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リノベーションマンション事例「余計な装飾やものを排除。グレートーンを極めたストイックな空間」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、大阪府大阪市の佐藤さんご夫妻の事例をご紹介します。都心の安らぎを求めてリバーサイドの中古マンションを改修。各所にちりばめたモルタルや木、アイアンの風合いが無彩色空間に有機的な表情を与える。(text_ Aki Miyashita photograph_ Takashi Daibo)

大阪市の中心を流れる川沿いに建つマンションの一室。周囲にはさまざまな文化施設や公園があり、都心でありながら緑も多い。窓辺のハンモックでリバービューを楽しむのが、佐藤さんご夫妻のお気に入りだ。

家具やファブリック、家電、照明も空間に合わせてグレートーンにこだわってセレクト。業務用エアコンを天井に取り付けてすっきりと見せている。
バルコニーから河川と街並みを一望。クルーズ船が行き交い、遊歩道の紅葉、ホテルのクリスマスイルミネーションなど多彩な風景を楽しむ。

この部屋はもともと賃貸で借りていた物件。売りに出されると即購入し、リノベーションをして住み続けることに。

「結婚後3年は職場に近いオフィス街に住みましたが、高層ビルが目の前で、カーテンを締め切った生活が嫌だったんです。その後、この部屋に移り住み、環境の大切さを実感。気に入っていたので、購入できてよかったです」(奥さま)

ご夫妻の職業は共にグラフィックデザイナー。リノベーションにあたり、イメージしたのは現代美術館のような落ち着いた空間だ。コンクリートの質感が好きで、床や壁、キッチンなどをモルタルで仕上げるなど、グレーをベースとした空間にまとめあげている。 設計を担当したのはアートアンドクラフトの川本美佳さん。

「お二人はデザインに妥協がありません。素材の色や質感、パーツなど細かいところまでこだわって、好きなテイストを突き詰めていきました」(川本さん)

安藤忠雄設計の「兵庫県立美術館」をはじめ、無機質なコンクリート仕上げがイメージソースとなった。寝室は「ONOMICHI U2/HOTEL CYCLE」をヒントにデザイン
ワークスペースの壁は既存クロスを剥がしてみるとコンディションが良かったため、躯体をむき出しにした。
ダイニングのモルタル床はステインで黒く着色。木を用いた寝室は、LDKとは対照的にあたたかみのある雰囲気。
左・冷蔵庫と冷水機はブルーグレーの扉で目隠し。/右・アイアン×ガラスの造作扉が廊下に光を届ける。
左・エリア別に床材を張り分け、段差もつけて変化のある空間に。/右・玄関の壁はモルタルで表情豊かに仕上げ、ニッチを設けた。

LDKの収納扉に塗装したブルーグレーはまさにそう。光の当たり方で見え方が変わるからと、ご夫妻が工事現場に立ち会い、職人と一緒に生み出したオリジナルカラーだ。

「前は白壁と無垢のフローリングで、そのイメージに合わせたインテリアだったんです。本や雑貨もたくさんありましたが、必要なものにしぼり、すっきりさせました。好きな空間で暮らす喜びを感じます」(ご主人)

リノベーションで何より活かされたのが、賃貸時代の2年間だという。

「問題点も居心地の良い場所もわかっていたので、プランニングのベースになりましたね」(ご主人)

寝室の窓枠は木を黒く塗装。「内側のカーテンを閉めることでよく眠れます」(奥さま)
左・キッチン内部に調理家電を収納してすっきりとした空間をキープ。右・洗面器はステンレス製。2人で並んで使えるように大きな鏡を設置。

玄関のそばにあった寝室はWICにつくり替え、外出前や帰宅後の動線をスムーズに。寝室は光と音を遮るため家の中央に移動し、ガラスで囲って広く見せている。コの字型キッチンは調理や掃除がしやすく、友人にも気軽に 集まってもらえる。 都会暮らしを楽しむ二人に寄り添う、より快適な住まいへ見事にアップデートした。

WICには玄関横のグレーチングの引き戸と寝室の両方から出入りでき、身支度が快適。一角にロフトのようなスペースをつくり、収納量を確保している。

窓辺で川を眺めながらコーヒーやお酒を楽しむ。

建物データ

〈専有面積〉67.59㎡〈バルコニー面積〉5.95㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈既存建物竣工〉1978年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計・施工〉 アートアンドクラフト

※この記事はLiVES Vol.103に掲載されたものを転載しています。
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