耐震等級3は後悔するって本当?よくある失敗例と判断ポイント
大切なのは、耐震等級3がよいか悪いかではなく、自分たちの暮らしや価値観に本当に合っているかを見極めることです。
この記事では、耐震等級3で後悔につながりやすいポイントと、失敗を避けるための考え方をわかりやすく解説します。
記事の目次
耐震等級とは?住宅の地震への強さを示す3段階評価

耐震等級とは、住宅がどの程度の地震に耐えられるかを数値で示した基準で、住宅性能表示制度に基づき、等級1〜3の3段階で評価されます。数字が大きいほど、より高い耐震性を持つ住宅と判断されるでしょう。
基準となるのは「耐震等級1」です。建築基準法が定める最低限の耐震性能で、数百年に一度発生すると想定される大地震(震度6強〜7程度)でも倒壊・崩壊しないレベルとされています。
等級2・等級3は、その基準をどれだけ上回るかによって区分されます。以下の表に違いをまとめました。
| 等級 | 耐震性能の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 耐震等級1 | 建築基準法の最低基準 (1.0倍) |
震度6強〜7程度の地震で倒壊・崩壊しない程度 |
| 耐震等級2 | 等級1の1.25倍 | 等級1で想定する地震力の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度 |
| 耐震等級3 | 等級1の1.5倍 | 等級1で想定する地震力の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度 |
数字の差は小さく見えますが、構造計算上は大きな違いがあり、建物全体の強度設計に大きく影響します。
耐震等級3はどれほど強い?防災拠点と同等の耐震レベル
耐震等級3の住宅は、耐震等級1で想定される地震(震度6強〜7相当)の1.5倍の地震力が加わった場合でも、倒壊・崩壊しない設計が求められます。これは極めて高い安全性を確保するための基準です。
実際に、消防署や警察署、災害拠点病院などの公共施設は、災害時にも機能を維持する必要があるため、耐震等級3で建築されています。大規模地震のあとも活動を続けなければならない建物と同水準の耐震性を持つのが、耐震等級3の住宅です。
つまり、耐震等級3の家は命を守るだけでなく、被災後も住み続けられる可能性が高いレベルの強度を備えているといっても過言ではありません。将来の大地震に備えたい方や、長期的な安心を重視したい方にとっては、有力な選択肢になるでしょう。
耐震等級3で後悔するケースとは?

耐震等級3は、住宅性能表示制度でも最高ランクの耐震性能です。地震大国・日本では安心感の高い選択肢ですが、実際に建てた人のなかには「思っていたものと違う」と感じるケースもあります。
耐震等級3の家で後悔につながりやすい代表的なケースを、具体的に解説していきます。
建築費用が想定以上にかかる
耐震等級3で後悔したという声のなかで多いのが、費用面に関するものです。
耐震等級3を取得するには、一般的な等級1・2の住宅よりも高度な構造設計が求められます。特に許容応力度計算をおこなう場合、設計の手間が増えるため設計費用が上がりやすくなるでしょう。
さらに、耐力壁の増設や高強度の柱・梁(はり)の採用、基礎の補強、場合によっては地盤改良工事なども必要です。これらが積み重なることで、建築コストは上昇します。また、住宅性能評価を取得するための申請費用も発生するでしょう。
耐震等級1の住宅と比較すると、50万円〜200万円程度の差が出ることもあり、「そこまで予算をかけるつもりはなかった」と後悔するケースも少なくありません。事前に総額を明確にしないまま進めると、資金計画に影響する可能性があるため注意が必要です。
日常生活では効果を実感しにくい
耐震等級3あっても「日常生活で違いがわからない」という点も後悔する理由のひとつでしょう。
耐震等級3の真価が発揮されるのは、大規模地震が発生した時です。そのため、地震が少ない地域や大きな揺れを経験したことがない方にとっては、性能の差を体感する機会がほとんどありません。
結果として「耐震等級1や2でも十分だったのでは」と感じるケースもあります。特にコスト差を強く意識している場合、実感しづらい性能に対して費用をかけたことを後悔するケースもあるでしょう。
ただし、地震はいつ発生するかわかりません。近年ではあまり地震が起きなかった地域でも大きな揺れが発生しています。いざという時に自分や家族、住まいを守るためにも耐震等級3を検討する価値はあるでしょう。
間取りやデザインの自由度が下がる
希望の間取りが実現できなかったため、耐震等級3にしたことを後悔するケースもあります。
耐震性能を高めるためには、バランスよく耐力壁を配置しなければなりません。その結果、大開口の窓や広い吹き抜け空間など、開放感を重視した設計が制限される場合も。例えば「南面を一面ガラス張りにしたい」「大きな吹き抜けリビングにしたい」などの希望は、構造上の制約が生じやすいポイントのひとつです。
壁量を確保する必要があるため、間取りの自由度は一定程度下がることを理解しておく必要があります。
ただし、耐震等級3の設計実績が豊富な工務店や設計事務所であれば、構造計算を駆使しながらデザイン性を両立できるケースも少なくありません。後悔を避けるには、実績や設計力のあるパートナー選びが重要です。
工期が長くなる
耐震等級3の取得には、通常よりも時間がかかることがあります。
まず設計段階で、部材ごとの強度を検証する許容応力度計算をおこなう場合、通常の設計よりも2週間〜1カ月ほど余分に時間を要することも。これは構造安全性を細かく確認する工程が増えるためです。
さらに、住宅性能評価機関による審査や書類作成にも一定の期間が必要になります。施工段階でも、補強材や金物の取り付け工程が増えるため、工期が延びる可能性があるでしょう。
耐震等級3の住宅を建てるには一般的な住宅より時間を要することを加味し、スケジュールに余裕を持って計画することが大切です。
「耐震等級3相当」で「耐震等級3」ではない
耐震性能を重視して家づくりを進めていると、「耐震等級3相当」という表現を見かけることがあります。一見すると正式な耐震等級3と同じレベルの性能を備えているように感じますが、実際には大きな違いがあるため注意が必要です。
耐震等級3相当とは、設計上は耐震等級3と同等の強度を想定しているため、第三者機関による正式な認定を受けていないケースで使われることが多い表現です。本来、耐震等級3を取得するには、住宅性能評価機関などの専門機関による審査を受け、評価書を発行してもらう必要があります。
構造計算や設計内容が基準を満たしているかどうかを客観的に証明してもらって初めて耐震等級3と名乗れます。
一方で、相当と表記されている住宅は、こうした審査や証明書の取得をおこなっていない可能性も。つまり、公的な裏付けがないまま等級3レベルと説明されていることになります。
そのため、地震保険の耐震等級割引や住宅ローンの金利優遇制度を利用できない可能性があります。
さらに、「設計上は問題ない」と説明を受けていても、正式な認定がなければ、その性能が第三者によって保証されているわけではありません。施工精度や細かな設計条件によっては、期待していた耐震性能に届いていない可能性もあるでしょう。後悔しないためにも、契約前に以下の点を確認したいところです。
- 住宅性能評価書が発行されるか
- 許容応力度計算を実施しているか
- 認定取得にかかる費用が見積もりに含まれているか
「耐震等級3相当」の言葉だけで判断せず、正式な認定を受けているかどうかを確認することが大切です。
着工前に申請しないと耐震等級3にできない
耐震等級3の正式認定は、工事が始まる前の段階で申請しなければなりません。
設計図面や構造計算書を提出し、基準を満たしているか審査を受けるため、建築計画の初期段階から準備する必要があります。
着工後に「やっぱり耐震等級3を取得したい」と思っても、すでに構造や壁量が確定していると、大幅な設計変更が必要になるケースがほとんどです。場合によっては、取得自体が難しいケースも。申請タイミングを逃してしまえば、以下のようなメリットを受けられなくなる可能性もあります。
- 地震保険料の最大50%割引
- フラット35Sなどの金利優遇
家づくりの初期段階で建築士や施工会社に「耐震等級3を正式に取得したい」と明確に伝え、申請スケジュールまで確認しておくことが重要です。
100%倒壊を防げるわけではない
「耐震等級3なら絶対安全」と思っていた場合、あとから現実を知って落差を感じることもあります。
耐震等級3は、建築基準法レベル(耐震等級1)の1.5倍の地震力に耐える設計基準です。しかし、これは倒壊・崩壊しないことを想定した設計であり、損傷が一切生じないことを保証するものではありません。
地盤の状態や地震の規模、建物の経年劣化などによっては、被害を受ける可能性も。耐震等級1や2より強いのは事実ですが、リスクをゼロにできるわけではないことを理解しておきましょう。
繰り返し起こる地震に対する不安がある
「繰り返し発生する地震に本当に耐えられるのか」と不安を感じる方もいます。大地震のあとに余震が続くケースも珍しくありません。
耐震等級3であっても、強い揺れを受ければダメージは蓄積します。構造体が損傷すれば、耐力は徐々に低下していくでしょう。そのため、より安全性を高めたい場合は、制震ダンパーや免震構造などの追加対策を検討する必要があります。
しかし対策を増やすほどさらにコストがかかるため、「そこまで資金が必要だったのか」と感じることも。どこまで費用をかけられるか、地震にどこまで備えるかは事前に決めておきましょう。
【データで解説】耐震等級3はどの程度の地震被害に耐えられるのか

耐震等級3は防災拠点レベルの強さといわれますが、実際にどのくらいの被害を抑えられるのでしょうか。
ここでは、2016年の熊本地震の調査データをもとに、耐震等級3の実力を具体的に見ていきます。
熊本地震の調査から見る耐震等級3の被害状況
2016年に熊本県・大分県で発生した地震では、前震がマグニチュード6.5、本震が7.3を記録。さらにそのあとも余震が続き、日本の住宅被害の歴史に残る大規模災害となりました。

国土交通省の公表資料によると、性能評価を受けた住宅のうち耐震等級3を取得していた住宅の約87.5%は大きな損害がみられず大部分が「無被害」という結果が示されています。
つまり、強い揺れが複数回発生した状況でも、多くの耐震等級3の住宅は大きな損傷を受けずに済んだのです。
もちろん絶対に壊れない保証はありません。倒壊や大破のリスクを大幅に抑えられる可能性が高いことは、実際の調査データからも読み取れます。
南海トラフ地震への備えとして考える耐震等級3
今後、マグニチュード8〜9クラスの南海トラフ地震が発生する可能性も指摘されています。発生時期は断定できないものの、備えを意識する人が増えているのも事実です。耐震等級3は、こうした大規模地震を想定した強度基準です。
日常生活では違いを体感しにくいかもしれませんが、万が一の時の安心材料になるでしょう。住まいに求める安全基準は人それぞれですが、後悔しないためにできる準備をしておく考え方も、ひとつの選択肢です。
耐震等級を決める4つの重要要素

耐震等級3の性能は、単に壁を増やせば実現できるものではありません。住宅の構造は、複数の要素が組み合わさって耐震性を形成しています。耐震等級を左右する4つのポイントを解説します。
建物の重さ|軽い構造ほど揺れに有利
「重い建物のほうが安定しやすい」と思うかもしれませんが、実は地震時には逆の作用が働きます。
建物が重いほど、地震エネルギーを大きく受け止めることになり、揺れも増幅しやすくなります。特に屋根部分が重いと、上部が振り子のように揺れて構造体に負担がかかるでしょう。そのため、耐震性を高めるには建物全体を軽量化しなければなりません。例えば、瓦屋根ではなくガルバリウム鋼板などの軽量屋根材を選ぶだけでも、揺れの影響を軽減できます。
木造住宅は鉄筋コンクリート造と比べて構造が軽く、適度なしなやかさを持つため、地震エネルギーを分散しやすい特徴があります。耐震等級3を目指す場合、重さの考え方は基本となるポイントです。
耐力壁の量|十分な壁量が倒壊リスクを下げる
耐力壁とは、地震や強風など横方向の力に抵抗する構造壁のことです。
この壁の量が不足していると、建物は横揺れに耐えきれず変形しやすくなります。耐震等級3では、建築基準法を上回る壁量が求められるでしょう。つまり、等級1よりも多くの耐力壁を配置することで、強い揺れにも耐えられる設計になっていることが特徴のひとつです。
また、耐力壁は台風などの風圧にも有効になるでしょう。地震対策だけでなく、総合的な災害対策で重要な役割を担っています。必要な壁量を正確に算出し、構造計算に基づいて設計することが、耐震等級3取得の前提となります。
耐力壁の配置バランス|偏りはリスクになる
耐力壁は多ければよいものではありません。重要なのは、その配置バランスです。例えば、建物の一方向にだけ壁が集中していると、地震時にねじれが発生しやすくなります。これを「偏心」と呼びますが、構造上の弱点になることも。耐震等級3では、建物全体で力を受け止められるよう、壁をバランスよく配置することが求められます。四隅や外周部を中心に、水平・垂直方向の力を分散できる設計が基本です。
このバランス設計には高度な構造知識が必要であるため、設計者の技術力が大きく影響します。
間取りの自由度と耐震性能を両立させるには、経験豊富で信頼できる施工会社を選ぶ必要があるでしょう。
床の剛性|建物を一体化させる重要パーツ
柱や壁ばかりに注目が集まりますが、実は床の強度も耐震性能を左右します。床がしっかりとした水平剛性を持っていれば、地震の揺れを建物全体で受け止めるため、特定の部分に力が集中するのを防げるでしょう。
一方、やわらかい床構造では、揺れが一部に集中し、建物がねじれる原因になることも。耐震等級3を目指す住宅では、構造用合板などを用いて床の剛性を高める設計が一般的です。
壁・柱・基礎だけでなく、床も含めて箱として強度を確保することが、高い耐震性能を実現するポイントになります。
耐震等級3の必要性とメリット

ここまで耐震等級3に対する「後悔している」「必要ない」などの声に関して触れてきました。しかし多くの住宅専門家が取得を推奨していることも事実です。耐震等級3を取得する具体的なメリットをご紹介します。
大地震でも倒壊・大破のリスクを大きく下げられる
耐震等級3の大きなメリットは、やはり強い揺れに対する耐久性です。
2016年の熊本地震後におこなわれた建物被害調査※1(国土交通省)では、等級1(建築基準レベル)※2の木造住宅のうち大破した住宅は4%、倒壊は2.3%でした。一方、等級3の木造住宅で大破・倒壊の被害は見られませんでした。
※1:熊本地震(2016年4月14日(前震)、4月16日(本震))について、日本建築学会が益城町中心部で地震動が大きく建築物の被害が著しい地域において実施した調査結果
※2:住宅性能表示未取得物件(平成 12年6月~)及び等級1のもの
この調査結果からわかるのは、等級3は理論上の強さだけでなく、実災害でも一定の効果を示した点です。
耐震等級3は、建築基準法レベル(等級1)の1.5倍の地震力に耐えられる設計になっています。命を守る確率を少しでも上げたいと考えるなら、耐震等級3の検討は必須です。
損傷を抑え、地震後の生活再建を早められる
耐震等級3の目的は、倒壊しないことだけではありません。損傷を抑えることも重要な設計思想に含まれています。
耐震等級の基準を整理すると以下のとおりです。
| 等級 | 倒壊防止の基準 | 損傷防止の想定 |
|---|---|---|
| 等級1 | 震度6強〜7で倒壊しない | 震度5強程度で損傷しにくい |
| 等級3 | 等級1の1.5倍の地震力に耐える | 損傷リスクもより低減 |
耐震等級1でも命は守れる設計とされていますが、震度6以上では一定の損傷が生じる可能性も。損傷が大きければ、そのあとの修繕費・仮住まい費用・生活再建の負担も増大するでしょう。
しかし、耐震等級3なら以下のような実務的なメリットが期待できます。
- 大きな補修が不要になる可能性が高い
- 在宅避難できる確率が上がる
- 生活の立て直しが早い
地震保険料が大幅に割引される
耐震等級3にすることのメリットに、地震保険料の割引制度も含まれるでしょう。
耐震等級3を取得している住宅は耐震等級割引の対象となり、最大50%の割引が適用されます。
長期契約が一般的な地震保険では、割引効果は想像以上に大きくなります。税金面での恩恵を受けたい方にも耐震等級3の取得はおすすめです。
住宅ローンの金利優遇を受けられる場合がある
住宅ローン商品によっては、耐震等級3が優遇条件になることもあります。
例えば「フラット35S(金利Aプラン)」では、耐震等級3を満たすことで当初5年間、年0.5%の金利引き下げが適用されます。
住宅金融支援機構の試算では、条件次第で5年間で約80万円の差額が生じるケースも。取得費用の増額分を、金利優遇でカバーできる可能性がある点はメリットとして見逃せません。
住宅の資産価値が維持されやすい
耐震等級3は、第三者機関による審査・認定を受ける制度です。つまり、地震に強い住宅であることを客観的に証明できます。
将来、転勤や住み替えで家を売却したり、賃貸として運用したりする際に、耐震等級3を取得していれば、買主・借主に対して明確なアピールポイントになります。
特に中古市場では耐震性能は重要視される傾向があります。同条件の物件であれば、耐震等級3の方が評価されやすいでしょう。将来少しでも高く売却したい方や資産価値を落としたくない方にもおすすめです。
耐震等級3の認定を受ける流れと必要な費用

耐震等級3を正式に取得するには、設計の初期段階から第三者機関によるチェックを受ける必要があります。そのため、着工後に「やっぱり等級3にしたい」と思っても対応が難しいケースがほとんどです。
耐震等級3を希望する場合は、プランニングの段階で施工会社へ明確に伝えておくことが前提になります。
耐震等級3の認定を受ける具体的な流れと、実際にかかる費用の目安を詳しく解説します。
耐震等級3の認定を受けるまでの手順
耐震等級3を取得するには、国土交通大臣に登録された住宅性能評価機関へ審査を依頼し、基準をクリアする必要があります。審査は大きく分けて「設計性能評価」と「建設性能評価」の2段階でおこなわれるでしょう。
まずおこなわれるのが設計性能評価です。これは、提出された設計図書や構造計算書をもとに、耐震等級3の基準を満たしているかどうかを確認する審査になります。図面上で構造的な安全性が証明されているかをチェックされます。
次におこなわれるのが建設性能評価です。こちらは実際の工事現場での検査となります。設計どおりに施工されているかを、基礎配筋時や上棟時、完成時など複数回にわたり確認します。図面だけでなく、現場の施工精度までチェックされる点が大きな特徴です。
具体的な申請方法やスケジュールは、依頼するハウスメーカーや工務店によって異なります。耐震等級3を確実に取得したい場合は、契約前の段階で評価書を取得する前提かどうかを確認しましょう。
耐震等級3の取得にかかる費用の目安
耐震等級3を取得する際には、建物本体価格とは別に費用が発生します。主に必要となるのが「構造計算費用」と「申請・審査費用」の2種類です。
構造計算とは、建物の重さや各部材にかかる荷重を数値で算出し、地震や台風などの外力に対して安全性が確保されているかを検証します。特に耐震等級3では、許容応力度計算と呼ばれる詳細な計算が求められるケースが多く、その分コストも上がるでしょう。一般的な目安としては20万〜40万円程度です。
さらに、住宅性能評価機関へ支払う申請・審査費用も用意しなければなりません。相場は10万〜40万円程度とされています。
上記を合算すると、耐震等級3の認定取得にかかる費用は30万〜80万円程度が目安です。
ただし、建物の延床面積や構造の複雑さ、依頼先の設計事務所・ハウスメーカーによって金額は変動します。あとから「思ったより高かった」と後悔しないためにも、見積書の内訳に構造計算費や評価申請費が含まれているかどうかを事前に確認しておきましょう。
耐震等級3は安心を数値で証明する制度です。その分のコストと価値を理解したうえで判断するようにしましょう。
耐震等級3で後悔しないためのポイント

耐震等級3は「最高等級」と言われているため安心感が強く、選んでおけば間違いないと思われがちです。しかし、家づくりで後悔しないためには、その性能を鵜呑みにするのではなく、「自分たちに本当に必要かどうか」を冷静に見極める視点が欠かせません。
ここでは、耐震等級3を選んで後悔しないために確認しておきたいポイントをご紹介します。
地域の地震リスクと照らし合わせて検討する
耐震等級を考える際には、住む地域のリスクを客観的に把握することが重要です。
自治体が公開しているハザードマップでは、想定震度や液状化の可能性などが確認できます。例えば、想定震度6強以上のエリアと、震度5弱程度が想定されているエリアでは、求められる備えのレベルも変わるでしょう。
さらに重要なのが地盤の状態です。同じ市内でも、埋立地と自然地盤では揺れ方が異なることも。建設予定地の地盤調査結果を踏まえて、建物性能を考えることが重要です。地域特性によっては最高等級でも安心できません。
コストと性能のバランスを冷静に比較する
耐震等級3を取得する場合、構造計算費用や部材強化などで費用が増加します。規模や設計内容によっては、数十万〜数百万円単位の差が出ることも。増加した費用が、住宅ローン計画や他の設備投資を圧迫していないかどうかを確認することが大切です。
また、地震保険料の割引や税制優遇などを含め、長期的な視点で回収可能であるかどうかを試算しましょう。具体的には、追加コストや年間どれくらい保険料が安くなるか、何年で差額が縮まるのかなど、比較が重要です。
家族構成・ライフスタイルに本当に合っているかを確認する
耐震等級3が最適かどうかは、家族の状況や将来設計によって変わります。
例えば、小さな子どもがいる家庭や、高齢の家族と同居している場合、地震時の安全確保は最優先事項です。避難が難しい家族がいる場合、建物自体の強さは大きな安心材料になります。こうしたケースでは、耐震等級3の選択は合理的でしょう。
一方で、将来的に二世帯化や間取り変更、大規模リフォームを検討している場合は注意が必要です。耐震等級3では耐力壁の配置や構造バランスが厳格に計算されるため、あとから自由に変更しにくいケースがあります。「今の安心」と「将来の柔軟性」のどちらを優先するのか、後悔しないためにも、家族としっかり話し合って決めましょう。
耐震等級3の費用対効果で後悔しないためのチェックポイント

耐震等級3を検討する際、多くの方が迷うのが「本当に費用に見合うのかどうか」です。最後に耐震等級3の費用対効果で後悔しないためのポイントを以下にまとめました。
初期コストに見合う価値があるかを見極める
耐震等級3の取得には、精密な構造計算や第三者機関への申請費用、部材強化によるコスト増が発生します。
コストが、家族にとって必要な安心なのか、それとも過剰な備えなのかを考えることが大切です。単なるスペック競争ではなく、自分たちにとっての価値で判断しましょう。
等級2との差を具体的に比較する
耐震等級2は建築基準法の1.25倍の耐震性を持ち、学校や避難所と同レベルの強度とされています。一定の安全性を確保しつつ、コストを抑えられるバランス型です。
等級3との違いは、強度だけでなく、保険割引率や制度面の優遇内容にもあります。差額が家族にとって重要であるかを具体的に比較してみましょう。
最高等級だから選ぶのではなく、性能の差に納得できたから選んだほうが後悔を減らせるでしょう。
関連制度を最大限活用できるか確認する
耐震等級3の経済的メリットを最大化するには、制度の活用が前提になります。
長期優良住宅の認定や各種補助金は、申請しなければ受けられません。着工後では間に合わない制度もあります。
どの制度が利用可能か、申請時期はいつか、追加費用はいくらかなどを事前に把握して計画に組み込むことが、費用対効果を高める鍵となるでしょう。
維持コストと資産価値への影響を考える
耐震等級3は長期優良住宅の基準の一部でもあります。
認定を受ければ、計画的なメンテナンスが前提となるため、結果的に建物の劣化防止や修繕費の抑制につながる可能性も。
また、将来的に売却する場合、公的に性能が証明されている住宅は評価されやすい傾向があります。特に中古市場では耐震等級3を取得している明確な証明が買い手にとって安心材料の一つになります。
長く住む場合だけでなく、将来売る可能性まで含めて検討することが重要です。
保険料や税制優遇でどこまで回収できるか試算する
耐震等級3では地震保険料が最大50%割引になります。等級2の場合は30%割引です。
仮に年間保険料が10万円の場合、最大5万円の差が出る可能性があります。長期加入を前提にすれば、累計で数十万円規模の差になることも考えられるでしょう。
さらに、フラット35Sの金利優遇や固定資産税の減額措置など、利用可能な制度も確認しておきましょう。
制度を前提に考えるかどうかで、費用対効果の評価は大きく変わります。
まとめ
耐震等級3を取得した家は、高い安全性を備えた住宅です。
しかし、「最高等級だから安心」「みんな選んでいるから」などの理由だけで決めてしまうと、コスト・間取り・将来の暮らしとのミスマッチによって後悔につながる可能性があります。
耐震等級3で後悔しないためにも以下のポイントを意識しましょう。
- 家族構成やライフスタイルに本当に合っているか
- 住む地域の地震リスクと建物性能が釣り合っているか
- 追加コストと得られるメリットに納得できているか
耐震等級3は選ぶことが正解ではなく、納得して選べたかどうかが満足度を左右します。性能の高さだけに目を向けるのではなく、自分たちにとっての最適解を見つけましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ


