このページの一番上へ

注文住宅の契約後キャンセルできる?違約金の目安とトラブルの回避方法を解説

注文住宅の契約後にキャンセルは可能か解説します
注文住宅の手続きを進めるなかで「途中でキャンセルはできるのか」「違約金はどれくらい必要なのか」と疑問に思う方も多いでしょう。人によっては、住宅ローンが通らなかったり、不測の事態が起きたりして注文住宅をキャンセルせざるを得ないケースがあります。

そこで今回は、注文住宅の契約後におこなうキャンセルや違約金をテーマに解説をします。さらに、契約時に気をつけるポイントも紹介するので、注文住宅を進めるなかで不安を抱えている方は、参考にしてみてください。

注文住宅は契約後にキャンセルできる?

注文住宅は契約後にキャンセルできますが、想定外の違約金などのトラブルにも注意が必要です
注文住宅は契約後にキャンセルできますが、想定外の違約金などのトラブルにも注意が必要です

結論からお伝えすると、注文住宅は契約後のどの段階でもキャンセルが可能です。ただし、契約や手続きが進むほど違約金が高くなる傾向があるため、契約後のキャンセルは施主にとって負担が大きくなります。

注文住宅の手続きを進めていくなかで、担当者の対応に不信感を抱いたり、家づくりの途中で不測の事態が生じて「契約をキャンセルしたい」と感じることもあるでしょう。契約後のキャンセルで返金対応や高額な違約金が発生するトラブルにならないためにも、ここから紹介する内容を参考に家づくりを進めていきましょう。

注文住宅の契約キャンセルで違約金がかかりやすいタイミング

注文住宅の手続きを進めるにあたり、違約金がかかりやすいタイミングには主に次の4つが挙げられます。

  • 住宅会社との契約後
  • 工事請負契約の締結後
  • 部材を発注し着工する直前
  • 注文住宅の建設途中

それぞれがどのようなタイミングなのかを解説します。

住宅会社との契約後

住宅会社との契約後にキャンセルをすると、違約金がかかる可能性があります。ただし、あくまで工事請負契約の前の契約のため、契約直後のまったく準備が進んでいない状況であれば、違約金が発生しないケースもあります。トラブルを防ぐためには、どのタイミングからキャンセル料がかかるのかを契約前に確認しておくことが重要です。

工事請負契約の締結後

違約金がかかる主なケースの2つ目は、工事請負契約を結んだあとのキャンセルです。工事請負契約とは、施主が建築会社に家の建築工事を発注し建築会社が受注する契約のことで、いわゆる「本契約」と呼ばれます。工事請負契約では、工事内容や請負代金の額、工事完成の時期や違約金・損害賠償金の内容などが定められています。

部材を発注し着工する直前

家の建築工事に必要な部材や人員の手配などが完了し、着工する直前にキャンセルすると違約金がかかります。家を建築するためには、建材や住宅設備などをあらかじめ発注しなければなりません。その費用は建築会社が立て替えています。そのため、この段階でのキャンセルは施主の負担でのキャンセルとなり、違約金を支払う必要があります。

注文住宅の建設途中

家の建築工事が始まったあとにキャンセルをする場合も違約金がかかります。ここは注文住宅の最終段階にあたるため、もっとも高額な違約金が発生します。着工後のキャンセルは請負代金相当額の違約金がかかるおそれがあるため、費用負担を考慮して慎重に判断することが必要です。

注文住宅を契約後にキャンセルした時の違約金

注文住宅を契約後にキャンセルするとどのくらいの金額がかかるのでしょうか
注文住宅を契約後にキャンセルするとどのくらいの金額がかかるのでしょうか

家の工事請負契約を締結したあとにキャンセルした場合、どれくらいの違約金がかかるのでしょうか。

注文住宅の仮契約後にキャンセルした際の違約金

注文住宅の建築では、依頼する建築会社を1社に絞った段階で、正式な契約を結ぶ前に仮契約を締結します。仮契約を結ぶ際は、申込金として10万円ほど支払うのが一般的です。

もしこの段階でキャンセルをおこなう場合、建築に向けた図面作成や測量などが始まっていると、申込金が返ってこないおそれがあります。ただし、建築会社のなかには仮契約の当日や翌日であれば違約金は不要としているところもあります。

注文住宅の本契約後にキャンセルした際の違約金

注文住宅の本契約とは工事請負契約のことを指し、この段階で建築会社と正式な契約を締結します。

本契約時には、工事請負代金の一部を支払う手付金を支払うのが一般的です。締結後は手付金を放棄することでキャンセルできます。手付金の金額は、請負代金の5~10%と設定されるケースがほとんどです。3,000万円の請負代金であれば、手付金は150万円~300万円程度が相場です。

さらに、建築会社によっては、手付金とは別に3~10%程度の違約金を設定しているケースがあります。本契約後のキャンセルは、手付金と合計すると高額な資金を失うことになります。

注文住宅の工事前にキャンセルした際の違約金

家の着工前にキャンセルをした場合は、違約金や手付金の放棄に加え、それまでにかかった費用も支払わなければなりません。例えば、土地の測量費や建物の設計費、発注済みの設備・建材費などが挙げられます。

総額の費用はキャンセルのタイミングや建物規模によって変動しますが、数十万円から数百万円の規模になることが考えられます。やむを得ず着工前にキャンセルする場合は、担当者に進捗状況を確認したうえで判断することを心がけましょう。

注文住宅の工事中にキャンセルした際の違約金

家の建築工事が始まったあとにキャンセルした場合、手付金や違約金に加え、工事が完了している部分の建築費や解体費がかかることが一般的です。建築の進捗によっては1,000万円以上となる可能性もあるため、家を完成させてしまったほうが安く済む場合もあるでしょう。

この段階でのキャンセルは施主にとって膨大な費用負担が発生するため、他の方法も検討してみてください。例えば、完成後に売却すれば新築物件なので、高額で買い取ってもらえる可能性があります。

注文住宅の契約後のキャンセルでクーリングオフは適用される?

注文住宅の契約を解除するために、クーリングオフ制度を利用できる可能性があります
注文住宅の契約を解除するために、クーリングオフ制度を利用できる可能性があります

注文住宅では、条件を満たせばクーリングオフを利用してキャンセルができます。クーリングオフとは、建築会社と契約を締結したあとでも、一定期間内であれば契約を解約できる制度です。

ここでは、クーリングオフの適用条件や手続き方法を解説します。

クーリングオフが適用される条件

注文住宅の契約でクーリングオフが適用される条件は、主に以下の3点です。

  • 施主が宅地建物取引業者(不動産会社)ではない
  • 建築会社の事務所(店舗や住宅展示場など)以外で申し込んだ
  • クーリングオフを書面で告知されて8日以内である

クーリングオフは消費者保護を目的とした制度のため、不動産のプロである宅地建物取引業者(不動産会社)は該当しません。また、建築会社の事務所以外での申し込みは「冷静な判断ができない状態」であるとして、クーリングオフの対象になります。ただし、申込者が担当者を呼び出して自宅などで契約した場合は、契約の意思があったと認められ、クーリングオフの対象にはならないため注意しましょう。

最後に、書面でクーリングオフの説明を受けてから8日以内に手続きを進めなければいけません。もしクーリングオフの説明を一切受けていない場合は、8日が経過した以降も適用される可能性があるため、消費者センターへ相談してみるとよいでしょう。

クーリングオフが適用されない場合

クーリングオフが適用されないケースとして、主に次の2点が挙げられます。

  • 建築会社の事務所(店舗や住宅展示場など)で申し込みをした
  • 施主が指定した自宅または勤務先で契約・申し込みをした

クーリングオフは、訪問販売や電話勧誘で契約した場合が適用範囲です。建築会社の店舗や住宅展示場、案内所などで申し込みをした場合、クーリングオフは適用されません。つまり、建築会社の店舗や住宅展示場、案内所などで申し込みをすると、どの場所で契約をおこなってもクーリングオフができなくなります。さらに、契約・申し込みをおこなう場所を自らの自宅や勤務先に施主自らが指定した場合もクーリングオフの対象外です。

クーリングオフの手続き方法

クーリングオフを利用する場合は、次の流れで進めてみてください。

  • STEP 1契約書のクーリングオフに関する内容を確認する
  • STEP 2消費生活センターへ相談する
  • STEP 3内容証明郵便で契約解除通知書を送付する

多くの場合、クーリングオフの説明は工事請負契約時におこなわれます。まず、その際に説明を受けた内容を契約書で確認しましょう。その後、もしクーリングオフの方法がいまいちわからない場合は、消費生活センターへ相談しましょう。消費生活センターは、クーリングオフの方法はもちろん、相談にも乗ってくれるので、キャンセルで悩んでいる場合は連絡してみることをおすすめします。

最後に、クーリングオフによる解約通知は、必ず書面で通知する必要があります。そのため、説明を受けた8日以内に権利を行使したことが客観的にわかるように、日付が証明できる内容証明郵便を利用するのがおすすめです。内容証明郵便とは、郵便の内容や日付を郵便局が証明してくれるサービスです。

上記の流れでクーリングオフをおこなえば、契約が解除され支払い済みの申込金や手付金などが返還されます。確実に解約できるよう、クーリングオフを利用する場合は、消費生活センターをはじめ宅地建物取引業保証協会や弁護士などの専門家に相談しながら冷静に行動することが重要です。

住宅ローンの特約解除も知っておこう

注文住宅の解約には、クーリングオフの他に住宅ローンの特約解除も挙げられます。一般的にローン特約と呼ばれており、注文住宅を購入するために利用する住宅ローンの全額または一部が承認されない場合に、契約が白紙解約される特約です。

ローン特約による解除には違約金や手付金の放棄は発生しないため、もっともリスクの低い解約方法です。住宅ローンを利用する際は、万が一の事態を想定したうえで、必ず契約内容に盛り込んでもらうようにしましょう。

注文住宅の契約後のキャンセルでトラブルを回避する方法

注文住宅の手続きを進めるにあたって、不測の事態により契約をキャンセルせざるを得ないケースも考えられます。キャンセルによるトラブルを回避するためには、次の3点を意識しましょう。

  • 契約書類の内容を詳細まで確認する
  • 建築費用は出来高払いに設定する
  • 弁護士・消費者センター・宅地建物取引業保証協会に相談する

ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。

契約書類の内容を詳細まで確認する

キャンセルによるトラブルを回避する1つ目の方法は、仮契約時や工事請負契約時の契約書の内容を細かく確認することです。契約内容によっては、法で定められた上限を超える違約金が設定されていたり、アフター保証の記載がなかったりするかもしれません。

工事請負契約書は、設計図書や契約時の見積もりなどとセットになっていることがほとんどのため、条文の確認が疎かになりがちです。細かい部分まで契約内容に目をとおして、少しでもおかしいと感じた場合は、必ず担当者に確認するようにしてください。

建築費用は出来高払いに設定する

キャンセルによるトラブルを回避するためには、家が完成した分だけ建築費用を支払う、出来高払いに設定すると安心です。出来高払いにすることで、万が一キャンセルになった場合に、着手していない工事費まで負担しなくても済みます。

また、建築途中に建築会社が倒産してしまった場合のリスクヘッジにもなります。なるべく多くの事態を想定して、トラブルを未然に防ぐ対策を講じることが重要です。

弁護士・消費者センター・宅地建物取引業保証協会に相談する

トラブルを防ぐためにも専門家に相談することもポイントです
トラブルを防ぐためにも専門家に相談することもポイントです

契約解除や違約金に関して建築会社とトラブルになりそうな場合は、専門家に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。契約には法律が絡んでくるケースが多いため、自分だけで問題を抱え込んでしまうと冷静な判断をするのが難しくなります。

建築会社に対して損害賠償請求や返金請求など、法的措置を起こしたい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。また、消費者センターでは消費生活全般に関する相談に応じてくれます。些細なことでも相談できるのが特徴です。さらに、各都道府県に設置された宅地建物取引業保証協会に相談するのもおすすめです。不動産の専門家からアドバイスを受けられます。

それぞれの専門家から法に基づいた冷静なアドバイスを受けることで、トラブルの解決に向けて適切な行動を起こせるでしょう。

まとめ

注文住宅を契約後にキャンセルする際のポイントをまとめます。

注文住宅の契約後にキャンセルした場合の違約金は?

仮契約のあとにキャンセルした場合、申込金が返金されない可能性があります。また、本契約締結後のキャンセルは、タイミングによっては手付金の放棄のみで解約できますが、設計や部材の発注が進んでいると追加で違約金がかかります。着工後は、手付金や違約金に加え、建築した分の費用や解体費など、膨大な費用負担があることに注意しましょう。

注文住宅の契約後のキャンセルでクーリングオフが適用される条件は?

まず「施主が不動産会社ではなく一般の消費者であること」が1つ目の条件です。さらに「建築会社の店舗や住宅展示場などではない場所での申し込みであること」や「クーリングオフを書面で告知されて8日以内であること」などが主な条件となります。

注文住宅の契約後のキャンセルでトラブルを回避するには?

工事請負契約書に記載されている内容を詳しく確認しましょう。また、建築した分だけ代金を支払う、出来高払いに設定することも有効的な方法です。トラブルに発展しそうな場合は、弁護士や消費者センター、宅地建物取引業保証協会に相談すると、適切なアドバイスがもらえて冷静に対処できるでしょう。

この記事では、注文住宅の契約後にキャンセルできるのかを解説しました。注文住宅では、契約後でもキャンセルが可能ですが、ステップが進むにつれて違約金の額が増加する傾向にあります。理想のマイホーム建築で後悔しないためにも、この記事を参考に対策を立てたうえで家づくりに臨みましょう。

杉山 明熙

執筆者

杉山 明熙

不動産特化ライター

元不動産営業のWebライター。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、賃貸不動産経営管理士。12年間の不動産営業を経験後、不動産特化ライターとして大手メディアや不動産会社のオウンドメディアで、住まいや不動産投資に関する記事を多く提供している。不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る