台風に強い家の特徴は?設計のポイントと今からできる対策を紹介!
近年では台風に強い家づくりへの関心が高まり、多くのハウスメーカーや建築士が台風対策を前提とした設計や施工方法を取り入れるようになっています。本記事では、台風に強い家の特徴と対策方法を解説します。災害から家族を守る住まいの条件を考えましょう。
記事の目次
台風による住宅被害の実態

日本では毎年のように台風が発生し、多くの地域で住宅被害が報告されています。特に2019年の台風15号・19号では、都市部においても屋根の飛散やガラスの破損、大規模な停電が発生し、想定以上の被害がありました。このことから、従来の住宅構造が極端な風圧や飛来物に弱いこと、住宅の脆弱性が露呈しました。まずは、台風による住宅被害の傾向と住宅の弱点を見ていきましょう。
台風による住宅被害とは
台風は、主に暴風と豪雨の2つが住宅にダメージを与えます。強風は屋根材や外壁をはがし、強風によって飛ばされた物体が住宅を直撃することで、二次被害を引き起こします。豪雨は排水能力を上回る水量により、床下・床上浸水や構造内部への水の侵入を引き起こすでしょう。
特に、築年数が古い住宅や防水・耐風性の設計が不十分な住宅では、致命的となるケースも珍しくありません。また、目に見えにくい接合部や基礎部分が損傷を受けることで、建物全体の耐久性が著しく損なわれかねません。
近年の被害例から見る住宅の弱点
実際の被害から浮かび上がる弱点は、屋根と窓、建物の構造そのものが挙げられます。特に、大型台風は新築や築浅の住宅であっても、屋根材の固定が不十分だったり、風を逃がす構造ではないことで、屋根がめくれたり、瓦が飛散したケースが多く報告されました。
また、飛来物によってガラスが破損し、室内への雨水の侵入が広がった住宅もあります。台風被害からは、見えない部分の設計や素材の選定、補強の精度が重要となることがわかるでしょう。
【沖縄の住宅に学ぶ】台風に強い家の特徴

沖縄では年間に複数回の台風の上陸があり、暴風や豪雨、塩害など多くのリスクに直面します。過酷な自然環境に対応するためにも、沖縄の住宅は全国でも高い耐風性・耐久性が特徴です。では、沖縄の家づくりから台風に強い家の特徴を見ていきましょう。
沖縄が台風住宅の最先端な理由
沖縄ではRC造の住宅が主流で、風速50m/秒以上にも耐える設計が標準となっています。屋根はフラット構造で風を逃がしやすく、壁面をシンプルに保つことで風の影響を受けにくい点が特徴です。
また、窓は小さく少なめに設計して破損リスクを抑えており、ガラス面には飛散防止フィルムやシャッターを取り付けて、住宅全体の防御力を高めています。実際に台風被害を抑えられていることから、全国でも設計のヒントとなるでしょう。
沖縄の外装の特徴
沖縄の住宅は、暴風とともに塩害への対応も不可欠です。海風に含まれる塩分は鉄部の腐食を早め、外壁や窓枠に深刻な劣化をもたらします。したがって、外壁にはタイル張りや防塩仕様のコンクリートが使用され、金属部には防錆塗料やステンレス素材が採用されるケースが増えています。
屋根も鉄筋コンクリートが多く、塩分にも耐える構造。海に近い環境での耐久性を最優先した設計が標準化しています。
設計段階でできる台風に強い家にするポイント

台風に強い家づくりは、構造だけではなく使用する素材の選定も重要です。また、間取りや開口部の配置によっても、風圧や浸水リスクは大きく変わります。台風に備えた設計は、細部の工夫が家の強さに直結するでしょう。では、設計段階でできる台風に強い家にするポイントを解説します。
風を分散する屋根の形状にする
屋根は、台風被害を受けやすい部分です。高い勾配のある切妻屋根は風を受けやすく、瓦などの重たい屋根材は飛散や落下の危険がともないます。したがって、近年では寄棟屋根や片流れ屋根など、風を分散する形状の屋根だと安心でしょう。
さらに、屋根材には軽量で強度の高いガルバリウム鋼板を採用し、耐風ビスや接着剤で固定する工法にすれば、安全性を高められます。
外壁と接合部を強化する
外壁も、台風時に強風や飛来物の直撃を受ける箇所です。従来のサイディング材では接合部が弱く、強風で剥がれる事故も起きています。
近年では、厚みのある一体型パネルや耐風圧構造を持つ外壁材が開発され、各ハウスメーカーが導入を進めています。壁と屋根、壁と基礎との接合部を補強することで、建物全体の強度を底上げすることが期待できるでしょう。
窓周りの耐風圧設計を工夫する
台風で被害に遭いやすい箇所が、窓周りです。ガラスが割れると風雨が室内に入り込み、家具や壁、床にまで被害が広がります。住宅の密閉性と耐風性を向上させるために、耐風圧サッシや複層ガラス、防災シャッターの導入を検討しましょう。
耐風圧サッシの枠は歪みにくいアルミや樹脂複合材の使用、防災シャッターは飛来物に耐える高強度のアルミ製を取り入れることが推奨されます。
耐水性・水密性のある建材を使用する
台風では風だけではなく雨量も多いため、水密性の高い素材選びが重要です。外壁や屋根の隙間から水が侵入しないよう、重ね張り構造や防水シートの施工を意識しましょう。
建材は防水加工が施されたものや、経年劣化しにくい樹脂系素材が選ばれることが多く、開口部周りには防水パッキンや防水テープを組み合わせることで、長期間の水密性が確保されます。
ベランダや庇(ひさし)を工夫する
ベランダや庇(ひさし)は、台風時に風を受けやすい構造です。設計段階で突き出しのないスリムな形状にしたり、取り外し可能な設計にしたりすることで、安全性を向上させましょう。換気設備も風雨の侵入ルートになりやすいため、耐風シャッター付き換気口や屋内側に閉鎖できるタイプを選ぶと安心です。
台風に強い間取り・構造配置にする
台風対策は、建物の形と部屋の配置が重要です。突き出し部分のないシンプルな形状が、風の影響を抑えます。窓やドアの開口部を風下に集中させる間取りを設計することで、圧力のバランスを取り、屋根の浮き上がりを防ぐ効果を期待できるでしょう。また、風が通り抜けやすい吹き抜け構造や、強風時に閉じられる風除室などを取り入れることも有効です。
建物の形状を工夫する
風の力を逃がすためには、建物の形状をシンプルに保つことが基本です。突起の多いデザインや凹凸のある外壁は風の乱れを生み、局所的に強い風圧を受ける原因となります。したがって、正方形や長方形など単純な構造が適しているでしょう。
屋根形状も寄棟や片流れが風を受け流すのに適しており、強風による飛散の抑制が可能です。建物全体がコンパクトで一体化していることが、台風に強い家の前提条件となります。
木造住宅でもできる台風対策

木造住宅でも、設計と施工に工夫を加えることで、台風に耐える住まいが実現可能です。現在では、耐風等級や接合金物の規格化が進み、木造でも台風に強い住宅が標準的に建てられるようになっています。では、木造住宅でもできる台風対策を解説します。
木造でも安心できる補強のポイント
木造住宅では、構造の強度を確保することが台風対策の基本です。耐力壁を多く設け、均等に配置することで建物全体のねじれを防げるでしょう。また、柱と梁の接合部には金物を併用し、横揺れや風圧による引き抜きに耐える構造が適しています。
最近では、制振ダンパーや構造用合板を壁面に貼る手法が一般化しており、最新の補強技術を活用することで、木造でも台風に強い家が実現可能です。
台風と地震に強い家づくりの共通点

台風に強い家は、結果的に地震にも強い傾向があります。なぜなら、台風も地震も瞬間的な外力に耐える構造を求められる点で共通しているからです。強度の高い構造と全体の一体化設計は、風にも揺れにも耐える家づくりの基本となります。
例えば、剛床構造は床面を構造用合板などで固めることで、建物全体のねじれや変形を防ぐことが可能です。剛床構造は台風の風圧にも有効で、力を分散させて住宅を守ります。
また、耐震等級の高い住宅は接合部の強化がされており、風の力にも強くなります。耐震構造は建築コストこそかかりますが、風と揺れの両方を吸収し、自然災害の被害を抑えられるでしょう。耐風性能と耐震性能を両立することで、自然災害に強い家が完成します。
台風と地震に強い家に共通する長く安心して過ごすためのポイント
どのような強い家を建てても、年月とともに劣化は進みます。特に、接合部の金物や防水パッキン、シーリング材は経年劣化しやすく、台風時の弱点になりがちです。定期的な点検と交換をおこない、災害リスクを減らしましょう。台風後の外壁チェックや雨漏りの早期発見など、日常の定期メンテナンスが長期的な強さを支えます。
既存の家でもできる台風対策とチェックリスト

台風は事前に備えることで、被害を抑えることができます。以下は、台風被害を抑えるために確認しておきたいことのチェックリストです。
| チェックする箇所 | チェックポイント |
|---|---|
| 屋根の形状と固定方法 | 寄棟屋根や片流れ屋根など、風を逃がす形状か? 屋根材の固定方法は? |
| 外壁と接合部の状態 | クラック(亀裂)や浮きがないか? 異常があれば早期補修 |
| 窓の強度と保護 | 強化ガラスやシャッターの設置状況は? 飛散防止フィルムも有効 |
| シャッターや雨戸の動作確認 | 作動状況は? 不具合があれば修理 |
| 雨どい・排水設備の清掃と固定 | 雨どい・排水溝に落ち葉や泥が詰まっていないか? |
| 基礎のひび割れや沈下確認 | 地盤と基礎にズレや劣化がないか? |
| ベランダ・庇の強度確認 | 支持具や固定金具の緩みはないか? |
| 換気口・通気口の防水処理 | 雨水の吹き込みを防ぐパーツはあるか? 不足していれば追加 |
| 外構の固定状態 | 物置やカーポート、フェンスの基礎と支柱は固定されているか? |
| 立地の風向・地形・ ハザードマップの確認 |
台風被害を受けやすい立地ではないか? 受けやすいエリアだった場合の対処方法は? |
近年の台風は勢力が大きく、速度も変則的で、予測しづらい傾向が強まっているため、新築・既存住宅問わず、今できることを定期的に見直すことが重要です。
既存住宅の補強・リフォームのポイント
すでに建っている住宅でも、台風対策は後付けでおこなうことが可能です。特に、窓周りの補強は飛来物に対する備えとして、防風シャッターや雨戸、防犯フィルムなどは効果的でしょう。
また、屋根材の交換や接合部の増し締め、外壁の補修も重要です。築年数が10年以上の住宅では、シーリング材の劣化や防水層の不備が目立ちやすいため、外装リフォームのタイミングで耐風仕様に変更するとよいでしょう。
費用を抑えたい場合は窓と屋根、外壁の3点を重点的に見直すだけでも、台風時の被害リスクは大きく減らせます。リフォームの際は、耐震と耐風を同時に意識した設計にすることで、より災害に強い家にアップグレードできるでしょう。
台風前の備えと発生時の注意点
台風が接近する際は、事前準備と行動計画が命を守ります。気象庁の最新情報や自治体の避難指示を常にチェックする体制を整えましょう。避難が必要な地域では、避難経路と避難所を家族全員で確認しておくと安心です。
台風が接近する数日前から、鉢植えや物干し竿など、屋外の飛ばされやすいものは屋内に移動して、玄関や排水口周辺の泥や落ち葉を清掃しておきましょう。台風当日は窓やガラスから離れた内側の部屋で過ごし、万が一窓が割れた場合に備えてカーテンを隙間なく閉じ、裾をテープなどで固定すると安心です。
停電に備えて懐中電灯や携帯ラジオ、モバイルバッテリーや簡易トイレなどの非常用グッズを準備しておくことも忘れないようにしましょう。
まとめ
台風に強い家とは、ただ壊れにくい家ではありません。設計段階から日常の備えまで含めた総合的な対策が必要です。まずは「何が弱点になるのか」を知ることが、対策の第一歩となります。また、台風対策と地震対策は近しい部分もあるため、本記事でご紹介した対策を講じれば台風だけではなく、地震にも強い家を目指せるでしょう。万が一に備えて準備を整え、住まいを自分の手で守りましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ





