平屋が夏の時期に暑い理由は?対策方法と注意点を徹底解説

本記事では、平屋が夏の時期に暑い理由を解説したうえで、対策方法を紹介します。記事を読むことで、平屋で生活していくなかで暑い夏を乗り切る方法がわかるようになるでしょう。
記事の目次
平屋は気候の影響で暑くなりやすい?

平屋は床面積を水平に大きく確保し、階段や上階のない家を指します。生活動線がシンプルで、バリアフリー設計が容易であることから、高齢者や小さな子どもが暮らしやすく、近年注目が集まっています。
しかし、実際に暮らしていくうえで問題になる点が、日本の夏は暑く、冬は寒い温度差のある気候です。特に平屋は、夏になると多くの人々から「暑い」と言われています。熱がこもりやすい設計は、室内で熱中症になるリスクも高まってしまいます。
また、室内の温度をコントロールするために空調を頻繁に使用せざるをえなくなり、光熱費の増加も考えられます。
複数階建てと比較して暑い?
複数階建ての住宅と比較して、平屋は構造的に暑くなりやすいと考えられます。それは、同じ延床面積では、階層のない平屋のほうが屋根の面積が広く、熱が室内に伝わるからです。
ただし、複数階建ての住宅であっても、構造によっては夏に暑くなりやすい状況に陥ることもあります。平屋であっても複数階建ての住宅であっても、暑くなる理由と対策に大きな違いはありません。そのため、夏も快適に過ごすなら、どちらも同様の対策が求められます。
冬の時期は寒い?
平屋は夏に暑くなるだけでなく、冬の時期には寒くなります。理由は、階層がないことから家全体に十分な日射を取り込みづらい構造であるためです。周辺を建物に囲まれると、さらに日陰になりやすいため、太陽光による暖房効果を得られません。
また、複数階建ての住宅と比較して同じ延床面積であっても、平屋はすべての床が地面に接するため、冷えた地面からの冷気が直接床下を通じて室内に伝わります。室内の冷気が強くなり、足元が特に寒く感じるようになりやすいでしょう。
平屋は気候の影響を受けやすく、夏は冷房、冬は暖房を使用する機会が増えやすいです。平屋の住環境を快適にして、光熱費をできる限り削減するために、まずは平屋が夏の時期に暑くなる理由を考えてみましょう。
平屋が夏の時期に暑い理由

平屋が夏の時期に暑い理由を詳しく見ていきましょう。
屋根から直接熱が伝わる
屋根の外側に当たった太陽光は、まず屋根材に吸収され、そのまま熱伝導により下の天井や小屋裏の空間を加熱します。夏場の屋根裏は、太陽直下では100度を超えることもあるため、熱は瞬時に室内に伝わります。
多くの平屋では小屋裏空間が狭く、断熱材の施工スペースが限られるため、断熱層が薄くなりやすく、屋根面で受けた熱を遮断しきれません。屋根で蓄積された熱が、直接天井板を通して部屋全体に広がり、室温は急速に上昇することになります。
断熱対策が不十分であるほど、熱の伝わる量は増幅します。最悪の場合は、空調が稼働していても、熱の伝わる量が大きすぎることから、まったく家が冷えません。
輻射熱は夜間にも放出される
屋根で蓄えられた熱は、日中だけでなく夜間にも輻射(放射)熱の形で放出されます。蓄積された輻射熱が屋根裏から断熱層を介して室内を暖め続けるため、日光が当たっていなくても暑い状況が続きます。
そのため、夜になっても室内温度は高い状態に保たれ、寝苦しさを感じることも。朝方まで高温状態が継続するため、夏の平屋は昼夜を問わず暑くなります。
建物全体の通気性が悪い
平屋は、建物全体が地面に近い低層構造です。周囲からの風を取り込みにくいため、室内にたまった熱を外部へ排出しづらい特性があります。他の2階建て以上の建物に囲まれた立地条件では、風の通り道がないため、さらに熱がこもりやすい状況になります。
平屋は換気を考えて設計しなければ、熱を外部に排出することが難しいです。空調に大きな負担をかける原因にもなるでしょう。
平屋の暑さを対策する方法

平屋が夏の時期に暑くなる理由を踏まえたうえで、暑さを対策する方法を詳しく解説します。
断熱性能・気密性能を強化する
断熱性を高めることは、平屋の暑さの軽減に大きな効果があります。断熱効果の高い屋根材を使用し、屋根・外壁・床下に高性能な断熱材を施工すれば、外気を室内に伝えず、一定の温度に保つ効果が期待できるでしょう。
また、断熱性能だけではなく気密性を高めることで、外気の熱侵入だけでなく、冷房による冷気の漏出も防ぎ、適正温度を維持することが容易になります。そのため、平屋を建てる際には断熱性能・気密性能を重視すれば、夏場の暑さを軽減できるでしょう。
遮熱性を高める対策をおこなう
より断熱効果を見込むなら、遮熱性を高める対策を並行しておこないましょう。屋根だけでなく窓も熱を取り入れるため、夏の暑さが増す原因になります。遮熱性の高い窓を選ぶか、断熱機能を持つカーテンを室内に取り付けることで、窓から取り入れる熱を軽減する効果を期待できるでしょう。
また、屋根表面や外壁に遮熱塗料を塗ることで、日射エネルギーの反射率を高めることが可能です。窓にカーテンを付ける対策のように、短時間で可能なアプローチもあるため、できる範囲で対策するだけでも効果を見込めるかもしれません。
軒を出して庇を深くする
軒・庇はどちらも屋根の一部であり、日差しや雨から建物を守る役割を持っています。軒は屋根全体の一部で、外壁から突き出ている部分。庇は窓やドアなどの開口部の上に取り付けられた、独立した小さな屋根のことを指します。
軒を出して庇を深くする対策を取れば、夏の厳しい日差しを遮ることが可能です。近年では軒・庇を造らない家も増えていますが、平屋では取り入れることで有効な暑さ対策になるでしょう。
シーリングファンによる換気システムを導入する

シーリングファンは、天井に付ける大きなファンのことです。室内の温度のムラを解消し、体感温度を下げる効果を期待できます。小屋裏に換気ファンを設置すれば、たまった熱気を押し出すことができるでしょう。
また、ファン運転で室内の空気を循環させることで、エアコンの冷気が部屋全体に行き渡りやすくなり、冷房効率が向上する効果を期待できます。立地環境により風通しが悪い場合は、適切な換気システムを導入しましょう。
小屋裏空間を十分に確保する
平屋の小屋裏は狭くなりがちですが、断熱層の厚みを確保しつつ、換気経路を設けるために重要です。一般的に屋根裏・ロフトと呼ばれる空間は、天井の高さが1.4m以下で、面積が下の階の2分の1であれば延床面積に含まれません。
小屋裏のスペースは収納や、平屋の中でプライベートな空間を作る需要を満たします。ただし、暑さ対策のために小屋裏空間を広く取ると、下の階に熱があまり伝わらない代わりに、小屋裏に熱がこもることも。よって、夏に小屋裏を活用したい場合は、小屋裏に対する断熱対策も必要になります。
平屋の暑さを対策する際の注意点

平屋の暑さを対策する際の注意点を詳しく見ていきましょう。
断熱性能の強化と並行して湿気対策もおこなう
断熱性能を高めると、住宅内部の湿気が断熱層内に滞留する場合があります。平屋の気密性を向上させれば、より湿気が家の中にこもりやすくなるでしょう。室内の湿気が外に逃げにくくなるため、結露・カビの原因になることもあります。
湿気を対策するには換気システムが重要であり、シーリングファンによる換気システムや、空調の除湿機能を利用するなどして湿気を逃がすようにしましょう。
また、断熱性能を高める過程で湿気対策も考慮して、室内外の温度差を小さくする高性能な断熱材の使用も効果的。湿気を取り込まないように、隙間なく断熱材を施工することで湿気対策が可能です。平屋の暑さを考えずに対策すると、結露・カビのリスクが高まるため、湿気対策も並行しておこなうことが重要です。
軒の出幅と角度は冬季の日射も考慮する
軒や庇は、夏季の直射日光を遮る効果を期待できます。しかし、日光を遮る設計は冬季の日射取得に影響を及ぼすことも。夏は涼しくても、冬は太陽を取り込めずに寒くなるかもしれません。
そのため、軒の設計は夏の暑さだけなく、冬の寒さを含めて計算して設計する必要があります。周囲の環境から軒の出幅と角度を調整して、夏は太陽光を遮り涼しく、冬は太陽光を取り入れ暖かい家にすることが可能です。
暑さ対策を充実させるほどコスト増加につながる
平屋の暑さ対策を充実させるほど、さまざまな費用がかかり、コスト増加につながります。高額な断熱材の使用や、大がかりな工事が必要な場合は、コストがかさむ原因になるでしょう。コストとパフォーマンスのバランスを考えながら、平屋の暑さ対策をおこなう必要があります。
まとめ
平屋は広い屋根から熱が伝わりやすく、夜間も輻射熱が放出されて室温が下がりにくい構造です。そのため、夏も快適に過ごすためには、暑さ対策に関する設計が欠かせません。断熱性能・気密性能を向上させつつ、複数の対策を取って備えるようにしましょう。
平屋は複数階建ての住宅と比較して暑くなりやすい構造ですが、暑さを対策する方法は複数階建ての住宅と共通する部分も多いです。平屋に限らず、住宅は適切な対策をおこなうことで、夏や冬などの厳しい季節でも快適に過ごせるようになります。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ