【築年数別】建て替えとリフォームはどっちがいい?それぞれのメリット・デメリットを紹介

建て替えとリフォームにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、特徴を理解したうえで、自分の希望にあう方法で住宅の課題を解決しましょう。本記事では、建て替えとリフォームはどちらがいいのか、築年数別に分けて解説します。記事を読むことで、建て替えとリフォームのどちらをするべきか総合的に判断できるようになるでしょう。
記事の目次
【築年数別】建て替えとリフォームはどっちがいい?

建て替えとリフォームを考えるにあたって、目安となる基準が住宅の築年数です。先述したように、一般的には、築年数が新しいほどリフォームが適している場合が多く、築年数が古いほど建て替えが必要になるケースが多くなります。まずは、家の築年数について統計的なデータを見ながら、建て替えとリフォームのどちらが適しているかを考えてみましょう。
築29年以下の場合
築29年以下の建物であれば、構造に致命的な問題が発生している場合を除いて、リフォームが適切となります。国土交通省が公開する「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」では、新築住宅のリフォームを実施した世帯の平均居住年数が公開されています。
年度 | 全国 |
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2019年 | 26.0年 |
2020年 | 26.1年 |
2021年 | 27.7年 |
2022年 | 27.6年 |
2023年 | 26.0年 |
これによると、平均年数は26年~27年であるため、築29年以下の住宅であればリフォームを選択している人が多いと考えられます。また、住宅の取得時期は1995年~2004年が34.2%となり、もっとも大きな割合となりました。
築29年以下の住宅は、建て替えが必要になるほど劣化が大きく進んでいないケースが多いと考えられます。改修を検討している場合は、リフォームでの対応が前提となるでしょう。
築30年~39年の場合
築30年~39年は、住宅の劣化状況によってはリフォームで十分に対応できる場合もありますが、建て替えをおこなっても問題ない築年数であると考えられます。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」では、建て替え前の住宅の平均居住年数を公開しています。
年度 | 全国 |
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2019年 | 37.7年 |
2020年 | 39.7年 |
2021年 | 42.5年 |
2022年 | 40.6年 |
2023年 | 38.8年 |
建て替え前の住宅の平均居住年数は38年~40年であり、住宅の取得時期は1985年~1994年が28.2%ともっとも多くなりました。築30年程度であればリフォームで対応しやすいと考えられますが、築35年を超える場合は建て替えも選択肢に入りやすくなるでしょう。
建て替え・リフォームのどちらがいいか根拠をもって判断するには、専門家である建築士の住宅診断も参考にして、慎重に決断するべき築年数と考えられます。
築40年以上の場合
築40年以上の住宅は、耐震性能に問題がある住宅が多いため、建て替えが推奨されます。なぜなら、1981年5月31日以前に建築された住宅は現行の新耐震基準ではなく、旧耐震基準が適用されているからです。
現在の住宅に求められる耐震性能を持っていないことから、リフォームで対応する場合も耐震工事が必要不可欠になります。また、築40年以上の住宅は劣化が進んでいる可能性が高いため、改修が必要な部分が多くなり、リフォーム費用が建て替えと同様の水準まで増加することも。
耐震性能を中心に最新の性能を持った住宅を入手するために、建て替えを前提に検討するべき築年数と考えられます。
建て替えとリフォームのメリット

建て替えとリフォームのどちらがいいかを考えるにあたって、それぞれのメリットを理解することが重要です。「現在の住宅の問題を解決するにはどうすればいいか」、「理想的なマイホームを実現するにあたってどのような手法を取るべきか」、それぞれの目的によって必要な方法も変わります。建て替えとリフォーム、それぞれのメリットを確認していきましょう。
建て替えのメリット
建て替えは既存の構造の制約を受けず、最新の設備を導入しながら、理想的なマイホームを実現できます。現在の住環境を大幅に改善したい場合に、適した方法といえるでしょう。
設計の自由度が高い
建て替えでは、既存の構造体をすべて取り壊し、基礎から住まいを作れるため、自由度の高い設計が可能です。細部までこだわった住まいづくりができるため、外観・内装、設備のすべてを自身で選定し、オリジナリティのあるマイホームが実現できる点も魅力といえるでしょう。
最新の住宅性能を導入できる
建て替えは、既存の建物にない最新の住宅性能を導入できます。現行の新耐震基準に基づいた耐震性能の導入、高断熱サッシと外断熱工法による省エネ性能の高い住宅を実現可能です。太陽光発電システムや蓄電池など、再生エネルギー設備も導入しやすく、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準に適合した住宅も建設できるでしょう。
資産価値の向上が期待できる
住宅を建て替えると、物件全体の資産価値の向上を期待できます。建物は築年数が長くなるほど価値が減少するため、市場において資産価値が低く評価されやすくなります。築年数が経った住宅を建て替えることで、物件の建物部分の評価が大きく向上し、全体の資産価値も上昇するでしょう。
リフォームのメリット
リフォームは建て替えと比較して大規模な工事が不要であり、安い費用で実行できます。現在の構造を活かしながら、住宅が抱える問題を解決する場合に適した方法です。
費用を抑えられる
リフォームは、建て替えと比較するとコストが大きく減少します。建て替えに必要な解体などの大規模な工事が不要であるため、建て替えと比較すると費用はかかりません。できる限り予算を抑えて住宅の課題を解決できます。
既存の住宅の構造を活かせる
リフォームでは、既存の床・壁・柱など建物の基本構造を残しながら改修できます。既存の住宅のデザインを維持しながら、快適性を向上させる補強工事をおこなうため、現在の住環境が大きく変化することはありません。住み慣れた家のよさを残しながら、より快適な生活ができるようになるでしょう。
工期が短い
リフォームは建て替えと比較して、工期が圧倒的に短いです。簡単な設備交換であれば1日で完了することもあり、全面リフォームをおこなう場合も工期は一般的に2~3カ月程度になります。
また、建て替えでは仮住まい先の手配が必要になりますが、リフォームの場合は住みながら工事を進められるケースも多いです。引越しをともなわない点でも優れているでしょう。
建て替えとリフォームのデメリット

一方で、建て替えとリフォームにはそれぞれデメリットもあります。デメリットを理解せずに決定してしまうと、工事を始めてから後悔するかもしれません。費用を安く抑えるためにリフォームを選択すると、現在抱えている住宅の問題を解決できないことも。デメリットを理解したうえで、適切な方法を選ぶようにしましょう。
建て替えのデメリット
建て替えには解体費用と建築費用など、さまざまな費用がかかるため、予算の設定が高額になりやすいです。また、建て替えローンを利用して既存の住宅ローンとあわせて支払うと、返済負担が重くなることも。建て替えのデメリットを詳しく解説します。
費用が高額になりやすい
建て替えにかかる費用の種類は以下のとおりです。
- 解体費用
- 建築費用
- 地盤調査費用
- 諸費用(登記・各種税金)
- 仮住まい・引越し費用
建て替えにはさまざまなコストがかかり、国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、建て替え費用の平均は5,745万円でした。十分な予算を確保できない状態では、建て替えをおこなうことが難しいかもしれません。
仮住まいが必要になる
建て替えでは既存の住宅を完全に解体するため、工事期間中の仮住まいが必須です。建て替えの工事期間は一般的に半年から1年程度であり、短期賃貸物件などの暮らせる場所を確保する必要があります。また、引越しの回数は既存の住宅から仮住まい先、仮住まい先から建て替えた住宅の2回発生するため、引越し費用もかさみやすいでしょう。
住宅ローンの残債があれば返済負担が重くなる
既存の住宅ローンを残したまま建て替えをおこなう場合、建て替えローンに組み替えて、既存の住宅ローンの残債と建て替えの費用を返済します。借入総額が増加しやすいため、返済負担が重くなりやすいです。建て替えの場合は、通常の住宅ローンよりも自己資金の割合を増やして、借り換え後の返済負担を軽くする必要があるでしょう。
リフォームのデメリット
リフォームは基礎部分を残して住宅を改修するため、建て替えと比較して設計の自由度は高くありません。住宅において劣化した部分が多い場合は、追加補修が発生してコストが大きく増加する可能性もあります。リフォームのデメリットを詳しく見ていきましょう。
間取りや設計に制限がある
リフォームでは、既存の構造を残すことが前提になるため、大幅な間取りの変更は難しく、設計に制限があります。例えば、リフォームで広い空間を実現するために、壁を取り除く工事を検討するケースで、耐震性に影響する場合は、壁を取り除くことはできません。ほかにも建築基準法や都市計画法などの法律の規制により、リフォームの内容が制限される可能性もあります。
長期的には費用がかさむ可能性がある
リフォームは初期投資を抑えられますが、築年数の古い住宅では見えない構造部分の劣化が進行している場合が多いです。複数回のリフォームを繰り返すと、その都度、費用が発生します。長期的に見ると、費用がかさむため、最終的には建て替えと同程度の費用がかかるかもしれません。
利用できるローンが限られる
リフォームの資金を調達するにあたってローンに頼る場合は、リフォームローンなど通常の住宅ローンとは異なる商品を利用する必要があります。リフォームローンは住宅ローンと比較すると金利が高く、返済期間が短くなります。住宅ローンを組める建て替えよりも、返済条件が厳しくなりやすいでしょう。
建て替え・リフォームに向いている人の特徴

建て替えとリフォームのメリットとデメリットを踏まえたうえで、それぞれに向いている人の特徴を解説します。
建て替えに向いている人の特徴
建て替えは、現在の間取りを大幅に変更して、自由な設計をしたい人に向いています。既存の建物を基礎から一度取り壊して新築すれば、理想的な構造を実現可能です。住宅の耐震性や断熱性など、性能面を根本から向上させたいと考えている場合にもおすすめです。
一方で、費用はかさみやすいため、住宅ローンの資金調達を含めて十分な予算を確保できることが前提になります。また、建て替えの費用の一部を家族が負担してくれる場合や、仮住まいとして実家に帰省する選択肢があるなど、予算を抑えられる条件がある場合は、建て替えにおいて有利でしょう。
リフォームに向いている人の特徴
リフォームは、費用を抑えつつ、現在の住宅の快適性を向上させたい人に向いています。部分的な内装や設備の更新をおこなうだけであれば、建て替えに比べて大幅にコストを削減できるでしょう。既存の住宅の劣化が進んでいない状態であれば、リフォームで対応することをおすすめします。
しかし、構造の大幅な変更は不可能であるため、リフォームで対応できる範囲で理想の住環境を実現する必要があるでしょう。建て替えを必要としない劣化であれば、リフォームのほうが費用対効果は高くなりやすいため、コストパフォーマンスを重視する場合に有効です。
建て替えとリフォームを選ぶ時の注意点

建て替えとリフォームを選ぶにあたって注意するべきポイントをまとめました。
- 築年数のみで判断しない
- 専門家の住宅診断を利用する
- 将来を考慮して選択する
- 見積もりを比較して建築会社を選ぶ
- 余裕をもった予算を設定する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
築年数のみで判断しない
建て替えとリフォームを検討するにあたって、築年数はあくまで目安に過ぎず、建物内部の劣化状況や、使用状況によって劣化度合いは大きく異なります。
築30年未満でも、コンクリート内部の鉄筋が腐食している場合や、土台の腐朽が進んでいるケースもあります。一方で築50年を超える住宅でも、定期的にメンテナンスがおこなわれていた建物は、良好な状態を保っていることもあるでしょう。
築年数のみで建て替えとリフォームを選択すると、現在の物件の状況にあった工事ができなくなる恐れがあります。結果として、トータルの工事費用が大きく膨れ上がるかもしれません。築年数は参考情報であり、最終判断は建物の実際の状況を踏まえるべきです。
専門家の住宅診断を利用する
建て替えまたは、リフォームを選択する場合は、建築士などの専門家による住宅診断を利用しましょう。住宅診断をおこなうことで、実際に生活していても気付きにくい、建物の構造部分における重大な欠陥を発見できる可能性があります。
診断結果に基づいて、建て替えが必要であるか、リフォームで対応できるかを判断できるでしょう。工事が必要な箇所を確認したうえで、不要な工事も把握できるため、住宅診断のコストを含めても費用を節約しやすくなります。
将来を考慮して選択する
建て替えとリフォームは現在の住環境の改善だけでなく、将来を考慮して選択したいところです。例えば、ご自身が老後を生活していくことを考えるとリフォームで十分かもしれません。しかし、子どもに長きに渡って生活してもらう場合は、建て替えを選ぶことが考えられます。
現在だけでなく、老後の住環境を想定してバリアフリー設計を考えることもいいでしょう。また、賃貸併用住宅など、将来的に住宅の用途を変更する場合は、増築や間仕切りの変更ができるように設計する選択肢もあります。
建て替えとリフォームを選択する際には、将来のライフプランも考えたうえで選ぶようにしましょう。
見積もりを比較して建築会社を選ぶ
建て替え・リフォームは、建築会社によって工事費用や提案内容に大きな差があります。必ず複数の会社から同一条件で見積もりを取り、比較して選ぶようにしましょう。建て替えであれば、解体と新築を同じ建築会社に依頼するほうが費用は安くなるケースが多いです。
建築会社を選ぶにあたっては、見積もりの額面だけでなく、過去の施工実績や施主の口コミも確認しておくといいでしょう。工事費用と建築会社の信頼性を総合的に判断して、もっともコストパフォーマンスの高い提案内容を選びましょう。
余裕をもった予算を設定する
建て替え・リフォームでは、見積もりにはなかった追加の費用が発生する場合があります。そのため、想定される予算の5%~10%の予備費を確保することが望ましいです。
築年数の古い物件の建て替えでは、解体後の地盤調査により、地盤が弱くなっていることが発覚すれば、地盤改良工事をおこなう必要が出てきます。リフォームの場合も、実際に工事を開始してから問題が発覚し、追加の工事が必要になるかもしれません。
事前にコストの総額を見積もったうえで、予備費を含め、余裕をもった予算を設定すれば、工事開始後に資金が不足する事態を防げます。
まとめ
建て替えとリフォームは、どちらにもメリット・デメリットがあり、住まいの状況や、将来のライフプランによって最適な選択は異なります。築年数を目安に、さまざまな視点から総合的に検討することが重要といえるでしょう。判断に迷う場合は住宅診断をおこない、専門家の助言を受けるようにしましょう。
自身や家族にとって本当に必要な住まいの形を見つけることが、快適で安心な暮らしにつながります。よりよい暮らしを実現するにあたって、建て替えとリフォームのどちらが適切であるかを慎重に検討して、後悔のない選択をしましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ