共働き世帯における住宅ローンの年収目安は?適正額の考え方を紹介

本記事では共働きの世帯年収で借り入れできる住宅ローンの金額の考え方を解説します。 住宅購入にかかる費用や住宅ローンの組み方も紹介するので、今後住宅ローンを検討している方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
【世帯年収別】共働き世帯の適正な住宅ローン借入額とは

共働きの世帯年収で借り入れできる住宅ローンの金額はどのくらいなのでしょうか。
住宅ローンの借入額は年収倍率、借入限度額、返済額の3つの視点から考えられます。
共働き世帯の適正な住宅ローン借入額を世帯年収別にみていきましょう。
年収倍率で考える場合
まずは年収倍率の視点から共働き世帯の住宅ローン借入目安額を考えてみましょう。
年収倍率とは世帯年収をもとに年収額に対して物件購入価格が何倍になるかを表したものです。
購入する物件の種類ごとの年収倍率(全国平均)は以下のようになっています。
購入物件 | 年収倍率 |
---|---|
土地付注文住宅 | 7.5倍 |
新築マンション | 7.2倍 |
建売住宅 | 7.0倍 |
注文住宅 | 6.8倍 |
中古マンション | 5.8倍 |
中古戸建 | 5.7倍 |
(参考:住宅金融支援機構 2021年度 フラット35利用者調査)
年収倍率のデータをもとに、世帯年収ごとの住宅ローン借入目安額をみていきましょう。
世帯年収額 | 住宅ローン借入目安額 |
---|---|
400万円 | 2,280~3,000万円 |
600万円 | 3,420~4,500万円 |
800万円 | 4,560~6,000万円 |
1,000万円 | 5,700~7,500万円 |
ただし住宅ローンの借入額を決める場合は、年収倍率だけでなく住宅ローンの返済額を考慮した上での家計状況を考慮する必要があります。
住宅ローンは長期間で返済をおこなうものであるため、世帯の家計状況を考えた上で借入額を決めることが大切です。
借入限度額で考える場合
次に借入限度額の視点から住宅ローンの借入目安額を考えてみましょう。
借入限度額は住宅ローンの契約者の年収で計算した返済負担率や返済能力によって決まるものです。
一般的な借入限度額の計算方法は以下のとおりです。
借入限度額=年間返済可能額÷12カ月÷審査金利での100万円あたりの返済額(月)×1,000,000円
年間返済可能額は返済負担率をもとに計算されます。
返済負担率は以下の式で算出するもので、フラット35の基準では手取り年収の35%以下とされています。
返済負担率=1年間の返済額÷年収×100
年間返済可能額=手取り年収×返済負担率
※審査金利:3%/返済期間:35年/審査金利での100万円あたりの返済額(月):3,848円で計算
世帯 年収額 |
手取り 年収額 |
年間返済可能額 (返済負担率:35%) |
住宅ローン 借入目安額 |
---|---|---|---|
400万円 | 約320万円 | 112万円 | 約2,426万円 |
600万円 | 約480万円 | 168万円 | 約3,638万円 |
800万円 | 約640万円 | 224万円 | 約4,851万円 |
1,000万円 | 約800万円 | 280万円 | 約6,064万円 |
借入限度額はあくまで金融機関の審査に通る借入金額です。
実際の借入限度額まで住宅ローンを借り入れた場合の返済額は年収400万円で月9.3万円、年収600万円で月14万円、年収800万円で月18.6万円となります。
世帯の家計状況によっては返済が苦しくなる可能性もあるため、実際の借入額は無理なく返済できる金額から逆算して決めることが大切です。
返済額で考える場合
世帯の年収倍率や借入限度額をもとに住宅ローンの借入額を決めると、毎月の住宅ローン返済が苦しく余裕のある生活が難しくなるリスクがあります。
住宅ローンの借入額は毎月の返済の計画を立てた上で決定することをおすすめします。
返済負担率の理想は25%以下とされており、住宅金融支援機構の2021年度 フラット35利用者調査によれば2021年度の平均総返済負担率は22.7%でした。
返済負担率25%で計算した返済額をもとに、住宅ローンの借入目安額をみていきましょう。
世帯 年収額 |
年間返済 可能額 (返済負担率:25%) |
住宅ローン 借入目安額 |
毎月の 返済額 |
---|---|---|---|
400万円 | 80万円 | 約1,733万円 | 約6.6万円 |
600万円 | 120万円 | 約2,599万円 | 約10万円 |
800万円 | 160万円 | 約3,465万円 | 約13.3万円 |
1,000万円 | 200万円 | 約4,331万円 | 約16.7万円 |
ライフイベントや年齢によって世帯年収が減ることを考慮して、無理のない返済計画を立てることが大切です。
返済額を抑えつつ借入金額を大きくするためには、頭金を多く用意したり返済期間を長くしたりする工夫が必要です。
また月の負担を減らすためにも、車のローンや奨学金などの返済がある場合は、住宅ローンを借り入れする前に繰り上げ返済をすることも検討しましょう。
共働き世帯が住宅ローンを借りる時に注意するべきこと

共働き世帯が住宅ローンを借りる時は、年収倍率や借入限度額だけでなく長期的な返済計画を立てたうえで金額を決めることが大切です。
共働き世帯が住宅ローンを借りる時に注意するべきことを紹介します。
現在の収入だけでなく将来の収入を考える
共働き世帯が住宅ローンを借りる時は、現在の収入だけでなく将来的な収入額を予測して借入金額を決めましょう。
出産や育児などのライフイベントがあると産休や育休、時短勤務などで世帯収入が減る可能性があります。
現在の収入で返済できる金額ではなく、将来収入が減少しても無理なく返済可能な金額を検討しましょう。
離婚時のリスクを理解しておく
世帯年収を目安に住宅ローンの金額を考える場合は、万が一離婚した場合のリスクも考えておく必要があります。
連帯保証や連帯債務、ペアローンなど夫婦の収入を合算して住宅ローンを借りる場合は借入可能額を増やせるのがメリットです。
しかし万が一離婚してしまった場合は住宅ローンの借り方によって家の所有者が変わり、トラブルの原因になる可能性があります。
離婚を前提に住宅を購入する世帯はいないかもしれませんが、万が一に備えて離婚のリスクを考慮しておくことが大切です。
無理のない返済プランを計画する
共働き世帯に限らずいえることですが、住宅ローンを借りる時は無理のない返済プランを計画しましょう。
返済プランを決める時は返済負担率を考慮し、今後のライフプランを具体的に考えておくことが大切です。
住宅ローンは20~35年と長期間で返済するものであり、子どもの教育資金などで今後支出が増えることも想定して返済額を決める必要があります。
共働き世帯で住宅ローン月々10万円返済は苦しい?

毎月10万円の家賃を共働き世帯で支払っていることから、住宅ローンの返済額も月々10万円で設定しようと考える方も多いかもしれません。
ただし住宅を取得した場合は住宅ローンの返済額に加えて毎年の固定資産税や火災保険料の支払い、修繕費積立などの費用が発生します。
そのため家賃として支払っていた金額をそのまま住宅ローンの返済額と同額にすると、家計が苦しくなるリスクがあります。
毎月の返済額だけでなく、その他の諸費用もかかる点を把握したうえで返済計画を立てることが大切です。
住宅購入にかかる諸費用について

住宅を購入する時は物件の購入金額以外にもかかる費用が存在します。
住宅ローンを組む前には住宅価格以外の費用がどのくらいかかるのか把握し、借入金額を設定することが大切です。
ここからは住宅購入にかかる諸費用を解説します。
購入時・住宅ローン契約時の諸費用
住宅購入時や住宅ローン契約時には以下のような費用がかかります。
費用 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 物件の契約書や住宅ローンの契約書に貼る印紙代 |
仲介手数料 | 不動産仲介会社を通して物件を購入した場合に支払う手数料 |
登記費用 | 不動産の所有権を登記簿に記録するときの登録免許税 |
不動産取得税 | 不動産を購入したときにかかる都道府県税不動産取得時に一度だけ納める |
固定資産税精算金 | 取得した不動産にかかる固定資産税を売主の代わりに買主が負担するお金。税率は都道府県ごとに異なる |
頭金 | 住宅ローンを組んで物件を購入する際、購入する物件の代金の一部として先に支払うお金 |
融資手数料 | 住宅ローン契約時に金融機関へ支払う事務手数料 |
団体信用 生命保険料 |
住宅ローン返済中に万が一契約者が死亡した場合に、以降の返済を0にできる保険 |
ローン保証料 | 住宅ローンの返済が滞った場合に返済を保証してくれる保証会社へ支払うお金 |
物件調査手数料 | 住宅ローンの融資基準を満たす物件かの調査にかかる費用 |
火災保険料 | 住宅ローン借入時に加入が必要になる火災保険の保険料 |
購入する住宅ごとに異なりますが、住宅購入や住宅ローンにかかる諸費用は購入価格の3~9%前後かかるのが一般的です。
その他かかる費用
購入する物件によって別途費用が発生するケースもあります。
費用 | 内容 |
---|---|
修繕積立基金 | マンションの修繕に充てるお金として入居時に一括で支払うもの。新築マンションのみにかかる |
設計監理料、地盤調査費、地鎮祭費、上棟式費 | 注文住宅の建設時に行うものにかかる費用 |
上記の費用は特定の住宅を購入した場合のみかかります。
実際の費用額は物件によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
共働き世帯の住宅ローンの組み方

共働き世帯は夫もしくは妻のみの名義で借りる方法、もしくは夫婦それぞれで借りる方法のいずれかを選択可能です。
ローンの組み方によってメリット・デメリットがあるので、世帯ごとに合ったローンを選びましょう。
ペアローン
ペアローンは夫婦二人それぞれの名義で住宅ローンを組む方法で、お互いがお互いの連帯保証人となります。
1つの世帯で2本住宅ローンを借りることになるので、二人分の住宅ローン控除が受けられて節税できるのがメリットです。
ただし住宅ローンの事務手数料が2倍かかる点や、夫婦どちらかが万が一死亡した場合でも、もう片方のローン残高は残る点に注意が必要です。
連帯保証
連帯保証型は夫と妻の収入を合算して審査を受けられる住宅ローンで、夫婦の一方が契約者(債務者)、もう一方が連帯保証人になります。
住宅ローン契約を1本にまとめつつ、世帯年収で借り入れできるのがメリットですが、住宅ローン控除は1人分しか受けられないのがデメリットです。
また連帯保証人は返済の保証をする立場であり、住宅の保有権は主張できないので離婚時にトラブルになる可能性もあるでしょう。
連帯債務
連帯債務型は連帯保証型と同じく夫と妻の収入を合算して借り入れできる住宅ローンです。
連帯保証型と異なり、夫婦一方が契約者(主債務者)、もう一方が連帯債務者になります。
夫婦二人が債務者になるため、住宅ローン控除も二人分受けられるのがメリットです。
民間の銀行ではほとんど連帯債務型の住宅ローンを取り扱っておらず、住宅支援機構のフラット35で利用できるケースが多いです。
単独ローン(夫もしくは妻のみ)
単独ローンは夫、もしくは妻だけの名義で住宅ローンを組む方法です。
夫婦いずれか一方の収入で審査を受けることになるため、共働きでも収入を合算できません。
ただし借りる金額を押さえられるため、一方の収入が減っても返済が滞りにくいのがメリットです。
将来的に共働きをやめる可能性があるなら単独ローンを検討してもいいでしょう。
まとめ
本記事では共働きの世帯年収で借り入れできる住宅ローンの金額の考え方や、住宅購入にかかる費用や住宅ローンの組み方を紹介しました。
共働きで借り入れできる住宅ローンの目安額は、年収倍率や借入限度額をもとにして考えると返済が苦しくなるリスクがあります。
そのため共働き世帯での住宅ローンは将来的なライフイベントを考慮して借入額を決めることが大切です。
また住宅ローンは購入住宅の価格以外の諸費用の分をも含めて金額を考える必要があります。
共働き世帯は夫婦二人で住宅ローンを借りるか、夫婦どちらか一方の名義で借りる方法があります。
無理のない返済計画を立てたうえで、自分たちに合った方法で住宅ローンを借りましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ
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