
リノベーションマンション事例「既存の内装を活かし新旧の素材や多彩なテイストを混在」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の山本さんご夫妻の事例をご紹介します。築57年のヴィンテージマンションをリノベーション。木の温かみとアンティーク家具が織りなす空間には、住み手のセンスが詰まっている。(text_ Kiyo Sato photograph_ Takuya Furusue)
代々木公園にほど近い渋谷区内の高台に建つ築55年のマンションに住む山本ご夫妻。夫のタロヲさんと妻の郁美さんは、ビストロ「aruru」、ベトナム料理「ヨヨナム」、服飾や雑貨、花を扱う「pivoine」などの人気店を営むオーナーだ。
竣工当時のまま残るレトロな雰囲気の建具や内装を気に入り、同じ建物の賃貸に入居していたご夫妻。25m2ほど広い三軒隣の角部屋が売却されたことを機に購入し、知人の江口智行さんに設計を依頼してリノベーションを行った。 美大の建築学科出身のタロヲさんは、経営する店のインテリアを手掛けていることもあり、プランや仕上げの素材選びは自らも参加して考案。江口さんに空間のイメージ写真を見せ、ディテールなど相談しながら設計を進めたという。
室内は閉鎖的だった南側のLDKを中心に変更。間仕切りを撤去してオープンなワンルームにし、スタッフや友人を招いた際にも十分な広さを確保した。

「建物自体のポテンシャルが高く、あまり手を加えなくて良いと感じました」
と江口さんが話すように、数年前に一新されたキッチンは扉のみ張り替え、既存のガラリや収納棚は移設して再利用。一部の壁や天井の仕上げもそのまま残した。 なかでもリビング壁面の木製パネルは絶対に残したかったもの。この壁を中心に空間のイメージを膨らませ、墨漆喰やパーケットフローリング、サペリ材など経年変化が楽しめるものを選定。新旧の素材をうまく融合させた。


WICとの間仕切り壁に合わせてカイ・クリスチャンセンデザインのユニットシェルフを購入。上部のガラリは旧キッチンのものを移設。

リビングの既存木製パネルに合わせてその他の仕上げ材を選定。日当りの良い南側の窓際は愛犬ストックのお昼寝スポット。
趣漂う室内に馴染む家具たちは、全国のショップで買い求めたアンティーク。以前から所有しているものが大半で、新たに購入したのはリビングの間仕切り壁に合わせたユニットシェルフのほか2点ほど。
リビングはハンス・J・ウェグナーやフィン・ユールがデザインした北欧もの、ダイニングキッチンはフランス、アメリカ、日本のものをミックスして多国籍な空間をつくり上げている。各所には、仕事の買い付けのため年に数回は訪れるフランスやベトナム、タイから持ち帰った異国の食器や民芸品が、センス良くディスプレイされている。


玄関脇の小部屋はシューズクローゼットを兼ねた靴のメンテナンス部屋に。趣味のアウトドア用品や旅道具を見せながら収納。

「料理にも共通しますが、一つのテイストにまとめるのではなく自然な感じでミックスすることに楽しさがある」
とタロヲさん。春先には新たな家族が誕生する予定。二人のセンスが詰まった心地良い場所が温かく迎えてくれるだろう。



建物データ
〈物件名〉代々木の部屋〈専有面積〉101.55㎡〈バルコニー面積〉11.25㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1961年〈リノベーション竣工〉2017年〈設計期間〉1.5ヶ月 〈工事期間〉1.5ヶ月〈設計〉江口智行建築設計事務所〈施工〉ルーヴィス

※この記事はLiVES Vol.98に掲載されたものを転載しています。
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