平屋はやめたほうがいいと言われる理由は?平屋に向かない・向いている人の特徴
本記事では、平屋はやめたほうがいいと言われる理由を紹介します。一方で、二階建てなど階層のある家ではなく「平屋にすればよかった」と言われる理由もあわせてご紹介。注文住宅で平屋を検討している方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
平屋はやめたほうがいいと言われる理由

人気が高まっている平屋ですが、「平屋はやめたほうがいい」と言われることも。どのような理由でやめたほうがいいと言われるのか解説します。
広い土地が必要になる
同じ延床面積の家を建てる場合、平屋は二階建ての住宅と比較して、広い土地が必要になります。なぜなら平屋はすべての部屋を一階部分に配置するため、単純に二階建てと比べると2倍の面積が必要になるためです。したがって、駅の近くや都市部などのエリアでは、希望する家の広さによっては、土地の確保が難しいでしょう。
また、広い敷地を用意しやすいエリアは、地価の安い郊外や地方に多いため、都市生活を重視する方にも不利になります。さらに土地が広い分、購入費用も高額になるでしょう。
固定資産税の負担が大きくなりやすい
平屋は二階建てに比べて、全体的に固定資産税の負担が大きくなる傾向にあります。平屋は広い土地を必要とするため、土地評価額が高くなり、固定資産税が増加しやすくなるでしょう。
また、建物部分も屋根や基礎の面積が広くなるため、評価額が高くなる傾向に。固定資産税は毎年支払う費用で長期的にかかるコストになるため、継続的に支払い続ければ、固定資産税の負担が軽い二階建てと比較して、金額に大きな差が生まれるでしょう。
建設費用が高くなりやすい
平屋は土地の購入費用・税金の負担だけでなく、建築費用も二階建てと比較して高くなることがあります。基礎面積と屋根面積が広がるため、必要な資材と工事量が大きく増加するからです。
建築費用に関しては、シンプルな設計にすればコストダウンができます。また、平屋は二階建てとは異なり、階段・バルコニーが不要であるため、条件次第では二階建てよりも安く建築できる場合もあるでしょう。よって、平屋の建築費用が高額になるという認識は、必ずしも正しいとは限りません。
防犯面に心配がある
平屋はすべての部屋が一階に位置するため、外部からの侵入リスクが二階建てより高くなります。侵入しやすい窓や出入口の数が増える分、防犯対策を徹底しなければ、空き巣に狙われるリスクが大きいです。寝室も一階に配置されるため、夜間の防犯意識が重要になります。
平屋に安心して住むためには、監視カメラ・防犯センサーの設置、格子付きの窓やシャッターの採用などの防犯対策が必要となるでしょう。しかし、二階建てであることを理由に、対策をおろそかにしてもいいとはいえません。とはいえ、防犯を重視するために、リスクの高い構造である平屋を避けることは自然な考え方です。
プライバシーを確保しにくい
平屋はすべての部屋が一階にあり、外部からの視線が気になりやすい構造です。道路に面した部屋は、通行人の目に入ってしまうケースが多く、プライバシーを確保しにくい場合があります。周りの環境次第では、落ち着いた生活を送りにくいかもしれません。
窓の配置・高さの工夫、すりガラスの採用、カーテンの使用やシャッターの設置や植栽を使って目隠しにするなどをすれば、外からの視線が遮断されてプライバシーを確保できるようになります。対策方法の幅が広いため、建築段階から対策をするだけでなく、実際に住んでから気になった場合も対策できるでしょう。
外からの音が気になることがある
平屋に住むと、外部からの騒音が気になりやすい場合があります。特に道路に面した部屋は車の音や人の話し声が入りやすく、住宅密集地では隣家の生活音が気になる場合も。すべての部屋が一階部分にある平屋は、全体で外部からの音を拾いやすい構造でしょう。
しかし、音が気になる問題は、建物の構造よりも住宅の性能に左右される場合が多いです。平屋でも遮音性の高い壁構造・窓ガラスを採用すれば、外部の騒音を効果的に遮断できます。平屋を建てる前の段階で周りの音が気になる場合は、防音対策を重視して建築するようにしましょう。
採光や通風が取りにくい
平屋は、建物の中心部に光や風が届きにくい傾向があります。周辺にある建物が高い場合は日当たりが悪くなり、十分に採光を確保できません。通風は平屋の構造の問題であり、部屋が横に広がっている影響で風通しが悪くなります。
採光・通風の確保は、事前に日当たりの確保や風の通り道を意識した間取り設計を心がけることで対策できます。平屋の設計段階で採光や通風を意識すれば、住んでから生活環境で後悔する可能性は低くなるでしょう。
湿気の影響を受けやすい
平屋は床面積すべてが地面に接するため、湿気の影響を受けやすい特徴もあります。日本は高温多湿の気候であるため、床下の湿気や結露がカビやシロアリの原因になることも。二階建てでは二階部分が湿気から離れている分、被害が限定的になります。一方、平屋では部屋全体が湿気のリスクに晒される可能性もそのため平屋を建てる場合は、床下換気や防湿シートなどの対策が必須です。湿気がこもりやすい住環境ではリスクが高くなるため、湿気対策を重視するようにしましょう。
水害に対する不安がある
豪雨や台風を理由に水害が発生した場合、平屋はすべての部屋が床下浸水し、家具などが水につかってしまうリスクがあります。また、二階建てであれば、避難先として二階を活用できますが、平屋には避難先がないため、被害のリスクが大きくなることも考えられます。
ハザードマップで洪水の危険性が高い地域では、平屋の建築は避けたほうがよいでしょう。水害の懸念がある地域では、土地の地盤や基礎部分の高さを上げるなどの対策も。もし、平屋を建築するなら、できる限り水害のリスクが低い地域を選ぶのが対策としては確実です。
プライベート空間の確保ができない
平屋はワンフロアで生活するため、家族間のプライベート空間の確保が課題になります。二階建てであれば、部屋が階層で分かれることでプライベートな空間を用意できます。しかし、すべてが一階部分にあり、動線がつながりやすい平屋では、家族がそれぞれプライベートな空間を確保しにくい構造です。
家族全員のプライベート空間を確保するには、人数が増えるほど広い土地と建築費用が必要になるでしょう。間取りの工夫や間仕切りを使用し、プライベートな空間を確保する努力が必要になります。
平屋に向かない人の特徴

平屋はバリアフリー性や生活動線のシンプルさから人気が高まっていますが、すべての人にとって最適な住宅スタイルではありません。注文住宅の平屋を建てて後悔しないために、平屋に向かない人の特徴を以下にまとめました。
都市部や広さが限られた土地で家を建てたい人
都市部は利便性が高い反面、土地の価格が高く、敷地面積も限られています。平屋を建てる場合、十分な延床面積を確保するには広い土地が必要となりますが、土地代が大きな負担になったり、条件に合う土地が見つからなかったりします。よって、狭い土地でも、延床面積を確保できる二階建て・三階建ての家の建築が適切になるケースがほとんどでしょう。
また、家を建てるには敷地の面積に対する建築面積の割合が定められており、基準となる建ぺい率を守る必要があります。現行の建築基準法では、土地の面積をすべて使って住宅の建築面積を確保することはできません。狭い土地を持っており、限られた敷地で居住空間を確保しなければならない場合、平屋は不向きです。
部屋数を確保したい人
家族構成やライフスタイルによっては、多くの部屋数を必要とするケースがあります。例えば、子どもが複数いる家庭では、それぞれの子ども部屋を用意したいと考えることが一般的です。テレワークの普及により書斎やワークスペースを確保したいケースも増えており、ある程度部屋数が必要になる場合も少なくありません。
平屋ではすべての部屋を一階に配置するため、部屋数が多いほど建物の横幅や奥行きが大きくなり、広大な敷地が求められます。よって、部屋数を確保したいニーズと平屋の構造は相性が悪いです。必要な部屋数に応じて二階建て・三階建ての間取りを検討するほうが適切でしょう。
水害のリスクがあるエリアに住んでいる
生活の拠点が水害のリスクがあるエリアになる場合や、所有している土地が浸水の被害に遭うリスクが高い場合、平屋を建てることは避けたほうがいいかもしれません。水害リスクの高い地域では、平屋の火災保険や水災補償の保険料も高額になる傾向があり、長期的な維持コストにも影響を与えます。
建築段階で床を高くする高基礎構造や盛土をおこなう方法もありますが、建築費用が増加します。また、対策をしても完全に安全を保障できるとは限らないでしょう。よって、水害リスクのあるエリアでは安全に生活するためにも、平屋の建築は見送ったほうがいいかもしれません。
平屋に向いている人の特徴

平屋はやめたほうがいいと言われる理由がある一方で、生活スタイルによっては魅力的な住まいになります。向かない人もいることは事実ですが、平屋が理想的な住宅になる人もいるため、向いている人の特徴を見ていきましょう。
子どもや高齢者も安心して生活できる家が欲しい人
平屋は階段を使わずにすべての生活がワンフロアで完結するため、小さな子どもや高齢者にとって安心できる住まいです。階段の上り下りによる転倒のリスクが少なく、足腰に負担がかからない生活ができるようになるでしょう。バリアフリー設計のため、老後の生活拠点にも適しています。
また、子育て世帯にとってもメリットは大きいです。平屋はすべての部屋が一階部分にあるため、親の目が届きやすく、子どもが遊んでいても安心して家事を進められます。高齢者・子育て世帯を中心に平屋は幅広い需要があるため、多くの人にとって理想的な住まいになりやすいでしょう。
家族のつながりを大切にしたい人
平屋はリビングを経由して各部屋に行く動線になるため、日常的に顔を合わせる機会が多くなります。自然と家族のコミュニケーションが生まれやすくなるため、家族のつながりを大切にしたい家庭に平屋はおすすめです。
また、家事動線がシンプルであり、洗濯・掃除などの家事をすべてワンフロアで完結できます。家族全員が自然に協力して、家事に参加しやすい環境ができるでしょう。近年ではリビング学習のように、親が家事をしながら子どもの勉強を見守れるスタイルも注目されており、平屋は構造的に相性がいいです。
耐震性を重視したい人
平屋は水害に弱い反面、構造的に重心が低く、建物全体にかかる揺れの影響が少ないため、二階建てと比較して地震に強いとされています。さらに地震が起きた際も玄関や窓から避難しやすいため、安全性が高いです。
日本は地震大国であるため、地震に対する備えを重視したい人にとって、平屋は適した構造です。将来に発生する危険性がある大地震に備えるなら、耐震性に優れた平屋は有力な選択肢になるでしょう。
平屋にすればよかったと言われる理由

最後に、平屋はやめたほうがいいという声がある一方で、二階建てなどの他の住宅構造を選択したケースで、「平屋にすればよかった」と言われることも。その理由について解説します。
階段の上り下りに負担がある
二階建て・三階建てで階段がある住宅の構造を選んだ場合の後悔は、階段の上り下りに負担があることです。若い時には気にならないかもしれませんが、年齢を重ねると次第に負担を感じるようになります。また、階段の上り下りが転倒やけがのリスクにつながることも。小さな子どもが階段から落ちる事故もあるため、子育て世帯にとっても階段は安全ではないかもしれません。
平屋はすべての部屋が一階にあるため、階段移動による負担とリスクがありません。特に高齢者が老後生活をするにあたって、「平屋にしたほうがよかった」と後悔するケースが考えられます。
洗濯をはじめ家事動線が非効率になる
二階建て住宅では、洗濯や掃除などの日常的な家事で、動線の非効率を感じやすい傾向にあります。例えば、一階で洗濯機を回し、二階のベランダに洗濯物を干し、取り込んで畳んだものを一階に運んで収納する場合、多くの階段移動が発生します。重い洗濯物を抱えて階段を上がる作業は、体力的にも負担が大きく、効率もよくありません。
平屋は洗濯の手順である洗濯機を回し、干して、収納するという移動をワンフロアで完結できるため、家事動線が効率的です。日々の不便は積み重なりやすいため、家事動線が非効率であると不満を抱きやすいでしょう。
家族が各自の部屋にこもりがちになる
階層で生活空間が上下に分かれる構造は、家族同士の接触が少なくなる傾向があります。子どもが成長すると自分の部屋にこもりがちになり、家族間のコミュニケーションが減ることも。家族のつながりを重視したい方にとっては、住宅の構造から距離が離れることに後悔するケースも珍しくありません。
平屋は家族全員が同じフロアで生活するため、自然と顔を合わせる機会が増えます。思春期の子どもでも日常的に接触できる機会があるため、無理なくコミュニケーションを取れるでしょう。
一階部分と二階部分で温度差がある
二階建て住宅で生活すると、一階部分と二階部分で温度差を感じることがあります。特に夏は二階が暑く、冬は一階が冷える現象が起きやすいです。
平屋は階層がないため、温度差を感じることは少なくなります。また、冷暖房の効率がよく、少ないエネルギーで住宅の温度を適切に保てます。平屋であれば温度差にストレスを感じることなく暮らせるでしょう。
高齢になると二階が物置になる
二階建て住宅は、高齢になると階段の上り下りが負担になり、生活を一階部分で完結させるようになる方もいます。二階部分はほとんど使われずに物置化して、空間を効率的に使用できなくなることも。二階部分を使用しなければ、住宅全体の半分のスペースしか有効活用できていません。
平屋であれば、高齢になってもすべてのスペースを、生活空間に活用しやすくなります。生涯にわたって住める家として理想的です。
まとめ
平屋はバリアフリー性や生活動線のシンプルさから、大きな魅力がある一方、デメリットや注意すべき点も多いことから「やめたほうがいい」と言われることもある住宅スタイルです。住宅を建てる場所や建てる人によって不向きな場合もあるため、二階建てを検討したほうがいい場合もあるでしょう。
一方で、平屋が適している人もいるため、後悔しないようにメリットや魅力にも注目したいところです。自身にとって平屋のメリットがデメリットを上回るかを見極めたうえで、最適な住宅の構造を選ぶようにしましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ





