
リノベーションマンション事例「玄関を入ると、そこはオアシス…。 癒しと楽しさに満ちた家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県横浜市の齊藤さんご家族の事例をご紹介します。奇抜なスタイルは嫌だけど、ありきたりではつまらない。店舗設計の発想を取り込んだ、見た目は楽しく、心はリラックスできる空間づくり。(text_ Sayuri Ando photograph_ Mizuho Kuwata)
「例えば、家に入る日の光の回り方であるとか、なるべく自然にあるものを取り入れるようにしているので、人工的な絵画や写真は飾らないようにしているんです」
そう話すのは広告写真などのレタッチの仕事に携わる齊藤勝也さん。店舗設計を手掛ける奥さまの加奈子さんは空間へのこだわりが強く、マイホームは間取りもデザインも自由にアレンジできるマンションリノベーションで実現した。
住まいに求めたのは、内と外の境界が曖昧で、家族がくつろげる空間。不要な壁は取り払い、家族が集う場は広く確保。壁の色は夫妻が好きなグレーで統一し、置くもので差し色を楽しむよう計画した。

モールテックス塗りの造作洗面台は生活感がなく、グレートーンのインテリアに美しく溶け込んでいる。帰宅後すぐに手が洗えるように玄関奥に配置した。
「奇をてらわず、かといって普通でもない。飽きがこないスタイルをつくりたかったんです」(勝也さん)
齊藤邸の目玉は、庭に憧れる加奈子さんが自らパースを描いたという緑豊かな玄関土間だ。存在感のある木の壁は加奈子さんの出身地である北海道旭川のナラ材で、他の部位にもシンパシーを感じる素材を採用している。勝也さんは毎朝ここでコーヒーを、加奈子さんは週末に植物の手入れを楽しむなど、家族のオアシスになっている。


玄関の本棚には仕事の参考にしている美術書や雑誌が並ぶ。同色の背表紙はまとめる、グリーンを添えるなど、細部に美意識が光る。
マンションの構造上、どうしても直線が多くなってしまうため、椅子やラグなどのインテリアアイテムは丸みのあるデザインを取り入れて調和を図っている。空間設計の知識が豊富な加奈子さんならではのテクニックだ。ディスプレイするほど好きな食器類は、量産されたものではなく、作家の一点ものを探しに行く。普遍的なものよりは、どこか少し面白い、変化が感じられるものを好む。



加奈子さんが独身時代から愛用しているアンティークチェストがお子さんのおもちゃ収納として活躍。色味が深まったウォルナットにカラフルなおもちゃや絵本が映える。
「インテリアはこうあるべきというルールは無いので、柔軟に選んだり、飾ったりしていきたいです。今は家というベースができている状態なので、良いものに出会ったら、その都度購入したいですね」(勝也さん)
加奈子さんはリラックスできるこの家に住み始めて、仕事にも影響があったという。
「以前は店舗をいかに華やかに見せるかを重視していましたが、今はそこで働くスタッフやお客さまの“居心地”をデザインする設計を心がけています。夫も仕事に集中できる時間が増えたそうです」
家づくりを通して、家族との幸せな時間に加えて、創作活動のヒントも手に入れたようだ。


脱衣所の棚は使うカゴに合わせて設計し、DIYで取り付けた。
【TIPS】
さり気なく彩りと 癒しを散りばめて モノトーン空間を遊ぶ
モノトーンベースの空間は、それだけだとクールで無機質になりがち。そこにちょっとした色味やグリーンを配せば、たちまち愛らしい空間に大変身。

建物データ
〈専有面積〉83.55 ㎡〈バルコニー面積〉11.80 ㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1987年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉3ヶ月 〈工事期間〉3ヶ月 〈設計・施工〉nuリノベーション

●フォトレタッチャー/ 空間デザイナーの家 施主プロフィール
フォトレタッチャーの夫・齊藤勝也さんは化粧品や百貨店の広告ビジュアルを手掛ける画像編集のプロ。
妻の加奈子さんは設計事務所勤務。アパレルショップやスポーツジムなど、店舗のインテリアデザインに携わっている。
※この記事はLiVES Vol.108に掲載されたものを転載しています。
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