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断熱等級5では寒い?等級6・7との違いや快適な家づくりのポイントを徹底解説

断熱等級5の住まいでも寒いと感じるのはなぜでしょうか
断熱等級5は住宅の断熱性能を示す基準で、冷暖房の効率化やランニングコストの低減、快適性向上などの期待から注目を集めています。しかし、実際に暮らしてみると「期待していたほど暖かくない」「冬場は寒い」と感じることもあるようです。

そこで本記事では、断熱等級5が設けられた背景と性能の概要を整理したうえで、寒さを感じる原因を解説します。等級を上げた時の比較や、快適な住まいづくりのポイントも解説しているため、これから家づくりを検討する方はぜひ参考にしてください。

記事の目次

断熱等級とは?

断熱等級とはどのような基準でしょうか
断熱等級とはどのような基準でしょうか

「断熱等級」とは住宅の断熱性能を示す基準で、等級が高いほど断熱性能・省エネ性能も高くなります。ここでは、断熱等級の基準について詳しく解説します。

断熱等級(1~7)

断熱等級とは、住宅の「どれだけ熱を逃しにくいか(断熱性能)」を示す国の基準です。等級が高いほど外気温の影響を受けにくく、冷暖房効率が高い住宅ととらえましょう。等級は壁・屋根・窓などの断熱材性能や仕様に基づいて決まり、省エネ性能を客観的に評価する指標となります。

現在の基準では等級1〜7があり、数字が大きいほど性能が高く、光熱費削減・快適性向上・結露リスク低減などの効果を期待できるでしょう。下表は等級とそれに対応する内容です。

等級 内容
熱損失などのより著しい削減のための対策が講じられている
熱損失などの著しい削減のための対策が講じられている
熱損失などのより大きな削減のための対策が講じられている
熱損失などの大きな削減のための対策(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じられている
熱損失などの一定程度の削減のための対策が講じられている
熱損失の小さな削減のための対策が講じられている
その他

出典:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」(PDF)

断熱等級5は2022年にこれまでの最高等級4超える基準として新設され、同年10月からは断熱等級6・7も導入されました。断熱等級5はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に必要な水準とほぼ同等です。従来の等級4よりも高い気密・断熱性能を求められ、外皮平均熱貫流率(UA値)がより厳しく設定されています。室温が10度を下回らない断熱性を確保していますが、未暖房の部屋や廊下では寒さを感じるかもしれません。

なお今後は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた施策の一環で、2030年にはすべての新築住宅で等級5が義務化される予定です。2025年度からは等級4以上が義務化されているため、将来性を考えると等級5以上の確保が望ましいでしょう。

断熱等級とUA値・ηAC値の関係

住宅の断熱性能は、 UA値(外皮平均熱貫流率)と ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)を算出して各等級にあてはめます。これらは、住宅の省エネ性能を評価する重要な指標です。

  • UA値:住宅の内側から外部へ「どれだけ熱が逃げやすいか」を示す
  • ηAC値:夏場に「どれだけ日射熱を室内に取り込んでしまうか」を示す

UA値は、家全体(外皮:壁・屋根・床・窓など)から「どれだけ熱が逃げやすいか」を示す数値で、値が小さいほど断熱性能が高いです。住宅の外皮面積で熱の逃げやすさを平均化したもので、同じ断熱材を使っていても、窓の大きさ・性能・形状によって大きく変わります。UA値が小さい住宅ほど冬は暖かさを保ちやすく、夏は外の熱を侵入させにくくなるため、冷暖房費の削減に直結するでしょう。

一方、ηAC値は夏場に「どれだけ日射熱を室内に取り込んでしまうか」を示す指標で、こちらも値が小さいほど夏の暑さを抑える性能が高くなります。直射日光が入りやすい大きな窓や、西日を受けやすい開口部が多い住宅では、この値が大きくなりやすく、冷房負荷が増えるでしょう。ηAC値に大きく影響する部分は、窓の遮熱性能や庇(ひさし)の設計、方位計画です。UA値とηAC値をバランスよく抑えると、四季を通じて快適で省エネな住まいづくりができます。

地域区分ごとに変わる断熱基準

日本の断熱基準は、全国を細かく8つの「地域区分」に分け、地域ごとの気候差に合わせて基準が変わる仕組みです。これは、北海道のように冬の寒さが厳しい地域と、沖縄のように温暖な地域では必要な断熱性能が大きく異なるためです。

同じ断熱性能で家を建てても、地域の気象条件で快適性に差が出てしまうことは避けられません。そのため、地域区分ごとに求められるUA値などの基準は細かく設定されています。

地域区分 地域例
旭川市
札幌市
盛岡市
仙台市
宇都宮市
東京23区
長崎市
那覇市

出典:国土交通省「地域区分新旧表」(PDF)

地域区分は1〜8まであり、数字が小さいほど寒冷地、数字が大きいほど温暖な地域です。例えば、東京都23区は全国的にみて比較的温暖なエリアに分類される「地域区分6」に該当します。一方、北海道は地域区分1、東北の一部は2〜3に分類されるなど、寒さが厳しい地域ほど高い断熱性能を求められます。

断熱等級とZEH水準の関係

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、年間の一次エネルギー消費量がゼロ以下を目指した住宅を指します。具体的には、建物の断熱性能や設備の効率を高め、さらに太陽光発電などでエネルギーを創り出す住宅です。

ZEHの根幹は「省エネ」と「創エネ」の両立であり、特に高い断熱性能が前者の基盤となるでしょう。この断熱性能の基準として国が定めているものが断熱等級です。ZEHに認定されるためには、まず住宅そのものが一定以上の断熱性能(UA値基準)をクリアする必要があり、その基準ラインが等級5になっています。

断熱等級5の家は寒いのか?

断熱等級5の家は寒いのでしょうか
断熱等級5の家は寒いのでしょうか

2030年以降、新築住宅では断熱等級5が最低基準になり、義務化される予定です。また、断熱等級5はZEH基準にも相当し、最新基準のなかでは中間レベルの性能と位置づけられています。しかし、「断熱等級5では寒い」と言われるのはなぜでしょうか。

地域・気候による寒さの感じ方の違い

断熱等級5は、全国の新築住宅で2030年以降の最低基準となるZEH相当の断熱性能を有していますが、地域や気候によって快適性には差が生じます。

例えば、北海道や東北などの寒冷地では、外気温が極端に低くなる冬期、等級5の住宅であっても暖房を使用していない部屋や廊下では寒さを感じる場合もあるでしょう。また、北陸のように冬季に雪や冷たい風が長期間続く地域でも、室内の温度差が大きくなりやすく、断熱等級5では完全に暖かさを保てない場合があります。

一方、温暖な地域、例えば関東南部や九州では、等級5でも比較的快適に過ごせるなど、体感差は大きく変わります。

このように、断熱性能はUA値やηAC値などの基準で評価されているものの、住む地域や気候条件、間取りや窓の配置などによって体感温度は一定ではありません。さらに、室内で温度差が大きいとヒートショックなど健康リスクも高まるため、快適で安全な住環境を求める場合は、寒冷地では等級6や7の上位等級を検討したほうがよいでしょう。

断熱等級5はZEH基準の入口として十分な性能を持ちながらも、地域特性によっては冬の寒さを完全には防げない点を理解しておかなければなりません。

施工精度の不足による気密性の低下や熱損失

施工精度が低い会社に依頼すると、断熱材の入れ方が不均一だったり、隙間が多いまま仕上げられてしまうケースがあります。結果、断熱等級5を採用したにも関わらず、寒い状況が起こる可能性がありますが、これは施工会社の技術力や管理体制による影響です。

断熱等級5は一定以上の断熱性能を満たしていますが、どれほどよい断熱材を使っていても、家の気密性が低ければ性能を発揮できません。壁や窓枠まわり、配管・配線の取り合い部などにわずかな隙間があるだけで、室内の暖かい空気は外に逃げ、外気が侵入して室温が下がってしまいます。

間取りや外部環境による影響

断熱等級が5であっても、間取りや外部環境が体感温度に影響する場合もあります。例えば、玄関とリビングが直結している間取りでは外気が入りやすく、せっかくの高い断熱性能を十分に活かせません。また、北側に大きな窓がある、日射の少ない立地に建っている、道路に面していて冷気が溜まりやすいなどの外部環境も影響します。

さらに、吹き抜けがあると暖気が上に逃げやすく、部屋の広さのわりに暖房設備が小さい場合も温まりにくいと感じることがあるでしょう。「暖かい家」は、断熱等級だけではできません。暖かく快適な家の実現には、設計や外部環境と組み合わせて総合的に考える必要があります。

断熱等級5・6・7の比較

断熱等級5以上の等級と比較するとどのような違いがあるでしょうか
断熱等級5以上の等級と比較するとどのような違いがあるでしょうか

断熱等級5・6・7は、住宅の快適性や省エネ性能を左右する重要な基準です。等級が上がるほど外気温の影響を受けにくく、冷暖房効率が向上するため、冬の寒さや夏の暑さを和らげ、光熱費の削減にもつながります。断熱等級5は現行のZEH基準に相当する中間レベルで、温暖地では十分な快適性を提供しますが、6や7とはどのような点で異なるのでしょうか。

室内温度環境の違い

室内温度環境の違いを比較しましょう。東京都が該当する、地域区分6の目安は以下のとおりです。

断熱等級5 断熱等級6 断熱等級7
室内温度環境 約10度 約13度 約15度
体感温度が
15度未満に
なる割合
15%程度 10%程度 2%未満
体感の目安 冬場には居室以外で寒さを感じる 居室だけでなく廊下や脱衣所などでも比較的快適に過ごせる 居住空間全体で快適な温度環境を維持できる

出典:省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド

断熱等級が上がるほど室内全体の温度差が小さくなり、特に等級7では、寒冷地でのヒートショックリスクも低減でき、住宅全体で快適な温度が確保されるでしょう。

光熱費・省エネ性能の比較(ZEH・HEAT20基準含む)

ZEH・GX志向型住宅・HEAT20のG2クラスで示されるような、省エネ住宅の断熱等級から違いをみてみましょう。

断熱等級5 断熱等級6 断熱等級7
光熱費・
省エネ性能
目安
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に相当 HEAT20・G2基準に相当 HEAT20・G3基準に相当

HEAT20(ヒート20)は、「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が提唱する、高断熱・高気密住宅を評価する独自の基準です。この基準の目的は、住まいの温熱環境(室温など)と省エネルギー性能を両立させつつ、将来的にも快適で持続可能な住宅を普及させること。HEAT20では、断熱性能をG1・G2・G3の3段階に分類し、それぞれに外皮性能(UA値など)の目安を定めています。

特に G2は、省エネ性だけでなく室内の快適性も重視された中・高性能グレードで、等級6・7の住宅は、ZEH基準(等級5)を超えて、HEAT20が示すより高い快適性・省エネ性を実現できる性能水準です。

断熱等級5・6・7のメリットとデメリット

断断熱等級5・6・7のメリットとデメリットを比較してみましょう
断熱等級5・6・7のメリットとデメリットを比較してみましょう

断熱等級5・6・7などの数値は、それぞれ住宅の断熱性・省エネ性・快適性を示すものです。断熱等級が上がるほど外皮性能が向上し、冷暖房効率や室内温度の安定性が高まります。では、断熱等級が異なると、コストや気候に対する体感はどのように異なるのでしょうか。

そこで本章では、各等級のコストや体感をあげ、メリットとデメリットを比較し、住宅選びや断熱性能向上の参考になるポイントを解説します。

断熱等級5・6・7のメリット比較

断熱等級5・6・7のメリットは以下です。

断熱等級 備考
コストを抑え、現行省エネ基準を超える断熱性を確保できる
・無暖房でも13度を下回らず、断熱等級5より省エネ性能が高い
・補助金制度を活用できる
・住宅と居住者の健康を守れる
・最高レベルの断熱性能
・寒冷地や雪国でも全室で快適な室温を保てる
・補助金制度を活用できる

断熱等級5のメリット

断熱等級5は、現行省エネ基準をクリアするレベルで、ZEHや長期優良住宅に相当します。建築コストを抑えつつ、最低限の断熱性を確保できるため、初期投資を抑えたい方におすすめです。冬期の冷え込みをある程度防ぎ、冷暖房効率も改善されるため、断熱性能と費用のバランスがとれた選択肢になるでしょう。

断熱等級6のメリット

断熱等級6は、温暖な地域でも快適性と省エネ性能を両立できるバランスのよい等級です。暖房を使用していない室内でもおおむね13度を下回らないため、無暖房時でも寒さを感じにくく快適な環境を維持できます。

断熱等級5と比べると冷暖房効率が向上し、光熱費削減に貢献するでしょう。また、結露の発生を抑制できるため、カビやダニの発生を防ぎ、住宅と居住者の健康を守れます。さらに、断熱等級6以上が条件になる補助金制度(例:子育てグリーン住宅支援事業)を活用でき、初期費用の負担軽減が可能です。断熱性能と費用のバランスに優れており、将来的に住宅性能のスタンダードとなるでしょう。

断熱等級7のメリット

断熱等級7は、最高レベルの断熱性能を誇り、寒冷地や雪国でも全室で快適な室温を保てる住宅性能です。家全体で温度差が少なく、冬でも15度未満になる部屋はほとんどなく、アウターを着ずに過ごせる快適性を実現できます。
また、ヒートショックのリスクを大幅に低減できるため、高齢者や小さなお子様の健康面でも安心できるでしょう。

さらに冷暖房効率が高いため、断熱等級6よりも光熱費をさらに抑えられ、長期的な省エネ効果を期待できます。加えて、断熱等級6以上を条件とした補助金(子育てグリーン住宅支援事業など)も活用可能で、初期投資の負担を軽減しつつ、最高水準の快適性と省エネ性を両立できる点が大きな魅力です。

断熱等級5・6・7のデメリット比較

断熱等級5・6・7のデメリットは以下です。

断熱等級 備考
・室内温度が10度前後まで下がる場合がある
・寒冷地では温度差が顕著
・快適性やエネルギー効率で差が出やすい
6・7 断熱等級5より建築コストが高い

等級ごとに分けて詳しくみていきましょう。

断熱等級5のデメリット

断熱等級5の住宅は、建築コストを抑えつつ最低限の断熱性能を確保できる点がメリットです。しかし、厳冬期には室温が10度前後まで下がる可能性があり、寒冷地では室内の温度差を強く感じやすいデメリットがあります。上位等級と比べると断熱性能が控えめで、冷暖房効率や快適性で差が出やすく、冬場の健康リスクや光熱費の増加もあるでしょう。

断熱等級6・7のデメリット

断熱等級6・7は、高い断熱性能により室内温度が安定し、快適性が格段に向上するものの、建築費用が上がる点がデメリットです。また、性能を最大限活かすには設計・施工技術が高い施工会社を選ぶ必要があり、施工管理や施工精度の確保も課題となります。

このように、断熱等級5はコスト重視、等級6・7は快適性・省エネ重視と、それぞれメリットとデメリットが明確に分かれます。そのため、住宅選びでは予算・地域・快適性の優先度を踏まえて判断しましょう。

断熱等級だけではない寒さを防ぐ快適な家づくりのポイント

断熱等級5の設備に加え寒さを防ぐ快適な家づくりのポイントは、どのような点でしょうか
断熱等級5の設備に加え寒さを防ぐ快適な家づくりのポイントは、どのような点でしょうか

住宅の快適性は、断熱等級だけで決まるものではありません。施工精度や設計の工夫、素材の選択などが組み合わさって、室内環境や光熱費に大きな影響を与えます。特に断熱等級5では標準的な断熱性能を確保できますが、寒冷地では体感温度を低く感じられる場合もあるでしょう。本章では、これから家を建てる方に向けて、具体的な工夫を解説します。

適切な断熱材と施工方法を選ぶ

住宅の断熱性能を左右する要素は、断熱材の選択と施工精度です。どれほど性能の高い断熱材を使っても、薄く施工したり、隙間が残っていたりすると熱が逃げやすくなり、室温の安定性や冷暖房効率を保てません。

重要な点は、屋根・壁・床などの建物全体を均一に覆う施工です。さらに、断熱材の厚みを確保し、隙間なく施工すると結露やカビの発生も抑えられ、住宅の耐久性や住む人の健康も保てます。質の高い断熱材を標準仕様として採用している、経験豊富な施工会社を選びましょう。そうすれば、断熱等級5でも快適な室内環境を維持できます。また、施工後には隙間がないかを確認する気密測定をおこなうと、より確実に性能を発揮できるでしょう。

窓・玄関ドアの性能を重視する

住宅の熱は開口部から多く出入りしますが、冬には窓やドアから熱が逃げてしまい、夏には熱が侵入する要因になります。窓や玄関ドアの断熱性能は、住環境に大きな影響を与えるでしょう。

これを防ぐためには、トリプルガラスや樹脂サッシ、Low-e膜入りのガラスなどを採用すると効果的です。トリプルガラスは冬場の冷気を遮断し、樹脂サッシは熱伝導率が低いため冷暖房効率を高めます。

さらに、玄関ドアも仕様によって断熱性が大きく変わるため、デザイン性だけでなく断熱性能を重視して選びましょう。こうした開口部の性能向上で、冷暖房負荷の軽減と室内温度の安定化を実現できます。

軒・庇で日射を調整する

住宅の快適性を高めるには、軒や庇を活用して日射を調整する方法も重要です。軒は屋根が外壁から突き出した部分、庇は窓や出入口上に設置される日除けで、夏の強い日差しを遮り、冬には太陽光を室内に取り込む役割があります。

軒や庇の寸法は、敷地の方位や建物の立地条件、周囲の建物状況によって最適値が変わるため、専門家によるシミュレーションが必要です。日射量を適切にコントロールすると、室内の温度ムラを抑え、冷暖房効率を高め、省エネにも貢献できます。断熱等級5でも快適性を確保するには、設計段階から工夫しましょう。

気密性能(C値)を高める

断熱性能と同時に、住宅の気密性を高める点も欠かせないポイントです。気密性が低いと、隙間から外気が侵入して室温が下がったり、冷暖房効率が低下したりします。高効率な第一種換気システムを導入すると、排気の熱を給気に回収し、外気温の影響を抑えられるでしょう。そうすれば、室内空気が効率よく循環し、温度ムラが少なくなるため、冬場の寒さや夏場の蒸し暑さを軽減できます。

さらに、熱交換換気システムを用いると、省エネ性能を保ちつつ快適な室内環境を実現可能です。断熱等級5の住宅でも、気密性能を高めれば体感温度の底上げと光熱費削減を期待できるでしょう。

住まいの温熱計画(パッシブデザイン)を取り入れる

パッシブデザインとは、自然エネルギーを活用して建物の温熱環境を最適化する設計手法です。太陽光の取り入れ方や風の流れ、地形や周囲の環境を考慮して、冷暖房に頼りすぎず快適な住環境をつくります。例えば、南向きの窓で冬の日射を室内に取り込み、夏は軒や庇で遮ると、室内温度を安定させられるでしょう。

また、建物の断熱性能や気密性、窓の性能と組み合わせると、冷暖房効率をさらに高められます。断熱等級5の住宅でも、パッシブデザインを取り入れると、室内温度のムラを減らし、光熱費の抑制と快適性向上も両立できます。これにより、健康的で省エネな住まいが実現できるでしょう。

断熱等級5に関するよくある質問

断熱等級5についてよくある質問をまとめました。

断熱等級とはどのような基準?

断熱等級は、住宅がどれだけ熱を逃がしにくいかを示す国の基準で、1〜7まであり、数字が大きいほど高性能です。等級5は2022年に新設された新しい基準で、ZEHに必要な水準と同等。UA値(熱の逃げにくさ)とηAC値(日射熱の取り込みやすさ)で性能が決まり、地域区分(1〜8)により求められる基準も異なります。等級5は将来的な義務化に向けた最低ラインで、住宅の省エネ性・快適性を高める重要な基準です。

断熱等級5の家は寒い?

断熱等級5はZEH基準に相当し、高い断熱性能を備えていますが、必ずしも暖かい家になるわけではありません。寒冷地では外気温が厳しいため、等級5でも暖房が備わっていない部屋や廊下では寒さを感じる場合があります。特に、施工精度が低く、断熱材に隙間があると余計に寒さを感じやすくなるでしょう。さらに、玄関直結の間取り・北側の窓・日射不足・吹き抜けなど設計や外部環境も体感温度に大きな影響を与えます。

断熱等級5・6・7ではどのような違いがある?

断熱等級5・6・7では、住宅の快適性や省エネ性能が異なります。等級が上がるほど室内温度は安定し、冬場でも居室・廊下全体で快適に過ごせるでしょう。等級5はZEH基準相当で中間レベル、等級6・7はHEAT20基準に対応し、省エネ性と快適性が高くなります。等級7では寒冷地でも室温差が比較的少なく、ヒートショックリスクを低減できます。光熱費削減や健康面のメリットも大きく、等級が高いほど総合的な居住性能は優れているでしょう。

断熱等級5・6・7のそれぞれのメリットとデメリットは何?

断熱等級5は建築コストを抑えつつZEH基準の断熱性を確保できる一方、寒冷地では室温が10度前後に下がる場合があり、快適性に差が出やすくなります。等級6は無暖房でも13度を下回らず、省エネ性・健康面で優れ、補助金も活用できます。等級7は最高性能で、快適温度を維持でき、光熱費削減効果も大きいでしょう。しかし、断熱等級6・7では、建築コストが高く施工精度も求められます。選択する際には、予算と快適性のバランスが重要です。

断熱等級だけでなく寒さを防ぐ快適な家づくりをするにはどのような点がポイント?

快適な住まいを実現するには、断熱材の適切な施工、窓・玄関ドアの高断熱化、軒や庇による日射調整、気密性向上(C値管理)、パッシブデザインの活用が重要です。これらを組み合わせて室内温度のムラを抑え、冷暖房効率を高めれば、光熱費削減や健康的な住環境を維持できるでしょう。断熱等級だけにこだわらず、快適な住まいを実現するには、設計・施工・素材選びの総合力が重要です。

まとめ

断熱等級5は一定の断熱性能を保証する基準ですが、「暖かい家」をつくるための要素はそれだけではありません。気密性が不足していたり、施工精度が低ければ隙間風が発生し、断熱材の性能を十分に発揮できないでしょう。

また、窓の位置や日射取得のしやすさ、玄関の配置など、間取り設計によっても体感温度は大きく変化します。さらに、風当たりの強い立地や日当たりの悪さなどの外部環境も無視できません。つまり、断熱等級5は一つの指標にすぎず、快適性を決めるのは「家全体の設計力」と「施工品質」です。等級だけに頼らず、総合的な住宅性能の確認が、後悔しない快適な家づくりにつながります。ぜひ本記事の内容を理想の家づくりに役立ててください。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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