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免震住宅とは?仕組みや耐震・制震との違いを解説

免震住宅とは?仕組みと他の構造との違いを解説
「免震住宅ってよく聞くけど、どのような家なの?」と、免震住宅に興味を持つ方も多いことでしょう。免震住宅とは、地震の揺れを建物に伝えにくい構造の住宅のことをいいます。とはいえ、揺れを軽減する理由や居住するメリット・デメリットは、理解できていないという方もいらっしゃるかもしれません。地震に対する備えになるのはメリットですが、デメリットもあるため、特徴をよく理解してから免震住宅の購入や免震工事の実施を検討することが大切です。

本記事では免震住宅が何なのか、耐震工法の種類、居住するメリットやデメリットについて解説します。免震住宅の購入や免震工事の実施を検討している方は内容を参考に、手続きを進めるか判断してみてください。

免震住宅とは?

そもそも免震住宅とは何でしょうか
そもそも免震住宅とは何でしょうか

「免震住宅」とは、地震の揺れを軽減する免震装置が設置された住宅です。免震装置は建物の基礎との間に設置され、地震が発生した際に作動します。装置が作動すると地震エネルギーが吸収され、建物の揺れが軽減されます。

免震装置の種類やグレードにもよりますが、一般的に地震の揺れが3分の1から5分の1となると言われており、高層マンションや公共施設にも利用されている設備です。地震はマグニチュードが1大きくなると約32倍の強さ、2大きくなると1,000倍の強さになるため、大地震の発生時ほど、免震装置の効果が大きくなります。

免震住宅とその他の耐震工法との違い

免震住宅と他の耐震工法との違いをご紹介します
免震住宅と他の耐震工法との違いをご紹介します

耐震性を向上させる工法は、免震構造以外にも耐震構造や制震構造があります。各工法は異なるものであり、免震について理解する際には、その他の構造との違いを把握する事が大切です。他の構造との違いを理解し、どの工法の住宅を購入するのかを判断しましょう。

免震と耐震の違い

免震と耐震の違いは以下のとおりです。

免震 免震装置が建物の揺れを軽減させる
耐震 建物自体を耐震補強し
揺れに耐えられるようにする

免震と耐震は、耐震性を向上させる方法が根本的に異なります。耐震は建物自体の強度を上げる工法である一方、免震は揺れを伝えにくくする工法です。免震は揺れを軽減しますが、耐震は建物の強度を向上させているために揺れが伝わりにくくなる仕組みで、揺れを抑えるわけではありません。

免震と制震の違い

免震と制震の違いは以下のとおりです。

免震 基礎と建物の間に
地震エネルギーを吸収する装置を設置する
耐震 建物の骨組み内部に
地震エネルギーを吸収する装置を設置する

免震と制震は地震エネルギーを吸収する点では同じ工法ですが、揺れを抑える装置を設置する場所に違いがあります。制震は、建物の骨組み内部にダンパー(振動吸収装置)を設置する内部抑制型であり、免震は建物と基礎との間に免震装置を設ける基礎隔離型です。免震のほうが揺れによる建物の損傷が発生しにくいことから、効果においても制震とは違いがあります。

免震住宅の仕組み

免震住宅とは、どのような仕組みなのでしょうか
免震住宅とは、どのような仕組みなのでしょうか

免震住宅には建物と基礎の間に免震装置が設置されており、地震発生時、装置が作動して揺れを軽減します。設置する装置は大きく、アイソレータと免震ダンパーの2種類に分けられます。それでは、免震住宅に利用される装置について見ていきましょう。

アイソレータの種類

名称 特徴
積層ゴム
・ゴムが地震に合わせて揺れて地震エネルギーの伝達を抑制する
・建物を元の位置に戻す機能が低いため鋼材ダンパーと併用する必要がある
すべり支承
・柱の下に設置されたすべり材が揺れに合わせて建物を動かす
転がり支承
・揺れに合わせてボールベアリングがレールを転がって建物を動かす

積層ゴムはゴムと鋼材が交互に重なった設備であり、ゴムが地震の揺れを抑え、鋼材が建物を支えます。ゴムは揺れに合わせて伸縮するため、地震エネルギーを吸収する役割を果たします。

すべり支承は、鋼板の上にあるすべり材が揺れに合わせてすべることで、地震エネルギーを吸収する設備です。一方、転がり支承は、地震発生時に柱の下に設置したボールベアリングがレールの上を移動し、建物を揺れに合わせて移動させます。

免震ダンパーの種類

名称 特徴
鋼材ダンパー
・金属のバネによって地震エネルギーを吸収する
鉛ダンパー
・鉛の柱が揺れで伸び縮みして地震エネルギーを吸収する
・建物を元の位置に戻す機能はないため鋼材ダンパーと併用する必要がある
オイルダンパー
・シリンダーの中にある油が地震エネルギーを吸収する
・建物を元の位置に戻す機能はないため積層ゴムと併用する必要がある

鋼材や鉛などの金属は建物の重量を支えられる力を持つうえ、コンクリートよりも靭性が高く、水平方向や斜め方向などに動きます。この性質を利用し、地震エネルギーを吸収するわけです。

また、オイルダンパーはシリンダーに棒状のピストンが入っており、内部は油で満たされています。油の粘性が摩擦力を生み、揺れでピストンが動く力を抑えます。

免震住宅のメリット

免震住宅のメリットは?
免震住宅のメリットは?

地震に強い家は揺れを軽減することで、さまざまなメリットを生みます。揺れの軽減によって、どのようなメリットが生まれるのか見ていきましょう。

家の安全性が向上する

免震住宅の最大のメリットは、家の安全性が向上することです。免震装置は地震の揺れを小さくする効果があり、建物への負荷を低減できます。本来、揺れの力は、建物の構造で受け止めて耐えなければなりません。建物の構造自体の耐震性が低くても、免震装置によって揺れが小さくなれば、建物が弱くても大地震に耐えられる可能性が高くなるでしょう。建て替えずとも免震装置を設置できる場合もあるため、住まいをそのまま利用しつつ、安全性を高めることも可能です。

家具の転倒を防げる

免震住宅は揺れにくくなる構造になっており、家具の転倒を防げます。地震時に発生する家具の転倒は非常に危険であり、1995年に発生した阪神淡路大震災の死者のうちの約10%、負傷者の約46%が家具の転倒によるものだと言われています。また、家具の転倒は直接的な負傷を引き起こすだけでなく、火災の発生にもつながるため対策が不可欠です。家具転倒防止グッズでは被害軽減効果に限度があるため、免震装置と併用すればより安心して生活できることでしょう。

地震のダメージを最小限にできる

免震住宅は、地震で受ける建物のダメージを最小限に抑える効果があります。地震発生時、建物が揺れの大きさに耐えられなくなると、壁や梁、柱などが損傷して倒壊します。仮に倒壊しなかったとしても、地震による損傷を補修しようとすると、建替えのほうが安く済むほどの高額な費用がかかる場合もあるため注意が必要です。地震のダメージを抑えることは生命の維持だけでなく、建物の価値の保持や資金の減少防止につながります。

余震に強い

免震住宅は、本震前後の余震にも効果を発揮します。本震で壁や梁、柱が損傷した場合、余震の小さな地震エネルギーでも建物が倒壊する恐れがあります。実際、大きな揺れを発生させた後、小さな揺れでも建物が倒壊しやすくなるという実験結果も示されているため、余震に効果を発揮する設備は重要と言えるでしょう。免震装置のように余震に対応できる設備があれば、余震による被害を抑えることができるでしょう。

地震保険が割引になる

免震住宅の地震保険料は、一般的な住宅よりも安くなります。地震保険には免震建築物割引があり、一定の条件に該当すると保険料が50%の割引が適用されます。一定の条件とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づく住宅性能評価に免震建築物であると明記されている住宅であることです。

地震保険料は火災保険料よりも高額になるうえに、火災保険とセットで加入しないといけません。そのため、地震保険料の支払いは負担になりやすく、割引を受けられるのは経済的に大きなメリットとなります。

免震住宅のデメリット

免震住宅のデメリットも把握しておきましょう
免震住宅のデメリットも把握しておきましょう

地震の揺れを軽減する免震住宅ですが、メリット以外にもデメリットがあります。免震住宅の購入や免震工事を実施する際は、デメリットを理解したうえで手続きを進めましょう。

費用がかかる

免震住宅の最大のデメリットは、費用がかかる点です。一般的な木造一戸建ての免震住宅を新築する場合、建築費が100万~500万円程度高くなると言われています。費用が高額になるのは、免震装置の購入費用だけでなく、取り付け費用の発生や設計費の上昇につながるためです。

特に、既存住宅に免震装置を設置する場合、大がかりなリフォーム工事が必要となり、高額な費用がかかる場合があります。免震住宅の費用は高くなるため、費用負担と安全性のバランスを考慮することが大切です。

定期的なメンテナンスが必要

免震装置を長期間にわたって機能させるには、定期的なメンテナンスが必要です。10~20年に一度の頻度で、専門会社による点検が必要とされています。また、地震発生時に塗装が剥がれたり、装置が損傷したりする場合があり、大きな揺れが起こるたびに点検・補修をおこなわなければなりません。継続的なメンテナンスには費用がかかるため、点検・補修に備えて、貯蓄が不可欠となります。

地震以外の災害には効果を発揮しにくい

免震装置は、地震以外の災害には効果を発揮しにくい設備です。免震住宅は地震被害防止に特化した構造であり、台風や豪雨、土砂災害などの自然災害による被害は防止できません。各災害に強い住宅を建築するには、基礎の位置を高くする、風の吹き上げが発生しても耐えられる屋根の設置などの対策が不可欠です。

すべての災害に対応する住宅を建築・購入するのは難しいため、ハザードマップを確認し、どのような災害が起きやすく、何に対して対策すべきかを確認することが大切です。

立地によっては設置できない

建築する土地によっては、免震住宅を建築できません。免震住宅が建築できない主な立地は、以下のとおりです。

  • 地盤が極端に弱い土地
  • 建物が揺れる空間を確保できない狭い土地
  • 傾斜や高低差が大きい土地

このような土地は物理的に免震装置が設置できない、もしくは設置しても効果を最大限に発揮できない場合があるため注意しましょう。

地下室を作れない

免震住宅は、原則として地下室を作れません。免震装置は建物と基礎との間にあり、地下室を設けると適切な位置に設置できない場合があります。うまく設計すれば地下室を設けられる可能性もありますが、構造計算が非常に複雑となり、建築コストが跳ね上がる場合もあるため注意が必要です。もし地下空間を設けたいと考えるなら、免震ではなく耐震工法や制震工法を併用するなど、他の方法を用いて耐震性を高めましょう。

免震住宅の費用

免震住宅にするのにはいくらかかるのでしょうか
免震住宅にするのにはいくらかかるのでしょうか

免震住宅の費用は、一般的な木造住宅の場合、100万~500万円程度、建築費用が高くなると言われています。免震装置を取り付けるには特殊な基礎工事が必要となる、工期が長くなって人件費が増加するなど、建築費が上昇する要因が多くなります。

また、先述のとおり、免震装置のメンテナンスも必要であり、初期費用に加えて維持費用がかかることも考慮しなければなりません。

その他の耐震構造の費用

耐震性を向上させる構造は、免震以外にも制震構造や耐震構造があります。ここからは、免震以外の耐震構造の費用の目安を紹介します。

制震構造の費用

制震構造の費用の目安は、50万~400万円と言われています。制震に必要な設備は取り付け箇所や種類によって費用が大きく変わるため、目安の金額にも幅があります。また、リフォームでも比較的設置が可能であり、既存の住宅の耐震性を向上させる際にも役立つことでしょう。

耐震構造の費用

耐震構造の費用の目安は、100万~200万円と言われています。耐震性を向上させるために、屋根を軽量化したり、筋交いや耐震壁を追加したりします。新築は最初から耐震構造になっている場合も多く、既存住宅への改修工事としておこなわれるのが一般的です。

免震住宅に関するよくある質問

免震住宅に関するよくある質問とその回答を紹介します。

免震住宅とは

免震住宅とは、免震装置が設置され、大幅に耐震性が向上した住宅です。免震装置は主にアイソレータと免震ダンパーの2種類が採用されており、それぞれの種類にいくつもの設備があります。設備によって免震性能、建物を元の位置に戻す性能、設置費用は異なります。免震といっても内容には違いがあるため、性能と費用のバランスを考慮することが大切です。

免震住宅のメリット・デメリットは?

免震住宅のメリットとデメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 家の安全性が向上する
  • 家具の転倒を防げる
  • 地震のダメージを最小限にできる
  • 余震に強い
  • 地震保険が割引になる

【デメリット】

  • 費用がかかる
  • 定期的なメンテナンスが必要
  • 地震以外の災害には効果を発揮しにくい
  • 立地によっては設置できない
  • 地下室を作れない

免震住宅の費用は?

免震住宅の費用は、一般的な住宅よりも100万~500万円高いと言われています。費用が高くなる主な理由は以下のとおりです。

  • 特殊な基礎工事が必要となる
  • 免震装置の購入費や設置費がかかる
  • 構造設計が複雑になって設計費が高くなる

まとめ

免震住宅は、基礎と建物の間に免震装置を取り付けた住宅です。免震装置は地震エネルギーを吸収し、低減する機能があり、建物の損傷を防いでくれます。地震大国である日本国内に居住するのであれば設置しておきたい設備と言えますが、取り付けに費用がかかったり、メンテナンスの負担が発生したりします。

メリットだけではないため、免震住宅の購入や免震装置の設置工事を検討する場合、デメリットも理解したうえで手続きを進めましょう。デメリットを理解した上で免震住宅に居住すれば、後悔することなく、地震への備えができるようになるはずです。

執筆者

渥美 誠

宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などに携わる。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。

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