このページの一番上へ

軒下ってどこ?軒先や軒天との違いや軒ゼロ住宅のメリット・デメリットと対策方法を解説

軒下とはどこの部分を指すのでしょうか。軒先や軒天との違いも解説します
注文住宅の屋根を決める際は、軒についても検討することになります。そもそも、住宅に詳しい人でない限り、そもそも軒とはどういったものなのか、どのような役割を担っているかがわからないでしょう。
また、最近は軒なし住宅が流行っていることもあり、家を建てる際には、軒を作るか作らないかも悩みの種となりがちです。
本記事では、軒について詳しく解説します。軒を作るメリット・デメリットも説明するので、どのような屋根にしようかお悩みの方はぜひ参考にしてください。

そもそも軒とは?

そもそも軒とはどの部分のことなのでしょうか
そもそも軒とはどの部分のことなのでしょうか

大前提として、軒そのものについて理解しましょう。
軒とは、建物の外壁から屋根が張り出した部分を指します。屋根の部分だけでなく、その下の空間を含めて軒と呼ぶのが一般的です。

軒の出・軒下・軒先・軒天(軒裏)の違いは?

「軒」とひとくくりにしてしまいがちですが、それぞれ名称が異なります
「軒」とひとくくりにしてしまいがちですが、それぞれ名称が異なります

軒の出

軒のなかでも外に張り出している屋根の長さのことを、軒の出といいます。具体的には、外壁の柱の中心から先端までを計測しますが、屋根の傾斜に沿うのではなく水平距離で測るのもポイントです。

軒下

屋根の下部から床までの空間を、軒下と呼びます。雨宿りできるスペースが軒下であると考えると分かりやすいかもしれません。

軒先

軒先は、屋根の突き出ている部分の先端のことです。軒先には、屋根に降った雨水を流すための設備である雨樋(あまどい)のほか、装飾がほどこされることもあります。

軒天(軒裏)

軒天とは、屋根の突き出ている部分の下部、つまり軒下で見上げたときに見える部分のことを指します。上から見下ろした場合は軒裏と呼ぶこともありますが、軒天も軒裏もほぼ同義です。

屋根や庇(ひさし)との違いは

軒は屋根の一部ですが、庇は屋根には入りません
軒は屋根の一部ですが、庇は屋根には入りません

上記の図のように屋根の一部分、あるいはそれによって作られる空間全体を軒と呼ぶわけです。

庇と軒の違いが気になる人もいるかもしれません。庇は屋根とは全く別物で、窓やドアの上部に独立して作られるものを指します。庇も、雨よけになるという意味では軒と似た役割を担っていますが、全く異なるものであることは理解しておきましょう。

軒の長さの平均は?

軒の出の長さは、60cm〜90cmにすることが多いようです。なぜなら、軒の出が1m以上になると建築面積に含まれてしまうため。軒の出が60cmほどあれば、それなりに雨よけの役割を果たしますし、日差しの量をある程度、調節できます。加えて、軒の出が長いほど建築コストが上がる点も、90cm以内の軒の出が人気である理由のようです。

軒があるメリット

軒があるとどのようなメリットがあるのでしょうか
軒があるとどのようなメリットがあるのでしょうか

そもそも軒は、なぜ作られるのでしょうか? ここからは、軒があることによってどういったメリットがあるかを確認しましょう。

天候による外壁の劣化を防ぐ

軒には、外壁の劣化を防ぐというメリットがあります。ちなみに、外壁が劣化する最大の要因は日光です。紫外線が強く当たることで、外壁の塗膜が劣化して表面が剥がれます。もちろん、剥がれれば見た目が悪くなるのはもちろんのこと、家の中にも影響がおよびます。加えて、雨風なども外壁の劣化を進行させる要因です。
しかし、軒があればある程度の紫外線、そして雨風をしのげるため外壁が長持ちします。

日差しや雨が室内に入らないよう防ぐ

日光を浴びることで劣化するのは、外壁だけではありません。室内の床も家具も、紫外線は劣化の原因になります。しかし軒があれば、室内に注ぐ日差しを一定量しのげるため、室内にとってもメリットがあるわけです。加えて室内の温度が上がりにくくなるため、特に夏は冷房費が少なく済むでしょう。雨も室内に入りにくくなるため、梅雨の時期でも空気の入れ替えをおこなうことも可能です。

軒下に置いたものが雨ざらしにならないよう防ぐ

軒があると、軒下に置いたものが雨ざらしになりにくくなります。庭先に出るためのサンダルが濡れにくいと、雨上がりで洗濯を干しに出るときも不快な思いをせずに済むでしょう。軒が広ければ、子どもの自転車を置いても濡れにくくサビの原因を防ぐこともできます。

縁側を作ることができる

1.5mほどの軒があれば、縁側やウッドデッキを作った際の快適性が上がります。縁側へ出ても直射日光が当たらず、暑い日も心地よい風に吹かれながらのんびりできるでしょう。

最近トレンドの軒ゼロ住宅ってどうなの?

軒ゼロの住宅は、おしゃれでスタイリッシュに見えますよね
軒ゼロの住宅は、おしゃれでスタイリッシュに見えますよね

では逆に、軒のない住宅にはどういった特徴があるのでしょうか。軒ゼロ住宅のメリット・デメリットについて解説します。

軒ゼロ住宅のメリット

軒がある家にさまざまなメリットがある一方、軒ゼロ住宅が人気であるのにはわけがあります。代表的な理由は次の5つでしょう。

狭小地でも十分な広さの家を建てることができる

軒をゼロにする第一のメリットは、家の広さを十分に確保できる点です。先ほどお伝えしたとおり、軒の出が1mを超えると建築面積に含まれてしまい土地が狭い場合は特に軒を出すほど家が狭くなってしまいます。しかし、軒がなければ家そのものを建築制限ギリギリまで広げられます。

コストを抑えることができる

軒をゼロにすると、軒分の屋根材や軒裏の設置費用を抑えられるため、それ分のコストを抑えることができます。

現代風でおしゃれな外観になる

スタイリッシュな外観になるという点も、軒ゼロの住宅が人気である理由のひとつです。特にキュービックな形状の家の場合、軒がないと直線の美しさが際立ち、特に都市部では周囲の雰囲気になじみやすくなります。

耐震性が高まる

住宅は、一般的に屋根が軽いほど耐震性が高まるため、軒ゼロ住宅にするというのは耐震性を高める手段のひとつになります。

日当たりがよくなる

軒があると、日差しが家の中に入りにくくなるとお伝えしたことの裏返しで、軒がないと採光性が上がります。よって日のあまり当たらない家は、軒をなくすとそれだけ家の中を明るくできるということです。

軒ゼロ住宅のデメリット

逆に、軒ゼロ住宅のデメリットにはどういったものがあるのでしょう。代表的なものを以下に5つ挙げます。

外壁が劣化しやすくなる

軒があれば、外壁が雨や紫外線の影響をある程度、受けにくくなりますが、軒ゼロ住宅は日差しや雨風がダイレクトに当たるため、外壁の劣化のスピードが早まります。特に劣化しやすいのは、外壁の継ぎ目に使われるシーリング材です。軒あり住宅よりも早いペースでメンテナンスをおこなう必要が出てくるかもしれず、そうなるとメンテナンス費用もかさみます。

雨漏りしやすくなる

軒ゼロ住宅は、軒のある家に比べて雨漏りしやすいといわれています。なぜなら、軒がないと屋根の端から雨水が外壁へ流れるのに加え、外壁に直接当たる雨の量が多いため。シーリング材や窓サッシ、ドアの隙間から室内へ、雨水が侵入しやすくなります。

雨や日光が室内に入りやすくなる

雨や日差しが必要以上に室内へ入ってくる状況であれば、軒をつければよかったと後悔するかもしれません。特に日差しは、居室空間を明るくしてくれるという利点がある一方、限度を超えると家具が焼けたり、家電が壊れたりする恐れもあります。また、紫外線は窓ガラスをすり抜けるため室内にいてもシミの原因となる可能性があります。
また、軒なし住宅では雨天時に窓を開けることができないでしょう。換気が不十分だと、室内ににおいや湿気が溜まりやすくなります。

冷暖房が効きにくくなる

前述のとおり、軒なし住宅では日光が室内に入りやすいため居室空間が暖まりやすく、特に夏には冷房が効きにくくなります。また、冬も軒がないことで外壁全体に冷たい風が当たるため、壁自体が冷えやすくなり暖房が効きにくくなることもあるようです。冷暖房が効きにくいというのは、光熱費がかさむことを意味しますので、コスト面でのデメリットもあります。

室外設備が劣化しやすくなる

軒がないと、室外設備が完全に雨風、あるいは降雪地帯であれば雪にさらされます。これらはいずれも室外設備の劣化を招きます。たとえばエアコンの室外機なども壊れやすくなり、買い換えのペースが上がるかもしれません。

軒ゼロ住宅にする際の注意点と対策方法

軒ゼロ住宅にする際の注意点とは
軒ゼロ住宅にする際の注意点とは

それでも軒ゼロ住宅に憧れる、周辺の環境を踏まえると軒ゼロ住宅が合っているということであれば、対策を打たなければなりません。本パートでは、軒ゼロ住宅にする際、どういった点に注意すればよいのか、そしてデメリットを解消する方法について紹介します。

紫外線に強く防水性に優れた外壁にする

ディティールにこだわった機能美を備えた住まい(出典:KOYO ARCHITECTS興陽商事(株))
ディティールにこだわった機能美を備えた住まい(出典:KOYO ARCHITECTS興陽商事(株)

前パートでデメリットを確認したとおり、軒ゼロ住宅の問題点の主な原因は「紫外線」そして「風雨(場所により雪)」です。これらを解消するには、外壁を紫外線、そして風雨、雪に強いものにするという対策が有効です。コストを抑えつつ耐久性が高い外壁にしたいのなら、光触媒コーティングがされているサイディングボードを選ぶといいでしょう。もう少しデザイン性にこだわりたいということであれば、タイル外壁がおすすめです。高級感があり汚れにくいため、長くきれいな外観を保てます。

外壁材を縦張りにする

【アメカジ×アウトドア】アウトドア感漂うアメカジスタイルの家(出典:(株)ウェルズホーム)
【アメカジ×アウトドア】アウトドア感漂うアメカジスタイルの家(出典:(株)ウェルズホーム

軒ゼロ住宅における雨漏りのリスクをおさえたいのなら、外壁材の張り方にもこだわりましょう。例えばサイディングを設置する際、横張りのほうが職人の数も施工の手間も少なくて済み安上がりで済みますが、雨漏り対策になるのは縦張りです。横張りは継ぎ目が水平なため雨水が溜まりやすい一方、縦張りは継ぎ目が縦で雨水が流れやすいのです。

切妻屋根・片流れ屋根にする

屋根の形状によって雨漏りのしやすさが変わるため、雨漏りしにくいタイプの屋根を選ぶのも一つの手です。軒ゼロ住宅にする際はモダンでシャープな印象に仕上がるからとフラット屋根を選びたくなりがちですが、雨漏り対策を意識するのであれば、傾斜のある屋根を選びましょう。雨はもちろん雪も流れやすくなります。具体的におすすめの形状は、屋根の頂部から左右に斜面が流れる形状の切妻屋根や、全体が一方向に向かって勾配している片流れ屋根です。

やりたいことを全部詰め込んだマイホーム(出典:(株)豊木工舎)
やりたいことを全部詰め込んだマイホーム(出典:(株)豊木工舎

傾斜のある屋根であっても、外壁の色や窓のテイストの選び方によってはモダンでおしゃれな佇まいになりますよ。

軒ゼロ住宅が得意な施工会社に依頼する

残念ながら、軒のないことで雨漏りをしてしまう住宅は増加傾向にあります。屋根の形や外壁の材質、そして張り方で対策を打つことも可能ですが、それでも絶対に雨漏りしないというわけではありません。家によって、立地条件や環境が異なるためです。
そこで、依頼先にもこだわりましょう。専門業者のほうが知見も豊富ですので、軒ゼロ住宅が得意な施工会社に相談すると自分では分からないような気づきやアドバイスを得られるでしょう。


定期的にメンテナンスをおこなう

ここまでお伝えしてきたとおり、軒ゼロ住宅にはさまざまなデメリットがあります。被害を最小限におさえるには、被害の小さい初期段階で手を打つのが一番です。目安とされている期間になったらしっかりメンテナンスをおこなう、そして期限がまだ訪れていなくても何か異常を感じたらすぐに施工会社へ相談することも、快適な生活を守るための大事な要素です。

軒に関することについてのまとめ

最後に、軒について覚えておきたい重要ポイントをまとめます。

軒と屋根の違いは?

屋根のなかでも、外壁から外側に張り出している部分、そしてその下部に当たる空間を軒と呼びます。そのため、屋根が外壁までしかない住宅は軒なし住宅、あるいは軒ゼロ住宅といい、そのおしゃれな雰囲気から昨今は軒ゼロ住宅の人気が高まっています。

軒がある住宅のメリットは?

軒は、日差しや雨風、あるいは雪から家を守る役割を果たします。よって、軒を作ると外壁や窓、ドアの劣化を予防できますし、室内空間に日差しが注ぎすぎないように調整したいときも軒は有用です。また、縁側を設けた際、直射日光を避けながらゆったり過ごせるのは軒があるからこそ。軒にはさまざまなメリットがあるのです。

軒ゼロ住宅にする際に注意することは?

おしゃれでスタイリッシュな見た目の軒ゼロ住宅は近年人気で、コストを抑えることができるなどのメリットがある反面、雨漏りしやすいなどというデメリットも。強い日差しや雨風、そして雪によるリスクを最小限にとどめられるよう、外壁の材質や張り方にこだわったり雨漏りしにくい形状の屋根を採用したりしましょう。軒ゼロ住宅の経験豊富な施工会社を選ぶこと、そして、しっかりメンテナンスをすることも重要なポイントです。

いかがでしたか?屋根を外壁に張り出させることで作られる軒には、住宅の意匠性を高めるだけでなくいい住まいを作るという役割があることがわかりました。家の劣化を防いでくれますし、居住空間の快適性を向上するうえでも一役買うでしょう。
軒がない分、施工コストが安く済みますし、建築面積ギリギリまで室内スペースを確保することがでます。また、軒なしのモダンな佇まいは、家づくりの満足度を向上させることでしょう。

本記事を参考に、自分たちにとってよりより家づくりの参考になれば幸いです。

執筆者

フジタミホ

企画編集・ライター・ブックライター/野菜ソムリエ

企画編集として15年以上経験を積み、現在は主にフリーライターとして活動。得意なジャンルは暮らしと食。“情報過多迷子”を救うべく、日常に取り入れたくなるわかりやすい情報発信に努める。趣味は水泳と太鼓。太鼓のプロ集団に入ることを目標に、娘とともに切磋琢磨中。

関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る