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カーポートの建ぺい率とは?計算方法や緩和条件、後付けで確認すべきポイントを解説

カーポートの建ぺい率とは?計算方法や緩和条件、後付けで確認すべきポイントを解説
カーポートの設置を検討する際、「建ぺい率のせいで家が狭くなるのでは?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。カーポートは建築物に該当し、建ぺい率の計算に含まれます。しかし、正しい知識があれば、法律を守りながら駐車スペースを確保することが可能です。

この記事では、カーポートが建ぺい率に与える影響や建築面積が優遇される緩和措置、設置する際の注意点を紹介します。

カーポートの建ぺい率は?

カーポートは建ぺい率にどのような影響を与えるのでしょうか
カーポートは建ぺい率にどのような影響を与えるのでしょうか

カーポートは建ぺい率にどのような影響を与えるのでしょうか?基本的な知識とそれぞれの関係性を解説します。

そもそもカーポートとは

カーポートとは、柱と屋根で構成された簡易的な駐車スペースを指します。カーポートの主な目的は、雨や雪、紫外線、鳥のフンなどから車を守ることです。

壁で完全に囲われたガレージ(車庫)とは異なり、壁がない、もしくは簡易的な側面パネルのみの開放的な構造をしています。そのためガレージに比べて費用を抑えやすく、設置工事も短期間で済みます。

一方で、横殴りの雨風を防ぎにくいことや、防犯面ではガレージに劣ることがデメリットとして挙げられます。車庫と比較して劣る点はあるものの、カーポートはコストと機能性のバランスに優れた駐車スペースです。

建ぺい率とは

建ぺい率とは、敷地面積に対して建てられる建築面積の割合を定めたルールのことです。建ぺい率は、日当たりや風通しを確保して、良好な住環境を維持するためにあります。

建ぺい率があることで、自分の土地でも敷地いっぱいに建物を建てられません。例えば、100平方メートルの土地で建ぺい率が50%の場合、建築面積(建物を真上から見た時の面積)は50平方メートルまでとなります。

建ぺい率は地域ごとに定められているため、家を建てる際は必ずこのルールを守って設計する必要があります。

カーポートと建ぺい率の関係性

カーポートは建築基準法上の建築物にあたるため、原則として建ぺい率の計算に含める必要があります。建築基準法では、建物を「土地に定着し、屋根と柱、または壁を有するもの」と定義しており、柱と屋根でできているカーポートは、まさにこの条件に当てはまります。

そのため、カーポートを設置する際は、住宅の建築面積とカーポートの建築面積を合計した面積が、定められた建ぺい率の範囲内に収まらなければいけません。住宅だけで建ぺい率が上限に達している場合、原則としてカーポートの増設は不可能です。

このように、カーポートを設置する場合は、建ぺい率を考慮して家全体の計画を立てることが大切です。

出典:e-Gov 法令検索|建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

カーポートが建ぺい率に与える影響

カーポートは原則、建ぺい率に含まれます
カーポートは原則、建ぺい率に含まれます

カーポートは原則、建ぺい率に含まれますが、構造によっては建築面積を緩和する措置が適用されます。まずは、カーポートが建ぺい率に含まれる条件を見てみましょう。

  • 屋根と柱がある
  • 土地に定着している
  • 3方向以上が壁で囲まれている

建築基準法では、屋根と柱、もしくは壁がある工作物は建築物と定義されているため、一般的なカーポートはこの条件に当てはまります。また、コンクリートの基礎などで地面に固定され、簡単に移動できない状態のものは「土地に定着している」と判断され、建ぺい率に含まれます。

さらに、柱だけでなく壁で3方向以上が囲まれている場合、車庫に近いと判断されて、カーポートの面積がそのまま建築面積に算入されます。

一方、以下の4つの条件をすべて満たすカーポートは、特例として建築面積の緩和措置を受けられます。

  • 外壁のない部分が連続して4m以上ある
  • 柱の間隔が2m以上ある
  • 天井の高さが2.1m以上ある
  • 1階建てである

これらの条件を満たすと、カーポートの端から水平距離1mまでの部分は建築面積に算入されません。つまり、カーポート全体の面積ではなく、内側の面積のみが建ぺい率の計算対象となります。

家を建てる際は、設置するカーポートの構造が建ぺい率にどう影響するかを事前に把握して、家全体の建ぺい率がオーバーするリスクを避けましょう。

カーポートの建ぺい率の計算方法

建ぺい率を求める基本的な計算式を知っておきましょう
建ぺい率を求める基本的な計算式を知っておきましょう

カーポートを設置した際の建ぺい率の計算方法は、緩和措置が適用されるかどうかで大きく2つに分かれます。緩和措置が適用されない場合はカーポート全体の面積が、適用される場合はカーポートの端から1m内側の面積が、それぞれ建築面積として計算されます。

建ぺい率を求める基本的な計算式は以下のとおりです。

建ぺい率(%)= 建築面積 ÷ 敷地面積 ✕ 100

この式の「建築面積」に、カーポートの面積を含めて計算します。ここから、具体例にシミュレーションしてみましょう。

【前提条件】
敷地面積100平方メートル、家の建築面積が45平方メートルの土地に、幅3m × 奥行5mのカーポートを設置する

【緩和措置が適用されない場合】
緩和措置が適用されない場合、カーポートの面積がそのまま建築面積に加算されます。

  • カーポートの建築面積:3m ✕ 5m = 15平方メートル
  • 敷地全体の建築面積: 45平方メートル(家)+ 15平方メートル(カーポート)= 60平方メートル

結果、このケースの建ぺい率は「60平方メートル ÷ 100平方メートル ✕ 100」で60%となります。

【緩和措置が適用される場合】
緩和措置が適用される場合、その端から1m後退した部分のみを建築面積とします。

  • カーポートの建築面積(算入部分):(3m - 2m)✕(5m - 2m)=1m ✕ 3m = 3平方メートル
  • 敷地全体の建築面積: 45平方メートル(家)+ 3平方メートル(カーポート)= 48平方メートル

計算の結果、この土地の建ぺい率は「48平方メートル ÷ 100平方メートル ✕ 100」で48%となりました。

このように、同じサイズのカーポートでも、緩和措置の有無で建ぺい率が変わります。家を建てる際に建ぺい率の上限を超えないよう、カーポートの面積も含めて事前に計算しておきましょう。

用途地域ごとに建ぺい率は制限されている

用途地域ごとの建ぺい率の上限を紹介します
用途地域ごとの建ぺい率の上限を紹介します

建ぺい率の上限は、土地がどの用途地域に属するかによって定められています。用途地域とは、都市計画法に基づき、地域ごとの特性に合わせて「住宅地」「商業地」「工業地」などの土地の使い道を定めたルールです。

ここでは、大きく3つに分類される用途地域ごとの、建ぺい率の上限を紹介します。

住宅系地域

住宅系地域は、良好な住環境を守ることを目的としたエリアです。そのため、他の地域に比べて建ぺい率が低めに設定される傾向にあります。

これにより、建物同士の間隔にゆとりが生まれ、日当たりや風通しがよい街並みが形成されています。住宅系地域は細かく分類されており、それぞれ以下のように建ぺい率の上限が異なります。

用途地域 建ぺい率(%)
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・田園住居地域
30,40,50,60
・第1種住居専用地域
・第2種住居専用地域
・準住居地域
50,60,80

参考:国土交通省「建築基準法制度概要集」

このように、住宅系地域内でも、その地域の目指す街並みによって建ぺい率が細かく定められています。

商業系地域

商業系地域は、多くの人が集まり、商業活動を活性化させることを目的としたエリアです。駅前や繁華街などがこれにあたります。土地を有効活用して多くの店舗やオフィスが入居できるように、建ぺい率は高く設定されています。

商業系地域の建ぺい率は次のとおりです。

用途地域 建ぺい率(%)
商業地域 80
近隣商業地域 60,80

参考:国土交通省「建築基準法制度概要集」

商業地域では建ぺい率の上限が原則として80%と定められていますが、防火地域内に耐火建築物(高い防火性能を持つ建築物)を建てる場合は、建ぺい率が100%まで緩和されることがあります。つまり、敷地いっぱいに建物を建てることが可能です。

工業系地域

工業系地域は、工場の利便性を高めることを目的としたエリアです。住宅や商業施設と工場が混在することによるトラブルを避けるために指定されています。

工業系地域の建ぺい率は以下のとおりです。

用途地域 建ぺい率(%)
工業地域 50,60
準工業地域 50,60,80

参考:国土交通省「建築基準法制度概要集」

以下の記事では、用途地域について詳しく解説しています。あわせてチェックしてください。

カーポートに適用される建ぺい率の緩和条件

カーポートに適用される緩和条件は、そのカーポートが「高い開放性を持つ」と認められるかどうかで決まります。条件を満たせば、カーポートの建築面積を通常より小さく計算できるため、建ぺい率にゆとりが生まれます。

具体的には、以下の4つの条件をすべて満たすカーポートが対象となります。

  • 外壁のない部分が連続して4m以上ある
  • 柱と柱の間隔が2m以上ある
  • 天井の高さが2.1m以上ある
  • 1階建てである

一般的な乗用車用のカーポートは、車の出し入れや乗り降りのしやすさを考えると、上記の条件を満たすように設計されているケースがほとんどです。

建ぺい率の緩和条件を満たせば、建ぺい率に算入される面積が大幅に減り、家の設計自由度を高められます。理想の家を建てるためにも、設置するカーポートは慎重に選びましょう。

カーポート設置で建ぺい率オーバーの違反になるケース

2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで確認申請が不要と見なされがちだったカーポートも、厳格に審査されるようになりました
2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで確認申請が不要と見なされがちだったカーポートも、厳格に審査されるようになりました

カーポートを安易に選ぶと、気付かないうちに建ぺい率の上限を超えてしまうリスクがあります。

特に2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで確認申請が不要と見なされがちだったカーポートも、厳格に審査されるようになりました。ここからは、どのような場合に違反となるか、具体的なケースを見ていきましょう。

建築確認申請を怠ったまま一定規模以上のカーポートを設置した場合

1つ目は、建築確認申請を怠ったまま一定のサイズを超えたカーポートを設置した場合です。

建築基準法では、屋根と柱があり土地に定着したカーポートは建築物とみなされます。そして、面積が10平方メートルを超える建築物を新設する場合や、防火地域・準防火地域内に設置する場合は、原則として建築確認申請が義務付けられています。

特に2025年の法改正の「4号特例」で、小規模な建築物に対する審査の簡略措置が縮小されたため、これまで以上に多くのカーポートが申請対象に含まれるようになりました。建築確認申請を怠り、カーポートが違法建築物に認められると、将来的に是正勧告や撤去命令を受ける恐れがあります。

参考:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」

建ぺい率がすでに高い家でカーポートを設置した場合

建ぺい率がすでに上限に近い家でカーポートを設置した場合も、建ぺい率がオーバーする可能性が高いでしょう。

「我が家の敷地は広いから建ぺい率にまだ余裕がある」と考えていても、実際には家の建築面積だけで建ぺい率が上限いっぱいのケースがあるからです。ここにカーポートの建築面積が加わることで、簡単に上限を超えます。

特に、緩和措置が適用されないカーポートを設置すると、その面積がそのまま建築面積に加算されてしまいます。家の新築でカーポートの設置を検討する場合は、建ぺい率に余裕を持った計画を立てましょう。

屋根や柱付きのカーポートが建築物として扱われる場合

「屋根と柱だけの簡単なものだから大丈夫だろう」と自己判断をするのは危険です。前述のとおり、屋根と柱があり、コンクリート基礎などで地面に固定されているカーポートは、建築物として扱われます。

建築物である以上、建ぺい率の計算に含めなければなりません。たとえ建ぺい率の緩和措置が適用されるカーポートでも、算入される面積がゼロになるわけではありません。

カーポートのわずかな面積が加わることで、敷地全体の建ぺい率が上限をオーバーすることもあります。カーポートを設置する際は、家と同じ建築物であると認識を持って計画を立てましょう。

自治体の規定に反した場合

建築基準法は国が定めた法律ですが、運用ルールや解釈は各自治体に委ねられている部分があります。例えば、京都や奈良などの歴史的な街並みを重視する地域では景観条例が定められており、カーポートのような工作物も、周辺の景観と調和するよう制限が設けられています。

国の基準だけを見て「問題ない」と判断して設置したところ、自治体の条例に違反していたケースも考えられます。カーポートの設置を検討する際は、建築基準法だけでなく、各自治体の規定も必ず確認するようにしましょう。

カーポートを後付けする際に確認すべきポイント

カーポートを後付けする際に確認すべきポイントを解説します
カーポートを後付けする際に確認すべきポイントを解説します

新築時に予算の都合などで見送ったカーポートを、あとから設置する方も多いでしょう。ここからは、安心してカーポートを後付けするために、事前に確認するべき4つのポイントを紹介します。

建築確認申請の要否

カーポートを後付けする際にまず確認するべきポイントは、建築確認申請が必要かどうかです。屋根と柱を持つカーポートは建築物とみなされます。

床面積が10平方メートルを超える場合や、防火地域・準防火地域内に設置する場合は原則として申請が必要です。一般的なカーポートは10平方メートルを超えることが多いため、ほとんどの場合申請対象となります。

特に2025年4月の法改正以降は、これまで黙認されがちだったカーポートの設置も厳しくチェックされる傾向にあります。申請を怠ると違法建築となり、将来的に撤去を命じられる恐れもあるため、設置する前に自治体の担当窓口や施工会社に建築確認申請の要否を確認しましょう。

建ぺい率の計算と緩和条件の有無

カーポートを設置しても建ぺい率の上限を超えないかの確認も必要です。

カーポートを後付けする際は、まず自宅の建築確認済証などで、現在の建築面積と敷地に定められた建ぺい率を把握しましょう。そのうえで、設置したいカーポートの建築面積(緩和措置適用後の面積)を足し、建ぺい率の上限に収まるか計算します。

この時、自己判断で角地緩和(角地に対して建ぺい率の上限が10%加算する制度)を適用すると間違える可能性があるので注意が必要です。計算が難しい場合は、施工会社や建築士に相談すると安心です。

敷地に対して余裕がない場合は、緩和措置が適用される開放性の高いカーポートを選んでみてください。

埋設物の有無

工事を始めてから中断する事態を避けるためにも、柱を立てる予定の地面の下に、水道管やガス管、排水管などの埋設物がないかを事前に確認しましょう。

埋設物と柱の位置が重なると、安全上の問題からカーポートを設置できません。または配管を移設する追加工事が必要になります。

一般的に、新築時の設計図(配管図)に埋設物の位置が記載されています。図面がない場合は、水道局やガス会社に問い合わせることで確認可能です。

施工会社に現地調査を依頼する際に、併せて確認してもらうと安心です。

残土処理の必要性

カーポートの柱を立てるためには、地面を50cm以上の深さで掘り起こす必要があります。その際に、掘り出した土(残土)や、コンクリートを壊した際に出るガラ(破片)が発生するため、これらの処分方法を事前に確認しておくことも重要です。

工事で発生する残土やガラを無断で捨てると不法投棄にあたります。通常は施工会社が工事費用に含めて処分してくれますが、見積もりに残土処理費用が含まれているか、念のため確認しておくとよいでしょう。

まとめ

最後に、この記事の重要なポイントをQ&A形式で振り返ります。

カーポートが建ぺい率に与える影響は?

屋根と柱を持つカーポートは建築基準法上の「建築物」に該当するため、原則として建築面積に算入されます。ただし、すべてのカーポートが同じように影響するわけではありません。3方向を壁で囲むような開放性の低いものはその面積がそのまま算入されますが、一般的な開放性の高いカーポートであれば、緩和措置によって算入面積を小さくできます。

カーポートに適用される建ぺい率の緩和条件は?

カーポートに適用される建ぺい率の緩和条件は、そのカーポートが「高い開放性を持つ」と認められることです。具体的には、「外壁のない部分が4m以上」「柱の間隔が2m以上」「天井高が2.1m以上」「1階建て」の4つの条件をすべて満たす必要があります。この条件を満たせば、カーポートの建築面積は外周から1m後退した部分のみで計算されるため、建ぺい率への影響を抑えられます。

カーポートを後付けする際に確認すべきポイントは?

カーポートを後付けする際に確認すべきポイントは、主に「建築確認申請の要否」「建ぺい率の計算」「地中の埋設物の有無」「残土の処理方法」の4点です。特に、面積が10平方メートルを超える場合や防火・準防火地域では建築確認申請が必要となり、申請を怠ると違法建築になります。

ここまで、カーポートと建ぺい率の関係を解説してきました。カーポートは建築物にあたるため、建ぺい率の計算に含める必要があります。しかし、一定の条件を満たせば建築面積が緩和されるため、ルールを正しく理解することが重要です。

建ぺい率の制限を超えないよう、後付けの場合でも建築確認申請の要否や緩和条件の有無を必ず確認し、安心してカーポートを設置しましょう。

杉山 明熙

執筆者

杉山 明熙

不動産特化ライター

元不動産営業のWebライター。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、賃貸不動産経営管理士。12年間の不動産営業を経験後、不動産特化ライターとして大手メディアや不動産会社のオウンドメディアで、住まいや不動産投資に関する記事を多く提供している。不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

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