
マンションリノベーション事例「東西の窓を生かして自然の風が通り抜ける住まいに。快適な室温を保つ工夫も」
雑誌「リノベで解決!50代からの家と暮らし。」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は千葉県我孫子市岩堀さん・長尾さんの家の事例をご紹介。緑豊かな団地の一室を、借景を眺めやすいワンルームへ刷新。「棚柱」や「設備鴨居」などの活用で、暮らし方に合わせてスペースをカスタマイズできる住まいになっています。また、断熱や通風を整える工夫を施したことで、家の中の温度ムラもなくなりました。(text: hiromi sakamoto photo:hiroshi kiyonaga)
- 千葉県我孫子市
- 岩堀さん+長尾さんの家
- 夫50歳 妻57歳(取材時)
- 工事費:890万円(税込み、設計料別)
- 物件価格:560万円(税込み)
- 築年数:46年(1977年築)(取材時)
- 専有面積:74.25㎡
- 設計:岩堀未来長尾亜子建築設計事務所
断熱や通風を整える工夫で夏も冬も快適に!
緑が豊かで管理が行き届いた団地の一室をリノベーションした建築家の岩堀未来さん、長尾亜子さん夫妻。
断熱性アップのため、「フェノールフォーム」という断熱材を床35㎜厚、壁・天井50㎜厚に敷き詰めました。そのかいあって、UA値※(外皮平均熱貫流率)は0・64W/㎡Kを実現。現在の建築基準法で千葉県に定められた基準値、0・87W/㎡Kを上回る数値です。
「冬は放射パネルや蓄熱層による放射暖房で十分。ほのかな暖かさで心地よく、室内の温度が均一なので体への負担が少なく快適に過ごせます。また夏は、外気温が30℃以上でも、窓を開ければ風が通って快適です」
※UA値とは、建物の屋内から屋外へ逃げる熱量を、建物の外周全体で平均した値。数値が小さいほど断熱性能が高い

住宅性能の向上と変更が容易な間取りで暮らしを楽しく!
間取りは、借景を眺めやすいワンルームへ刷新。空間を緩やかに仕切るために、3つの要素を取り入れました。
1つ目は棚と仕切りを兼ねた「棚柱」。2つ目は電気配線をまとめた「設備鴨居」。3つ目は目隠しや仕切りになる蚊帳生地の「幕」。
棚柱は組み立てや移動がしやすく、設備鴨居のおかげで配線を気にせず間取りを変更できるので、暮らし方に合わせてスペースをつくることができます。
「自分仕様の生活スペースをつくれると、高齢になっても快適に、楽しみながら暮らせると思います」(岩堀さん)。
水回りの工夫
オープンなアイランドキッチンに。市販品の収納も賢く活用

浴槽は設置せずシャワーのみ。出入りのしやすさも重視


断熱・通風の工夫
断熱性をしっかり補充。床には蓄熱層も追加

ウインドゥキャッチャーと行き止まりのない間取りで通風を!



東側のベッドスペース

リビング裏の小さなスペースは、今後は畳を敷いて離れ風にする案も

リノベーションで目指したのはどんなこと?
東西の窓、既存の放射パネルなどを生かしつつ、高齢化した際の身体的、社会的な不便さの解決を目指しました。
「身体の負担軽減のために、断熱や通風を整える工夫を施すことで、温熱環境をバリアフリーに。また、棚柱や電気配線をまとめた「設備鴨居」、収納に取り付けた「幕」などの活用で、楽しみながらカスタマイズできる余地を残しました」
と岩堀さん。
建物データ
<建物規模>地上14階建ての1階<設計期間>2020年10月〜2021年7月<工事期間>2021年7月〜2022年3月<設計>岩堀未来長尾亜子建築設計事務所<施工>小川共立建設

※この記事は「リノベで解決!50代からの家と暮らし。」に掲載されたものを転載しています。
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