住宅ローン控除とふるさと納税を併用すると損する?基本知識からシミュレーションまで!

本記事では、住宅ローン控除とふるさと納税の基本知識を押さえ、併用する際のシミュレーションをします。ポイントを押さえ、シミュレーションサイトをうまく利用しながら、節税効果を高めましょう。
記事の目次
住宅ローン控除とふるさと納税の基本知識

まず、住宅ローン控除とふるさと納税はどういうものなのか、基本を押さえておきましょう。また、それぞれどれくらい控除されるのか、控除額についても解説します。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてマイホームを購入した方が、一定の要件を満たすことで、所得税や住民税から一定額を控除できる制度です。
マイホームの購入は、「人生の3大支出」の一つに入るほど高額な買い物です。そこで、住宅を購入し安定した生活が送れるよう、住宅ローン控除の制度が導入されました。また、2025年4月以降、すべての建築物が省エネ基準を満たすよう義務化されることに先駆け、2024年からは省エネ基準をクリアした住宅が住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除の上限額
住宅ローンの控除額は、年末時点での住宅ローン残高の0.7%となっていますが、上限額が決まっています。住宅の区分と居住した年によって控除限度額は異なっているため、気をつけましょう。具体的には、下表のとおりです。
住宅の区分 | 居住した年 | 控除限度額(年間) |
---|---|---|
認定長期優良住宅 認定低炭素住宅 |
2022年・2023年 | 35万円 |
2024年・2025年 | 31.5万円 | |
ZEH水準省エネ住宅 | 2022年・2023年 | 31.5万円 |
2024年・2025年 | 24.5万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 2022年・2023年 | 28万円 |
2024年・2025年 | 21万円 | |
一般の新築住宅 | 2022年・2023年 | 21万円 |
2024年・2025年 | 14万円 |
例えば、次の条件の時にどうなるかを見てみましょう。
<条件>
住宅:省エネ基準適合住宅
居住した年:2024年
年末時点での住宅ローン残高:4,000万円
この場合、計算上の控除額は4,000万円×0.7%=28万円となります。しかし、先ほどの表に照らし合わせると、21万円が限度額となるため、7万円分は控除しきれません。しかし、控除しきれなかった分は住民税から差し引かれます。
なお、住民税からの控除額は「前年度課税所得×5%」で最大9万7,500円までです。そのため、上記の条件の場合はすべて控除されます。ご自身の住宅ローンの控除額がどれくらいになるのか、一度計算してみるといいでしょう。

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ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分の故郷や応援したい自治体に寄付をすることで、2,000円を超えた金額について、所得税や住民税から控除できる制度です。
自治体から寄付したお礼として「返礼品」をもらえることもあるため、利用されている方も多いでしょう。控除を受けるためには、「確定申告をする」「ワンストップ特例制度を利用する」の2つの方法があります。詳しくは後述しますが、どちらを選択するかによって、何から控除するかが異なるため、よく覚えておきましょう。
ふるさと納税の控除額
ふるさと納税の控除額は次の式で求められます。
1. 所得税からの控除額
所得税からの控除額=(ふるさと納税の寄付金額-2,000円)×所得税の税率
なお、年分までは復興特別所得税(税率2.1%)が徴収されます。また、所得税からの控除限度額は総所得の40%以下です。
2. 住民税からの控除額
基本分の控除額=(ふるさと納税の寄付金額ー2,000円)×10%
特例分の控除額=(ふるさと納税の寄付金額ー2,000円)×(90%ー所得税の税率)
なお、基本分は総所得の30%、特例分は所得割額の20%が限度となります。所得割額とは、所得金額に比例して課税される住民税額のことです。
ふるさと納税額の年間上限の目安
ふるさと納税額には上限があり、家族構成や年収によって異なります。上限額を超えて寄付をした場合には控除されず、自己負担となります。年間上限の目安は下表のとおりです。
ふるさと納税をおこなう人の給与 | 独身または共働き | 夫婦 | 夫婦+子1人 (高校生) | 共働き+子1人 (高校生) | 共働き+子1人 (大学生) |
---|---|---|---|---|---|
300万円 | 2万 8,000円 |
1万 9,000円 |
1万 1,000円 |
1万 9,000円 |
1万 5,000円 |
400万円 | 4万 2,000円 |
3万 3,000円 |
2万 5,000円 |
3万 3,000円 |
2万 9,000円 |
500万円 | 6万 1,000円 |
4万 9,000円 |
4万円 | 4万 9,000円 |
4万 4,000円 |
600万円 | 7万 7,000円 |
6万 9,000円 |
6万円 | 6万 9,000円 |
6万 6,000円 |
700万円 | 10万 8,000円 |
8万 6,000円 |
7万 8,000円 |
8万 6,000円 |
8万 3,000円 |
引用:総務省「ふるさと納税のしくみ」
ただし、住宅ローン控除や医療費控除など、他の控除を受けていない場合となります。なお、これらはあくまで目安となります。節税の効果を最大限享受するためにも、納税額の上限を把握しておきましょう。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用するとどうなる?

住宅ローン控除とふるさと納税を併用するとどうなるのでしょうか?確定申告をする場合と、ワンストップ特例を利用する場合で、ふるさと納税が所得税から引かれるのか、所得税と住民税の両方から差し引かれるのかが変わります。確定申告とワンストップ特例でどう変わるのかを見ていきましょう。
確定申告をした場合
確定申告をおこなうと、ふるさと納税した分は所得税と住民税の両方から控除されます。先述したように、ふるさと納税をおこなうと課税される所得が減り、所得税も少なくなります。住宅ローン控除は所得税から差し引くため、結果として差し引ける所得税の金額も減ってしまうことになります。つまり、損をする可能性があるということです。所得税で控除できなかった住宅ローンの控除額は、住民税からも控除されますが、上限である9万7,500円を超えた分は切り捨てとなり、減税の恩恵を最大限受けることができません。
ワンストップ特例を利用した場合
ワンストップ特例とは、確定申告をせずに、ふるさと納税の控除が受けられる制度です。ただしこの場合、所得税からは控除されず、住民税のみから控除されます。課税所得が減らないことから、所得税も減らず、住宅ローン控除できる税額控除できる所得税の金額は変わりません。つまり、住宅ローン控除とふるさと納税がお互いに影響を与える可能性はないということです。ただし、上限額以上にふるさと納税をした場合は、自己負担となるため、事前にシミュレーションをしておきましょう。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用した場合のシミュレーション

住宅ローン控除とふるさと納税を併用した場合にどうなるか、実際に数字を入れてシミュレーションしてみましょう。
なお、次のいずれかの条件を満たす場合、両方満額の控除が受けられます。
- ワンストップ特例制度を利用する
- 住宅ローンの控除額が税額控除前の所得税額よりも小さい
しかし、所得税は1年間の収入が確定しなければ正確に計算できません。そのため、実際にはふるさと納税の上限額は予測するしかないでしょう。
<条件>
家族構成:夫、妻、子ども(17歳)
世帯年収:700万円(夫:600万円 妻:100万円)
住宅ローン控除:25万円
家族構成から見たふるさと納税の限度額の目安:6万円
上記の条件の場合、所得税は12万4,500円、住民税は24万2,000円となります。
確定申告した場合とふるさと納税した場合で比較した表が下記のとおりです。
確定申告した場合 | ワンストップ特例を利用した場合 | ||
---|---|---|---|
住宅ローン控除で控除できる金額 |
所 得 税 |
11万8,700円 | 12万4,500円 |
住 民 税 |
9万7,500円 | 9万7,500円 | |
住民税から住宅ローン控除しきれなかった額 | 3万3,800円 | 2万8,000円 | |
ふるさと納税で控除できる金額 |
住 民 税 |
5万2,200円 | 5万8,000円 |
すべて控除したあとの住民税額 | 9万2,300円 | 8万6,500円 |
※復興特別所得税は含めていません
確定申告をすると、ふるさと納税した分を所得から引くため、結果として所得税が抑えられます。上記の場合、11万8,700円となり、全額住宅ローン控除の適用が可能です。控除できなかった分、住民税からも控除されますが、3万3,800円が控除しきれません。
ワンストップ特例を利用した場合は、ふるさと納税した分は住民税からのみ控除されます。この条件の場合、所得税率は10%となるため、ふるさと納税の控除額5,800円分が所得税から住宅ローン控除で控除できません。しかし、その分、住宅ローン控除の控除しきれない額が減ります。
実際に比較すると、それほど大きな差はないことがわかるでしょう。ただしこれはあくまでシミュレーションです。詳しくシミュレーションしたい場合は、源泉徴収票などを手元に用意し、シミュレーションサイトなどを利用しましょう。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する際の注意点

住宅ローン控除とふるさと納税を併用する際には、注意点があります。
住宅ローン控除1年目はワンストップ特例が利用できない
住宅ローン控除の適用を初めて受ける際は、確定申告をしなければなりません。なお、ワンストップ特例を利用できる条件は下記のとおりです。
- 確定申告や住民税申告をする必要がない給与所得者
- 1年間の寄付先が5自治体以内である
そのため、確定申告が必要となる住宅ローン控除1年目はワンストップ特例が利用できません。もし誤ってワンストップ特例を利用したとしても、確定申告は可能です。ただし、ワンストップ特例の申請がすべて無効になるため、確定申告の際には、ワンストップ特例の寄付分を含めて申告をしましょう。
所得控除を受ける際は正確にシミュレーションする
所得控除を受ける際には、正確にシミュレーションしましょう。所得控除を受けた場合、所得が減った分、結果として所得税が減ります。住宅ローン控除は住民税からも控除できますが、控除しきれない分が多くなる可能性が高くなります。そのため、他の所得控除の控除額を正確に把握することが大切です。シミュレーションサイトを活用し、正確にシミュレーションしましょう。
まとめ
住宅ローン控除とふるさと納税を併用すると、損する可能性があります。しかし、ワンストップ特例制度を利用した場合は、損する可能性が低くなります。ただし、住宅ローン控除の適用を初めて受ける際には、ワンストップ特例制度が利用できない点に注意しましょう。他の所得控除を受ける際には、所得が減り、結果として所得税が減るため、住宅ローン控除の控除しきれない分が多くなる恐れがあります。シミュレーションサイトを利用し、正確にシミュレーションしましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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