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保留地とは?メリット・デメリット、売買する際の注意点をわかりやすく解説

宅地の売買で「保留地」の言葉を見かけたことはありませんか。保留地と一般の宅地の違いを理解すれば、売買の際にどこに気をつければよいのかが判断しやすくなります。

この記事では、保留地の概要や役割、購入するメリット・デメリットを紹介します。さらに、購入時と売却時の注意点も解説しているので、土地の購入を検討している方は最後まで読んで参考にしてください。

保留地とは

保留地とはどのような土地でしょうか
保留地とはどのような土地でしょうか

保留地は土地区画整理事業によって発生する土地で、一般の宅地とは違う性質があります。ここでは、保留地の定義や役割、一般宅地や仮換地との違いを解説します。

保留地の定義

保留地とは、土地区画整理事業の費用を捻出するために、事業施行者が施行エリアの一部を販売する土地です。土地区画整理事業で土地所有者から提供された土地の一部が公共施設用地や道路となり、残りが保留地として売却される仕組みです。

そもそも区画整理とは?

区画整理とは、不整形な土地や狭い道路が入り組んだ地域を整備し、安全で住みやすい街づくりを目指す事業です。

この事業は、土地区画整理事業とも呼ばれており、「道路、公園、河川等の公共施設を整備・改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図る事業」を意味します。

出典:国土交通省「土地区画整理事業

土地区画整理事業での保留地の役割

区画整理域の一部は保留地として売却され、事業費用に充てられます
区画整理域の一部は保留地として売却され、事業費用に充てられます

保留地は、土地区画整理事業で主に資金源として重要な役割を担っています。

区画整理事業では、区域内の土地所有者から一部の土地を提供してもらい、その土地を道路や公園などの公共用地に活用するのが一般的です。区画整理区域の一部が保留地として売却され、その収益が事業費用に充てられます。

そのため、保留地は土地区画整理事業を進めるために欠かせない土地です。

また、古い市街地では区画整理により狭い道路が広げられ、新しい街並みが形成されることで土地価値の向上が期待できるでしょう。

保留地と一般宅地の違い

保留地と一般宅地には、販売方法や登記手続きに違いがあります。保留地は、一般的に不動産会社を通さず事業施行者が直接販売するため、仲介手数料は発生しません。

また、事業完了後まで登記は作成されず、その間は所有権移転登記や抵当権設定ができません。抵当権とは、住宅ローンを組む際に購入する家や土地に金融機関が設定する権利のことです。

一方で、一般宅地は契約後すぐに登記手続きが可能で、不動産会社による仲介で取引がおこなわれるケースもあります。不動産会社の仲介で一般宅地を売買した場合、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。

保留中と仮換地の違い

保留地と仮換地はどちらも区画整理事業内の土地ですが、性質が少し異なります。仮換地は区画整理区域内のもともとの土地所有者に割り当てられる土地であり、元の土地面積や価値に基づいて振り分けられます。

一方、保留地はもともとの所有者が存在せず、新たに生み出された売却用の土地です。そのため、仮換地はもともとの土地との資産価値に格差が生じた場合の清算金が発生する場合がありますが、保留地は新たに生み出された土地のため、清算金は発生しません。

保留地を購入するメリット

保留地にはさまざまなメリットがあります
保留地にはさまざまなメリットがあります

ここでは、価格面や住環境、将来的な資産価値の向上など、保留地を購入するメリットを詳しく解説します。

仲介手数料が発生しない

保留地は、不動産会社を通さずに事業施行者から直接購入できるため、仲介手数料が発生しません。一般の宅地では、不動産会社が仲介に入る場合、仲介手数料として一定の手数料を不動産会社に支払わなければなりません。

例えば、3,000万円の土地を購入する際、仲介手数料として105万6,000円がかかります。

計算式:土地価格3,000万円 ✕ 3% + 6万円 + 消費税

一方、保留地であれば仲介手数料がかからないため、初期費用を抑えて土地を購入できます。

一般の土地よりも安く購入できる可能性がある

保留地は、一般の土地よりも安く購入できる可能性があります。保留地は事業資金の確保を目的としているため、価格が低く設定されていることが比較的多いでしょう。

また先述のとおり、保留地は不動産会社を介さずに事業施行者が直接販売するため、仲介手数料がかかりません。それにより、宅地の購入にかかる費用を抑えられます。

区画整理された新しい街区に住める

保留地は、区画整理によって整備された新しい街区に位置していることが多く、快適な住環境で生活できることもメリットの一つです。保留地は広い道路や公園などの公共施設が整備されているため、子どもがいる家庭も安心して暮らせるでしょう。

なかには、電線の地中化や歩道が整備されている街区もあります。入り組んだ住宅街ではなく、整備されたエリアで生活したい方に保留地がおすすめです。

将来的な価格上昇が期待できる

保留地は、区画整理事業後に資産価値が上昇する可能性があります。街並みが整備され、公共施設が充実することで地域全体の魅力が向上し、それにともない土地価格が上昇します。

なかには、新しい商業施設や交通インフラの整備により周辺環境が改善され、購入時よりも高い価格で売却できるケースもあります。「資産価値が向上する土地を購入したい」と考えている方は、保留地も選択肢のひとつに入れて検討してみましょう。

保留地を購入するデメリット

保留地を購入する際は、デメリットも考慮して検討しましょう
保留地を購入する際は、デメリットも考慮して検討しましょう

保留地の購入には多くのメリットがありますが、気をつけるべきデメリットも存在します。ここからは、保留地を購入するデメリットを詳しく見ていきましょう。

住宅ローンが利用できない可能性がある

保留地は登記が完了するまで抵当権を設定できないため、購入時に住宅ローンが利用できないケースがあります。一般的な金融機関では購入する土地を担保とするため、保留地に対しては融資をおこなっていません。

ただし、事業施行者と提携した一部の金融機関では住宅ローンに対応しているケースがあります。そのため、保留地だからといって住宅ローンを諦めるのではなく、事前に事業者へ利用できる金融機関を確認しておきましょう。

所有権移転登記が遅れる

保留地は事業完了まで登記簿が作成されないため、所有権移転登記が遅れる可能性があります。一般の宅地の場合は購入後すぐに所有権移転登記ができますが、保留地の場合は区画整理事業が終了するまで待つ必要があります。

区画整理事業は事業完了まで数年かかる場合もあり、その間は正式な所有権を取得できない点を理解しておきましょう。

売却が難しい場合がある

保留地は、売却が難しいケースがあります。先述したとおり、住宅ローンが利用できない点や、区画整理事業の完了まで所有権移転登記ができない点がハードルとなっているためです。

なかには、不動産ポータルサイトで「保留地」と明記されていると、それだけで候補から外す方もいます。保留地は売却に時間がかかることを理解したうえで購入を検討しましょう。

固定資産税が課税される

保留地を購入すると、土地の引き渡しを受けた翌年から固定資産税や都市計画税が課税されます。また、保留地に建物を建てた場合は、建物に対する固定資産税と都市計画税もかかります。

固定資産税が課税されるのは保留地に限ったことではありませんが、保留地を購入する際は購入後の固定資産税にも気をつけて資金計画を立てましょう。

保留地を購入する際の注意点

保留地を購入する際に気を付けるべき点を解説します
保留地を購入する際に気を付けるべき点を解説します

保留地を購入する際は、一般の宅地とは違うポイントに気をつける必要があります。ここからは、保留地を購入する際の注意点を解説します。

住宅ローンの利用可否を事前に確認する

保留地の購入を検討する際は、住宅ローンが利用できる金融機関を事前に確認する必要があります。保留地は登記が完了していないため、抵当権を設定できず、多くの金融機関で融資の対象外となっています。

ただし、事業施行者と提携している特定の金融機関であれば住宅ローンが組める可能性があるため、購入前に必ず事業者に確認しましょう。

都市計画・用途地域を確認する

保留地を購入する際は、用途地域や都市計画による建築制限を確認しましょう。用途地域と都市計画によって建てられる建物の種類や高さなどが定められているため、事前に確認しておかなければ希望どおりの建物が建てられないかもしれません。

例えば、第一種住居地域では、道路斜線制限や隣地斜線制限が定められており、建築物の高さが制限されています。用途地域と都市計画は、市区町村の都市計画課や事業施行者に問い合わせて確認しましょう。

区画整理が完了するまで地目変更できない

保留地は、区画整理が完了するまで地目変更ができません。保留地の地目が登記簿上で「農地」や「山林」と記載されているケースもあり、売買や建築で追加の手続きが必要になることがあります。

例えば、区画整理区域内で地目が「農地」である住宅の場合、売買するたびに農地転用届が必要です。このように、保留地の売買は区画整理が完了するまで手続きが複雑になるケースがあります。

以下の記事では、地目を詳しく解説しています。地目の種類や調べ方を詳しく知りたい方は、チェックしてみてください。

将来的な価格変動リスクを考慮する

保留地を購入する際は、将来的な価格変動リスクにも気をつけなければなりません。保留地は将来にわたり価格が上昇する可能性がありますが、区画整理事業が完了したあとの地域環境や市場動向によっては資産価値が下落することも考えられます。

もし、区画整理街区の施設の整備や交通アクセスの改善が期待どおりに進まない場合、価格が下がることがあります。保留地を理由に資産価値が上昇するわけでなないため、価格変動リスクを考慮して購入を検討しましょう。

保留地を売却する際の注意点

保留地は売却時にも注意点があります
保留地は売却時にも注意点があります

保留地の購入と同様に、売却時にも注意点があります。ここでは、売却時に注意すべきポイントを具体的に解説します。

仮換地指定前の場合は保留地であることを明示する

仮換地の指定前に売却する場合、保留地であることを明確に伝える必要があります。売却物件が保留地であることを事前に伝えなければ、後々買主とトラブルになるおそれがあるためです。

明示する方法として、不動産ポータルサイトや重要事項説明書に「保留地」と明記することが挙げられます。保留地の売却時は、不動産会社がこれらの対応をおこなっているかをしっかり確認しましょう。

工事期間中は土地の売買が禁止されることがある

保留地は、工事期間中に売買が制限される場合があります。これは、区画整理事業中に土地の位置や形状が変更されたり、工事後に建物高さや最低限度面積などの制限が変わったりする可能性があるためです。
保留地の売却を検討する際は、事前に工事スケジュールを確認し、売却できるタイミングを把握しておきましょう。

売却手続きがスムーズに進まないことがある

保留地は、一般の宅地よりも売却手続きに時間がかかる場合があります。区画整理事業完了前に所有権移転ができないことに、購入希望者が不安を感じるためです。さらに、一部の金融機関でしか住宅ローンが組めないため、検討の対象から外れることがあります。
保留地は、売却がスムーズに進まない可能性があることを念頭に入れておきましょう。

賦課金が発生する可能性がある

保留地では、賦課金が発生することも考えられます。賦課金とは、区画整理事業費用の不足分を補うために組合員へ課される費用です。保留地の購入者も区画整理事業の組合員になるため、賦課金の対象者になります。

賦課金は、保留地の販売が進まなかったり、なんらかの要因で事業継続が困難になったりした場合に発生する可能性があります。保留地を売却する際は、購入者にも賦課金が課される可能性があることを事前に説明しておくようにしましょう。

保留地の売却実績がある不動産会社を選ぶ

保留地の売却では、保留地に関する専門知識と売却実績が豊富な不動産会社を選びましょう。保留地の売却は一般の宅地取引と必要書類や手続きが変わるケースが多いためです。

保留地の売却実績のない不動産会社に売却を依頼すると、手続き上のミスやトラブルが発生するおそれがあります。それにより買主が不信感を抱き、最悪の場合は購入をキャンセルされることもあるでしょう。そのため、保留地の売却を依頼する場合は、必ず不動産会社に売却実績を確認してください。

保留地に関するまとめ

最後に、保留地に関するポイントをまとめていきます。

保留地とは?

保留地とは、土地区画整理事業の費用を捻出するために整備された土地です。保留地は土地区画整理事業の資金源としての役割を担っており、保留地の売却代金が土地区画整理事業の資金として利用されます。

保留地を購入するメリットは?

保留地は、一般の宅地に比べて安く購入できる可能性があります。さらに、区画整理された住環境のよいエリアに住めたり、購入時に仲介手数料がかからなかったりするメリットもあります。また、道路や公共施設が整備されるため、将来的にエリアの価格上昇も期待できるでしょう。

保留地を購入する際の注意点は?

保留地を購入する際は、まず住宅ローンが利用できるかを確認しましょう。また、希望する建物が建てられるかを把握するためにも、事前に都市計画や用途地域も調べておきましょう。さらに、区画整理事業後の地域環境や市場動向によって、資産価値が下落する可能性があることも考慮する必要があります。

今回は、区画整理事業で整備される保留地の解説をしました。保留地には一般の宅地や換地とは違った性質があるため、保留地の売買を検討する際はその違いを十分理解する必要があります。この記事で紹介した保留地を購入するメリット・デメリットや売却の注意点を参考にして、保留地の売買を成功させましょう。

杉山 明熙

執筆者

杉山 明熙

不動産特化ライター

元不動産営業のWebライター。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、賃貸不動産経営管理士。12年間の不動産営業を経験後、不動産特化ライターとして大手メディアや不動産会社のオウンドメディアで、住まいや不動産投資に関する記事を多く提供している。不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

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