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中古マンションリノベーション事例「木造モダニズム住宅 “聴竹居” に思いを馳せ、古(いにしえ)の和の暮らしを現代的に再解釈」

雑誌「relife+」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は東京都江東区 Oさんご家族の事例をご紹介。玄関に入ると、石畳のような土間や使い込まれた建具でノスタルジックな世界へと誘われるO邸。「京都の聴竹居(建築家・藤井厚二の自邸。1928 年築)に憧れて、和のモダンな意匠や間取りの考え方を取り入れました」と、Oさん夫妻は語ります。(text_ hiromi sakamoto photograph_ ayako mizutani)

  • 工事費:1200 万円(税込み、設計料別)
  • 東京都江東区 Oさんの家
  • 家族構成:夫35歳 妻37 歳
  • 専有面積:57.89㎡
  • 築年数:49年(1973 年築)

新旧のアイテムを織り交ぜて風情ある空間を創出

玄関に入ると、石畳のような土間や使い込まれた建具でノスタルジックな世界へと誘われるO邸。「京都の聴竹居(建築家・藤井厚二の自邸。1928 年築)に憧れて、和のモダンな意匠や間取りの考え方を取り入れました」と、Oさん夫妻は語ります。ふたりがリノベーション前提で購入したマンションの設計は、「知識が豊富でセンスがある」と見込んだブルースタジオに依頼。設計担当の石橋昂生さんは、「おふたりは京町家の雰囲気を好む一方、お手入れしやすいスペックの設備機器なども望まれていたので、現代と古(いにしえ)の挟間をテーマにしたギミックをちりばめて」設計したそう。

 そのひとつが、夫妻が切望した古い建具。

「聴竹居で見たような鎧戸や引き手をイメージして、大正や昭和初期の感じのものを選びました」(夫妻)

事前に教えてもらったサイズ感を意識しつつ、建具のデザインが揃っていなくても、色みが似たものを購入したのだとか。

「石橋さんが、さらに色が揃うように調整してくれました。床材の塗装色も、希望に合わせて調合していただきました」(夫妻)

ほかにも、コンロの壁を京都のおくどさんのようにしつらえるなど、様々に意匠を凝らしています。

「思いきり内装にこだわれましたし、いろいろな提案もあったので、既製品にない味わい深い空間に仕上がりました」(夫妻)

タイル貼りの石畳がリビングの手前まで雁行した土間玄関。使い込まれた建具と相まって、京町屋の路地にいるような錯覚に。左側は洗面室の建具で、「刀の鍔(つば)のような引き手のデザインが気に入っています」とご主人
寝室の建具は、繊細な障子格子をはめ込んだ4 枚組みの板戸。引き手には美しい彫飾りが施されている。寝室の光がこぼれる障子は、古道具屋で丈夫なワーロンに貼り替え済み
O’s Favorite Point

右上・小上がりの畳は、クリ色を選んで個性的に。赤茶系に塗られた杉材と相性がよく、シックな印象にまとめている/左上・廊下に造作したニッチの飾り棚。構造的に取り外せない壁を生かして、墨モルタルを用いて黒漆喰のように仕上げた/右下・小上がりの天袋の襖に貼った、京からかみの文様は梅がモチーフ。角度や配置を指定してつくったこだわりの逸品。「雲母(きら)の独特な光沢が好きで、金と銀も入れて刷ってもらいました。だんだんいぶし銀のように光が変化し、味わい深くなるのが楽しみ」と奥さま/左下・ご主人のお気に入りは、寝室とLDKで仕上げを替えた杉材の無垢フローリング。写真はオイルで仕上げた寝室の床。「歩くとサラリとして気持ちいい」とご主人。一方のLDKは、ウレタン塗装でツヤを出し、漆塗りのような質感に

お気に入りに囲まれた暮らし

もちろん、キッチンや浴室などの水回りは機能的な設備を採用し、暮らしの快適性にも配慮しています。また、家じゅうに風が巡る通風計画や、家族が集まりやすい小上がりなど、聴竹居にインスパイアされた間取りも実現。「小上がりのある暮らしに憧れていたので、ここでの食事や団らんが楽しい」と、お気に入りに囲まれた暮らしを満喫しています。

右・4.6畳の小上がりは、畳下を収納に活用。梁下の空間を生かして天袋を造作し、上部は飾り棚に使っている/左・トイレには、LDKの緩衝地帯となるように、アーチの入り口や本棚を備えた前室を配置。トイレの扉は、グラデーションのついたすりガラスや、昔ながらの木製閂(かんぬき)錠が気に入って購入した古い建具
リビングを彩るファブリックパネルやテレビボードはご主人の手づくり 
小上がりのカウンターを支える丸柱は、リビングの入り口に対して中央にくるように配置。足元に敷いた玉砂利もアクセントのひとつ
小上がりのカウンターは、ご主人が選んだ耳付きの天板と絞り丸太で造作。樹種は床と揃えて杉材に。一方のキッチンは、墨モルタルで仕上げたおくどさん風の袖壁や、目地をまっすぐに通したタイルで、レトロな雰囲気がただよう。移動可能なアイランドの作業台は、「多目的に使えるように」と奥さまがこだわったアイテムのひとつ
右・トイレにもアートを飾って/左・キッチンは食洗機を備えて機能的に。換気扇が吊り棚と一体化するように、フード前面に木製パネルを貼っている

洗面室の床は、杉材の無垢フローリングにウレタン塗装を施した。壁のボーダータイルは縦に貼り、キッチンと異なる仕上げで変化をつけた

建物データ

<建物規模>地上10 階建ての5階<設計期間>2018年7月~ 10月<工事期間>2018年10月~ 12月<設計>ブルースタジオ<施工>シグマテック

玄関側の個室とDKは、壁を外して寝室に。2部屋に区切って使えるように、照明などの電源も2か所に用意した。バルコニー側の2室は、オープンなLDKに変更。さらに、トイレを移動して、寝室から小上がりへと風の通り道も確保した

※この記事はrelife+(リライフプラス) premiumNo.2に掲載されたものを転載しています。
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