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【最新】長期優良住宅とは?基準やメリット、申請に必要なものを徹底解説

長期優良住宅とは?

長期優良住宅とは、建物を長期に渡り良好な状態で使用するために、国が定めた技術的な基準をクリアし、所管行政庁(都道府県や市、区)の認定を受けた住宅のことをいいます。認定を受けると税制面などの優遇があります。
長期優良住宅の認定制度は、新築住宅だけではなく、既存(中古)住宅の増改築、一戸建て、マンションと物件の種類には関係のない制度ですが、この記事では新築一戸建てについて解説します。

長期優良住宅の認定制度が始まった背景

長期優良住宅の認定制度は、新築住宅は2009年6月から、中古住宅の増改築については2018年4月から始まりました。
2006年に施行された住生活基本法のもと、これまでのスクラップ&ビルド型社会(壊して造る)からストック重視の社会への転換が求められるなか、長期に渡り住み続けられる優良な住宅を普及させる趣旨のもと始まった制度です。

長期優良住宅の認定基準

では、一戸建て住宅で長期優良住宅の認定を受けるために、どういった基準をクリアする必要があるのでしょうか?

劣化対策

建物の土台、基礎、柱や壁などの構造躯体(こうぞうくたい)は、数世代に渡って使用できます。
そのため、下記それぞれの箇所について劣化を防ぐための基準が設けられています。

  1.  ① 外壁の軸組み等
  2.  ② 土台
  3.  ③ 浴室
  4.  ④ 地盤
  5.  ⑤ 基礎
  6.  ⑥ 床下
  7.  ⑦ 小屋裏 

例えば、①の外壁であれば、劣化しにくい材質や薬剤処理された木材を使用、また土台や地盤について防蟻処理をすることによって構造材の劣化を防ぐことが求められます。
また、④の地盤については、地面から基礎上端までの400㎜以上の確保が求められ、⑦の小屋裏については、給排気口をもうけることなどの対策が防湿対策につながり、構造躯体の耐久性が持続しやすくなります。
その他の劣化対策について知りたい場合は、販売会社や施工会社に確認してみましょう。

耐震性

建物の耐震性について、下記それぞれの数値基準や仕様が決められています。

  1.  ① 壁量
  2.  ② バランスの良い壁配置
  3.  ③ 床倍率
  4.  ④ 接合部
  5.  ⑤ 基礎
  6.  ⑥ 横架材

建物の設計上、建物全体に必要な壁の量が確保された上で、建物全体でバランスの良い壁の配置が重要です。
これによって、建物全体の耐震性を上げ、壁の少ない部分からの倒壊等を防ぐことができます。
また、柱や床、筋交いと柱、横架材の接合部、柱頭、柱脚と横架材等の接合部や基礎部分の仕様を一定基準以上にすることで、柱の抜けや外れ等を防止することができ、耐震性の向上につながります。

こういった基準や仕様を満たすことで、住宅性能表示における耐震性能(耐震等級1~3まであり、数字が大きいほど耐震性が高い)において、耐震等級2以上を備える必要があります。

維持管理・更新の容易性

日常生活で直接触れられる内装や頻繁に利用される水回りなどの設備については、構造躯体より耐用年数が短く、維持管理を容易にできることが求められます。

具体的な対策としては、

  • べた基礎のコンクリート内に埋込配管にしないこと
  • 駐車スペースなどのコンクリートを地中埋設管の上に打設しないこと
  • 配管の詰まり防止等のための内面仕様、たわみ、抜け防止措置
  • 排水管の清掃のための掃除口の設置
  • 設備と配管の主要接合部の点検、清掃のための措置

などです。

最近では、一般の住宅でも設計上の制約がなければ、維持管理面に配慮した住宅が作られることも少なくありませんが、長期優良住宅の認定を受ける場合、維持管理や設備の更新のしやすさという点にも配慮されています。

省エネルギー性

省エネルギー性については、住宅性能表示制度の断熱等性能等級1~5のうち、4以上が求められます。(数字が大きいほど高い断熱性能が高い)

そして、その基準について、下記2つの方法によって省エネルギー性能の高さを判断します。

  • 計算による方法
  • 仕様による方法

計算による方法は、「外皮熱還流率に関する基準」、「冷暖房の平均日射熱取得率に関する基準」によって判断され、地域によって定められた一定の基準値以下であることが必要とされます。

また、仕様によって判断する際に満たすべき基準は以下の5つです。

  • 外部に面する部分に対する開口部(窓等)の比率に関する基準
  • 屋根や外壁、床など断熱構造としなければならない部分の基準
  • 屋根や外壁などの断熱材の厚さ等、躯体の断熱性能等に関する基準
  • 建具とガラス等の組み合わせなど開口部の断熱性能、日射取得性能に関する基準
  • 外壁に防湿層や通気層を設けるなど結露の発生を防止する対策に関する基準

つまり、開口部の面積や性能、躯体の断熱材の厚さ、断熱性能とすべき箇所などの基準を満たすことで、断熱、エネルギー消費性能を上げることにつながります。

2022年の改正長期優良住宅法について

2009年に施行された長期優良住宅法ですが、2022年2月20日改正長期優良住宅法が施行されました。

改正内容は、

  • 認定対象の拡大(共同住宅)
  • 認定手続きの合理化
  • 頻発する豪雨災害等への対応

です。

なかでも豪雨災害等への対応として、認定基準に「自然災害による被害の発生防止または軽減に配慮されたものであること」が追加され、災害の危険性が高い「土砂災害特別警戒区域」などでは認定されないこととなりました。

長期優良住宅に対応した住宅を建てた場合のメリットとデメリット

では、長期優良住宅を建てた場合、どういったメリットとデメリットがあるのでしょうか?

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅にすることで、住まいの耐久性や耐震性、省エネ性など、一定の住宅性能を備えることができるとともに、経済的な面でもメリットがあります。

所得税の住宅ローン控除

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して家を購入した場合に、一定の要件を備えることで所得税や住民税(上限あり)が還付される制度です。
そして、住宅ローン控除の最大控除額は、新築と中古、新築住宅の中でも住宅性能によって違いがあります。
この点、新築の長期優良住宅の場合、最大控除額が5,000万円、控除期間13年間と一般の新築住宅(最大控除額3,000万円)と比べても大きくなっています。(入居が2024年以降は、最大控除額4,500万円)

13年間の最大控除額でみた場合、

  • 長期優良住宅:455万円
  • 省エネ基準に適合しない一般の新築住宅:273万円

といった違いがあります。
ただし、実際の控除額は、納める所得税、住民税や借入金額によっても変わります。

投資型減税

投資型減税は、長期優良や低炭素の認定住宅を新築または取得した場合に受けられる減税制度で、住宅ローンを利用しない場合でも受けることができます。(併用は不可)

長期優良住宅へ性能強化するためにかかった費用(上限650万円)の10%(最大65万円)を所得税から控除することができます。

不動産取得税の減税

長期優良住宅では、不動産購入時の不動産取得税の控除額が、一般住宅の1,200万円に対し、1,300万円と多くなります。

不動産取得税の税率が3%ですので、最大減税額として、

  • 長期優良住宅:1,300万円×3%=39万円
  • 一般住宅:1,200万円×3%=36万円

の違いがあります。

登録免許税の税率軽減

住宅を新築、購入した場合の所有権保存登記、所有権移転登記の登録免許税の税率が長期優良住宅と一般住宅で以下のように異なり、それぞれ長期優良住宅のほうが税率は低くなります。

  • 所有権保存登記の税率が、一般住宅0.15%に対して、長期優良住宅は0.1%
  • 所有権移転登記の税率が、一般住宅0.3%に対して長期優良住宅0.2%(一戸建ての場合)

固定資産税の減税期間延長

住宅を取得した際、固定資産税の優遇措置があり、本則の税率の1/2に減税されます。
この減税期間が長期優良住宅と一般住宅で以下のように異なります。(一戸建ての場合)

  • 長期優良住宅の減税期間:5年間
  • 一般住宅の減税期間:3年間

住宅ローンの金利優遇

フラット35を利用する場合、長期優良住宅だとフラット35S(金利Aタイプ)という金利優遇を受けることができます。通常のフラット35の金利から10年間0.25%の金利優遇を受けることができる点が異なります。

例えば、借入金額3,000万円(借入期間30年、元利均等)の場合、10年間で約69万円の返済額が軽減されます。

地震保険料の割引

長期優良住宅では、冒頭でご説明した通り耐震等級2以上の耐震性能が求められます。
耐震等級2の場合、地震保険料の30%割引、耐震等級3の場合、50%割引を受けることができます。

地域型住宅グリーン化事業の補助金

長期優良住宅の場合、国土交通省の推進事業の1つである、地域型住宅グリーン化事業で最大110万円の補助金、(その他地域材を使用すること等による加算あり)が受け取れる可能性があります。国土交通省から採択された地域の中小工務店で建築する場合に適用となります。(2022年度の詳細は未発表)

住宅の付加価値向上

長期優良住宅は、一般の住宅と比べて耐久性・耐震性・省エネ性能について国のお墨付きを受けているという点で付加価値があります。そのため、万が一売却する際など、家の資産価値が問題となる場面でも一定の評価を受けることができます。

長期優良住宅のデメリット

一方、長期優良住宅のデメリットとしてどういったことが考えられるのでしょうか。

申請費用

長期優良住宅の認定を受けるためには、申請書類や図面など必要書類をそろえて申請する必要があります。工務店やハウスメーカーに代行を依頼すると所管行政庁への申請費用、代行費用として、およそ20~30万円の手数料がかかります。
ただ、それ以上に、前述したような税優遇や保険料の割引、補助金の活用によって、申請費用以上のメリットがあるといえます。

定期点検

長期優良住宅は、建築後も定期的な点検やメンテナンスをおこない、建物の良好な状態を維持していかなければなりません。基礎や柱、壁、屋根など構造耐力上主要な部分や給排水管の設備などは、少なくとも10年に1回の点検が必要です。
ただし、定期的な点検やメンテナンスは長く家に住んでいくためには必要となりますので、必ずしもデメリットとはいえません。

メンテナンス履歴の作成と保存

点検や修繕履歴を、所定の計画書に記録しておく必要があります。そして、所管行政から提出を求められる場合がありますのでしっかりと保管しておかなければなりません。
しかし同時に、こういった点検や修繕履歴は、家を売却する際などに役立つこともあります。

住宅建築の時間

長期優良住宅の技術基準のチェックなどで、着工が遅れたり一般の住宅より工期がかかったりする場合があります。長期優良住宅の取り扱い、施工実績も建築する住宅会社を判断する基準にしたほうがよいでしょう。

建築コスト

長期優良住宅を標準仕様としている建築会社もありますが、そうでない場合一般の住宅と比べ建築コストが高くなります。およそ1割から3割程度建築費が高くなるといわれています。ただ、申請費用含め、住環境・安全性・資産価値の向上に対してのコストであるといえますので、長期的に見ればプラスといえるでしょう。

ここまで長期優良住宅のメリット・デメリットをまとめてきましたが、実際には税制や補助金、住宅ローンなど、より専門的な知識が関係してきます。
一般住宅との価格差などを含め、詳細については不動産会社などで聞いてみるとよいでしょう。

長期優良住宅(新築一戸建て)の購入にあたって

ここからは長期優良住宅仕様の建売住宅を購入する場合の手続きや費用について説明します。

申請は誰がおこなう?

長期優良認定住宅を購入する場合、一般的には、認定の申請は着工前に建築主である工務店や住宅会社がおこないます。

申請費用はいつ誰にいくら払う?

申請費用は着工前に建築主である工務店や住宅会社が所管行政庁に支払います。各行政庁、床面積などによって違いはありますが、個人の戸建て住宅の場合、15,000円前後が多いようです。(確認書等がある場合。確認書等がない場合は申請費用はある場合に比べ高くなります)

長期優良住宅を標準仕様とする住宅会社や取扱いの多い工務店、不動産会社などをまずはサイトで調べてみることが必要です。

長期優良住宅(新築一戸建て)購入後の対応

長期優良住宅を購入したあと、所有者としてどういったことをする必要があるのでしょうか?

定期点検は誰がいつおこなう?

定期点検は、最長でも10年間隔で30年以上おこなう必要があります。
所有者自身がおこなうこともできますが、建物の状態を確認する上で専門的な知識も必要となります。
新築時の建築会社や第三者の専門機関でおこなうほうが良いでしょう。

定期点検をおこなわなかったらどうなる?

前述の点検や補修履歴の記録を怠り、行政からの指導に従わないといった場合、長期優良住宅の認定の取り消し、受けた税金の優遇などの返還を求められる場合もあります。

売却や相続はできる?

長期優良住宅を売却、あるいは相続が発生した場合、新しい所有者に認定された計画実施者の地位を承継する手続きが必要です。
それまでの点検、メンテナンス内容含め、新しい所有者に引き継ぐ必要があります。

まとめ

現在は地球規模でSDGsの取り組みや持続可能な街づくりが求められています。
その中で、長期優良住宅認定制度における住宅の耐久性や耐震性を高め資源を有効活用すること、省エネルギー性を高めCO2の削減に貢献することは、持続可能な街づくりにもつながることです。
2022年の税制改正にあった住宅ローン控除 でも、省エネ住宅等に対する優遇の違いも鮮明となっております。
マイホーム購入の際の1つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

吉満 博

執筆者

吉満 博

株式会社あつみ事務所(あなたのお家お金相談室)

住宅購入や住み替えを中心に、長期の視点で購入者の立場で売買仲介、コンサルティングサービスを提供。購入後のライフプランを踏まえ、1人1人にあった予算や家探し、家づくり、住宅ローン返済計画などを提携ローンだけでなく全すべての選択肢から提案。 また、適正価格での購入や将来の資産性など、購入後の出口戦略まで踏まえた提案をおこなう。

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