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住宅ローンの借り換え後も控除は受けられる?控除を適切に受けるための完全ガイド

住宅ローンを借り換えた時、住宅ローン控除は適用されるのか条件や規定を解説します
住宅ローンの借り換えをおこなったあとでも、引き続き控除を受けられるのか、手続きや条件を知りたいと考えている方もいるでしょう。特に、借り換え後の税額控除の適用を最大化するには、控除対象になるための条件を正しく理解し、必要な手続きをとらなければなりません。しかし、借り換えにともなう控除額の変更や、確定申告が必要になるケースなど、手続きや計算方法に戸惑う場合もあるでしょう。

本記事では、住宅ローンの借り換え後でも、住宅ローン控除を受けるための条件や、手続きに必要な書類を解説します。注意点や借り換え後の控除額の計算方法、確定申告が必要な場合の手続きにも触れているので、借り換えを検討している方はぜひ参考にしてください。

住宅ローン借り換え後も住宅ローン控除を受けるための条件

住宅ローンの借り換え後も控除を受けられる条件を解説します
住宅ローンの借り換え後も控除を受けられる条件を解説します

そもそも住宅ローン借り換え後も、引き続き住宅ローン控除を受けられるのでしょうか。結論を言うと可能ですが、原則として借り換え後は住宅ローンの控除の対象外となるため、一定の条件を満たす必要があります。本章では、住宅ローンの借り換え後に控除を継続して受けるために満たすべき2つの条件を解説します。

新たな借り入れが住宅ローンの返済を目的にしている

住宅ローンの借り換えをおこなったあとも住宅ローン控除を受けるためには、新たな借り入れが住宅ローンの返済を目的とすることを証明する必要があります。もし、借りた資金を住宅ローン以外の用途、例えば生活費や車の購入などに充ててしまうと、住宅ローン控除の適用対象外となるため、注意が必要です。

借り換え後の控除を確実に受けられるようにするために、過去のローンを繰り上げ返済した事実を示す書類を保管しておきましょう。具体的には、借り換え前の住宅ローンの残高証明書や返済明細書、金融機関から発行される借入金の用途証明書などです。金融機関から残高証明書が送付される時期は通常10~11月頃のため、紛失しないように大切に保管しましょう。

また、借り換え後の登記情報も証明の一つです。借り換えが完了すると、以前の金融機関の抵当権は抹消され、新たな借入先の抵当権が設定されます。これらの登記記録を確認し、借り換えの事実を証明しましょう。

住宅ローン控除の適用要件を満たしている

住宅ローン控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。借り換え後も適用されるため、条件を事前に確認しておきましょう。

住宅ローン控除の適用条件チェックリスト
合計所得金額が2,000万円以下である
返済期間が10年以上ある
住宅ローン控除を受ける年の12月31日時点で居住している
住宅の新築・購入から6カ月以内に入居している
床面積が50平方メートル以上ある(合計所得金額1,000万円以下なら40平方メートル以上も対象)
親族などから購入していない
2つ以上の住宅を所有している場合、主に居住している住宅である
事業利用している場合、床面積の50%以上が居住スペースになっている
中古住宅の場合、1982年1月1日以後に建築されたものであること、もしくは現行の耐震基準に適合しているもの(基準を満たしていない場合は、取得した日の2年以内に耐震住宅であると証明されたもの)

住宅ローン控除を受けるには、これらの条件をすべて満たしていなければなりません。特に借り換えをおこなう際は、返済期間が10年未満にならないよう注意が必要です。返済期間が10年未満になると、控除の適用対象外になります。

また、投資用物件や賃貸用の住宅は対象外で、自分が居住する住宅でなければ適用できません。転勤や単身赴任などで、住宅ローンの契約者が一時的に居住していない場合は、家族が居住していれば控除を受けられます。住宅ローン控除の適用を確実に受けるために、要件を十分に確認しながら手続きを進めましょう。

住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除額の計算方法

借り換え後の住宅ローン控除額の計算方法を解説します
借り換え後の住宅ローン控除額の計算方法を解説します

住宅ローンの借り換え後、新たなローン残高や金利が設定されるため、住宅ローン控除額も再計算が必要です。本章では、具体的な数字を用いて、借り換え後の住宅ローン控除額を正しく計算する方法を解説します。

借り換え前より借り換え後の借入額が多くなる場合

住宅ローンの借り換えをおこなう時、借り換え後の金額が借り換え前より大きくなるケースがあります。借り換えにかかる諸費用(事務手数料、保証料、登記費用、印紙税など)や、リフォーム費用などを上乗せする場合があるためです。例えば、借り換え前のローン残高が3,000万円で、借り換えにともなう諸費用が200万円かかるとしましょう。すると、借り換え後のローンの借入額は3,200万円です。前述の場合、新たな住宅ローン控除の対象額は以下の計算式で求められます。

控除対象額 =
(借り換え後の年末残高)×(借り換え前のローン残高)÷(借り換え後の新規借入額)

具体的なシミュレーションを見てみましょう。

【例】

借り換え前のローン残高:3,000万円(A)
借り換え後の新規借入額:3,200万円(B)
借り換え後の年末ローン残高:3,100万円(C)

この場合、住宅ローン控除の対象になる金額は以下です。

3,100万円(C) × 3,000万円(A) ÷ 3,200万円(B) = 約2,906万円

住宅ローンの借入額が、借り換え前より借り換え後のほうが大きい場合、借り換えによって借入額が増えても、すべてが控除対象額に含まれるわけではありません。

借り換え後より借り換え前の借入額が大きいまたは同じ場合

住宅ローンの借り換えをおこなう時、借り換え後の金額が以前の残高と同じか、借り換え前より小さくなるケースがあります。この場合は、新たなローンの年末時点での残高が控除の対象額です。以下でシミュレーションしてみましょう。

【例】

借り換え前のローン残高:3,000万円(A)
借り換え後の新規借入額:2,800万円(B)
借り換え後の年末ローン残高:2,700万円(C)

この場合、控除対象はCの金額、つまり2,700万円です。借り換えをしても、控除の仕組み自体は変わらず、年末のローン残高に応じて税額が軽減されます。なお、具体的な減税額は入居年により異なるため、確認しておきましょう。

例えば、2023年に新築を取得した場合、控除率は0.7%で13年間適用されます。このケースでは、控除額は次の計算式で求められます。

2,700万円 × 0.7% = 18万9,000円

なお、認定長期優良住宅やエネルギー性能向上住宅などで、控除額の上限が設定されているため、適用条件は事前に確認しましょう。

借り換え後も住宅ローン控除を受けるための手続き

借り換え後も住宅ローン控除を受けるための手続き方法について紹介します
借り換え後も住宅ローン控除を受けるための手続き方法について紹介します

住宅ローンを借り換えたあとも、住宅ローン控除を継続して受けるためには、いくつかの手続きが必要です。借り換えをおこなうと、新しいローン契約が成立し、税務上の扱いも変わるため、控除を適切に受けるための手続きが欠かせません。本章では、借り換え後に必要な手続きを解説します。

借り換えが10月以前の場合

住宅ローンの借り換え後も住宅ローン控除を継続して受けるためには、決められた書類を用意し、正しく手続きをおこなわなければなりません。特に、10月以前に借り換えをおこなった場合は、給与所得者なら年末調整の際に、勤務先へ以下の2種類の必要書類を提出します。

年末調整で用意する書類
給与所得者の(特定増改築等)
住宅借入金特別控除申告書
住宅ローン控除を申請した初年度に税務署から送付され、住宅の購入金額や居住開始日などの情報が記載されています。借り換えをしても、この書類は引き続き利用できるため、そのまま勤務先へ提出すれば問題ありません。
万が一、紛失してしまった場合は、税務署で再発行の手続きをおこないましょう。
住宅取得資金に係る借入金の
年末残高証明書
毎年9月末時点の借入残高を記載したもので、借入先の金融機関が発行します。通常、10月から11月頃に金融機関から送付されるため、最新のものを年末調整の際に提出しましょう。なお、繰り上げ返済や延滞があると記載内容が変わる場合があるため、発行された証明書の内容をしっかり確認しておきます。

借り換えが10月以降の場合

住宅ローン控除を利用している方が、10月以降に住宅ローンの借り換えをする場合、通常の年末調整では手続きが完了しない可能性があります。その理由は、新たな借入先の金融機関から発行される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」の準備が間に合わないためです。この場合は年末調整ではなく、確定申告をおこなって控除の適用手続きを進めましょう。

確定申告で用意する書類
給与所得者の(特定増改築等)
住宅借入金特別控除申告書
住宅ローン控除をはじめて申請した際に税務署から送られてくる書類です。控除を継続する場合も、この書類を使用するため、紛失しないように保管しておきましょう。紛失した場合は、税務署で再発行の手続きができます。
住宅取得資金に係る借入金の
年末残高証明書
新たな借入先の金融機関が発行するもので、通常は10月~11月頃に郵送されます。証明書の発行が年内に間に合わない可能性があるため、確定申告の期間(原則翌年2月16日~3月15日)内に手続きをおこないましょう。書類がそろい次第、早めに申告するとスムーズに控除の適用を受けられます。

借り換え前には住宅ローン控除を利用していなかった場合

住宅ローンの借り換え後にはじめて住宅ローン控除を適用する場合、給与所得者でも確定申告をおこなわなければなりません。確定申告の期間までに下記の書類を準備し、申請を進めましょう。

確定申告で用意する書類
確定申告書 控除の適用を受けるための基本書類
住宅借入金等特別控除額の
計算明細書
税額控除額を算出するために必要な書類
住宅取得資金に係る借入金の
年末残高等証明書
金融機関から送られる借入金の残高を証明する書類
登記事項証明書 住宅の所有者や面積などを確認する公的書類
工事請負契約書または
売買契約書のコピー
取得価格を証明するために使用する書類
土地の登記事項証明書および
売買契約書のコピー
土地購入も控除対象とする場合に用意する書類

住宅の種類により、追加で特定の書類が必要になる場合もあります。例えば、中古住宅の場合は耐震基準適合証明書を求められる可能性があるため、事前に管轄の税務署国税庁のホームページなどで確認し、不備のないように準備を進めましょう。

なお、給与所得者の場合、住宅ローン控除の適用をはじめて受ける年に確定申告をおこなえば、2年目以降は年末調整で控除の手続きが済みます。2年目以降は、金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」と税務署から送付される「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出するだけで、控除の適用を継続できるため、事前に必要書類を確認し、スムーズに手続きを進めましょう。

借り換え後に住宅ローン控除を利用する時の注意点

借り換え後に住宅ローン控除を申請する際の注意点をまとめます
借り換え後に住宅ローン控除を申請する際の注意点をまとめます

住宅ローン控除は、一定の条件を満たせば所得税や住民税の控除を受けられる制度です。しかし、借り換え後に利用する際には、いくつかの注意点があります。本章で、借り換え後に住宅ローン控除を利用する際の注意点をみていきましょう。

住宅ローン控除の適用期間は延長されない

住宅ローン控除の適用期間は、新築住宅で13年間、中古住宅では10年間です。この期間は延長されないため、借り換えや返済期間の変更があった場合でも、控除の適用期間自体が延長されることはありません。

例えば、新築住宅を購入し、2022年から住宅ローン控除を受けた場合、控除期間は2035年までの13年間です。2024年に借り換えをおこなっても、控除期間は当初の予定と変わらず2035年で終了します。借り換えにより返済期間が延長されても、控除を受けられる期間は元々のローンの控除を受けた年から計算されるため、返済期間の延長が控除期間の延長にはつながりません。

また、借り換えで返済期間を35年に延長しても、住宅ローン控除の適用は最長13年で、返済期間の全体に対して控除を受けられるわけではないため、注意が必要です。借り換え後には、控除期間が延長されると誤解しないようにしましょう。控除期間を最大限活用するためには、早期に借り換えや控除適用の手続きをおこない、控除期間内で減税効果を出すことが大切です。

借り換え後は控除額の再計算が必要になる

借り換え後、住宅ローン控除額は再計算される点に注意しましょう。借り換え前に適用されていた控除額は、そのまま引き継がれるわけではありません。新たに借りたローンに基づいて再計算されます。これは借り換えによって新たな契約が成立し、借入額や金利、返済期間が変更されるためです。

例えば、借り換え前に3,000万円の住宅ローンで控除を受けていた場合、控除額は年末残高に基づきます。仮に、年末残高が3,000万円で、住宅ローン控除率が0.7%と仮定すると、控除額は21万円。しかし、2025年にこのローンを借り換えて、残高が2,800万円になった場合、この2,800万円に対して再計算されます。もし控除率が0.7%ならば、控除額は19.6万円です。借り換え後の控除額は予想以上に減少する可能性があるため、事前にシミュレーションをおこなって確認しておきましょう。

借り換え時期によって確定申告が必要になる

会社員は、住宅ローン控除を受け始めた次年度以降は確定申告をせず、年末調整で手続きが可能です。しかし借り換えた時期によって、住宅ローン控除を受けるために確定申告が必要になる場合があることに注意しましょう。特に、借り換えが10月以降におこなわれた場合、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」が間に合わず、年末調整では控除を受けられないため、確定申告を通じて手続きが必要です。

必要書類が間に合わない場合は、次年の確定申告期間内に、必要書類をそろえて申告をおこないましょう。必要書類には、「確定申告書」や「給与所得者の住宅借入金特別控除申告書」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」などがあります。適切に申請すれば、過不足なく控除を受けられるため、よく確認しながら確定申告をおこないましょう。

住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除に関するよくある質問

住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除に関するよくある質問をまとめました。

住宅ローン借り換え後も住宅ローン控除を受ける条件は何?

条件は、次の2つです。

  • 住宅ローン返済が新たな借入金の目的であること
  • 住宅ローン控除の適用条件(所得金額2,000万円以下、返済期間10年以上、居住継続など)を満たしていること

借り換え後も控除を受けるためには、過去のローン残高証明書や返済明細書、新たな登記記録を保管しておき、返済期間が10年未満にならないよう注意しましょう。

借り換え後の住宅ローン控除額はどう計算する?

住宅ローンの借り換え後、控除額は新たなローン残高に基づき再計算されます。借り換え後の借入額が増える場合の計算式は次のとおり。

控除対象額=借り換え後の年末残高×借り換え前のローン残高÷借り換え後時の新規借入額

一方で、借り換え前より借り換え後の住宅ローンの借入額が減る場合は、借り換え前のローン残高がそのまま控除対象額となります。具体的な控除額は、年数や住宅の種類により異なり、年末残高に控除率をかけた金額です。

借り換え後も住宅ローン控除を受けるための手続きは?

10月以前に借り換えた場合は、年末調整で必要書類を提出するだけで控除を継続できます。10月以降に借り換えた場合は、年末調整では手続きができないため確定申告が必要です。また、借り換え前に控除を利用していなかった場合も、確定申告を通じて控除を受ける手続きが必要になるため、期日内に手続きを進めましょう。

借り換え後に住宅ローン控除を利用する時に注意する点は?

借り換えで控除期間は延長されず、最長13年で終了するため、早期に手続きを進めることが大切です。借り換え後は、年末残高に応じ控除額が再計算され、新たな借入額や金利に基づいて控除額が変更されるため、予想以上に減少する場合がある点にも注意しましょう。

まとめ

本記事では、住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除に関して、条件や手続きに必要な書類、注意点を解説しました。控除を受けるためには、借り換え金が住宅の返済目的であること、所得や返済期間、居住条件を満たしていなければなりません。
これらを理解すると、借り換え後も住宅ローン控除を最大限に活かせるでしょう。金利の低いローンに借り換えたうえで控除を継続できれば、月々の返済負担を軽減しつつ、税負担も減らせます。控除額は新たな借り換えローンの残高に基づいて再計算されるため、借り換えのタイミングや金額によって得られるメリットが変わる点には注意しましょう。
借り換え後の手続きも確定申告や年末調整のタイミングを押さえておけば、控除の取りこぼしを防げます。住宅ローン控除を無駄なく活かすために、ぜひ本記事の内容を参考にして、計画的に借り換えを進めてみてください。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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