注文住宅の契約の注意点とは?よくあるトラブルと対策も解説

ただし、打合せ内容どおりの家づくりをするためには、注文住宅の契約時に打ち合わせ内容が反映されているかの確認が欠かせません。
注文住宅の契約時には、工事代金や施工内容を確定させるために、契約書のほかにもさまざまな書類が作成されます。これらの書類をしっかりと理解したうえで手続きを進めなければ、のちのちトラブルへ発展する可能性があります。
この記事では、注文住宅の工事請負契約に必要な書類や注意点、よくあるトラブル事例を解説します。
記事の目次
注文住宅を契約する流れ

注文住宅を契約する流れは、次のとおりです。
- STEP 1予算の検討
- STEP 2家づくりの希望条件の整理
- STEP 3土地探し
- STEP 4工務店・ハウスメーカー・建築会社選び
- STEP 5間取りの設計・見積もり
- STEP 6工事請負契約の締結
- STEP 7着工
- STEP 8竣工・引き渡し
土地から購入する場合は、土地取得費と建物建築費、諸費用から予算を検討し、資金計画(自己資金と住宅ローン借入金額)を考えます。
次に、家づくりの希望条件や優先条件を家族で話し合い、ハウスメーカーや不動産会社に伝えられるように整理しておきましょう。
土地から購入する場合は、土地探しをハウスメーカー選びと並行して進めます。候補となるハウスメーカーから間取りプランや見積もりを提示してもらい、予算や希望条件がどれだけ実現できるかを検討し数社に絞り込みます。
また、土地や間取りプランから必要資金が明確になった段階で住宅ローンの仮審査を受け、資金計画の目途をつけておくことが必要です。
最終的に契約する会社と間取りや仕様を決めれば工事請負契約を締結し、住宅ローンの本審査に進みます。本審査が無事通ればいよいよ工事の着工です。
注文住宅完成までの詳しい流れを知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
注文住宅の契約で必要になる書類

注文住宅の契約で必要になる書類は次のとおりです。
工事請負契約書
工事請負契約書は、注文住宅の建築主(施主)と工事をするハウスメーカーや工務店(施工会社)との間で締結する契約書です。
設計図面や工程表など他の書類と合わせて工事内容や契約条件を明確にし、施工不備があった際の対応を規定することでトラブルを防げます。
契約書には、工事内容や請負代金、スケジュール(着工日・完了日、引き渡し日)、代金の支払い時期や金額、住宅ローン特約、解約時の違約金などが記載されています。
工事請負契約約款
工事請負契約約款は、工事請負契約書だけでは記載しきれない、より詳細な契約上の条項が記載された書類です。
工事請負契約約款に記載される事項は次のような点です。
- 契約内容と施工内容が違う場合の取扱い
- 工事期間中に事故が生じた場合の対応
- 建物完成時の検査や引き渡しに関する事項
- 瑕疵(欠陥)担保責任※
- 引き渡しが遅れた場合の違約金 など
※瑕疵担保責任とは、住宅の品質や性能が契約内容に適合していない場合に施工者や売主が負う責任のこと。
工事請負契約に添付することで、合意内容の不明点や解釈の違いなどを解消し、契約上のトラブルを防止できます。工事請負契約書とあわせしっかりと確認しましょう。
設計図書
設計図書は、建物の平面図や立面図、配置図、断面図などに仕様書を加えた設計の内容を記載した書類です。工事請負契約書に設計図書を添付することで、請負金額に対する工事内容を明確にします。
作成される図面は建物の構造やハウスメーカーによっても異なります。どのような建物をどのような仕様、設備を使って建てるのかを明確にし、建築主と施工者の認識の相違がないかを確認するものです。
仕様書
仕様書は図面だけではわかりにくい建築に使われる建材や仕上げ、設備などの情報を記載した書面です。
基礎や柱の構造仕様をはじめ、外部仕上表(外壁や屋根など)、内部仕上表(天井・床など)、設備仕様(キッチンや浴室など)と、施工箇所ごとに使用する材料や工事方法が定められています。
一般的にハウスメーカーや工務店それぞれが自社の標準的な仕様書を作成しているため、施工会社を選ぶ段階で確認することで比較資料として活用することも可能です。
工事見積書
工事見積書には、工事の請負金額を記載した書面で、「本体工事費」「付帯工事費」「諸費用」と3つの項目があります。
-
本体工事費
基礎工事から木工事、内外装工事、設備工事などの費用 -
付帯工事費
外構工事や給排水工事、地盤調査・地盤改良工事などの費用 -
諸費用
登記関係費用や印紙税、住宅ローンの諸費用、建物の消費税など
工事内容と照らし合わせて必要な費用が計上されているか、反対に不要な工事や費用が含まれていないかチェックしましょう。ハウスメーカーによって書式や項目は異なることもあるため、見積もりの総額を確認し見積もり以外にかかる費用を把握しておくと安心です。
工程表
工程表は、工事の進捗や納期などをまとめたスケジュール表です。工事予定を「見える化」することで、施主や工事関係者と工事予定や進捗の共有ができます。
工程表の書式は施工会社によっても異なりますが、必要な工事の種類や一つひとつの作業期間を管理することで納期を守ることにつながります。
注文住宅の契約をする際の注意点

ここでは、注文住宅の契約をする際に注意すべき点を解説します。
設計図面・仕様書の内容を確認する
施工会社は設計図書や仕様書に基づいて施工するため、設計図面・仕様書の内容をしっかりと確認することが大切です。
一般的に、工事請負契約書を締結すると、請負金額だけでなく工事内容も承諾したと判断されるため、打合せで決めた間取りや仕様、変更点などが反映されているか再度確認することが重要です。
建築の専門的な内容も多く含まれます。わからない点や気になる点があれば担当者に確認し、クリアにしたうえで進めましょう。
工事見積書の中身と金額を確認する
工事見積書の内訳と総額を確認するようにしましょう。見積もりの総額を確認するとともに、一つひとつの工事内容と見積もり金額の整合性をチェックし、希望した工事内容が反映されているか確認することが大切です。
見積書の形式は施工会社によって異なり、見積もり金額に含まれているものも違うこともあります。本体工事以外の付帯工事や諸費用などに不要な項目や費用が含まれていないかも合わせて確認しましょう。
工程表・支払いサイクルに無理がないか確認する
新築工事の工程にはさまざまな段階があります。
- 着工~基礎工事
- 建て方(組み立て)~上棟式
- 屋根工事~外装工事
- 内装工事~仕上げ・外構工事
- 建物完成~引き渡し
この間、近所への挨拶回りや地鎮祭、上棟式などおこなう場合、スケジュールに無理がないか確認しましょう。引き渡しの時期にあわせて今の賃貸住宅などの解約や引越しにともなう、さまざまな手続きのことも考えておく必要があります。
また、工事代金は契約時(10%)、着工時(30%)、上棟時(30%)、竣工時(30%)に支払いが発生することが一般的です。
住宅ローンのつなぎ融資などを活用する場合は、支払い時期や金額に問題がないかチェックしておくことが必要になります。
解約・キャンセル時の条項を確認する
万が一、工事請負契約を解約することになった場合の取り決めを確認しておきましょう。契約書には、解約する時期によって違約金が定められていることが多く、着工までの間に解約した場合、工事代金の5~10%程度の違約金が発生することが一般的です。
施工会社が下請け会社と契約を締結したり、部材を発注したりすると、工程が進んでいるほど違約金や損害金は大きくなります。
注文住宅の工期は長ければ1年以上かかるケースもあり、その間、事故や病気になり契約を解除せざるをえない可能性もあります。工事期間中の解約、キャンセルのこともしっかりと確認しておくことが肝要です。
保証・アフターサービスの内容も確認する
工事期間中や引渡し後の保証・アフターサービスの内容を確認しておくことが大切です。注文住宅では、住宅の主要構造部分や雨水の侵入を防止する部分の瑕疵に対して、法律上引き渡しから最低10年間の責任をハウスメーカーや工務店が負います。
法的な保証とは別に、施工会社それぞれ独自の保証やアフターサービスを設けています。施工会社の基本保証に加え、延長保証やそのための条件、設備や内装、建具など部分ごとの保証期間の違いを確認しておくことが重要です。
あわせて、アフターサービスも点検の期間、頻度、費用、専任スタッフの有無を確認します。さらに、工事期間中、台風や地震などの自然災害による工事の延期の対応や工事によって通行人などに損害を与えてしまった時の保証も確認しておきましょう。
注文住宅の契約でよくあるトラブルと対策

ここでは、注文住宅の契約でよくあるトラブルと対策を解説します。
仕様変更によるトラブル
完成した建物の仕様が契約時と異なる場合、あるいは仕様変更の時期や追加費用のトラブルです。契約時に交付される仕様書に異なる品番が記載されており、それに気付かず契約するとその内容に合意したことになり変更できない、あるいは変更できても費用がかかる場合があります。
施工会社によって契約後に変更できる範囲や追加費用は異なり、事前に確認していないことでトラブルとなるケースがあります。こういったトラブルをなくすためには、打合せの議事録を作成してもらう、あるいは打合せ内容の記録を残しておくことが不可欠です。
また、設備や仕様の変更がいつまでできるのか、その際の追加費用がどれくらいかかるのかも書面で確認しておくとよいでしょう。
工期遅延のトラブル
工事請負契約書に定めた完成日に間に合わずにトラブルとなるケースです。予定していた引き渡し日に間に合わず入居が遅れると、住んでいる賃貸マンションに必要な費用が増え、場合によっては仮住まいが必要となるケースもあります。
着工から引き渡しまで一定の期間が必要な注文住宅では、自然災害の発生や感染症の蔓延により、建築資材や設備の入荷が困難となることで、工期が遅れる可能性も考えておくことが必要です。
引き渡し予定に合わせてぎりぎりのスケジュールで引越し予定を組むと、遅れた場合の対応が難しくなります。できるだけ余裕を持ったスケジュールを組むことがポイントです。同時に、工事が遅延した場合の対応や遅延損害金など契約内容を確認しておきましょう。
住宅ローンにまつわるトラブル
住宅ローンを利用する場合、通常契約書には、万が一住宅ローンが承認されなかった際に契約を解除できる「住宅ローン特約」を入れます。
この時、契約書に住宅ローン特約の対象となる住宅ローンを明確にしておらずトラブルになる可能性があります。そのため、住宅ローン特約は契約書に次の事項が含まれているかを確認しましょう。
- 金融機関名
- 借入金利(予定)
- 本審査の承認が出るまでの日数
- ローン特約による契約解除ができる期限
- 契約解除する場合の方法
(期限が到来すると自動的に契約が解除されるタイプもあります)
なお、住宅ローン特約は、融資が承認されない場合の買主を保護するための例外的な規定です。そのため、買主は売買契約後すみやかに本審査の承認に向けて手続きをする義務があります。
審査に必要な手続きを進めなかったなどの事情がある場合は、住宅ローン特約による契約解除ができない可能性がある点に注意が必要です。
施工ミスのトラブル
建物完成後に施工ミスが見つかってトラブルとなるケースです。床や壁の傷やクロスの剥がれ、基礎、外壁のひび割れなどさまざまな不具合があり、ドアの開閉不良や雨漏りなど入居してから気付くこともあります。
引渡し前の内覧会で気付いた軽微な傷や補修箇所は、引き渡しまでに直してもらえますが、建物の構造に関わる不具合や雨漏れとなると、施工会社に連絡し調査してもらう必要があります。
引き渡し後の施工ミスや不具合が見つかった場合の対応や保証も、契約時にしっかりと確認しておきましょう。
希望した住宅設備と異なるトラブル
希望した住宅設備と異なるものが設置されていることでトラブルとなるケースです。キッチンやお風呂、洗面など、メーカーによってさまざまなシリーズやオプションがあるため、打合せ時と異なる設備が設置されていたことが起こる可能性があります。
また、サッシやシャッター、ドアなどの種類だけでなく、取り付けする高さや位置が異なる場合もあります。契約時に設計図書と仕様書をしっかりと確認するとともに、万が一の場合に証拠として提出できるように、打合せ内容と日付、打合せの相手(担当者)を記録しておくようにしましょう。
注文住宅の契約の注意点に関するまとめ

最後に、注文住宅の契約の注意点をまとめました。
注文住宅の契約で必要になる書類は?
注文住宅の契約で必要となる主な書類は次のとおりです。
- 工事請負契約書
- 工事請負契約約款
- 設計図書
- 仕様書
- 工事見積書
- 工程表
契約書や約款には法律的な事項を含め多岐にわたるため、事前に内容を確認してから契約にのぞむとよいでしょう。
注文住宅の契約の注意点は?
注文住宅の契約の注意点は次のとおりです。
- 設計図面や仕様書が打合せどおりか
- 契約内容と工事見積書の項目・金額に間違いがないか
- 工程表・工事代金の支払いサイクルに無理がないか
- 契約の解約・キャンセルに関する条項の確認
- 保証・アフターサービスの内容の確認
工事請負契約を締結することで、完成後の保証やアフターサービスまで含め、すべての契約条件の合意をすることになるため一つひとつしっかりと確認することが大切です。
注文住宅の契約でよくあるトラブルは?
注文住宅の契約でよくあるトラブルは次のようなものです。
- 仕様変更に関するもの
- 工期遅延に関するもの
- 住宅ローンに関するもの
- 施工ミスにまつわるもの
- 打ち合わせと異なる設備の設置
契約時の設計図書や仕様書に打合せ内容が反映されているか、また、工事の遅延やトラブルに対する保証や対応も確認しておきましょう。
注文住宅の打合せではさまざまなことを決めなければなりません。そのため、注文住宅の契約では、打合せ内容がしっかりと反映されているかを確認することが重要になります。
また、建売住宅と異なり工事の遅延や事故など、引き渡しまでに発生する可能性のあるリスクや保証も施工会社の対応を確認しなければなりません。
打合せの段階から記録を残し、事前に契約書を確認するなどの対策をおこないながら手続きを進めるようにしましょう。
注文住宅を建てる