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地震に強い家の条件とは?構造別の耐震性と建築する際のポイント

地震に強い家の条件を解説します
日本は、世界有数の地震大国です。今後も、南海トラフ地震や首都直下型地震など大規模災害の発生が懸念されるため、「地震に強い家」に住むことは命を守るうえで重要です。しかし、一口に地震に強い家といっても、条件や構造、設計など考慮すべきポイントは多岐にわたります。

本記事では、地震に強い家のポイントと、地震に強い家にするための工夫を解説します。ポイントを押さえて、安全性と快適性を両立した住まいを実現しましょう。

耐震性に影響を与える要素

建物の形状や構造などが耐震性に影響を与えます
建物の形状や構造などが耐震性に影響を与えます

地震に強い家とは、建物の形状、構造、地盤の強さなど、さまざまな条件がバランスよく整っている住宅を指します。日本の建築基準法では、最低限の耐震基準が定められていますが、クリアするだけでは万全とはいえません。本章では、耐震性に影響を与える要素を解説します。

家の形と揺れの力の伝わり方

建物の形は、地震時の揺れの影響を受ける要素です。地震の揺れは、建物の各部分に異なる力を与えます。例えば、凹凸が多い家、L字型やコの字型など複雑な形状の家では、応力が集中しやすいため部分的な破損から倒壊につながるリスクが生じます。

一方、正方形や長方形などのシンプルな形状は、力を建物全体に均等に分散しやすく、倒壊しにくい特徴があります。また、左右対称なデザインもバランスがよく、揺れに対する安定性が高まるでしょう。家のデザインを考える際には、見た目の美しさだけではなく、耐震面においても有利となる形状にも目を向けましょう。

屋根の重量と重心の安定性

地震時、建物の上部に重さがあると、大きな揺れを受けやすくなります。これは「慣性の法則」によるもので、重い屋根ほど揺れのエネルギーが大きくなり、構造体に大きな負担を与えます。したがって、地震に強い家を目指す場合は、屋根材をできるだけ軽量にすることが有効です。

例えば、瓦屋根の代わりに軽量金属屋根やスレート屋根を使うことで、建物全体の重心を低く保ち、安定感を高められます。また、重心が低いと揺れの際に建物が回転するような動きになりにくく、倒壊リスクの低下にもつながるでしょう。

壁量・柱配置のバランス

壁の量や柱の配置は、建物全体の剛性とバランスに直結します。耐力壁が不足していたり、偏った場所に集中していたりすると、地震の揺れによって建物がねじれるように動き、倒壊の原因となります。

耐震性の高い家では、外壁・内壁ともにバランスよく耐力壁が配置されており、柱も四隅を中心に均等に設けられていることが一般的です。開口部の多い場合は耐力が落ちるため、構造補強が必要になります。建築時は、配置図を使ってバランスを確認しましょう。

基礎構造の種類

基礎構造は、地震の衝撃を地盤に伝えつつ、建物全体を支える役割を担います。現在の主流は「ベタ基礎」と呼ばれる構造で、底全体に鉄筋コンクリート入りの土台にすることで、面全体で荷重を支えるため耐震性に優れます。

一方で、「布基礎」は立ち上がり部分のみを強化する構造で、地盤が比較的強い地域で採用されることが多い基礎構造です。

いずれにしても、鉄筋の配筋状況やコンクリートの厚み、施工精度が重要になります。新築時やリフォーム時には、設計図や現場の写真などで確認し、信頼できる会社に依頼することが重要です。

地盤の種類

建物が強くても、地盤が弱ければ耐震性に不安が残ります。特に液状化しやすい埋立地や、粘土質の地盤では地震の揺れが増幅されやすく、建物の傾きや沈下のリスクも。家を建てる前には、地盤調査をおこない、結果に応じて表層改良や柱状改良など、適切な地盤改良を施すことが重要です。

また、自治体が公開しているハザードマップを参考にすることで、エリアごとの地盤の強さや液状化リスクも事前に確認できます。地盤対策は目に見えない部分だからこそ、丁寧に調べておきましょう。

構造別に見る耐震性

構造別に見る耐震性と特徴を解説します
構造別に見る耐震性と特徴を解説します

住宅の構造によって、耐震性に大きな差があります。代表的な構造は、木造や鉄筋コンクリート、木造+鉄骨の混構造などがあります。どれが優れているかは一概にいえないため、立地条件や予算、設計の自由度などを総合的に踏まえて選ぶことが重要です。本章では、それぞれの構造が持つ耐震性と特徴を解説します。

木造住宅

木造住宅は、日本の住宅で多く採用されている構造です。大きく分けて「在来工法(軸組工法)」と「ツーバイフォー(2×4)工法」があり、どちらも耐震性の高い家を実現できます。在来工法は、柱や梁などの軸で建物を支える構造で、設計自由度が高く、リフォームにも対応しやすい点が特徴です。

一方、ツーバイフォー工法は壁・床・天井をパネル化した「面構造」で建物全体を囲み、力を分散します。地震だけではなく台風にも強く、施工の品質が安定しやすいメリットもあり、コスト面でも比較的安価です。

鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリート(RC造)は、鉄筋の引張強度とコンクリートの圧縮強度を組み合わせた強固な構造で、マンションや公共施設にも多く使われています。住宅に採用する大きなメリットは、耐震性・耐火性・耐久性の高さです。揺れに対して強く、変形や倒壊のリスクが小さい構造ですが、その分建築コストは木造に比べて1.5〜2倍程度になることが一般的。

また、建物が重くなるため、強固な地盤が必要であり、設計・施工の技術力も求められます。地震の揺れに対して安心感を得たい場合や、長期間にわたり劣化しにくい家を求める方に向いています。

木造+鉄骨の混構造

木造と鉄骨を組み合わせた混構造は、木の柔軟性と鉄の強靭性を活かすことで、バランスの取れた耐震性能を発揮できる可能性があります。

例えば、1階部分を鉄骨で構成し、2階を木造とする設計により、耐震性と断熱性の両立を図れます。また、開口部を広く取れるなど設計の自由度が高く、デザイン性にも優れた住宅を実現できる点もメリットです。

ただし、構造計算が複雑なため施工できる建築会社が限られ、施工費が高めになる点には注意が必要。メリットとデメリットを理解し、構造設計に精通した建築士や工務店と相談しながら進めましょう。

地震に強い家にするための工夫

地震に強い家にするためのポイントを押さえましょう
地震に強い家にするためのポイントを押さえましょう

耐震性の高い家をつくるためには、構造だけではなく、設計・施工の段階からさまざまな工夫を取り入れる必要があります。また、新築だけではなく、既存住宅の耐震リフォームや補強工事も有効です。本章では、耐震性を高めるためのポイントを紹介します。

耐震・制震・免震の違いを把握する

耐震・制震・免震は似た言葉ですが、それぞれ役割が異なります。「耐震構造」は、柱や梁、壁など建物自体を強くして地震に耐える設計です。日本にある住宅の大半はこの方法がベースになっています。

一方、「制震構造」は、建物のなかにダンパーと呼ばれる装置を設置し、揺れのエネルギーを吸収する方法。エネルギーを吸収することで、建物へのダメージを軽減できます。

最後に、「免震構造」は建物と地盤の間に免震装置を入れて、揺れを建物に伝えない構造です。コストは高くなりますが、地震時の室内被害が少なく、医療施設や高級住宅で多く採用されています。それぞれの特徴を理解し、自宅に合った構造を選ぶことが重要です。

設計段階で耐震性能が低下するリスクを予防する

開口部が多い家は、おしゃれで開放感がありますが、耐震性能が低下するリスクがあります。特に、大きな窓や吹き抜け、ガレージ付きのL字型プランなどは、建物の剛性に偏りを生みやすく、ねじれや倒壊の原因になりかねません。

開口部が多い設計を採用する場合は、耐力壁やブレース、構造用合板などで補強し、バランスよく配置することが求められます。設計段階で構造計算をおこない、プロの視点から補強ポイントを検討しましょう。

耐震リフォームを検討する

既存の住宅でも、耐震リフォームをおこなうことで地震への備えを強化できます。特に、旧耐震基準の1981年以前に建てられた住宅は、倒壊リスクが高いため、優先的に補強すべき対象です。

リフォーム費用は内容や建物の状態によって異なりますが、部分的な補強で数十万円から、フル耐震リフォームで100万円〜300万円程度が相場とされています。自治体によっては補助金や助成制度があるため、活用しましょう。

家具配置・転倒防止の工夫をする

地震による被害は建物だけでなく、家具の転倒や落下によるケガも大きなリスクです。例えば、大きな本棚やテレビ、冷蔵庫などは地震の揺れで転倒しやすく、命に関わる事故につながる可能性があります。家具は壁に固定する、滑り止めシートを活用する、背の高い家具は寝室に置かないなど、家庭内でもすぐにできる安全対策をおこないましょう。

非常時の避難経路を確保するために、通路に物を置かない、重たい物は低い場所に収納するなど、日頃からの備えも大切です。家具を固定して日頃から備えることで、災害時の被害を減らしましょう。

ライフライン停止に備えた設備を意識する

巨大地震が発生すると、電気・水道・ガスなどのライフラインが数日から数週間停止する可能性があります。そのため、自立的に生活できる住環境を整えることが大切です。具体的には、太陽光発電システムと蓄電池の導入、貯水タンクや簡易トイレの備え、プロパンガスの活用などが挙げられます。特に、オール電化住宅では、停電時のリスクが大きいため、非常用電源やカセットコンロの備蓄が欠かせません。

災害時に備え、非常食や医薬品などを1週間分以上備蓄しておくと安心です。家族構成に応じて必要量を計算し、定期的な見直しと入れ替えを習慣化しましょう。

地震に強い家を設計する際のポイント

地震に強い家を設計する際のポイントを押さえましょう
地震に強い家を設計する際のポイントを押さえましょう

耐震性の高い家を建てるうえで、設計段階の工夫は重要です。強い構造材を使っても、設計が不適切であれば性能は十分に発揮されません。

本章では、設計時に押さえておきたいポイントを解説します。将来的なリフォームや増築を想定した設計も視野に入れ、耐震性と利便性を両立させましょう。

総2階の設計にする

耐震性を高めるうえで、総2階の設計は有利です。総2階とは、1階と2階の面積と形が、ほぼ一致している設計のことです。上下階の壁や柱の位置が揃うことで、構造の一体性が高まり、地震の揺れが均等に分散されやすく、1階の一部が押しつぶされる層崩壊のリスクを減らせます。

また、凹凸のない箱型の構造は、地震時の力の作用を抑えるうえでも有効です。近年では、総2階を基本にしながら、バルコニーや吹き抜けなどを取り入れて、デザイン性も確保した間取りが主流になりつつあります。

開口部の設計に注意する

開口部を大きく取りすぎると、壁の耐力が不足し、地震時の変形に弱くなります。特に、1階の南面に掃き出し窓を並べた設計は危険です。耐震性を確保するには、開口部の配置を左右対称に近づける、もしくは開口部の周囲に構造補強をおこなう必要があります。構造計算と照らし合わせて適切な配置を設計し、見た目のよさと強さの両立を図りましょう。

地震に強い家にするための建築会社の選び方

地震に強い家にするための建築会社の選び方を解説します
地震に強い家にするための建築会社の選び方を解説します

住宅の耐震性は設計や構造だけではなく、実際に施工する会社や担当者の技術力にも大きく左右されます。理想的な設計でも、施工精度が低ければ本来の耐震性能は発揮されません。本章では、建築会社選びで重視すべきポイントを解説します。

耐震等級の確認と取得実績を見極める

耐震性の指標として広く用いられている「耐震等級」は、家の地震への強さを示す基準です。等級は1〜3まであり、等級3がもっとも高い耐震性を意味します。

耐震等級1級 建築基準法によって定められた耐震基準を満たす最低限の耐震性能 建築基準法が求める最低基準のレベル
耐震等級2級 耐震等級1級の1.25倍相当の耐震強度 学校や病院などの公共建築物レベル
耐震等級3級 耐震等級1級の1.5倍相当の耐震強度 消防署や警察署などの防災拠点レベル

建築会社に依頼する際は、耐震等級3を取得できる設計力と実績があるかを確認しましょう。

住宅性能表示制度の対応を確認する

国が定める「住宅性能表示制度」は、耐震性を含む10項目にわたり、住宅の性能を数値で評価しています。住宅性能表示制度に対応している建築会社は、性能を客観的に説明できる仕組みを整えているため、信頼性が高い傾向にあります。耐震性に限らず、劣化対策や断熱性、省エネ性能など複数の観点で家の安全性と快適性をチェックできる点も魅力です。

住宅性能評価書の取得件数や自社物件での導入実績などを聞くことで、建築会社の地震に強い家づくりへの取り組み姿勢も見えてくるでしょう。

契約時の書類を確認する

契約前には、設計図や仕様書、構造計算書などの重要な書類を確認することが大切です。耐震等級3を取得予定とあっても、実際に評価機関での認定申請がされていないケースも珍しくありません。

施工時には中間検査と完了検査を確実に実施すること、またアフターサポート体制や住宅瑕疵担保責任保険に加入しているか確認しましょう。

住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅に傷や欠陥があった場合に、補修などをおこなった事業者に、保険金が支払われる制度です。契約書に含まれる保証内容や保険期間、追加工事の条件などが、細かく記載されているかをチェックしましょう。トラブルを防ぐには、疑問点を曖昧にせず、納得できるまで説明を求める姿勢が重要です。

地震に強い土地選びのポイント

地域ごとの地震リスクを把握しましょう
地域ごとの地震リスクを把握しましょう

地震に強い家づくりを考える際には、建てる地域の地震リスクを正確に把握することが重要です。日本全国、地震が発生しないエリアはほぼ存在せず、地域に応じた備えが求められます。特に、活断層の有無や地盤の性質、自治体が発表しているハザードマップなどは、土地選びや設計に直結する情報となるでしょう。本章では、地域別のリスクの違いや地震に強い土地選びのポイントを解説します。

地震が多い地域と少ない地域の違い

日本列島は4つのプレートがぶつかる場所に位置しており、地域によって地震の発生頻度が異なります。東海・東南海・南海地震のリスクが高い太平洋側や、活断層が密集している内陸部は、特に注意が必要です。

一方、北海道や日本海側の一部地域では比較的地震の頻度は低いものの、まったく起きないわけではありません。リスクが高い地域に住む場合は、より強固な耐震構造や免震装置の導入など、積極的な対策が必要です。

地域別の揺れの傾向を知って、最適な構造設計や土地選びにつなげましょう。

地盤の性質と液状化リスクの見極め方

建物が建つ地盤の性質も、耐震性に大きな影響を与えます。

例えば、昔は沼や田んぼだった軟弱地盤の上に家を建てると、地震時に沈下や傾きが生じる可能性があります。また、湾岸部などの埋立地は液状化現象が起きやすく、建物だけでなくインフラ全体が機能不全になる恐れも考えられるでしょう。

土地を選ぶ際は、地盤調査の結果や過去の震災履歴などを参考にし、地盤改良工事や杭基礎の導入を検討することで、安全性を高めることが可能です。

自治体のハザードマップを活用する

各自治体が公開しているハザードマップは、地震や津波、液状化などのリスクを視覚的に把握できる有効なツールです。ハザードマップを利用することで、自分が建てたい場所がどの程度の災害リスクを持っているかを事前に知ることができます。

特に、海岸近くや急傾斜地に位置する土地は、津波や土砂崩れの影響を受けやすいため、避けるか、防災対策が充実しているかを確認しましょう。

災害リスクを軽視せず、立地と構造をトータルで判断することが、長期的に安全な住まいを手に入れるための鍵になります。

まとめ

地震に強い家は、丈夫な構造を持つだけではなく、すべてをバランスよく組み合わせた総合力のある住まいです。耐震等級や住宅性能表示などの指標をうまく活用しつつ、信頼できる建築士や建築会社と連携し、耐震性を高めることが重要です。

また、地震後のライフライン維持や避難のしやすさまで見越した住宅設計が、真に家族を守る住まいとなります。防災を住まいの標準仕様にし、今後の時代にふさわしい強い家を賢く選びましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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