工務店でも土地探しはできる!依頼するメリットとデメリットを解説
本記事では、工務店に土地探しを依頼する際のポイントとメリット・デメリットを解説します。土地探しを成功させて理想の住まいを手に入れましょう。
記事の目次
工務店での土地探しが注目される理由

近年、土地探しを工務店に相談する方が増えているそう。以前は、土地探しは不動産会社の仕事、建物の建築は建築会社の仕事と分けて考えることが一般的でした。しかし、現在は設計や施工の視点を取り入れながら、土地選定をおこないたいと考える層が増えています。
建築条件に適合しない土地を購入すると、住宅設計に大きな制約が出てしまい、希望する注文住宅を立てられない可能性も。したがって、設計視点や地域性、将来性など多角的な観点を持った地域密着型の工務店への相談が再評価されています。
土地探しも依頼する際のハウスメーカーと工務店の違い
ハウスメーカーと工務店は土地探しも依頼する際、視点に違いがあります。ハウスメーカーは自社規格の建物に適した土地を紹介する傾向が強く、土地の選択肢が少なかったり、自由設計を希望する場合はミスマッチが起きることもあります。一方、工務店は、敷地条件に応じた柔軟な設計提案が可能で、土地の個性を活かした家づくりが得意です。
また、工務店は地域に根ざした情報網を持ち、地元不動産とのつながりが深いことも強み。未公開物件や水面下の情報を得られる可能性があるため、好条件の土地に出合える確率も高くなります。ハウスメーカーと比較すると、柔軟性と地元ネットワークの点では工務店が優れていることも多いでしょう。
工務店に土地探しを依頼するメリット

工務店に土地探しを依頼するメリットは、建築と土地を一体にとらえた提案を受けられることです。土地と建物は切り離して考えることができません。
どれだけよい土地でも、理想の家が建たなければ意味がなく、逆に建築の自由度が高くても、土地が希望条件に合わなければ満足のいく住まいにはなりません。工務店は両方を踏まえて土地選びをサポートしてくれるため、無駄な買い物や後悔を防ぐことができるでしょう。
本章では、工務店に土地探しを依頼するメリットを解説します。
建築視点で土地を選んでもらえる
工務店に土地探しを依頼する魅力は、建築の専門家が設計目線で土地をチェックしてくれることです。不動産会社の提案では、土地の価格や立地など表面的な情報が重視されがちですが、工務店は選んだ土地に「どのような家を建てられるか」「どのような設計制約があるか」まで踏まえて提案してくれます。
例えば、道路との接道状況や隣家との距離、建ぺい率や容積率、日当たりや風通しなど、家を建てるうえで重要な要素を多角的に判断します。したがって、安心して家づくりを進めたい方にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
資金計画とローン手続きを一本化できる
土地と建物を別々に契約する場合、それぞれの予算調整や住宅ローンの申請、各種契約書類の作成など、手続きが煩雑になりがちです。
しかし、工務店に土地探しから建築までを一貫して依頼すれば、支払いをまとめて管理してくれます。また、金融機関との連携を工務店がサポートしてくれるケースもあり、最適な住宅ローンの選定や必要書類の準備、スケジュール調整などもスムーズです。
特に「土地を先に購入したいが、住宅ローンとどう組み合わせればよいかわからない」などの悩みはよくあるでしょう。トータルでアドバイスしてくれる工務店は、心強い存在となるはずです。
また、工務店が土地探しから建築まで対応することで、全体的をとおして予算オーバーが起きにくいのもメリットとして挙げられます。土地の購入と建築をそれぞれ分けて依頼すると、想定以上に土地代がかかってしまい、住宅にかける費用が少なくなってしまうことも。
工務店に一貫して依頼することで、土地だけなく建築費も予算とバランスを見ながら提案してくれるでしょう。
土地に合わせた柔軟な設計ができる
工務店は、土地の条件に合わせて柔軟に設計を調整できる強みがあります。例えば、条件に合う土地が変形地や狭小地、傾斜地など一見扱いづらそうな土地でも、工務店は建築の工夫によってポテンシャルを引き出す設計が可能です。大手ハウスメーカーのように決まった規格や間取りに縛られず、ゼロから設計する自由度があるため、土地に応じた最適なプランを提案してくれます。
さらに、地盤の状況や方角、周辺環境を踏まえて、建物の配置や開口部の位置などを微調整できる点も工務店ならでは。土地と建物をセットで考えた場合に、工務店の柔軟性は頼れるポイントとなるでしょう。
仲介手数料がかからない場合がある
依頼する工務店によっては、土地購入時の仲介手数料がかからないケースも。不動産業の免許を持っている工務店が所有している土地を購入する場合は、工務店が売主となるため仲介手数料が発生しません。仲介手数料は、土地購入に関わる諸費用のうち大きな割合を占めるため、工務店が売主である土地を選ぶことでコストを抑えられるでしょう。
不動産業務の免許を持っている工務店か調べるためには、会社のホームページを確認したり、土地の販売や条件付き土地を取り扱っているかなど確認すると見つけやすいでしょう。
工務店に土地探しを依頼するデメリット

工務店に土地探しを依頼するメリットを紹介しましたが、すべての工務店が土地探しに対応しているわけではありません。
また、建築契約前提でしか動かない方針の工務店も多く、「建てるかわからない段階で土地探しはしない」と明言している場合も存在します。したがって、依頼前に土地探しの対応の有無と対応範囲を確認することが必要です。それでは、工務店に土地探しを依頼するデメリットを解説します。
対応エリアや提案数に制約がある
工務店は地域密着型である反面、対応エリアが限定的なことが多く、提案できる土地の数に限りがあることも。例えば、市外や隣県など、工務店の営業圏外の土地は対応不可とされることもあり、理想の土地に出合えるチャンスが狭まる可能性も否定できません。
さらに、不動産仲介業務に慣れていない工務店の場合、土地情報の収集や提案のスピードが遅く、施主が希望するタイミングで動いてもらえない可能性もあります。
選択肢が少ない・情報が古い・条件に合わないなど、結果的に施主側が「提案力に不満」を感じる原因にもつながるでしょう。
土地提案に偏りが出る可能性がある
工務店が持つ土地情報が、提携会社や自社所有物件に偏っている場合、施主にとって最適とはいえない土地が紹介されることがあります。売れ残った土地や建築条件付きの土地など、工務店の利益優先で提案されるケースも珍しくないため、注意が必要です。
工務店から提案された土地だけではなく、自分でも不動産ポータルサイトや地元の不動産会社から情報を集め、選択肢を広げておくことが重要です。複数の情報源を活用した比較検討をおこなって、納得感を持って土地選びを進めましょう。
専任スタッフが不在の場合は対応が遅れる
工務店のなかには、土地探しを専門で担当するスタッフがいないところもあります。専任スタッフが不在の場合、設計担当や営業担当が兼任することになり、どうしても対応に遅れが出てしまうケースもあるでしょう。特に人気エリアや売買スピードの早い地域では、対応遅れが致命的になる可能性も否定できません。
また、建築との兼務が前提となると、土地情報の鮮度や正確性に不安が出る場合もあります。土地探し専任のスタッフや提携する不動産会社が、常に最新情報を提供してくれる体制を整えているかも判断材料となるでしょう。
土地探しに強い工務店の特徴

土地探しに強い工務店は、土地情報を多く持っているだけではなく、希望条件に合った土地をスピーディーに提案できる力と建物の設計力を兼ね備えています。
本章では、土地探しに強い工務店の特徴を解説します。実際に工務店を比較検討する際にチェックするべき項目を押さえて、後悔のない選択をしましょう。
情報網と提案力に優れている
土地探しに強い工務店の共通点は、広範囲かつリアルタイムの情報網と土地条件に合わせた提案力にあります。不動産会社との連携が強い会社では、非公開物件や売主との直接交渉による優先情報を入手しているケースも。
また、ただ土地を紹介するだけではなく、その土地にどのような家が建てられるかをプランとして見せてくれる工務店は信頼できます。建物と土地のセット提案ができる体制は、土地選びで安心できるでしょう。
顧客対応力に優れている
土地探しは、スピードと判断力が求められます。対応が遅かったり、施主の希望を理解してくれない営業担当では、せっかくの好条件な土地も取り逃がしてしまうかもしれません。
したがって、担当者の対応スピードや提案の質、説明のわかりやすさも、工務店を評価するうえで重要です。初回の問い合わせ対応や条件を提示したあとの反応を見るだけでも、その会社の柔軟性と親身さを判断できます。
契約縛りがない
土地探しを依頼する際に気をつけたい点が、契約縛りです。「土地を紹介する代わりに建築契約が必須」としている工務店もあり、自由な選択ができない可能性があります。
逆に、契約を急かさず、土地をじっくり探してから、あらためて建築の相談を進められる工務店も存在します。自由度が高い工務店は、施主のペースで家づくりを進められるため魅力的でしょう。契約縛りの有無やタイミングは、事前に確認しておくべきポイントです。
工務店で土地探しを成功させるポイント

工務店と一緒に土地探しを進める場合、準備不足や情報の確認ミスがトラブルや後悔につながります。自分の希望を明確にすることで、選択肢を狭めず、理想の家づくりにつながる土地を見つけられる要因となるでしょう。それでは、工務店で土地探しを成功させるポイントを解説します。
エリア・予算・希望条件を整理する
土地探しに入る前に、自分たちの軸を整理しておくことが重要です。具体的には、通勤や学区などから住みたい希望のエリア、建築費用を含めたトータルの予算、希望する土地の条件を明確にしておきましょう。
家族内の意見が食い違っていると、土地を見ても判断ができず、機会を逃してしまうことがあります。工務店と初回相談をする前に、希望の項目や優先順位を書き出して共有資料を作成するとスムーズに進められるでしょう。
現地調査に訪れる
希望に合う土地が見つかったら、現地に足を運びましょう。騒音や日照、近隣環境など、現地でしかわからない情報を確認できます。工務店と一緒に現地調査をおこなうことで、地盤改良の必要性や擁壁の有無、上下水道の引き込み状況など、将来的なコストに関係する要素も見えてきます。
また、建ぺい率や容積率、斜線制限など法的条件の確認も重要です。市街化調整区域など、建築に制限のある土地は避けるべきでしょう。ただし、工務店側で自治体との相談を代行してもらえるケースもあるため、相談することをおすすめします。
契約内容をよく確認する
土地を「買いたい」と決めたら、すぐに買付証明書を提出して意思を示す必要があります。特に、人気エリアでは競合が多いため、スピード勝負になります。価格交渉や条件交渉をしているうちに売れてしまうケースも珍しくないため、限度予算を決めておくとよいでしょう。
契約書にサインする前には、手付金の金額や契約解除の条件、瑕疵担保責任の内容など、トラブルを防ぐためのチェック項目を丁寧に確認することが重要です。必要であれば、司法書士や不動産の専門家に相談することも視野に入れましょう。
土地購入後のスケジュールを立てる
土地の契約が終わったあとは、建築計画とスケジュールを連携させる段階に入ります。このタイミングで、住宅ローンの申請と設計・確認申請までの流れを整理しておきましょう。土地の決済日から着工までの期間が空きすぎると、仮住まいやつなぎ融資などの費用が発生するリスクがあるため注意が必要です。
工務店と建築工程を逆算しながら、設計士やコーディネーターとの打ち合わせ、確認申請の提出、着工時期の調整をスムーズに進めて、無駄のないスケジュールを実現させましょう。
土地を探してくれた工務店への断り方

土地探しは、他の工務店やハウスメーカーと同時に依頼することが一般的であるため、なかには土地を探してくれた工務店へ断りを入れる可能性もあるでしょう。土地を一生懸命探してくれた工務店に対し「別の会社で建てることに決めた」「他の土地に決めた」などと断りを入れるのは、非常に心苦しいものです。
しかし、家づくりはほとんどの方にとって一生に一度の大きな買い物になるため、納得できる選択をすることが何より大切です。本章では、土地を探してくれた工務店へ失礼のない断り方と注意点を紹介します。
断る時の伝え方とタイミング
断りの連絡は、できるだけ早く、曖昧にせず伝えることが鉄則です。断り方に決まりはありませんが、できれば直接電話で感謝の気持ちを伝えるとベストでしょう。以下は、伝え方の一例です。
とてもよくしていただいたのですが、家族で相談の結果、他の工務店にお願いすることに決めました。本当に感謝しております。
誠に申し訳ありませんが、今回はこのような判断となりました。
逆に、よくあるNG対応は以下が挙げられます。
- 返事を先延ばしにして音信不通になる → 信用を失う可能性が高い
- 「また連絡します」と言いながらフェードアウト → 相手に期待を持たせてしまう
- 不満だけを理由に伝える → 対人トラブルになりやすい
NG対応を避けるためにも「感謝」「すでに決断済み」「丁寧なお詫び」の3つのポイントを意識して、バランスの取れた断り方が望ましいでしょう。
断ったあとのフォローの仕方
工務店の担当者は、希望に沿う土地を探すために時間と労力をかけてくれています。したがって、何の連絡もなくフェードアウトしてしまうと、相手に不信感や無用な誤解を与えかねません。将来的にお願いする可能性もゼロではないからこそ、誠意ある対応が求められます。
断ったあとも関係を良好に保つためには、ひとこと添える工夫をすると好印象です。例えば「今後、リフォームや紹介などでお世話になることがあるかもしれません」など、可能性を残した言い方が有効となります。
また、印象がよかった担当者には「本当に丁寧にご対応いただいてうれしかったです」といったお礼を個別に伝える方法もよいでしょう。断りはゴールではなく、信頼関係を損なわずに切り上げるマナーの一つです。
まとめ
工務店に土地探しを依頼するメリットは、設計目線での提案や手続きの一体化、柔軟な対応力などが大きな魅力です。一方、土地探しに対応していない工務店もあるため、依頼前の確認や比較が不可欠です。
土地探しから始まる注文住宅の計画は、情報と判断の積み重ねで成功が決まります。最終的に満足できる住まいを実現するためには「どこに頼むか」ではなく「どのように進めるか」が重要。納得のいく選択と後悔のない判断をするためにも、念入りに計画を立てましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ









