住宅購入で親からの支援はバレる?正しい手続き方法と制度を解説

その際、「手渡しで親から支援を受ければ税務署にバレないのでは?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、結論からいえば、贈与の申告をしなくても税務署にバレてしまう確率は高いでしょう。しかも贈与税の申告をおこなわなかった場合、無申告加算税が課されることになるため注意が必要です。
本記事では、親からの住宅購入支援がバレる理由と正しい手続き方法を解説します。トラブルを避け、安心して支援を受けるために知識を身に付けましょう。
記事の目次
住宅購入で親から支援を受ける人は多い?

公益社団法人不動産流通推進センターが公表した「2024年 消費者動向調査」によると、住宅購入で親から支援を受けた方の割合は、以下のとおりでした。
2023年 | 2024年 | |
---|---|---|
新築住宅の購入 | 17.8% | 19.7% |
中古住宅の購入 | 11.6% | 9.9% |
親の支援があることで、住宅ローンの負担が軽減される、頭金が増えて好条件の住宅ローンを借りやすくなるなど、メリットが多く存在します。
ただし、支援の方法によっては、税務上の問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。家族からの善意を有効活用するためにも、計画的に準備をおこないましょう。
親からの資金援助の平均額
公益社団法人不動産流通推進センターが公表した「2024年 消費者動向調査」によると、親からの資金援助の平均額は、以下のとおりでした。
2023年 | 2024年 | |
---|---|---|
新築住宅の資金援助 | 915.8万円 | 776.3万円 |
中古住宅の資金援助 | 734.4万円 | 752.9万円 |
地域差や親の経済状況、世帯の希望する住宅の価格帯によっても変動しますが、700万円以上と高額な支援を受けている方も珍しくないとわかります。
支援額は多ければ多いほど、税制上の取り扱いが厳格になるため、親からの支援を検討する際は、知識と準備がリスク回避のカギとなるでしょう。
親からの支援はバレる?税務署に知られる仕組みとは

税務署が親からの支援を把握するきっかけは、不動産登記の名義と資金の整合性、住宅ローン控除の申請時に提出される書類などが情報源となります。特に、大きな金額が一括で子どもの口座に振り込まれると、銀行に「疑わしい取引」と判断され、調査が始まる恐れがあります。
また、登記名義と支払者が異なる場合や、明らかに年収に見合わない購入をおこなっている場合、税務署に指摘されるケースも珍しくありません。贈与の証拠が残っていなくても、資金の動きと不動産の取得記録から支援の実態が推定されることがあるため、バレる可能性はあるでしょう。
親からの支援がバレるとどうなる?
親からの支援が税務署に発覚し、贈与と判断された場合、贈与税の課税や無申告加算税、延滞税が加算されるリスクがあります。贈与税は、年間110万円を超えた場合に発生します。祖父母、父母から18歳以上の孫や子への贈与の場合は、以下の贈与税が発生するため注意しましょう。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
ただし、住宅取得を目的とする贈与は非課税枠があり、条件を満たすことで贈与税を免除される制度があります。非課税制度を活用することで節税につながるため、支援を受ける前に確認しましょう。
また、無申告加算税が加算される場合、納付しなければならない税額によって税率が異なります。下表は、税務調査を受けてから申告した場合の税率です。
本来納めるべき納税額 | 税率 |
---|---|
50万円まで | 15% |
300万円まで | 20% |
300万円超 | 30% |
特に、意図的に支援を隠していたと認定された場合、重加算税などの重い処分が下ることもあり、過去の支援を遡って調査される可能性が出てきます。
バレるきっかけはさまざまですが、住宅ローン控除の申請書類や不動産取得にともなう手続きの最中で、税務署が違和感を覚えるケースが多いでしょう。
家族からの好意であっても、税法上は厳格に判断されるため、注意が必要です。
住宅購入で親から支援を受ける際のポイント

親からの支援は、正しい手続きをすれば安心して受け取ることができます。
また、住宅取得資金の贈与は非課税枠が用意されており、非課税の枠内で支援を受けることで課税される心配もありません。そのため、手続きをする際は、証拠となる書類をきちんと残しておくことが大切です。内容に矛盾がないように準備をおこないましょう。
贈与か借り入れかで大きく異なる
親からの支援は、贈与か借り入れかで大きく異なります。贈与にする場合は、贈与税が発生しますが、借り入れの場合は返済をする必要があるため、贈与税が発生しません。
ただし、借り入れとして処理する場合、借用書を作成することが前提です。返済スケジュールや利息の有無も記載し、実際に返済がおこなわれている必要があります。借用書がない場合、税務署は実質的に贈与と判断する可能性が高くなるため、注意しましょう。
住宅取得資金の非課税制度を活用する
住宅取得資金の贈与には、最大1,000万円の非課税枠があります。非課税制度は、国が設けている特例で、一定の条件を満たす住宅購入に対して、最大1,000万円まで贈与税が免除される制度のことです。
ただし、1,000万円の非課税制度の適用を受けるには、住宅が省エネなどの基準を満たしている必要があります。基準を満たしていない住宅の場合は、500万円までとなるため注意しましょう。
また、制度を利用するには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与税の申告をしなければなりません。申告を忘れると非課税制度が適用されないため、忘れずに手続きをしましょう。
「バレずに支援を受けたい」が危険な理由

贈与税を回避するために「税務署にバレずに親から支援を受けたい」と考える方もいますが、非常にリスクがあるため、やってはいけません。
税務署は金融機関の記録や不動産登記、ローン申請の内容などから、資金の出所を把握することが可能です。特に、住宅購入のように大きな資金が動く場面では、たとえ意図的に隠していなくても、結果的に調査対象となる可能性が高くなります。
あとから「知らなかった」「贈与のつもりはなかった」と主張しても、申告をしなかった以上、見逃してもらえることはありません。無申告が発覚すれば、重加算税や延滞税などの追加課税がおこなわれるため注意が必要です。
現金手渡しや分割援助は対策にならない
「現金で渡せばバレない」「少しずつ振り込めば問題ない」との考えも、贈与税の対策にはなりません。贈与税は、年単位で課税対象を判断しますが、意図的な分割や継続的な資金移動は「定期贈与」と判断されて、一括課税される可能性があります。
また、現金で手渡した場合でも、住宅購入の契約や決済の記録が残るため、資金の出所を問われることは避けられないでしょう。「書類がなければバレない」などの安易な考えは通用しません。結果的に大きなペナルティを受けることになるため、必ず申告しましょう。
正直に申告して制度を活用する
安全かつ合理的な方法は、住宅取得資金の非課税制度や基礎控除を活用し、正直に申告することです。制度を活用するためには、贈与契約書の作成や必要書類の保管、期限内の申告などの手間はかかりますが、今後の不安やトラブルを避けることができます。もし、手続きに不安な場合は税理士などの専門家に相談すると、スムーズに進められます。家族の好意を無駄にしないためにも、正しい手続きを心がけましょう。
住宅購入で親からの支援を受けるタイミングは?

親から支援を受ける際は、金額や制度だけではなく、タイミングも大切です。例えば、非課税制度を活用するには、贈与の時期と住宅の取得時期が合っていなければなりません。
支援のタイミングが遅れると、購入資金に間に合わず、住宅ローンの組み直しが必要になる可能性があります。反対に、早すぎると制度の適用外になる恐れがあるため、注意しましょう。
安全なタイミングを見極めるためには、早い段階から家族と相談し、必要があれば不動産会社や税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。
タイミング次第では非課税制度が使えない
住宅取得資金の非課税制度は、贈与の時期と住宅の取得・入居のタイミングに厳密な条件があります。具体的には、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに贈与税の申告をおこない、かつ一定期間内に住宅を取得・居住しなければなりません。
スケジュールを把握せずに贈与を受けると、非課税枠が適用されず、想定外の贈与税が課される恐れがあるため、事前に計画を立てておくことが重要です。また、住宅の完成や引き渡しが遅れると、制度の要件を満たせないリスクがあるため、購入計画と制度の利用計画はセットで考えましょう。
【要注意】税務署に申告漏れを疑われやすいケース

税務署は、日頃から不自然な資金移動や登記記録を厳しくチェックしています。申告漏れを指摘されないためにも、名義や資金の一致と申告内容の整合性を保ち、支援内容を証明できる書類を揃えておくことが大切です。では、特に税務署に申告漏れを疑われやすいケースを解説します。
登記名義と実際の出資者が違うケース
親が購入資金をすべて支出したにも関わらず、子ども単独の名義で登記をおこなった場合、隠れた贈与として扱われる可能性が高くなります。
税務署は、登記名義だけではなく、実際に誰がどのように資金を出したのか、根拠となる振込記録や契約書類などをチェックします。たとえ善意でおこなわれた支援でも、書類が不十分であれば課税の対象となるため注意しましょう。
些細な金額であっても、贈与契約書を作成するなど、証明可能な形でやり取りを記録することがリスク回避につながります。
申告せずにあとから発覚したケース
贈与を受けたにも関わらず申告をしていなかった場合、税務署は数年後に申告漏れを把握する場合があります。特に、相続が発生した際、被相続人の過去の資金移動履歴や不動産の購入経緯が調査され、未申告の贈与が明るみに出るケースは珍しくありません。
贈与が発覚した場合、当時の贈与税に加えて延滞税や加算税が課されるため、結果的に大きな金銭的負担となってしまいます。トラブルを避けるためにも「今は大丈夫」と思わず、贈与を受けたら都度正しく申告し、証拠書類を残しておくようにしましょう。
まとめ
住宅購入で親からの支援を受ける場合、正しい知識で手続きをしなければ思わぬ課税リスクを生む原因になります。「バレなければ問題ない」と考えるのではなく、必要な場合には贈与税を正しく申告する姿勢が大切です。また、住宅取得資金の非課税制度を活用することも節税につながります。
税理士や不動産会社などの専門家の力を借りながら、安全に支援を受けましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ