
リノベーションマンション事例「立体的な空間使いで人懐こいパグのための領域をゾーニング」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都新宿区のKさんご夫妻の事例をご紹介します。パグとの快適な生活をかなえたマンションリノベ。床下に組み込んだケージ、洗面室のグルーミング台、段差によるゾーニングなどアイデア満載。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Takuya Furusue)
とびきりの人懐っこさと愛嬌で来客をもてなす、3歳のパグ、チル。名前の由来はリラックスするという意味の“chill”。つぶらな瞳に見つめられると、誰でも心がとろけてしまう。Kさん夫妻がチルを飼い始めたのは、賃貸で3階建てのテラスハウスに住んでいたとき。階段の登り降りができないチルが自由に動ける面積が小さく、もっと伸び伸びと過ごさせてやりたいと考えたことが、マンション購入とリノベーションのきっかけになった。

リビングの床は毛足の短いカーペット敷き。滑らない床材はチルの脚に優しく、快適に歩ける。採用したタイルカーペットは、汚れたら簡単に部分張り替えできる。
新居ではリビングに隣接する形で、2層のスペースを設け、上部にホビースペース、下部に「チルハウス」をつくり、空間を立体的に利用。段差は室内に多様なシーンを生み出し、広く見せる効果がある。「チルハウス」のサイズは幅1m・奥行き約83cmとゆったりしており、ベッドとトイレとの距離を保つことができて快適だ。内部に照明も設置したので、掃除もさほど苦労がない。ワイヤーネットの扉は、犬が苦手なお客さまが来たときや、宅急便を受け取るときの脱走防止に役立っている。


洗面室はグルーミングルームとしての工夫を凝らし、腰をかがめずチルのシャンプーができるように深く大きなシンクを造作。終わるとカウンターに座らせ、すぐにドライヤーをかけることができる。
残念だったのは、元々カーペット敷きだった部分が、マンションの管理規約でカーペット以外への仕上げ変更ができなかったこと。そこで、チルが粗相をしたときに簡単に取り替えられるタイルカーペットを敷くことに。サンプルの上にチルをのせ、爪が引っかからないことを確かめた上で、毛足の短いものを採用した。

「パグは抜け毛が多くカーペットは掃除が大変かと思いましたが、意外と大丈夫。脚が滑らず、歩きやすそうで悪くないですよ」(ご主人)
チルは、家中の大抵の場所を自由に行き来できるが、ホビースペースは、階段が滑りやすく怖いのか上ってこない。チルが入らない場所があることは、Kさんご夫妻の暮らしやすさにもつながっているようだ。


チルが上がれない段差の上は人専用。「チルに触れて欲しくないものをとりあえず置いておけます」(奥さま)。眺望がいいので、窓台に腰掛けて外を眺めることも。
「ホビースペースにはチルの毛が落ちないので、掃除の手間が省けます。洗濯物を置いても、いたずらされる心配もありません」(奥さま)
ご主人はチルにじゃまされることなく趣味のゲームに没頭。距離感を使い分けできる環境は、ペットと共生する暮らしをより快適にしている。


玄関にはジャーナルスタンダードの収納ボックスを置いて、お散歩グッズを収納。黒板塗装の壁に描かれたチルの似顔絵が、来客を楽しい気持ちにしてくれる。

裏動線を兼ねたクローゼット。

アートのようなトイレの輸入壁紙はWALPAで購入。
建物データ
〈専有面積〉62.05㎡〈バルコニー面積〉7.22㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1997年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈設計〉ブルースタジオ〈施工〉M-CUBE

※この記事はLiVES Vol.105に掲載されたものを転載しています。
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