【実例】注文住宅で人気の平屋とは?メリット・デメリットや快適に暮らすためのポイントを解説

本記事では、平屋のメリットやデメリット、費用相場、快適に暮らすポイントについて解説します。注文住宅を検討している方や、平屋の理解を深めて2階建てと比較したい方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
平屋とは?

平屋とは、縦移動のない1階建て住宅のことです。LDKや浴室、トイレなど、生活に必要な設備がすべてワンフロアに揃っています。広い敷地を確保しやすかった昔の日本では主流の住宅タイプでしたが、土地の高騰などによって徐々に2階建てが中心となりました。しかし、近年の平屋はおしゃれなデザインで建てられるようになり、幅広い年齢層が暮らしやすい住宅として再び注目を集めています。
注文住宅で平屋を建てるために必要な広さは?
注文住宅で平屋を建てる際は、家族構成に応じて必要な広さを確保しましょう。確保すべき建物の広さは以下が目安です
家族構成 | 平均坪数 |
---|---|
1人 | 約15坪 |
2人 | 約15~20坪 |
3人 | 約20~25坪 |
4人 | 約25~35坪 |
5人 | 約35坪~ |
上の坪数はあくまで目安なので、家族構成に加え、ライフスタイルなどに合わせて広さを決めましょう。敷地面積も建物の面積に影響するため、あらゆる観点でシミュレーションをおこなうことが大切です。
近年では平屋の人気が高まっている?
国土交通省が発表する「建築着工統計調査」によると、居住専用住宅において全国の平屋住宅の数は2013年では36,551なのに対し、2023年には57,848まで増加。住宅全体の数が2013年では506,252、2023年では385,919と平屋の割合が7.2%から14.9%まで上がっており、人気が高まっていることがわかります。昔ながらの住宅とは異なり、快適性やデザイン性の高さから人気を集めているといえるでしょう。
注文住宅の平屋のメリット

注文住宅で平屋を建てることで、さまざまなメリットを享受できます。以下では代表的な平屋のメリットについて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
効率的な生活動線・家事動線を実現できる
平屋では、効率的な生活動線や家事動線を確保しやすいのが大きなメリットの一つです。動線がスムーズでないと、部屋と部屋の移動に時間がかかり、日常生活でストレスを感じやすくなります。掃除などの家事をこなすうえでも動線がコンパクトにまとまっていると、時間の短縮だけでなく、掃除機や洗濯物など重い物を持って移動する身体的な負担も軽減できるでしょう。
バリアフリーなので長く住むことができる
平屋では階段をつくる必要がないため、バリアフリー設計が可能です。部屋と部屋の細かい段差までなくすことで、将来的に高齢になったり介護が必要な状態になったりした場合でも、リフォームせずに快適に住み続けられます。
家族のコミュニケーションがとりやすい
家族の気配を感じやすく、コミュニケーションがとりやすい点も平屋の魅力です。1階と2階など別の階にいると会話しにくくなりますが、同じワンフロアで部屋と部屋の距離も近い間取りにすれば、家のどこにいても気軽に会話を楽しめるでしょう。小さい子どもがいる場合でも、目の行き届く範囲で自由に遊ばせられます。
地震や台風に強い
平屋は2階建てなどと異なり建物が低く横に面積が広いことから、地震や台風の影響を受けにくい傾向にあります。建物は高さがあるほど揺れの影響を受けやすいですが、1階建ての平屋であれば上からの荷重が少なく構造が安定しやすいです。
屋根の形状を活かした空間をつくれる
上階がある一般的な住宅の場合、天井の高さは2.4m程度ですが、平屋は屋根の高さや形状に合わせて空間をつくれます。屋根の形状に沿って勾配天井にしたり、余った空間にスキップフロアをつくったりすることも可能です。
メンテナンス費用を抑えられる
平屋は2階建てよりも建物の高さがないため、修繕が必要になった際に足場を組む必要がありません。足場代は修繕費のなかでもある程度の割合を占めるため、コストカットできる点はメリットです。また、上階がなく重みによる躯体への負荷がかからないため、建物が傷みにくい傾向にあります。
光熱費を抑えられる
平屋では光熱費を抑えやすい点も魅力の一つです。2階建ての場合は階層ごとに温度差が生じるため、家族がそれぞれの部屋で過ごしている時は1階と2階どちらでもエアコンをつけて過ごすことになりますが、平屋はワンフロアのため温度差が生じにくい傾向にあります。2階建てと比べると、自然に光熱費を抑えられるでしょう。
注文住宅の平屋のデメリット

多くのメリットがある一方で、平屋をつくるデメリットもいくつかあります。以下では、注意すべきデメリットについて紹介していきます。
広い敷地面積が必要
平屋は縦ではなく横に面積を広げるため、同じ延床面積を確保しようとすると2階建てよりも広い敷地面積が必要です。敷地面積が広くなるほど以下のようなことが考えられます。
- 土地の取得費用が高くなる
- 固定資産税が高くなる
想定外に土地代に費用をかけてしまうと、予算次第では建築費を抑えなければならなくなったり、固定資産税など定期的に支払いが必要な費用が高くなり生活が圧迫されてしまったりする可能性もあるでしょう。土地の安いエリアで検討したり、建ぺい率を意識して土地探しをすることが大切です。
建築費用が高くなりやすい
2階建てと比べると、平屋は建築費用が高くなりがちです。建築費のなかでも高単価な基礎や屋根、壁の面積が大きいことが主な要因として挙げられます。坪単価が1~2割程度高くなることもありますが、建物の面積をコンパクトにしたりシンプルなデザインにしたりと工夫することで、ある程度費用を抑えることが可能です。
日当たり・風通しが悪くなる可能性がある
平屋は建物の高さが2階建てや3階建てと比べて低いこともあり、周辺環境によっては思うような採光・通風を確保できないかもしれません。特に家の中心部には窓を設けにくく、室内が暗く感じることもあるでしょう。効果的に日当たりや風通しをよくするためには、中庭の設置や天窓・高窓の設置を検討することをおすすめします。開放感が増して室内の印象もよりよくなるでしょう。
プライバシー・防犯対策が必要
平屋は1階建てで外部の人と目線の高さが同じになるため、生活をしていて外からの視線が気になることも。開放感の演出や日当たりをよくしようと大きい窓を道路側の壁に設置することで、室内の様子を窺いやすく侵入リスクも高まるかもしれません。窓のサイズや配置を工夫し、室内が見えないように植栽や柵の設置などを検討しましょう。
災害時に浸水被害の可能性がある
平屋は高さがない分、地震や台風などによる揺れの影響を受けにくい傾向にある一方で、津波などの水害が発生した際には浸水被害を受けてしまう可能性があります。建物の上階に避難できないため、とっさの対策が難しいかもしれません。浸水被害を防ぐには、土地探しの時点でハザードマップを確認し、浸水リスクのある地域を避けることが大切です。
注文住宅の平屋の相場はどのくらい?

平屋を建てる際の建築費相場は、一般的な住宅面積30坪と仮定すると2,000万円前後です。坪単価は60万~80万円程度を目安にするとよいでしょう。2階建てと坪単価は大きく変わりませんが、構造やデザイン、設備等で総額が変わるため、予算に合わせて決めていくことをおすすめします。
平屋を建てる際の費用相場に関しての詳細は、以下の関連記事を参考にしてください。
注文住宅で平屋を建てる時の費用を抑える方法
注文住宅で平屋を建てる場合、以下のような方法で費用を抑えることが可能です。
- 間取りやデザインをシンプルにする
- 必要以上に建築面積を広くしない
- 住宅メーカーの標準仕様にする
- ローコスト住宅が得意な住宅会社に依頼する
建築費が大きく変わる要因として、建築面積の広さはもちろんですが、オプションの追加も挙げられます。必要なものとそうでないものを、メリハリをもって選択し、不要なオプションをつけないことである程度の費用を抑えやすくなるでしょう。
おしゃれな平屋の注文住宅【実例7選】

ここからは、おしゃれに仕上げた平屋の注文住宅の建築実例について紹介していきます。
【25.42坪】暮らしの中に非日常を楽しむ光庭の平屋

外部からの視線を感じずに非日常な空間が魅力の平屋事例です。道路面には目隠しとなる壁を設け、テラスとLDKをつなげることで空間の広がりを感じられます。
【32.2坪】寄棟屋根×塗り壁で仕上げた和モダンな平屋

デザイン性と快適性を兼ね備えた平屋住宅の事例です。家の顔となる外観はシンプルかつスタイリッシュなデザインで人々の目を引き、室内は効率的な家事動線を確保して暮らしやすさを実現しています。
【33.42坪】シンプルで美しい平屋の家

出典:(株)ウンノハウス 山形営業部
シンプルさが際立つデザインの平屋です。研ぎ澄まされた美しさに加え、開放感があり動線を意識した暮らしやすい間取りが魅力となっています。道路側から見えない位置に配置された玄関や、プライバシーに配慮しながら効率的に採光がとれる窓など快適な暮らしのための工夫が見られます。
【33.55坪】プライベート空間を大切にしたL字型の平屋

土地の形状を最大限に生かした平屋住宅です。L字型にすることで家族のプライバシーを保ちやすくなり、室内はスキップフロアや小上がりを活用して空間にメリハリをつけています。また、水回りやリビング、洋室がまとまっている間取りのため、効率的な家事動線・生活動線が実現しました。
【36.12坪】暮らしにぴったりサイズの家で、アクティブな暮らしを満喫間取り

家族のライフスタイルに合わせた暮らしやすさが魅力の平屋実例です。デザインにも暮らしやすさにもこだわり、室内は外観のスタイリッシュな印象とは異なって、明るく温かみのある空間に。リビングに設けた勾配天井と高窓が開放感を高めています。
【40.08坪】こだわりいっぱいの平屋
住宅の暮らしやすさに直結する、建物の素材や機能にこだわりが詰まった平屋住宅です。家全体に自然素材をふんだんに使用し、薪ストーブを設置して心が落ち着く空間に仕上がっています。太陽光発電や蓄電池を設置するなど、住宅性能のこだわりも実現しました。
【47.28坪】森に佇む、大屋根の平屋

出典:栃木ハウス(株)
自然と一体化するようなモダンでシックな外観の平屋。片流れ屋根によって、2階建てのようなゆったりとした高天井を実現しました。また、高い位置に窓を設置し、十分な採光も確保。リビングには大きな掃き出し窓を設けることで、自然や季節の変化を感じることができます。
注文住宅で建てた平屋で快適に暮らすためのポイント

ここからは、平屋住宅で快適に暮らすために押さえておきたいポイントについて解説していきます。
採光や通気性を確保できる間取りにする
日当たりや風通しのよい空間にするためには、間取りの工夫が欠かせません。先述のとおり、平屋では採光・通風の確保が高さのある建物と比べて難しい傾向にあります。効率的に採光・通風を確保するには、窓の配置が重要です。天窓や高窓を設置したり、風の流れ方をシミュレーションして配置したりすることをおすすめします。
断熱・気密性能を考慮する
平屋を建てる際は、断熱性能や気密性能に考慮した建物にするとよいでしょう。建物の機能性を高めることで、1年を通して快適な室内空間を保つことが可能です。断熱性や気密性の高い住宅は、冷暖房効率が高く光熱費の削減にもつながります。
プライバシーに配慮する
平屋では、家族間のプライバシーの確保や防犯面に不安になりがちです。家族の生活音が気になる場合は一部の部屋に防音対策をしたり、寝室とリビングを離したりするなど間取りを工夫しましょう。また、防犯対策として、人感センサーや防犯カメラの設置、建物周辺に砂利を敷く、室内が見えやすい窓の前にスリット壁を設置するなどが効果的です。
中庭を設ける
中庭を設けることで、平屋のデメリットを解消しやすくなります。中庭をつくることで中庭に面する壁に窓を設置することになり、室内全体の採光・通風を確保しやすくなるでしょう。加えて、開放的かつおしゃれな空間にもなる他、一般的な庭とは異なり建物の壁に囲まれているため、プライバシーも確保できます。おしゃれさと利便性を高めるには、ウッドデッキの設置もおすすめです。
中庭を設ける間取りタイプは以下の3つです。
コの字型の間取り

出典:Select工房(株)
コの字型の間取りは建物をコの字型にし、内側に中庭をつくります。中庭は三方向を建物に囲まれている状態で、プライバシーを重視している場合におすすめの間取りです。採光・通風に優れ、道路に面する壁に窓をつくらず防犯面でも役立ちます。動線が長くなりやすいため間取りを工夫しましょう。
ロの字型の間取り

出典:コンフォートハウス(株)
ロの字型の間取りは、中庭を建物で四方を完全に囲んだ状態です。コの字型よりもプライベート感のある空間となります。出入りは室内からのみとなり、雨水が溜まりやすい点には注意が必要です。
L字型の間取り

出典:フィアスホーム藤枝店 (株)SNJ
L字型は中庭をL字のように二方向を囲み、開放的かつ適度にプライバシーを守りたい方におすすめの間取りです。狭小地や複雑な形状の土地でも対応しやすい間取りとして人気ですが、間取りが制限されやすく耐震性が低くなる可能性がある点には注意しましょう。
天井を高くする
平屋は2階がないため、天井の高さに制限がありません。リビングの天井を屋根の形状に合わせて勾配をつけたり、天窓・高窓を設置したり、小屋裏の一部を吹き抜けにしたりして開放感を生み出すことが可能です。
ロフト・スキップフロアを設ける
平屋は、階層を増やさずに縦の空間を活かした間取りアイデアが豊富にあります。ロフトやスキップフロアを設けることで、収納力や居住スペースを広げられます。ロフトやスキップフロアは空間にメリハリをつけながらも開放感を保ち、デザイン性も高いためおしゃれな間取りに仕上がるでしょう。
注文住宅の平屋についてよくある質問
最後に、注文住宅で建てる平屋に関するよくある質問について回答していきます。
平屋のメリット・デメリットは?
平屋はワンフロアのため、効率的な生活動線・家事動線をつくりやすいほか、バリアフリーにして長期的に住みやすい、家族間のコミュニケーションがとりやすい、地震・台風に強いなどのメリットがあります。
一方で、2階建てなどと比べて広い敷地を要し、建築費用が高くなりがちです。日当たり・風通しのよい室内空間にしたり、プライバシー・防犯対策が必要になったりする点には注意しましょう。
土地が広くなくても平屋を建てられる?
2階建てと比べて広い土地を要する平屋ですが、間取りの工夫次第では都市部などの広くない土地にも建築可能です。地域が指定する建ぺい率・容積率に収めて建物を建てられれば平屋も実現できますが、間取りの自由度は低めで圧迫感も出やすいため、暮らしやすさを考慮して判断しましょう。
平屋を建てる時に気を付けることは?
平屋は建物の高さがないため地震や台風などの揺れには強いですが、津波などの浸水リスクは対策しづらい傾向にあります。土地選びの際はハザードマップを確認し、洪水リスクの少ない場所を選びましょう。また、家族との距離が近すぎてプライバシーに欠ける間取りになりやすいため、間取りを決める際には部屋の配置を工夫し、必要に応じて防音対策をおこなうことも大切です。
平屋と2階建てどちらがいい?
平屋と2階建てのどちらが向いているかは、エリアや家族構成などによって異なります。すでに広い土地を所有している方や、郊外などの土地代が安い地域で家を建てたい方は予算を建築費に多く充てられるため、予算内で平屋を建てやすく多くのメリットを享受できるでしょう。
近隣住宅との距離が近く、土地代が高い地域で建てる場合でも、室内の開放感や家族間のプライバシーを保ちたいのであれば、2階建てがおすすめです。家族のライフスタイルに合わせて検討しましょう。
まとめ
今回は、注文住宅で人気の平屋住宅について解説しました。平屋住宅にもさまざまなメリット・デメリットがあり、2階建てとは異なる魅力や懸念点があります。どのような住宅が自分や家族にとって最適なのか、リスクや注意点まで把握したうえで決めることをおすすめします。
注文住宅を建てる