住宅ローンの借り換え審査は厳しい?落ちる原因や通過の秘訣も解説

そこで本記事では、住宅ローンの借り換えを検討している方に向けて、審査に関する情報をお伝えします。住宅ローンの借り換え審査は厳しいのか、借り換え審査に落ちる原因は何でどのようにすれば改善するかのヒントを紹介します。そして、借り換えを成功させるポイントも解説していくので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
住宅ローンの借り換え審査とは?

住宅ローンの借り換えとは、他の金融機関から融資を受けて既存の住宅ローンを返済し、新しい条件で借り換えることです。
住宅ローンには基準金利があり、契約時に確定した引き下げ幅をもとに適用金利が決まります。もし、市場の金利が下がる状況になっても、基準金利が変わらないと現行ローンの金利は下がりません。基準金利を下げるには、他の金融機関に変えるしかありません。金利を下げ、総返済額が削減されるのを期待して、借り換えを実行します。
最近では、金利の引き下げのみでなく、団体信用生命保険(団信)を充実させるためにも借り換えを検討する場合もあります。住宅ローンの借り換え審査では、収入や個人信用情報の確認がおこなわれ、適用金利の変更が妥当か評価されます。
住宅ローンの借り換え審査は厳しい?審査に通らない原因と対策は?

住宅ローンの借り換え時の審査は、新規で住宅ローンの申し込みをした際よりも厳しいでしょう。金融機関はできるだけリスクをとりたくないと思っているのもありますが、申し込み者と物件の問題が関係しています。では、借り換え審査に落ちる原因は何でしょうか。また、どのようにすれば対策できるでしょうか。以下、原因と対策を解説します。
担保評価の問題と対策
借り換え審査に落ちる主な原因のひとつは、住宅の担保評価の低下です。住宅の価値は、購入から10年まで約半分、それ以降もどんどん下降します。国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」によると、木造戸建て住宅では20年後には、購入価格の20%になるとされています。
例えば、新築時4,000万円で購入した住宅も、20年後には800万円程度になってしまうということです。物件価格が下がっても、35年でローンを組んでいたら、20年後ではまだ1,000万円以上の住宅ローンが残るでしょう。これでは、担保評価よりも住宅ローン残高が多くなりがちです。そうすると、金融機関はリスクを考慮し、担保評価より高額な貸付けを避けるため、借り換え審査を厳しくします。
対策としては、担保評価向上のために住宅の定期的なメンテナンスやリフォームをおこない、査定価値を維持するのが賢明でしょう。
契約者の状況変化の問題と対策
新規の住宅ローンを借りてから10数年たつと、契約者の健康状態や、経済状態は変化するものです。契約者の状況が変化することによって、借り換えの審査に落ちることがあります。この時のよくある原因と対策は以下のとおりです。
健康状態が悪くなっていて団信に加入できない
持病があったり、過去に大きな病気やケガ、入院・手術を経験したりする場合は、団体信用生命保険(団信)に加入できず、住宅ローンを借り換えられないこともあります。加齢にともない体力も衰えてきますが、できるだけ健康に気を遣うなど、意識しましょう。
信用情報に傷が付いた
クレジットカードのリボ払いや、カードローンによる借り入れが増えてしまったり、現行の住宅ローンの返済で遅延や滞納があると、審査が厳しくなります。滞納履歴があるために、住宅ローンを完済できないかもと金融機関に判断されてしまったら、審査が厳しくなるのは当然です。余分な借り入れを避けたり、支払い余力以上の買い物をしないように気をつけましょう。なお、住宅ローンの滞納は、正当な理由があれば、金融機関から考慮してもらえるケースもあるようです。
就労状況が変わった
住宅ローンの借り換え審査で落ちる要因になるのは、就労状況の変化です。例えば、転職による勤続年数の短縮や、収入減などが挙げられます。まず、多くの金融機関が、勤続年数は3年以上を審査基準にしています。会社の倒産によるやむを得ない転職も同様に扱われます。転職間もないため、以前の年収よりも減少している方も要注意です。借り入れがなくても、年収が下がってしまえば、返済負担率が上昇し、審査に落ちてしまう要因になります。転職後、契約社員や派遣社員になって非正規雇用となると、収入が不安定とみなされるので審査の障害になります。
対策としては、安定した雇用形態を維持し、返済負担率を抑えるのが重要です。
住宅ローン設定の問題と対策
借り換えた住宅ローンを完済する時の年齢が高いと、借り換え審査に不利になる可能性があります。新たな借り換えによって返済期間が延び、定年後に完済する設定になる場合、高齢者の返済リスクを懸念されるでしょう。そもそも、定年後の年金以外の収入確保は難しく、返済が困難になるかもしれません。
はじめから、借り換え後の完済時の年齢を把握し、余裕をもって返済可能な計画にするのが大切です。また、返済能力を示すために収入の安定性や保有資産をアピールするのも重要です。
国土交通省「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(令和5年3月)」を見てもわかるように、住宅ローンの審査は、健康状態や年収、勤続年数が影響するとわかります。
住宅ローンを借りた当初は、若く健康で支払い余力が十分にあっても、歳を重ねるごとに健康に不安を持ち、支払能力が下がってくる可能性があります。やむを得ない要素もありますが、これらの原因を改善しておけば、審査に通過できる可能性があがるとも考えられます。事前にリスクになる要因を改善し、借り換え審査に臨むようにしましょう。
住宅ローンの借り換えを成功させるためのポイントとは?

さまざまな努力の結果、めでたく住宅ローンの借り換え審査に通過できたのに、あまり得にならなかったと後悔してしまう方もいます。借り換え後にこんなはずではなかったと後悔する事態は避けたいものです。そこで本章では、住宅ローンの借り換えを成功させるポイントを紹介します。
借り換え後の金利に1%以上の差がある
住宅ローンの借り換えを成功させるポイントの一つは、借り換え後の金利が1%以上下がることです。返済期間や借入金額によっては、1%未満でも利息軽減効果が見込める場合もあります。ただ、1%以上の金利差があればより成功に近づけます。
そのため、借り換える前に、借り換え後の適用金利で利息額をシミュレーションしましょう。シミュレーションでは諸費用も含めて計算をおこない、実際の利益を正確に見極めることが重要です。
諸費用をあわせた軽減効果が十分にあるか
借り換え検討では、金利に目が行きがちですが、それだけに気をとられてはいけません。借り換えには手数料が発生するので、手数料を含めたすべての費用を計算に入れて、検討するのを忘れないようにしましょう。かかる費用の金額によっては、金利が低いからといってあまり得にならないケースがあるので要注意です。
金利上昇リスクに対応できているか
借り換え前は固定金利を選択していて、借り換え後に変動金利へプラン変更する場合は、金利上昇リスク対策をしておきましょう。変動金利では、5年ルールや125%ルールがあるので急激な変動はないかもしれませんが、状況次第では予想以上の金利上昇がある可能性はゼロではありません。そのため、余裕のある返済計画を立て、手元の資金を確保しておき、繰り上げ返済も対応できるよう準備しておきましょう。
住宅ローンが1,000万円以上残っているか
住宅ローンの借り換え効果は、住宅ローンの残高が多いほど効果があるといわれます。借り換えをすると、新しい金融機関にとっては新規契約となるため、諸費用が発生します。事務手数料や保証料など、さまざまな項目で構成される諸費用は、住宅ローンの総額によっては100万円近くにもなることがあります。特に借入残高が1,000万円以下の場合、これらの諸費用が大きな負担となり、借り換えをしないほうがいい場合もあります。借り換えを検討する際には、住宅ローン残高が1,000万円以上あることを確認しておこないましょう。
返済期間が10年以上残っているか
借り換えによる金利差は、住宅ローンの残存期間が長いほうが効果は大きくなります。多くの方は、住宅ローンの返済方法として元利均等返済を選択しています。この返済方法の場合、住宅ローンの返済が終盤になってくると、返済額に対する利息の割合が減っていきます。すると、金利の低い金融機関で借り換えても、利息軽減効果があまり得られません。借り換えの時期や手数料で判断すると、借り換えしないほうがいいケースさえあります。残存期間がどのくらいかも十分考慮して検討しましょう。
審査は複数の金融機関に申し込む
住宅ローンの借り換え審査は、複数の金融機関に申し込みましょう。金融機関はそれぞれの審査基準で運用しているため、一つの金融機関で審査に落ちた場合でも、別の金融機関で審査が通る可能性があります。
同時に3~4社ほどの金融機関に事前審査を申し込んでおきましょう。そうすれば審査に落ちた場合でも、別の金融機関で再度審査でき、完了までの時間を短縮できます。重視するポイントは金融機関ごとに異なるため、ある金融機関で落ちても別の金融機関で通る場合もあります。
借りる金額は現行の住宅ローン残高よりも少なくする
現行の住宅ローン残高よりも少ない金額で借り換えるのも、成功のポイントです。新たな融資金額が低くなれば、金融機関にとってリスクが低減し審査に通りやすくなると期待できます。ただし融資を少なくする場合、足りない分には自己資金が必要になるので、無理のない範囲で計画するのが肝心です。
いずれの方法をとる場合も、計画的に準備して慎重に実行しましょう。シミュレーションをしたい場合は、不動産情報サイト アットホームの「借換え試算」をぜひご利用ください。
この記事のQ&A
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、他の金融機関から融資を受けて既存の住宅ローンを返済し、新しい条件で借り換えるのを指します。住宅ローンには基準金利があり、契約時に確定した引き下げ幅をもとに適用金利が決まっています。もし、市場金利の引き下げにともない、住宅ローンの金利を下げたいと思うなら、他の金融機関に変えるしかありません。
住宅ローンの借り換え審査に通らない原因と対策は?
借り換え審査に落ちる主な原因のひとつは、住宅の担保評価の低下です。住宅の価値は、購入からどんどん低下し、20年後には購入価格の20%程度に下がってしまいます。担保評価向上のためには、定期的にメンテナンスやリフォームをおこない、査定価値を維持するのが賢明です。
他の要因としては、本人の健康状態や、経済状態の変化があります。例えば、加齢にともない健康を損ねたり、信用情報に傷が付いたり、就労状況が変わって勤続年数が短くなったり収入が下がる可能性などです。また、借り換えた住宅ローンを完済する時の年齢が高いと、借り換え審査に不利になる可能性があります。条件が改善できるものについては善処しましょう。
住宅ローンの借り換えを成功させるためのポイントとは?
借り換えを成功させるには、次の7つのポイントがあります。
- 前後の金利差が1%以上ある
- 諸費用を含めた利息負担削減効果が得られているか
- 金利上昇リスクへの対策は取れているか
- 住宅ローン借入残高が1,000万円以上ある
- 返済期間が10年以上残っている
- いくつかの金融機関に審査を申し込む
- 現在の住宅ローン残高より少ない金額で借りる
上記を押さえて、納得のいく借り換えを実現しましょう。
まとめ
本記事では、住宅ローンの借り換えを検討している方に向けて、審査に関する情報を提供しました。住宅ローンの借り換え審査は場合によっては厳しくなりますが、借り換え審査に通過できない原因をよく理解し改善すれば、チャンスは十分にあります。借り換えを成功させるポイントをふまえ、住宅ローンの借り換え審査を有利にすすめましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ