMさん。新居にも、そんなこだわりがあちらこちらに。無駄をそぎ落としたコーディネートで自分たちの世界観を表現している。


●Lets’DIY
DIY塗装中は、お子さんをご両親に預けて専念したそう。
LDKはSOHOとしても使うため、生活感を極力排除することが前提だった。壁付けの造作キッチンは、夫妻が愛用しているアパレルブランドのショップインテリアをヒントに、シンプル・イズ・ベストのデザインを採用。手ごろな価格のキャビネット収納を並べて、すっきりとした見た目に配慮した。

右・ IKEAのキャビネット収納にモールテックスの天板を組み合わせたキッチン。

●Lets’DIY
玄関土間をはじめ、住まいの壁のほとんどは夫妻で塗装した。


住まいの壁は夫妻でDIYしてコストダウンを実現。さらに、キッチンのキャビネット収納やシンク、水栓、バスタブなどの設備の多くを施主支給でまかなった。
「壁の塗装は期間が限られていたので、想像していた以上に大変でしたが、それも今ではいい思い出となっています」(奥さま)
「住まい全体のインテリアを統一するために、細かな部分にまでとことんこだわりました。とはいえ予算に限りがありますから、DIYや施主支給で調整して、納得のいくリノベが叶いました」(Mさん)

家具づくりの第一歩は、鉄の溶接の経験をもつお父さまの力を借りた。「次はリビングのローテーブルと仕事用デスクづくりを計画中」と、MさんのDIY熱は増すばかり。
水まわりはホテルライクな雰囲気にしたいと、ひとまとめのスペースに。浴室は希望のタイルを用いて、清潔感あふれる空間に整えた。玄関はモルタル仕上げの土間にして、オープンな下足棚を造作。市販品をアレンジしたラックは、日常使いのかばんの定位置になっている。

浴室の壁と浴槽はサブウェイタイル、床はモザイクタイルを使用。

アメリカ製の洗濯乾燥機「MAYTAG」をビルトインした洗面台。モルタルの天板に病院用の大きなシンクを組み合わせた。下はオープンにして収納はコンテナを活用。
リノベ後、Mさんの熱心な様子と細やかな作業を見てきた工事現場監督が「私の知る限り、ナンバーワンのDIYER」と称えたというエピソードがあるそう。家づくりは、プロに頼る部分が大きいだろうが、任せるだけではなく自分自身も参加することで、いつまでも愛着のある住まいが完成するのだろう。


玄関横に設けたWICは家族共有。

市販品にハリスツイードの生地を張ったスツール。

●Lets’DIY
壁のDIY塗装は、職人たちをもうならせたプロ並みの仕上がり。
建物データ
〈専有面積〉85.61 ㎡〈バルコニー面積〉7.68 ㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1985年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉4ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈設計〉 EcoDeco

※この記事はLiVES Vol.112に掲載されたものを転載しています。
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