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注文住宅は木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造どれで建てるべき?特徴を徹底比較

注文住宅は木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造どれで建てるべき?特徴を徹底比較
注文住宅で家づくりをスタートする際、情報をただがむしゃらに集めても、わからないことだらけかもしれません。「何から決めればよいのかわからなくなり迷ってしまう」との声をよく聞きます。

その場合は、どういった構造で家を建てるかをまず決めるとよいでしょう。構造には木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造がありますが、どの構造で建てるのが正解なのでしょうか。今回はそれぞれの特徴を徹底比較します。

注文住宅の建物構造の種類

注文住宅の建物構造の種類
注文住宅の建物構造の種類

注文住宅の建物構造の種類を紹介します。

家の住み心地は、建物の構造によって決まるといっても過言ではありません。注文住宅を建てるなら、それぞれの構造の特徴の違いを十分に理解しておく必要があります。

今回は代表的な3つの建物構造である木造・鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)の特徴をみていきましょう。

木造とは、主要構造部(柱、壁、梁など)を木材でつくる建物です。

「令和5年 住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によると、日本全国の一戸建住宅の87.9%が木造と公表されています。鉄骨造が6.2%、鉄筋コンクリート造が5.5%のため、数で比べると、木造は圧倒的にメジャーな構造です。

鉄骨造とは、主要構造部を鉄骨(鋼材)でつくる建物です。6mm以下の厚さの鋼材でつくるものは「軽量鉄骨造」、それ以上の厚さの鋼材でつくるものは「重量鉄骨造」と呼ばれます。

軽量鉄骨造は、施工が簡単で工期が短期間で済む特徴があります。一般的な住宅に用いられるのは、ほとんどが軽量鉄骨造です。

重量鉄骨造とは、少ない柱で頑丈な骨組みをつくれるのが特徴です。工場や体育館など、大きな空間つくりに向いています。

RC造(鉄筋コンクリート造)とは、鉄筋で組んだ枠組みの周囲に、コンクリートを流し込んで固めて造る構造です。引っ張られる力に強い鉄筋を、圧縮に強いコンクリートで包む構造のため、建物の耐力が非常に高いのが特徴です。

なお、鉄筋コンクリートの芯部に鉄骨を埋め込んだ「鉄筋鉄骨コンクリート造」の建築構造もあります。鉄筋鉄骨コンクリート造は、大型のビルやマンションなどに用いられることが多いです。

参照:総務省統計局│令和5年住宅・土地統計調査

次の章から、それぞれの構造のメリット・デメリットを見ていきましょう。

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の違い

木造 鉄骨造 RC造
メリット
・増改築がしやすい
・建築費用が安価
・吸湿、放湿性能が高い
・品質が安定
・工期が短い
(軽量鉄骨造の場合)
・大きな窓や大空間を実現可能
(重量鉄骨造の場合)
・耐久性に優れる
・耐火性が高い
・遮音性が高い
デメリット
・腐朽しやすい
・シロアリ被害をうけやすい
・防音性が低い
・通気性、断熱性が低い
・内部結露が発生しやすい
・建築費用が高価
・湿気がこもりやすい
・工期が長い
・間取り変更しづらい
耐用年数
(金融機関の融資を受ける際の判断基準となる税務上の数字)
22年
 4mm以上:
34年
 3~4mm:
27年
 3mm未満:
19年

 (国税庁の区分では、4mm未満が軽量鉄骨)
47年

木造・鉄骨造・RC造のメリット・デメリット

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の違いを説明します。住宅の構造選びは、家づくりの基本です。それぞれにどのような特徴があるかポイントを表にまとめてみました。下記で詳しく解説します。

木造

木造の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?
木造の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?

木造の特徴、メリット・デメリットを説明します。

木造の特徴

日本では昔から木材が豊富にあり、長い歴史のなかで木造建築技術が発展してきました。CO2を吸着した木材を使うことでCO2を削減でき、環境負荷が少ないのが特徴です。そのため、近年は海外でもサスティナブルな建材として注目されています。新たな技術を組み合わせ、高層ビルや大型施設を木造で建設する動きもあります。

木造のメリット

  • 木材は加工が容易なため、設計の自由度が高く、増改築がしやすい
  • 鉄骨造、RC造に比べて、建築費用が安価で抑えられる
  • 木材自身に調湿効果があり、通気を配慮した構造のため、カビの繁殖を抑えられる

木造のデメリット

  • 木材の腐朽やシロアリ被害が起こりやすく、定期的な点検やメンテナンスが必要になる

鉄骨造

鉄骨造の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?
鉄骨造の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?

鉄骨造の特徴、メリット・デメリットを説明します。

鉄骨造の特徴

木材と異なり鉄骨は工場生産のため、品質が安定しているのが大きな特徴です。耐震性の高さも注目されています。
しかし、鉄は火に弱く、錆びやすい性質があります。そのため、耐火性能を高める工法の開発をしたり、鉄骨を防錆処理したりして、各社が工夫を重ねています。鉄骨造のうち日本の一戸建て住宅のほとんどは、軽量鉄骨造です。

鉄骨造のメリット

  • 品質が安定している
  • 軽量鉄骨造の場合は、比較的建設費用が安価で工期が短くて済む
  • 重量鉄骨造の場合は、柱と梁が太く頑丈なので、筋交が入らず、大きな窓や大空間を実現できる

鉄骨造のデメリット

  • 防音性が低い
  • 通気性、断熱性が低い
  • 内部結露が発生しやすく、防錆処理が必須

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?
鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴、メリット・デメリットは何でしょうか?

鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴、メリット・デメリットを説明します。

RC造の特徴

鉄筋コンクリート造(RC造)は、耐久性、耐震性が高い構造です。丈夫で長持ち、防音性能が高いなどの特徴があります。ただし鉄骨造や木造に比べてコストは高額です。また、施工精度によって建物の品質が大きく左右されやすいのもデメリットです。
コンクリートのヒビから入った雨水が鉄筋に到達すると、中の鉄筋が錆びる可能性があります。アルカリ性のコンクリートも中性化するため、鉄筋もコンクリーも強度が下がってしまいます。信頼できる施工会社を選ぶことが重要です。

RC造のメリット

  • 腐食しにくく、耐久性に優れる
  • 耐火性が高く火災に強い
  • 防音性・遮音性が高い
  • 自由度が高く、さまざまな形状をデザインできる

RC造のデメリット

  • 建築費用が高い
  • 湿気がこもりやすく結露やカビが発生しやすい
  • 工期が長い
  • 壁式構造(壁で建物を支える構造)の場合、間取りの変更がしづらい

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)にかかるコスト

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)にかかるコスト
注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)にかかるコスト

建築費の多くを占める坪単価は建築会社により異なりますが、おおよそのコストの目安を解説します。

国税庁の「地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和6年分用】」によれば、構造別の工事費用は1平方メートルあたり木造で20.7万円、鉄骨造で29.4万円、鉄筋コンクリート造で30.4万円でした。

これらの数値を坪単価に換算すると、木造では68.0万円/坪、鉄骨造では97.0万円/坪、鉄筋コンクリート造では100.0万円/坪です。つまり、木造と比べると、非木造のコストは1.4~1.5倍程度となっています。

坪単価をより詳しく確認したい方は「注文住宅の坪単価とは?全国平均や比較するポイント、抑える工夫も解説」をご覧ください。

注文住宅を木造で建てるのがおすすめの人

注文住宅を木造で建てるのがおすすめの人
注文住宅を木造で建てるのがおすすめの人

注文住宅を木造で建てるのがおすすめの人は、以下のとおりです。

  • コストを抑えたい人
  • 自然素材で人の身体や地球にやさしい点を重視する人

注文住宅は、鉄骨造や鉄骨コンクリート造(RC造)に比べると、低コストで建てられます。また、最近では木造でも耐震性や断熱性の水準は高くなっており、鉄骨造住宅と大きく変わらないレベルまでになっています。自然素材を使用するため、環境に配慮した住宅に住みたい人に最適です。

注文住宅を鉄骨造で建てるのがおすすめの人

注文住宅を鉄骨造で建てるのがおすすめの人
注文住宅を鉄骨造で建てるのがおすすめの人

注文住宅を鉄骨造で建てるのがおすすめの人は、以下のとおりです。

  • 安定した品質で、頑丈な住宅を希望する人
  • 3階建てを検討している人

鉄骨は木材よりも品質が安定しており、近年は耐震性能の高さが注目されて人気が高まっています。また、3階建て一戸建住宅の約17%が鉄骨造で建てられています。木造に比べると、腐食・シロアリに強い、法定耐用年数が長いなどが、鉄骨造の注文住宅が支持されている理由です。

注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てるのがおすすめの人

注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てるのがおすすめの人
注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てるのがおすすめの人

鉄骨コンクリート造(RC造)で注文住宅を建てるのがおすすめの人は、以下のとおりです。

  • 初期コストは高くても永く住み続けたい人
  • できるだけ家の資産価値を落としたくない人

鉄骨コンクリート造(RC造)は耐震性、耐火性が高く、防音にも優れています。線路沿いや大通り沿いなど、外部の音が気になる場所に建てる、または室内で楽器を使う場合には適しています。長期的に居住するのに適しているのが、鉄骨コンクリート造(RC造)です。耐用年数も47年と他の構造に比べて長いのが特徴です。資産価値が落ちにくいメリットもあるため、将来売却を検討している人にもおすすめです。

木造で建てる注文住宅のハウスメーカーを選ぶポイント

木造で建てる注文住宅のハウスメーカーを選ぶポイント
木造で建てる注文住宅のハウスメーカーを選ぶポイント

木造で建てる注文住宅のハウスメーカーを選ぶポイントを6つ紹介します。

工法

工法には、代表的なものに軸組工法・枠組壁工法・ラーメン工法の3種類があります。

軸組工法は、日本の住宅の約7割を占めるもっとも一般的な工法です。間取りや窓の位置など、設計の自由度が高く、対応してくれる施工会社も多いので、増改築やリフォームがおこないやすいでしょう。

枠組壁工法は床・壁・屋根を、面の組み合わせで支えるため、地震に強いのが特徴です。規格化されているものが多く、品質が安定しています。職人の腕による品質差が出にくいでしょう。ただ、リフォームや増築、 間取りの変更が難しく、中小規模の工務店では対応していないこともあります。

ラーメン工法は特殊な金物を使用するため、対応できる施工会社が限られています。しかし、耐震性能の高さから大空間をつくりたい場合はおすすめですし、大規模なリフォームにも対応できます。 コストは高めですが、鉄骨造やRC造と比べると安価なため、3階建て住宅で選ばれています。

耐震性能

次に確認すべき点は、耐震性能です。住宅の品質確保の促進等に関する法律によって定められた「耐震等級」と呼ばれる基準があります。耐震等級によって、耐震性を明確に判断することが可能です。

また、地震への対策には、主に免震・制震・耐震の3種類があります。ハウスメーカーによってはオリジナルで性能の高い装置や金物を取り入れています。ホームページやパンフレットなどで紹介していることが多く、気軽に確認できるでしょう。

断熱性能

断熱性能もハウスメーカーを選ぶポイントです。2025年4月からはすべての新築住宅の省エネ基準への適合が義務化されます。エネルギー消費を抑えるため、建物の断熱性能は一定以上にしなければなりません。また、導入する設備も省エネが求められます。
断熱性能にも等級があり、ハウスメーカーによって採用している仕様が決まっています。そのため、外断熱か充填断熱か、サッシの断熱・気密性、UA値はいくつかなどの点を確認しましょう。

設計・デザインの自由度

次に確認すべき点は、設計・デザインの自由度です。

自由度は工法によって左右されます。大空間や吹抜けなど自由度を高くしたいなら、木造ラーメン工法がおすすめです。

木造軸組工法でも自由な間取りを実現できますが、構造的な検証は必要です。木造枠組壁工法はデザイン性の高い規格化された商品もあります。一度ご自身で探してみると、イメージや要望に合うものが見つかるかもしれません。

施工実績

ハウスメーカーの施工実績も確認してみましょう。ハウスメーカーによって主力で取り扱う建材や工法がある程度決まっています。そのため施工実績を見て、望んでいるものに近いかを確認することは大切です。完成した住宅だけでなく、建築中の現場を見せてくれる場合があるため、自分の目で確かめて選びましょう。

アフターサービス・アフターメンテナンス

保証期間や点検期間など、アフターサポートの充実度もメーカー選びで欠かせないポイントです。建物が完成したあとにも気軽に連絡が取れる窓口があるか、保証期間の長さや定期点検項目などをあらかじめ確認しておきましょう。

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)の違いまとめ

ここまで木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の違いをみてきました。それぞれにメリット・デメリットがあるので、予算や条件、敷地の環境、ライフスタイル、好みなどによって適した構造を選びましょう。

注文住宅の木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)それぞれのメリットは?

それぞれの構造で建てるメリットは、次のとおりです。

  • 木造:建築コストを抑えられ、自然素材で人や地球にやさしい。対応できる工務店が多数
  • 鉄骨造:安定した品質、高い耐震性
  • 鉄筋コンクリート造:耐震性、耐火性、防音や気密性の高さ

注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てるのがおすすめの人は?

コストは高くなりますが、耐火性・防音性・耐震性を重視する方、安心して長く住みたい方には、鉄筋コンクリート造(RC造)がおすすめです。

木造で建てる注文住宅のハウスメーカーを選ぶポイントは?

ハウスメーカー選びは、ハウスメーカーの得意分野から選ぶことをおすすめします。木造は、日本の気候風土に合わせた独自の発達を遂げた構造です。改良のための取り組みも多種多様です。さまざまな知恵や工夫によって、家の強さも間取りの自由度も確保できます。何を得意としたハウスメーカーなのか見極めて、自分の納得したメーカーを選びましょう。

注文住宅で構造の種類を選ぶことは、家づくりのパートナー、つまりハウスメーカーや工務店探しに役立ちます。ベストなパートナーが見つかると、選択することが多い家づくりも、楽しみながら進められます。注文住宅は人生に幾度とない、高価なお買い物です。今回の記事を参考に、じっくり選んで納得できるマイホームを実現されることを願っています。

大石かおり

執筆者

大石かおり

一級建築士

設計活動と並行し、りんごスタジオ主宰としてワークショップを各所で開催。避難所遊具KIDS HOUSEの開発など、子どもたちに建築の面白さを伝える活動をしている。

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