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矩計図とは?断面図との違いや見方、確認するポイントをわかりやすく解説

マイホームの購入を検討し始めた時、「せっかくの注文住宅、見えない部分の手抜き工事や施工ミスがないか」と不安を抱える方も多いのではないでしょうか。一生に一度の家づくりだからこそ、壁の中や床下など見えない部分の品質や、天井高にまでこだわりたいと考えるのは当然のことです。

本記事では家づくりの不安を解消するために、矩計図(かなばかりず)の解説をします。断面図との違いや具体的な見方、チェックするべきポイントを詳しくご説明します。

理想のマイホームを手に入れたい方は、最後まで読んで参考にしてください。

矩計図(かなばかりず)とは?

矩計図(かなばかりず)は家づくりに欠かせない図面です
矩計図(かなばかりず)は家づくりに欠かせない図面です

矩計図(かなばかりず)とは、建物を垂直に切断し、基礎から軒先までの高さ関係や使用した部材を詳細に記した図面です。部屋の配置を示す平面図(間取り図)とは異なり、矩計図は縦方向の空間構成や、壁や床の内部にある構造の仕組みが記載されています。

具体的には、天井高や窓の取り付け位置、断熱材の厚みや基礎の深さなど、家の性能を左右する仕様が細かく指定されています。現場の職人が設計とおりに施工するための指示書としてはもちろん、施主にとっては家の中身が正しく作られているかを確認する役割も果たす、家づくりに欠かせない図面です。

矩計図でわかること

矩計図でわかることについて解説します
矩計図でわかることについて解説します

ここでは、矩計図でどのような情報が読み取れるのかを、5つのポイントに分けて解説します。

建物の高さ・寸法

平面図では部屋の広さは把握できますが、空間の立体的な高さ関係までは読み取れません。しかし、矩計図を見れば、天井高や基礎の深さ、窓の取り付け位置など、建物各部の正確な高さが知れます。

例えば、天井高が2400mmなのか2500mmなのか、ロフトの高さが法律の範囲内に収まっているかの情報を把握できます。

材料・仕上げ

建物の構造材や内外装の仕上げ材に関する情報も、矩計図から読み取れます。矩計図には、屋根、外壁、床、天井に使われる材料の名称や厚み、下地の種類まで具体的に指定されています。

例えば、外壁材の下地に防水シートが適切に施工されるか、床のフローリングの下にどのような遮音材が使われているかの、見えない部分の仕様まで確認することが可能です。

設備

矩計図には、換気扇のダクト経路や配管スペース、建物内部の設備に関する情報も記載されています。そのため、2階にトイレや洗面所を設置する場合、排水管を通すためのパイプスペースが構造の骨組みと干渉しないように計画されているかを、図面上で判断できます。

また、エアコンの設置位置や換気口の高さも確認できるため、室外機やフードが外観デザインを損なわないか、近隣への排気の影響がないかを事前に検討することも可能です。

住宅性能

矩計図には断熱材の種類や厚み、施工範囲が記載されているため、住宅性能の良し悪しを判断できます。

例えば「天井の断熱材が壁の断熱材と隙間なく連続しているか」「基礎断熱の折り返し部分が十分に確保されているか」など、高気密・高断熱住宅に欠かせない施工ポイントが確認できます。矩計図は、家の性能にこだわる施主にとって、欠かせない図面です。

開口部

矩計図を見れば、開口部の高さや納まりの詳細が確認できます。矩計図は、窓の高さが数値で示されているため、家具を置いた際に窓と干渉しないか、外からの視線が気にならない高さかなど、シミュレーションが可能です。

また、窓枠と外壁の防水処理の方法も記載されており、雨漏りのリスクが少ない施工かどうかも確認できます。さらに、庇(ひさし)の出幅と窓の位置関係もわかるため、どれだけ日差しを遮ることができるのかもチェックできます。

矩計図の役割

矩計図の役割について解説します
矩計図の役割について解説します

続いて、矩計図が家の建築でどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。

建物の品質の可視化

矩計図は、見えない部分の品質を客観的に証明できます。家が完成すると、壁の中の断熱材や床下の構造を目視で確認できません。

しかし、矩計図には、どのような仕様で施工されるべきかが詳細に記録されているため、施主は「見えない部分も設計とおりに作られる」と安心感を得られるでしょう。

特に、耐震性や断熱性などの住宅性能は、使用する部材の厚みや施工方法によって異なります。矩計図はそれらを数値として明記することで、建物の品質を可視化します。

正確な施工の指示と品質確保

矩計図は、現場の職人が正確に作業を進めるための指示書としても役立ちます。

矩計図がなければ、現場の判断で細かい納まり(部材同士の接合方法)や高さが曖昧になることがあります。これにより、品質のバラつきが生じやすくなり、施工ミスにつながるケースもあるかもしれません。

しかし、矩計図があれば、細かい寸法がすべて明確な数値で示されているため、品質が安定します。

リフォーム・メンテナンス時のトラブル防止

矩計図は、将来のリフォームやメンテナンスの防止に役立ちます。家を建てて数十年後にリフォームをする際、矩計図があれば、壁を壊さなくても内部の構造や下地の位置を把握できます。

例えば、「この壁は撤去しても構造上問題ないか」「床下に新しい配管を通せるスペースはあるか」の判断が図面上で可能になり、無駄な解体費用を支払わなくて済むでしょう。一方で、矩計図がないと、工事を始めてから「予想外の柱が出てきた」とトラブルが起こり、計画とおりにリフォームやメンテナンスが進まない恐れがあります。

矩計図と断面図との違い

矩計図と断面図の違いについて解説します
矩計図と断面図の違いについて解説します

矩計図と断面図の大きな違いは、記載されている情報量です。どちらも建物を縦に切った図面ですが、断面図が建物の形状や部屋の配置などの全体像を示すのに対し、矩計図はその一部を拡大し、施工に必要となる詳細な仕様を伝える役割を担っています。

例えば、縮尺1/100程度の断面図では、部屋の並びや大まかな寸法しかわかりません。一方で、1/20~1/50で描かれる矩計図には、壁のなかにある断熱材の種類や厚み、基礎の構造、窓枠の防水処理の方法までが事細かに記載されています。つまり、断面図は家の形を知るための図面で、矩計図は家を正しく作るための図面です。

矩計図を含む図面の種類

矩計図を含む図面の種類を紹介します
矩計図を含む図面の種類を紹介します

家を建てる際、矩計図以外にも多くの図面が作成されます。ここからは、それぞれの図面が何を示すのかを見ていきましょう。

意匠図

意匠図は、建物のデザインや形状、間取りなどの目に見える部分が記載された図面一式を指し、矩計図もここに含まれます。施主との打ち合わせでもっとも頻繁に使われるのがこの意匠図です。

代表的なものには、部屋の配置を示す平面図や外観のデザインを表す立面図、建物を縦に切って高さ関係を示す断面図が挙げられます。矩計図は、意匠図のなかでも特に詳細な情報を伝える図面として位置付けられています。

構造図

構造図は、柱や梁、基礎などの建物を支える骨組みの詳細を示した図面一式です。地震や台風に耐えるための構造計算に基づいて作成され、どの位置にどの太さの柱を立てるか、基礎の鉄筋をどのように組むかが記されています。

代表的なものには、基礎の配置を示す「基礎伏図(きそふせず)」や、梁の架け方を示す「梁伏図(はりふせず)」があります。

設備図

設備図は、電気、ガス、水道、空調などのライフラインの配線や配管経路を示した図面です。具体的には、コンセントや照明スイッチの位置を示す電気設備図や、キッチンやトイレへの給排水ルートを示す給排水衛生設備図、換気扇の位置や換気能力が記載された空調換気設備図があります。

計画・使用に関する図面

家を建てる際は、建物の形だけでなく、敷地全体の計画や材料の規格、設備の仕様が記載された図面も必要です。

例えば、敷地内での建物の配置や道路との関係を示す配置図があります。また、床・壁・天井・幅木の仕上げ材料や塗装の種類を部屋ごとに一覧化した仕上表、設備や材料の規格を定めた標準仕様書が挙げられます。

矩計図の見方

矩計図の見方について解説します
矩計図の見方について解説します

矩計図を見る際は、建物の見えない部分が、快適な家づくりに合った仕様になっているかをチェックしましょう。矩計図は専門的な図面のため一見難しそうに見えますが、以下のポイントを重点的にチェックしてみてください。

  • 天井高が希望とおり確保されているか
  • 基礎の深さは十分か
  • 断熱材が設計とおりの厚みか
  • サッシ(窓枠)周辺の防水処理が適切か

上記は、建物の性能や居心地に大きく影響します。そのため、矩計図をただ眺めるのではなく、建築士や設計士の専門家と協力して、理想の性能が図面上でも約束されているかを一緒に確認することが重要です。

矩計図を確認するポイント

矩計図を確認するポイントを解説します
矩計図を確認するポイントを解説します

矩計図は専門的な情報が多いため、すべての数値をチェックするのはなかなか難しいでしょう。ここでは6つの項目に絞って、確認するべきポイントを解説します。

基礎・構造

矩計図では、家の土台となる基礎や構造の詳細を確認しましょう。

具体的には、GL(地盤面)から1階の床までの高さが十分に確保されているか、基礎の立ち上がり幅や底盤の厚みが規定に沿っているかをチェックします。これにより、床下の通気性が確保され、湿気によるカビやシロアリ被害のリスクが軽減されます。

また、基礎と土台の間に設置される基礎パッキンの種類や、アンカーボルト(基礎と建物をつなぐ金物)の配置間隔を見ることで、耐震性を確認することも可能です。

断熱・機密

快適に過ごせる家を建てるために、断熱材と気密施工の詳細もチェックしましょう。

矩計図には、壁、床、屋根のそれぞれに使われる断熱材の種類と厚みが記載されています。具体的には、希望した断熱材の種類と厚みかどうか、断熱材が途切れずに連続して使われているかを調べます。

また、矩計図には気密シートの施工位置も示されているため、湿気が壁内に入り込んで結露を起こさない構造になっているかを確認しましょう。湿気が壁に入りこまない構造になっていれば、家の耐久性を大きく左右する「壁内結露」のリスクを軽減できます。

天井・床

各部屋の天井高や床の仕上げ構造も重要なチェックポイントです。天井高はCH(シーリングハイ)の記号で示され、一般的な2400mmに対して、どれくらいの高さになっているのかを把握します。

数値だけではイメージしづらいため、今住んでいる家の天井高を測って比較すると、より具体的な空間の広がりが想像できます。

床は、フローリングの下にどのような遮音材や断熱材が入っているか、床暖房のパネルがどの範囲に敷設されるかをチェックしてください。そうすることで、冬場の底冷えや床暖房の効きムラを防止できるでしょう。

屋根・軒・外壁

建物を雨風から守る屋根・軒・外壁も、矩計図でしっかりチェックする必要があります。

屋根の勾配や軒の出(壁から屋根が飛び出している長さ)は、雨水の処理や日当たりに影響を及ぼします。また、屋根材の下に敷く防水シートの種類も記載されているため、雨漏りへの耐久性も判断できるでしょう。

外壁の通気層(空気が流れる隙間)が確保されているかを調べてください。通気層が確保されていれば、壁内の湿気が適切に外部に排出され、構造材の劣化を防止できます。

窓・開口部

窓やドアの取り付け位置と、その周辺の納まりも確認しましょう。

窓の高さは、床からの取り付け位置と窓自体の高さで記載されています。家具を置いた時に窓と干渉しないか、外からの視線を遮れるかどうかなど、生活する上での使い勝手をシミュレーションしてください。

また、サッシの種類も明記されているため、断熱性能に適合しているかを調べられます。さらに、雨水が侵入しやすい場所(バルコニーや玄関ドアの下枠部分)の立ち上がり寸法が十分に取られているかも、浸水事故を防ぐためのチェックポイントです。

設備

矩計図で設備関係も確認しましょう。

矩計図では、天井裏や床下の空間寸法がわかるため、換気ダクトや給排水管を通すスペースが十分に確保されているかを調べられます。配管やダクトが建物の構造と干渉していなければ、将来的にメンテナンスがしやすくなります。

特に2階に水回りを設置する場合は、排水音への配慮として配管に防音対策が施されているか、パイプスペースの位置が寝室の枕元に来ていないかを、チェックしましょう。また、エアコンの冷媒管を壁のなかに配管する場合、そのルートが断熱材を干渉させないように計画されているかも重要なポイントです。

まとめ

最後に、矩計図の重要なポイントをQ&A形式で振り返ります。

矩計図とは?

矩計図(かなばかりず)とは、建物を垂直に切断し、基礎から軒先までの高さや部材の詳細を示した図面です。平面図ではわからない、天井高や窓の取り付け位置、壁の中の断熱構造が一目でわかります。

矩計図の役割は?

矩計図には、見えない部分の性能を確認する役割があります。現場で職人が設計どおりに施工するための指示書としても機能します。さらに、リフォーム時に壁を壊さずに構造を把握できるため、メンテナンスの際にも欠かせない図面です。

矩計図と断面図の違いは?

矩計図と断面図の主な違いは、記載されている情報量です。断面図は建物全体の形や部屋の配置を示すために1/100程度で描かれますが、矩計図は1/20~1/50程度に拡大され、断熱材の厚みや防水の納まりまで詳細に記されています。つまり、断面図は全体像を知る図面として、矩計図は施工のための詳細図面として使い分けられます。

矩計図は専門的な情報が記載されている図面ですが、ポイントを押さえて確認することで、より安全で快適な家づくりが可能になります。家の着工前にしっかりと内容をチェックし、納得のいくマイホームを実現させましょう。

杉山 明熙

執筆者

杉山 明熙

不動産特化ライター

元不動産営業のWebライター。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、賃貸不動産経営管理士。12年間の不動産営業を経験後、不動産特化ライターとして大手メディアや不動産会社のオウンドメディアで、住まいや不動産投資に関する記事を多く提供している。不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

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