
リノベーションマンション事例「旅の思い出と愛猫のぬくもり。『好き』に囲まれたくつろぎの家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の浜村さんご夫妻の事例をご紹介します。都心に建つヴィンテージマンションをリノベーション。旅先で手に入れた雑貨、カラフルなモロッコラグ、愛猫アイテムが彩る楽しい我が家。(text_ Satoko Hatano photograph_ Takuya Furusue)
「以前の家はワンルームマンションで、仕事場とくつろぐ場を分けるのは難しいと感じていました」
と話すフォトグラファーの浜村菜月さんは、仕事で独立するのを機に新しい住まいを求めた。テレビ局勤務のご主人も多忙なため、通勤に便利な都心エリアで物件探しを開始。稀少なヴィンテージマンションの売り物件を見つけ、ほぼ即決で購入したそう。建物の竣工は1971年。ピロティ状の共用エントランスや意匠に凝った住戸の建具などが、竣工当時のまま大切に使われていることも購入の決め手になったという。

旅行先で集めた雑貨やモロッコラグが彩るLDK。リビングは下がり床で、本棚には仕事や旅関係の書物が収まる。ダイニングテーブルはH.P.DECOで購入。
「上端の角を面取りした六角形の扉や細かいところにデザインが施されていて。使えるものは活かしながら、全体はシンプルで使いやすい家に仕上げたいと思いました」(浜村さん)

廊下から洗面室を見る。床と腰壁には浜村さんが選んだ名古屋モザイクの六角タイルを貼った。上端の隅を面取りした建具は竣工当時のオリジナルだ。
要望を汲み取ってくれそうな依頼先をネットで検索して、行き着いたのが建築家の東端桐子さんだった。
「大きな間取り変更はありませんが、構造の特徴を活かし、床レベルに変化をつけています」
と東端さん。梁が床上に現れる逆梁構造だったため、リビングを渡る梁の間の床を30cm低くして、下がり床をつくった。マンションでは珍しい下がり床は浜村さんのリクエスト。仕事で訪れたモロッコのラグやフランスのクッションカバーなど、色とりどりのファブリックを敷き詰めて、床座のくつろぎスペースに仕立てている。

「大型ソファを置くよりも部屋を広く使えるし、床の段差に座ったり、ラグに寝転んでテレビを観たり、好きに過ごせるので夫も気に入っています」(浜村さん)
愛猫のまきゃべりも、ぬくぬくのラグがお気に入りだ。

一室空間のLDKを見まわすと、本棚には仕事や旅関係の書籍のほか、インドやロシアの雑貨が。キッチンラックには旅先で仕入れた食器が並び、フロアにはヴィンテージ家具が配されている。浜村さんの好きなもので彩られた空間は、愛嬌とあたたかみがあり、なんとも居心地がいい。



こうした〝お気に入り〟が映える空間は、白壁と無垢の床材でシンプルに。仕事部屋は奥まった寝室の手前にデスクを設置してスペースを確保。既存扉の位置を変えたり、シャワールームを浴室に変更したり、必要最小限の工事で快適性を得ている。コンパクトでも作業に集中できる仕事場と、好きなものたちに囲まれたオフの空間がある、充実した職住一致の住まいが完成した。

バルコニーの横にある仕事場。梁と柱に囲まれた小スペースを上手に利用。デスク天板は既存の造り付けテーブルを再利用した。左手の木板の奥が寝室。

玄関から廊下を見通す。ラグと愛猫の写真をインテリアに。

建物データ
〈専有面積〉53.17㎡〈バルコニー面積〉6㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈設計〉ストレート デザイン ラボラトリー〈施工〉アズ建設〈設計期間〉5ヶ月 〈工事期間〉3ヶ月〈既存建物竣工〉1971年〈リノベーション竣工〉2016年


●浜村菜月さん
講談社写真部を経て、2014年に独立。美容やファッション誌を中心に活躍中。愛猫をモデルにした『猫と楽しむニャンスタグラムのすすめ』なども出版。ネットストアのmeowonderでは、手作りの猫じゃらしを販売。
www.natsukihamamura.com
※この記事はLiVES Vol.96に掲載されたものを転載しています。
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